ヴァイオリン裏板修理~継ぎ目の応急処置~ 【弦楽器工房ブログ】

皆様、こんにちは。
弦楽器技術スタッフの高瀬です。

先日、護国神社で開催していました「みたままつり」を一人で見に行きました。
蚤の市のようなマーケットや屋台も多く出店していましたので、一人でもとても楽しめるイベントです。
そんな中、みたままつりへの道中で大変趣のある写真が撮れましたので、是非ご覧ください。

「アスファルトに突き刺さった直立不動の落ち葉」です。
良い一枚が撮れました。


本日は

  • 毛替え
  • 上ナット交換
  • 裏板修理

を行わせていただきました。
楽器をお預けいただき、ありがとうございます。

今回も修理事例をご紹介致します。

ヴァイオリン裏板、継ぎ目修理

先日お預かりしたお客様の楽器なのですが、裏板の継ぎ目中心部にぱっくりと隙間が見えます。


少々分かりにくいのでアップにしてみましょう。

お分かりいただけましたでしょうか。
裏板は、1枚のメープル材を切り出して製作する「1枚板」と、2枚の板を張り合わせて製作する「2枚板」の2種類があります。
今回のお客様の楽器は2枚板で製作された楽器なので、裏板に継ぎ目があるわけです。
使用環境や経年変化、製作時に使用した膠の問題等により、稀にですが今回のように継ぎ目が開いてしまう事があります。

補足ですが、「1枚板」と「2枚板」には音・強度共に優劣はありませんので、ご安心ください。


継ぎ目の応急処置

道具の紹介

本来ならば、裏板を外したり型を取って慎重に修理を行うべきなのですが…
納期とご予算の都合上、応急的に修理を行うことになりました。
継ぎ目の開き具合が激しかったり板が歪んでいると少々厄介だったのですが、今回の楽器はどれも軽度です。
更に幸いなことに、片方の板を上から押すと段差なく綺麗にくっ付くことが分かりましたので、工房にある道具を使用すれば問題なく修理が行えます(押した時に継ぎ部が凹むようなら、応急処置は行わずに適切な修理を行うべきです)。

こちらの道具です。
学生時代に投げ売りされているのを見かけて購入した道具なのですが、今では大変役に立ってくれています。
本来はサイドからネジを締めて割れを修復する道具ですが…
今回は上から圧を加えるネジを使用したかったので、サイドのネジは軽くしか締めていません。
正式名称は不明ですが、おそらく「クラッククランプ」で通じると思います。
使用前は真っ直ぐな形状で、板のアーチに沿って自由に曲げられます。
個人的には、曲げた時の形状が某うどんチェーン店のロゴマークに似ていることから「山田さん」と名付けています。
(九州の方には伝わらないかもしれませんね)


修理後ビフォーアフター

継ぎ目部を洗浄し、先ほど紹介した道具を使って膠で接着すると、このようになります。


念のため、ビフォーアフターです。


本来ならば楽器内部に「パッチ」と呼ばれる補強木材を貼る必要があるのですが、こちらの楽器は既にパッチが貼ってあります。

画像は、表板のf字孔から覗いたものです。
楽器内部に長方形型の木材が2つ見えると思いますが、その2つがパッチです。
しかし、このパッチだけだと心もとないので、念のため和紙を用いたパッチを貼る予定です。
表板・裏板を剝がさずに木材のパッチ接着は困難ですが、和紙のパッチなら比較的容易に接着が可能なので、重宝しています。


最後に

今回ご紹介させて頂いた修理内容は応急処置になります。
また、楽器の状態によっては今回の修理を行えない場合もございますので、ご了承ください。
ちなみに、今回のような修理を行う場合は膠接着の乾燥期間を考慮して、最低でも1日はお預かりすることになります。
修理ご希望の方は予めご予約の上、ご来店をお願い致します。

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この記事を書いたスタッフ

岩田屋福岡店高瀬

弦楽器技術者の高瀬です。楽器の調子が悪い、音をもっと良くしたいと思いましたら、ぜひご来店ください。皆さまをお待ちしています!

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