マイスター茂木 技あり通信1 / クレモナ製ヴァイオリン・ニス完全修復

マイスター茂木 クレモナ新作楽器ニス修復

グーテンターク!皆さんこんにちは!如何お過ごしでしょうか、弦楽器マイスターの茂木です。

気が付けばすっかり梅雨に入り、人間にも楽器にもコンディション維持が大切な時期がやって参りました。これから夏場にかけては、特にニス状態の変化に注意されることをオススメします。
今回は暑さと湿気でニスが柔らかくなり、駒足周辺が盛り上がってしまったニス修復の様子をご紹介しましょう。駒足ニス盛上り1
新しい楽器の中にはまだ柔らかいものや、完全に乾燥硬化していない場合、駒の圧力でニスが競り上がってくる場合があります。イタリア・クレモナ製の美しい音色を奏でるこのヴァイオリンも、駒を外すと下のニスが無くなっているのがお分かりでしょうか。

横から見てみるとニスがかなり盛り上がっています、、やはり駒にはかなり弦の張力が掛かっているのが分かりますね。

これから修復していく作業工程はだいたい以下の様になります。作業前にいつも頭を悩ませるのが、そもそものオリジナルニスレシピを推測するところです。手工品ヴァイオリンのニスは大概製作家が自ら調合しているので、全く同じものが入手できないのです!

  1. オリジナルニスのレシピを推測する
  2. そのレシピに合った修復用ニスを用意(いつも自分で調合してます)
  3. 盛上ったニス部分だけを慎重に除去
  4. ニスが無くなっているところにニスを充填
  5. ニスの表面を磨いて整える
  6. 色合わせニス作業(リタッチ)
  7. カバーニスで調子を整えて表面を磨き上げる

この写真は工程3~4で、盛り上がったニスを慎重にスクレイパー等で除去、充填ニスを塗り始めたところです。

上の写真は工程5のニスを磨いて表面を整えているとこですが、出来具合は如何でしょうか? なんとなくニスが蘇ってきたように見えませんか?


愛用しているのは30年間ほぼ同じメーカーの筆たち。ここから一気にニスの色合わせ(リタッチと呼んでます)に入ります。

先細筆や平筆を屈指して、ニスの濃さ、色の陰影、木の繊維や杢の違い、表面の凸凹を修復しならがの根気と忍耐のいる作業の連続です。


そして遂に完成へ

塗っては乾かし、、磨いては塗り重ねて、、色合わせては乾かし、、また塗って乾かし、、という気の遠くなるようなプロセスを経て、自分でも修復した箇所が見分けられない出来栄えで完成しました。ヴァイオリン引き取りの際、お客様の大変驚かれた表情が印象的な仕事でした。

皆様もこの時期、ヴァイオリンの保管にはお気を付けください。そして何より健康に留意されてお過ごしくださいませ。

ここまで読み進めて頂き有難うございます・ダンケシェーン、ではまた次回。

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この記事を書いたスタッフ

シマムラストリングス秋葉原茂木

弦楽器の工房運営、人材育成、楽器買付け、技術責任担当しています。無量塔蔵六、他多数師事。東京バイオリン製作学校卒業、ドイツ国家弦楽器マイスター資格取得。

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