肩当修理 ~肩当足のネジ穴埋め直し~【弦楽器工房ブログ】
皆様、こんにちは。
弦楽器技術スタッフの高瀬です。
先日の夜、家でくつろいでいたら台所からカサカサと変な音が聞こえてきました。
何だろう、と思い目線を変えると、暗闇の中レジ袋がひとりでに動き回っていました。
何事かと急いで見に行くと…
脱走したハリネズミがレジ袋と楽しそうに遊んでいまして。
ホラー体験かと思い肝が冷えました。
今回はヴァイオリン、ヴィオラプレイヤーにはお馴染みの肩当についてです。
肩当足のネジ穴埋め直し
肩当には楽器に固定するための『足』がネジ式で付いており、この足のネジを回転させることにより足の長さを長くしたり短くしたりと、プレイヤーの好みに合わせて長さ調整できます。
先日お会いしたお客様は『マッハワン』という人気の木製肩当を持っていたのですが、長年の使用により足のネジ溝が拡がっていました。
お話しした結果、別タイプの肩当へ買い替えることになり、以前使用していた肩当は廃棄ということになったのですが…
ちょっと勿体無いですよね。
という訳で、肩当を修理してみましょう。
(お客様からも許可を頂いております!)
修理内容は単純で、要は拡がったネジ穴を元に戻せば良いだけです。
なので修理手順は
- ネジ穴を整える
- ネジ穴を埋め直す
- リタッチ
- ネジ穴の開け直し
以上4ステップのみになります。
特に難しい事はありませんので、サクサクと修理の様子をご紹介致します。
修理前の状態
写真だと分かりにくいですが、ネジ穴が歪に拡がっています。
肩当の足がマッハワン純正品では無いので、ネジ溝が僅かに合っていないことも原因の一つです。
通常、ネジは回転させることにより奥へ奥へと進んでいきますが…
足を軽く乗せるだけで半分近くも入ってしまいます。
結構重症です。
『マッハワン』肩当は両端にネジ穴が複数空いており、片方は2つでもう片方は3つ穴があります。
今回は頻繁に使用する穴のみ拡がっている状態なので、1穴ずつ埋め直しを行いましょう。
ネジ穴整形
まずは、オリジナルの径より大きいドリルを使用し、ネジ穴を整えます。
写真、上部の穴を拡げました。
ネジ穴埋め直し
先程拡げた穴に合わせて、木材を埋め込みます。
肩当の素材、耐久度を考えると『メープル材』が一番良いのですが…今回は実験も兼ねているので、とりあえず手元にあった魂柱材を再利用します(ちょうど円形で加工も楽です)。
タイトボンドを使用し、接着します。
リタッチ
接着、成型後に目止めを行い、埋め直した部分をリタッチします。
2枚目の写真はもう片方のネジ穴で、真ん中の穴を埋め直してあります。
この後穴を開け直すので、目立たない程度になったら完了です。
ネジ穴開け直し
この作業が一番大変かもしれません。
開け直す穴の角度を少しでも間違えると、足と楽器が嚙み合わなくなります。
(最悪の場合、無理に取り付けることになるので楽器を傷つける原因にもなります…)
ボール盤を使用して何度もセッティングを調整し、時間をかけて穴を開け直します。
修理後
開け直し後、実際に肩当の足を取り付けて楽器に装着してみます。
問題なく装着出来ました。
今回のように木製肩当は修理可能な場合がありますので、何か気になる症状がある場合はお気軽にご相談ください。
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弦楽器技術者の高瀬です。楽器の調子が悪い、音をもっと良くしたいと思いましたら、ぜひご来店ください。皆さまをお待ちしています!