初心者向けDAWの選び方 | 定番の音楽制作ソフト紹介と音楽ジャンル別おすすめDAW

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初心者向けDAWの選び方 | 定番の音楽制作ソフト紹介と音楽ジャンル別おすすめDAW

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楽器が弾けなくても、音楽の知識に自信がなくても大丈夫。今の時代、パソコン一台あれば誰でも音楽制作を楽しむことができます。前回ご紹介した「DTMとは?」に続き、今回はDTMをされている方の多くが導入している「DAW」について解説していきます。

この記事は、楽器経験がない方や、かつて楽器に挫折してしまったけれど、「いつか音楽を作ってみたい…」という気持ちを持つあなたのためのものです。「そもそもDAWとは?」から、「ジャンル別のおすすめDAW」まで、初心者にも分かりやすく、詳しく説明していきます。

DAWとは?

DAWとは「Digital Audio Workstation(デジタル・オーディオ・ワークステーション)」の略で、日本語では「ダウ」あるいはそのまま「ディーエーダブリュ」と読みます。もともとは専用ハードと一体化した高価な「デジタル音声編集システム」を指していましたが、現在はパソコン用の「音楽制作ソフトウェア」を意味することが一般的です。

現代に繋がるDAWの原型は1980年代後半に登場した二つの分野のソフトウェアにさかのぼります。一つは、演奏情報(MIDIデータ)の作曲・編集に特化した「MIDIシーケンサー」。この分野では、Steinberg社のPro-16(現Cubase)や、MOTUのPerformer、C-LabのNotator(現Logic)が先駆けです。もう一つはオーディオ(音声)の録音・編集に特化したシステムで、Digidesign社(現AVID社)のSound Toolsが有名です。これは後のProToolsの原型となり、パソコンを使った本格的なデジタルオーディオ編集の幕開けとなりました。

この2つの流れはやがて統合され、「Cubase Audio」などのソフトが登場し、今のDAWの形が確立されました。パソコンの性能が向上し、DAWソフト自体も進化したことで、音楽制作はプロ向けの専用スタジオから、誰でも楽しめる身近なものになっています。今ではプロの音楽家から趣味で作曲を楽しむ人まで幅広く使われ、映画やゲームの制作現場など、音に関わる多くの分野で活用されています。

簡単にまとめると
DTM(デスクトップミュージック)はパソコンを軸として音楽を作ること。そのDTMで使用する「作曲・編集ソフト」が、DAWソフト(ダウソフト)と呼ばれています。

DAW選びのポイント

多くのDAWが販売されていますが、どれも基本的な音楽制作は可能です。どのDAWにも使い勝手の違いや特長があり、人によって「使いやすい」「馴染みやすい」と感じるポイントが異なります。人によっては複数のDAWを場面によって使い分ける場合もあります。

DAW選びでチェックしたい主なポイントをご紹介します。

  • 対応OS(Windows/Mac)
    どちらのパソコンに対応しているかは最初に確認しましょう。両方対応なら、パソコンの買い替えにも安心です。
  • 知り合い・友人の使用率
    身近に使っている人がいると、困ったときに気軽に相談できます。
  • WEBや動画の情報量
    使い方や疑問を調べたいとき、ユーザー数が多いほどネット上の情報も集まりやすいです。
  • サポート体制
    国内サポートがあると、困りごとがあったときに安心です。
  • 編集機能(MIDI・オーディオ)の充実度
    MIDI(演奏情報)の細やかな入力や編集がどれだけしやすいか、オーディオ(音声)の録音や編集の扱いやすさもチェックしましょう。
  • 音楽制作支援の機能
    初心者に便利なフレーズ生成、アレンジャー機能、コードトラックなどが入っているか。
  • 収録エフェクトやソフトシンセの種類
    作りたい音楽ジャンル向けの音源やエフェクトがあるかどうかもポイントです。
  • トラック数の上限
    複数のパート(楽器・ボーカル)を同時に使いたい場合には確認しておきましょう。

DAWは、長く付き合う「音楽制作の相棒」

だからこそ、始める時は手助けしてくれる「入りやすい環境」あなたの感覚に合う「馴染みやすい操作性」が意外と大切です。直感的に「これ、使いやすそう!」と思えるデザインや画面も、モチベーションを支えてくれます。

DAW選びは、まるで「どんな料理スタイルが好きか」を選ぶ感覚にも似ています。手順がしっかり用意されたキットで作るタイプ、冷蔵庫の中だけでアドリブで作るタイプ…DAWにもフレーズ集や支援機能でサポートしてくれるタイプと、自由な発想でゼロから作れるタイプがあります。基本的な「調理道具の使いやすさ(=操作性)」が合うかが、料理=音楽作りを楽しむコツです。

まずは気になるDAWの体験版をいくつか試してみて、あなたの感性に一番フィットするものを選びましょう。

代表的なDAWソフト紹介

ここからは、よく使われている代表的なDAWソフトを簡単にご紹介します。

Steinberg Cubase シリーズ

対応OS:Windows、macOS
製品版のグレード:3種類

Cubaseは、DJやバンド、ボカロPなど、プロ・アマ問わず幅広い層の作曲家やミュージシャンに高い人気を誇ります。

開発元のSteinberg社は、DAW業界で標準となっているVSTプラグイン規格やASIOオーディオ規格を生み出したことで知られる、音楽制作分野のパイオニアです。Cubaseは初期から優れたMIDI編集機能を持ち、多くのユーザーを惹きつけてきました。現在では、直感的な打ち込みや高機能な録音・編集、充実した内蔵音源など、総合的な性能の高さが特長です。

また、譜面作成ソフトやマスタリングソフトなど、Steinberg社の他製品との連携もスムーズに行えるため、制作ワークフローをさらに向上させることができます。YAMAHA傘下となった現在は日本語サポートやハードウェア連携も強化され、日本国内で圧倒的な支持を集めるDAWです。

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Ableton Live シリーズ

対応OS:Windows、macOS
製品版のグレード:3種類

Ableton Liveは、DJやトラックメイカーに人気で、世界的に売れているソフトウェアです。最大の特徴は楽曲制作だけでなく、ライブパフォーマンスなど実際の演奏の際のツールとしても使用出来る様に制作されている点です 。あらかじめ作成したサンプル音源を自分の好みの順番に再生する、更にその場でエフェクトをかける等、リアルタイムに楽曲の編集が出来るため、ライブ会場の雰囲気に合わせて臨機応変に曲を編曲して行く事が可能です。

このような特性上、メロディーや各トラックなど頭で考えてそれを打ち込みたいという方よりは、感覚的に制作したい方が好んで使用されていて、そういった意味でミュージシャンや楽器を触ったことがない方にも使用されています。

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Image-Line FL Studio シリーズ

対応OS:Windows、macOS
製品版のグレード:4種類

世界的に特に若い世代やダンスミュージッククリエイターから支持されていて、近年では国内でも人気になりつつあります。作曲、編曲、ミキシング、マスタリングといった音楽制作に必要なすべての機能が統合されており、特に柔軟性の高いプレイリスト、優れたピアノロール、そしてプロ水準のサウンドを実現するミキサーがその核を成します。

また、FL Studioや音楽制作に関する質問に多言語で答えるAIアシスタントによるチャット機能が搭載されているのも特徴。さらに、一度FL Studioを購入すれば、将来のほとんどのアップデートが無償で提供される「ライフタイムフリーアップデート」を打ち出している珍しい製品でもあります。

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Avid ProTools シリーズ

対応OS:Windows、macOS
製品版のグレード:3種類

レコーディングスタジオに行った事のある方なら必ず知っているソフト、それが ProTools です。Pro Toolsはソフトウエアの名称。音楽制作スタジオ、映画関連や放送局、プリプロダクション等では業界標準と言われています。

プロ用・業務向けのイメージのプロツールスですが、エンジニアを目指している方、バンドやシンガーソングライターにも定評があります。
オーディオ編集機能が充実しているので、ギターなど楽器を録音する、あるいは、誰かに演奏してもらったものを主体で作り込みたい人にはぴったり。最終的にスタジオに持ち込んで作業したいという人はマストアイテムかもしれません。


MOTU Digital Performer (DP)

対応OS:Windows、macOS
製品版のグレード:1種類

その前身の「Performer」が1985年に発売された老舗ソフトウェアです。DPやデジパフォと呼ばれています。映画音楽やCM楽曲制作、アニメやゲーム音楽、通信カラオケ制作など、業務向けとして活用されているプロに愛好家が多く、特にMIDIシーケンスの多彩さには定評があります。

もちろん、オーディオ編集にも強く、初めてピッチ補正を内蔵したDAWとして知られており、オーディオからのMIDI変換など、いち早く導入されています。まさに作曲〜ミックスまで高度にそして柔軟に対応するソフトウェアです。

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Bitwig Studio シリーズ

対応OS:Windows、macOS、Linux
製品版のグレード:3種類

Bitwig Studioは、Ableton Liveの元開発者らが設立したBitwig社による、比較的新しいDAWです。タイムライン形式の「アレンジャー」と、クリップを即興で再生できる「クリップランチャー」を併せ持ち、Liveと同じく制作とパフォーマンスを柔軟に行き来できるのが特徴です。また、モジュラーシンセのように自由にパッチングして独自の音作りを楽しめるサウンドデザインツールが好評です。


インターネット Ability シリーズ

対応OS:Windows
製品版のグレード:2種類(Singer Song Writerが下位版)

Ability Pro は、日本のインターネット社が開発し、特に国内ユーザーのニーズを強く反映した国産のDAWソフトです。
「Singer Song Writer」は長年に渡りアレンジャー機能が人気を博していましたが、シリーズを分けて上位となる「Ability」という名前になりました。
MIDIシーケンス、オーディオ編集、ミキシングなど、主要機能がバランス良く統合されていて分かりやすい操作性も魅力です。特に、楽譜作成や楽譜入力を得意としていて、楽譜による作曲や編曲を行う方から高く評価されています。

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PG Music Band-in-a-Box

対応OS:Windows、macOS(製品は別)
製品版のグレード:3種類

「Band-in-a-Box」は、自動作曲・伴奏作成の定番アプリとして世界中の作曲家・編曲家に長く愛用され続けています。お好みの音楽スタイルを指定するだけで、メロディー、ピアノ、ストリングス、ギター、ベース、ドラムなど、各パートをあっという間に作曲可能。曲のアイデア出しや不得意とする音楽ジャンルのアレンジなど、作曲サポートに適しています。
作曲に特化したDAWといえますので、オーディオやMIDIを緻密に作り込みたいという人は他のDAWと併用すると言うのもアリだと思います。

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目的別で探す!あなたにピッタリのDAWはこれ!

音楽ジャンルや制作スタイルなどあなたが描きたい音楽に合わせて、最高のパートナーとなるDAWを探してみましょう。

ただし、ここで紹介するのは、あくまで「このスタイルなら、このDAWの機能が特に活きる」「このジャンルで愛用者が多い」といった傾向や相性の話です。

大前提として、どのDAWでもあらゆるジャンルの音楽を作ることが可能です。「このソフトだからロックは作れない」ということは決してありませんので、選ぶヒントとして参考程度にしてください。

EDM・ヒップホップなど「ダンスミュージック」を作りたい方へ

カッコいいビートや、シンセサイザーのフレーズを次々に組み立てていくスタイルには、ループやリズムパターン制作に特化したDAWが力を発揮します。

Ableton Live

「セッションビュー」という独自の画面が最大の特徴。オーディオやMIDIのループ(クリップ)をリアルタイムで組み合わせ、即興的に曲の展開を試せます。この「遊びながら作れる」感覚は、ダンスミュージックのアイデアを形にするのに最適で、その名の通りライブパフォーマンスでも絶大な支持を得ています。

オーディオ編集が直感的で分かりやすく、自動でBPMを検出したり、自動でスライスしたり、MIDI変換できたりと、手間な作業をするにも快適。MIDIフレーズをゼロから生成する機能、コード生成機能などもあり、音楽の知識や理論に自信がなくてもサポートする機能も内蔵しています。

FL Studio

楽器を演奏したことがない人でも、使いやすいと言われているDAWです。マウスでの打ち込みが非常にやりやすく、また、簡単にリズムパターンが作れる「ステップシーケンサー」が非常に強力。特にヒップホップやトラップのビートメイキングにおいて、優れたスピード感と直感性を誇り、有名ビートメーカーが愛用しているのも頷けます。

さらに、音源からドラム、ベース、ボーカルなどを抽出できる機能もあり、耳コピにも最適。低スペックのパソコンでも比較的動作しやすい設計も魅力です。別のDAWに移行した場合でもVSTi/AUプラグインとして呼び出せる機能もあったりします。

FL STUDIO All Plugins Edition

FL STUDIO Signature Bundle

FL STUDIO Producer Edition

FL STUDIO Fruity Edition

ポップス・ロック・アニソンなど「歌もの」を作りたい方へ

ボーカルを主役に、メロディーやコード進行をしっかり組み立てていくジャンルです。オーディオ編集とMIDI打ち込みの両方が高いレベルでこなせる、総合力の高いDAWが向いています。

Cubase

鍵盤一つで和音やフレーズを鳴らすコードパッドや音楽理論が苦手でもコード進行作りを助けてくれる「コードトラック」を搭載。オーディオデータからのコード解析も行えるので作曲を強力にサポートしてくれます。また、ドラムマシン機能も内蔵しているのでリズム制作も容易。他にもボーカルの音程やタイミングを補正する「VariAudio」機能が高精度で、歌のクオリティを格段に向上させます。

Cubaseは、収録エフェクトや音源などのプラグインも充実しているのも特徴で、さらに同社が開発する楽譜作成ソフト「Dorico」やマスタリングソフト「WaveLab」などの連携も得意としています。

バンドサウンド・弾き語りで録音中心に作りたい方へ

ギターやベース、そして自分の歌声など、「生」の音を録音することがメインになるスタイルです。オーディオの録音と編集の品質・安定性に定評のあるDAWが力を発揮します。

Pro Tools

界中のレコーディングスタジオで使われている「業界標準」のDAWです。音を録音し、編集するという作業において、プロが信頼を置く圧倒的な安定性と精度を誇ります。オーディオの編集に関しては、効率と性能とも優れていて、もしあなたが「自分の演奏や歌を、とにかく良い音でしっかり録音したい」という想いが強いなら、これ以上ない選択肢です。

映画音楽やゲーム音楽など壮大な曲を作りたい方へ

弦楽器や金管楽器などのオーケストラ楽器をたくさん使ったり、壮大なコーラスを合わせたり、また、映像を交えた制作には、たくさんのMIDIトラックを効率かつ細かい編集機能が充実したもので譜面機能にもある程度強いDAWが向いています。

Digital Performer

古くから映像との同期機能に定評があり、多くのハリウッド映画音楽家やプロの劇伴作家から絶大な信頼を得ています。また、高度なMIDIの編集と性能をもっていることで、鍵盤演奏によるリアルタイム打ち込みのMIDIデータ編集、逆に機械的な打ち込み(いわゆるベタ打ち)からの人間的なフィーリングをつける編集など、MIDIに関して秀逸。

さらに、「チャンク」という独自の機能で、一つのプロジェクト内に曲のバージョン違いやパーツを複数保存・管理でき、映像に合わせた複雑な構成管理、ライブでのマニピュレートにも強いです。

Cubase Pro

上記のポップス等での強みに加え、両者とも映像を読み込んで同期再生する機能を備えており、オーケストラ音源の扱いにも長けているため、劇伴制作の現場で広く使われています。

まとめ

ここまで、DAWの基本から選び方のポイント、そして具体的なソフトについてご紹介してきました。

色々と選択肢や機能がありますが、大切なのはスペックや評判よりも「自分が使いやすそう」「これなら楽しんで続けられそう」と思えるかどうかです。
最初に出会ったDAWは、これからの音楽制作を進める上での基準にもなっていきます。

まだ特定のソフトにこだわりがない今のうちに、いくつかのDAWの体験版に実際に触れてみるのをおすすめします。自分の感覚に合うかどうかを試してみることで、自然と「これが良いかも」という一本に出会えると思います。

音楽制作は、特別な経験や知識がなくても始められる趣味のひとつです。自分のペースで、無理なく、日々の中で音楽に触れる時間が少しでも増えていけばうれしく思います。

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