買取楽器の調整 ~Manfred Schafer~ 【弦楽器工房ブログ】
皆様、こんにちは。
弦楽器技術スタッフの高瀬です。
仕事柄、よく職場の皆さんから小物の修理依頼を受けます。
店舗什器のパーツ修理だったり、アクセサリーの修理だったり、つば九郎フィギュア足骨折修理だったりと色々です。
そして今回受け付けた修理がいつもと一味違いまして。
『短くなった2本の色鉛筆を繋いで1本にしてくれ』
出勤したら作業机にこのようなメモが置いてありました。
という訳で、書いてある通りに修理を行った色鉛筆がこちらです。
『oreyasui』ロゴ入り、オイル加工済です。
断面の処理は接着だけなので、たぶん折れやすいです。
今回は買い取りヴァイオリンの調整内容について紹介させていただきます。
買取楽器の調整
買い取らせていただきました楽器は『Manfred Schafer』と呼ばれる楽器です。
剥がれや割れ等は無く、状態はいたって健康です。
ただ、表板の汚れと指板のシール跡、加工処理の甘さが目立つので再販できるように調整を行います。
表板の汚れ除去
汚れ除去前
汚れ除去前の状態がこちらです。
全体的に汚れていますが、特にf字孔付近の汚れが強いですね。
ここまで強い松脂の汚れだとクリーナーではなかなか落ちませんので、アルコールを少量使用しながら表面の汚れを落とします。
アルコールの使用は下手をするとニスを痛める行為なので安易に行わないようにしていますが、今回のような場合には有効なので慎重に作業を進めます。
汚れ除去後
クリーナー、少量のアルコールを使用して汚れを落とした状態です。
汚れによるくすみが取れて、輝きを取り戻しましたね。
指板のシール除去、指板側面の処理やり直し
続いて指板の調整です。
演奏上大きな問題はありませんが、見た目に影響しますので調整を行います。
調整、処理前
シールが指板に付着しています。
これはジッポオイル等を使用すると簡単に落ちるのですが、厄介なのはシール除去後です。
この楽器のように長期間シールを貼ったまま放置すると、指板にシールの跡がくっきり残ってしまうのです。
なので、シール除去後に指板の磨き直しも必須になります。
こちらは指板を横から見た写真です。
指板側面を見ると、表面に傷のような線が複数見えると思います。
実はこの傷、鉄鋼やすりの加工痕跡でして、おそらく製作段階から付いていた傷になります。
傷を残しておいても問題は無いのですが、気になるので見た目を整えます。
調整、処理後
シールを除去し、改めて指板を磨き直した状態です。
指板側面もやすりで整え、傷を目立たなくさせました。
あまり大げさに削ると指板側面の形状が歪になるので、最低限傷が見えなくなる範囲で整えています。
せっかくなので、ネックと指板の境界線も整えました。
オリジナルの状態は指板とネックに段差がありましたので、これにより持ちやすさも向上しているはずです。
最後に
あとは仕上げの音調整を行い、今回の調整は以上となります。
トータルの修理内容は『クリーニング、ニス補修、指板磨き、駒加工、弦交換、毛替え』になります。
あとは音に問題が無ければ今後店頭で展示予定なので、気になる方はぜひHPをチェックしてみてください。
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弦楽器技術者の高瀬です。楽器の調子が悪い、音をもっと良くしたいと思いましたら、ぜひご来店ください。皆さまをお待ちしています!