1日で出来る音の変え方　5つのこと　～弦による変化編～　【弦楽器工房ブログ】

皆様、こんにちは。

弦楽器技術スタッフの高瀬です。

最近、気候のせいかと思いますが、体調が優れません。

症状が治ったと思ったら後日また同じ症状が…

を20日間ほど繰り返しています。

食事と睡眠はしっかりとっているので不思議です。

皆様も体調にはお気を付けください。

本日は

• 毛替え
• 弦交換
• ニス補修

を行わせていただきました。

ご来店いただき、ありがとうございます。

1日で出来る音の変え方（音調整）

皆様は、今お持ちの楽器（ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ）の音に満足しているでしょうか。

『今より音量が出て欲しい』

『柔らかい音が出て欲しい』

『弦によって音のバランスが悪い』

『音のレスポンスが悪い』

演奏者なら、誰しもこのような悩みを持っていると思います。

上の悩みを解決する場合、では楽器や弓の買い替えが必要か…というと、必ずしも必要という訳でもありません。

楽器の状態や性能にもよりますが、簡単な調整やパーツ交換で好みの音に変化させることが可能です。

楽器を分解して板の厚みを変える、バスバー（表板の低弦側に接着されているパーツです）を削る、ネックを入れ直す…

という大掛かりな作業が可能なら、音の鳴りや響きを劇的に変化させることも出来ます。

しかし、これらの修理は時間（早くても10日間）も費用もかかってしまい、楽器自体にも少なからずダメージを与えてしまいます。

やはり、楽器に負担をかけずに手軽に音の変化を楽しめる方が望ましいと思いますので

工房で出来る「1日でお返し可能な音調整方法」

を思いつく限りご紹介致します。

1日で出来る音調整の方法

1.弦

• 弦の長さ調整
• 弦交換（種類を変える）

2.魂柱

• 魂柱の位置調整
• 魂柱太さ削り
• 魂柱交換

3.駒

• 駒削り加工
• 駒交換

4.テールピース

• テールコード長さ調整
• テールコード交換
• テールピース交換

5.あご当て

• あご当て削り
• あご当て交換

ここで紹介した調整は、全て1日で作業可能です。

（当工房で、事前にご予約いただいた場合です）

短い作業ですと5分程度で音の変化を感じて頂けます。

調整内容はまだまだありますが、大体はこれらのどれかを行えば（変化の幅はそれぞれ異なりますが）音の変化を楽しむことが出来るでしょう。

特にパーツ系は、交換した材質の影響が音に表れやすいので、音色の変化を望む方にお勧めです。

魂柱や駒は、音の響きの変化が大きいです。

（大きな変化を楽しみたいという場合は、特に『魂柱、駒、あご当て』の調整交換がおすすめです）

その中でも、今回は弦による音の変化について説明させて頂きます。

弦による音の変化

弦の長さ調整

これが一番簡単で、費用もかからず最もお手軽です。

弦をペグに巻く時、弦をペグから出す長さを『長くするか短くするか』だけです。

必ずではありませんが、傾向として

弦を長く出す＝音がクリアになる、張りが強くなる

弦を短く出す＝音が柔らかくなる、張りが弱くなる

このような特徴が出ると思います。

しかし、変化の度合いは些細なものなので、大きな変化を望む方のご期待には沿えない可能性があります。

弦交換（種類を変える）

弦の種類によっては、音色の変化を大きく感じることが出来るでしょう。

特に変化を感じられる（個人的に）おすすめの弦は

• Evah Pirazzi

• Obligato

• Peter Inferd

この3種類です。

Evah Pirazzi

鋭くクリアな音・迫力のある音が良い、とにかく鳴って欲しいという方に向いています。

ドミナントに並ぶ定番弦でもあります。

レスポンスも良いです。

張力が高いので、ドミナントを張った状態でしっかり鳴っている楽器に対しては少々強すぎる弦だと思われます。

楽器との相性もありますが、柔らかめの音が好きな方のご期待には沿えない可能性が高いです。

Obligato

当工房にご来店いただいた「柔らかめの音が好き」というお客様に、いつも1番最初にお試しいただいている弦です。

弦を試される際に私もお客様の楽器を弾かせて頂きますが、ほぼ間違いなく柔らかめの音になります。

（楽器との相性によりますが、あるお客様の楽器にObligatoを試したところ、逆に音が鋭くなって音量も増した、という事例もございます）

印象としては、ガット弦の響きに似ています。

チューニングの安定速度も良好です。

Peter Inferd

Evah Pirazziとはまた違ったクリアな音、華やかな音色になる傾向があります。

音量や響きはそこまで出て欲しく無いけど、明るめの音が好きという方におすすめです。

明るめの音が出る弦にも関わらず、しっかりとした太い音も出せます。

楽器の特徴を損なわない印象があるので、今の楽器の音を保ちつつより良い音を目指せます。

最後に

「1日で出来る音の変え方」ということで、弦による音の変化についてご紹介させていただきました。

今回は代表的な3種類の弦のみの紹介となりましたが、おすすめの弦は他にも多数ございます。

当工房では弦のお試しが可能なので、購入前にぜひお試しください。

詳しくはお試し可能なヴァイオリン弦情報をご覧ください。

弦はお客様の楽器との相性によりそれぞれ違った特徴を出すことがあるので、色々試すと楽しいと思います。

弦交換だけでは望んでいた音にならなかった、響きも改善したい、という方は、今回ご紹介した弦交換以外の調整もご検討ください。

次回はこのシリーズの続きとして「魂柱調整、交換」による音の変化について更新予定です。