こんにちは、島村楽器名古屋パルコ店の立浦です。
本日はWaldorf社から新たに発売されたデスクトップ型のウェーブテーブルシンセサイザーProteinについてご紹介させて頂きます!
ウェーブテーブル合成音源及びウェーブテーブルシンセのパイオニアであり、17年前にリリースされ、今なお現行品として販売されているウェーブテーブルの名機Blofeldシリーズや、近年登場した Waldorf 伝統のウェーブテーブルとアナログ VCF/VCA を搭載した新世代のクラシック・ハイブリッド・シンセサイザーMシリーズをはじめ、これまでもハード・ソフト問わず様々なモデルがリリースしており、現代においてもその地位を確固たるものにしているドイツのWaldorf社。
そんな同社が最初期にリリースしたMicrowave1というウェーブテーブルシンセのオシレーターを収録しつつ、現代の最高峰モデルIridiumの機能も一部継承した新たなモデルがこのProteinです。4レイヤー8ボイス、更にポリアフタータッチやMPE(MIDI Polyphonic Expression)にも対応し、コンパクトながら強力なデスクトップシンセサイザーに仕上がっています!
早速チェックしていきましょう!
サイズ感や端子


幅252mm × 奥行き170mm × 高さ48mm、重さ約0.9kgと非常にコンパクト。近年リリースされた中で比較的多機能なデスクトップ型のウェーブテーブルにはASM Hydrasynth Desktop、MODAL Electronic ARGON8M、KORG Modwave Mなど様々なモデルがありますが、それらと比較してもかなりコンパクト。
ちなみに、なんとなく色合いが似ていたRolandのAIRA Compact J-6と並べてみると上記のような感じ。
比較してもさほど大きくなく、この手のガジェット系シンセとも並べやすいサイズ感です。

背面端子にはメインのL/R出力とヘッドホンアウト、そして給電やパソコンとUSB-MIDIをやり取り可能なUSB-C端子、そしてTRS-MIDIのin/outを搭載。
製品概要
本機種の特徴の一つとして、Waldorf社が1980年代にリリースしたウェーブテーブル・シンセサイザーの元祖的モデルである「Microwave 1」に使用されていたASICチップを忠実にモデリングし、オリジナルのウェーブテーブルの8ビット質感をビット単位で再現した本格的なウェーブテーブル・エンジンを搭載している点が挙げられます。
※メーカーサウンドDEMOは下記
「デジタル・ヴィンテージ」と表現され、現代のメインストリームとなっている高ビットレートなモデルと異なる独特の荒々しさのあるウェーブテーブルサウンドを得る事が可能なシンセサイザーとなっています。

コンパクトな筐体にギュッとつまみやボタンが敷き詰められていますね!
でも各セクションは明確に仕切られているので、操作自体は分かりやすそうです。

対象のつまみを操作すると、その都度画面上にそのパラメーターが表示されます。
SHIFTボタンがOFFの時は白文字表記のパラメータ、SHIFTを押して青く点灯させて操作すると青文字表記のパラメータを変更・調整する事ができます。

また、つまみに触れる以外にも本体右上中央のEDITボタンを押すと上記のような画面となり、操作したい各パラメーターへアクセス可能です。


詳しい部分やセクション毎の挙動については後述するとして、取り急ぎ音を聴きたい場合は右上のPresetボタンをプッシュしてSelectダイヤルを回すと予め用意された224のサウンドプリセットにアクセスする事ができます。
※224以降は空のバンクで、最大で250までプリセットを保存・登録する事が可能です


プリセットの並びはランダムですがBass/Lead/Chord/Pad/Sequence等といった具合にプリセット名の下に予め音色のカテゴリーが表示されていて分かりやすいですね。

またカテゴリー毎にフィルタリングして表示することも可能。

Proteinは基本的に、MIDI入力によって発音させるシンセサイザーで、外部キーボードなどからMIDIノートを入力するか、プリセット横に配置された「PLAY」ボタンを押すことで、内部音源を鳴らすことが可能です。
※PLAYを押して音源を再生した状態でSHIFTボタンを押すことでHOLD(指を離しても、音を鳴らし続ける機能)が有効になります



またコード機能およびスケール機能も搭載しており、これらを使用することで、単一のノート入力から、あらかじめ指定したコードやボイシングを鳴らすことができるほか、適当に入力した音階であっても、指定したスケール内に自動補正して演奏することが可能です。



さらに SHIFT+PLAY 操作により、パターン再生、アルペジオ、最大32ステップの任意のシーケンスの設定・再生も行えます。
このシーケンサーについての補足として、Seq(シーケンサー)という表記で混同しやすいのですが、Proteinのシーケンサー機能は他のシンセサイザーやリズムマシンでよくある「再生ボタンを押したら停止されるまで自発的に再生され続けるようなループ型」のものではなく、入力されたノートに対してシーケンスが発動する演奏に反応して動くモジュレーターのようなもののようです。
ですが、上記の通りPLAYボタン+SHIFTでHOLD機能が有効になるので、このProtein1台でも演奏を楽しむ事ができます!

ユニークなつまみとしてFlavourダイヤルというつまみが用意されています。
「Flavour=風味」という意味合いの通り、サウンドに「微妙な変化」を与えるコントローラーで、回すほどオシレーターの挙動や音のキャラクターに微細な変化が加わります。
主に波形の位相(位置) や ピッチ(音の高さ) に変化が現れるもののようで、サウンドに “人間的な揺らぎ”や“有機的な変化” を加えるためのものですが、意図せず音程がズレるのを防ぐため、Pitch Bend が 0 の場合はピッチの変化は発生しないようです。
それではそれぞれのセクションも細かく見ていきましょう!
LAYERセクション

まずサウンドの根幹となる部分として、上記のA/B/C/DのLAYERというセクションで最大4つのレイヤー編成が可能。
各々のレイヤーには、2つの独立したオシレーターやフィルター、エンベロープ、モジュレーションが用意されており、同時発音数は全レイヤー合計で最大8ボイスまで対応します。

LAYER下の“WAVETABLE”セクションや“PITCH”セクションから波形の選択や調整が可能で、オシレーターはmicrowave1に収録されていた全ての波形64種類を収録し、複雑な音色の変化を実現します。
また、このレイヤー部分にはA〜Dの内から一つを選択して使用するSingle Modeと、各レイヤーを任意に重ねるMulti Modeが用意されています。

・Layered:全てのレイヤーが同時に発音
・Round Robin:ノートが入力される毎にA → B → C → D → A… の順でレイヤーを切り替えて発音
・Random Robin:レイヤーがランダムで切り替わって発音
・MIDI Split:MIDIチャンネル毎にレイヤーを割り当て
の4種類がMulti Modeに用意されており、音の用途やジャンルによって使い分ける事ができちゃいます。ここも自由度高いですねー!!
レイヤーして重厚なサウンドを作るのも良し、Round RobinやRandom Robinはアルペジエイターやシーケンサーと組み合わせて演奏するごとに音色が変化する有機的なサウンドメイクをしても面白そうです。
またMIDI Splitは後述の通りレイヤーごとに異なったMIDI chが割り当てられているので、演奏だけでなくDAWでの音楽制作時にも活用できそうです!
Filter(フィルター)セクション

フィルターにはLP(ローパス)/HP(ハイパス)に加え歪みや倍音を加える“Drive”というモードも用意されています。
ドライブのタイプも豊富で
• PNP:バイポーラトランジスタに基づく歪みを生成
• Tube:真空管回路の非対称歪みをシミュレート
• PickUp:静電ピックアップをシミュレート
• Diode:典型的なダイオード歪みを生成。
• Crunch:正弦波シェイパー。FM風のサウンドを生成
と様々な種類から選択し使用する事が可能です!
また、さらにユニークな部分として様々な種類のノイズやクリック音を生成する高度なノイズ・ジェネレーターが用意されています。

上記の“Dirt(SHIFT+Resonanceつまみ)”でノイズの音量を、Selectエンコーダーでノイズの種類を選択できます。
• Geiger:ガイガーカウンターのように、短いランダム・ノイズ・パルスを生成
• Click:短いノイズ・パルスを1つ生成
・Burst 1/2/3:異なる長さの短いノイズ・パルスを生成
と種類が豊富で、これらのノイズ・フィルターであえてサウンドを汚すことにより、他のシンセにはない独特の彩りを加えることが可能です。
Envelope(エンベロープ)セクション

エンベロープ部分にはWave(音色の変化)、Filter(フィルターの変化)、Amp(音量の変化)の3つが用意されています。
いずれもAttack/Decay/Sustain/Release(ADSR)仕様で各エンベロープにつき1つずつコントロールつまみがあります。

例えばAmp Envelope内のAttackとReleaseを同時につまみでグリグリ動かす、という動作は現時点ではできない模様。Selectつまみで弄りたいパラメーターを切り替えながら操作する必要があります。
また、こちらにもユニークな機能としてPANの設定項目が用意されていました。
SHIFT+FilterつまみでPANの設定・変更が可能で、FIX(パンの位置固定)に加えランダムでPANが変化するモードが1〜5まであり、数値が上がるほどPANの広がりが増していくようです。

後述のMODULATIONの項目と掛け合わせると、さらに独特なサウンドを構築できそうです。
Modulation(モジュレーション)セクション


オシレータと合わせてウェーブテーブルのサウンドを決定付けるモジュレーションも注目!
モジュレーション・マトリックス(ModMatrix)が8スロット用意されており、コンパクトなサイズながらも多彩なサウンドを作る事が可能です。
※モジュレーション・マトリックス=LFOやエンベロープのつまみ・動き(Source)を、音のどの部分(Target)に効かせるか決めておく場所
LFOも2系統・波形はSine/Triangle/Pulse/Saw/SawUP/Random/S&Hの7種類用意されており、その他のセクションと同じくつまみで操作可能。操作できるのはSpeedとRatioのみなので、他の高価なウェーブテーブルシンセのようなLFOを作り込むタイプではないようですね。ウェーブテーブルに慣れていない方やライブ中にサクッと音を操作したい場合などであれば、このくらいシンプルな方が逆に良いのかもしれません!


モジュレーションソースもProtein内部のLFOやEnvelopeだけでなく、ペダルやアフタータッチ、ブレスコントロールMIDI、MPEのY軸やMIDI CC22〜31など外部ソースを選択・割り当てする事が可能です。
小さいのになかなかやりますね…!!
Effect(エフェクト)セクション


エフェクトは全レイヤー共通となり、2種類使用可能。
Chorus/Flanger/Phaser/Tremolo/Drive/Comp/EQ/Delay/Reverb の9種類から選択できるようです。
本体のつまみは2つだけとなっていますが、こちらは他のセクションと異なりパラメーターを切り替える事で、エフェクトのDry/Wet以外にも様々な値を変更する事が可能です。
ハイエンドなウェーブテーブルシンセのように、モジュレーションのソースやターゲットにエフェクトのパラメータを設定できず、またレイヤー毎にかけるのではなくマスターエフェクト的な使い方である点から、あまり過激な使い方はあまりできませんが、どれも質感がよくウェーブテーブル音源にしっかり馴染んでくれます。
パソコンとの連携



私のMacBookPro上のAbleton LiveとUSB-Cで接続してみたところ、問題なく認識してくれました。
初期状態ではMIDI ch.1で信号を受信するようになっていますが、Setting→MIDI Settingから送受信するチャンネルの変更も可能。
Multi Modeで MIDI Split に設定すると、受信するMIDIチャンネルを基準に、各レイヤーへ順番にチャンネルが割り当てられます。
例えば、受信チャンネルが 1 の場合
- LAYER A:MIDI ch.1
- LAYER B:MIDI ch.2
- LAYER C:MIDI ch.3
- LAYER D:MIDI ch.4
受信チャンネルが 2 の場合
- LAYER A:MIDI ch.2
- LAYER B:MIDI ch.3
- LAYER C:MIDI ch.4
- LAYER D:MIDI ch.5
このように、各レイヤーを異なるMIDIチャンネルで発音させることが可能です。
※なお、受信チャンネルを 14 に設定した場合は、
LAYER A:14 / LAYER B:15 / LAYER C:16 まで割り当てられますが、
LAYER D にはチャンネルが割り当てられず、再生できませんでした。
MIDI ch.16 以降は存在しないため、LAYER D に MIDI ch.1 が割り当てられる挙動を想定していましたが、実際には循環(ラップ)しない仕様のようです。
いかがでしょうか?
本日はWaldorfのデスクトップ型ウェーブテーブルシンセサイザーProteinについてご紹介させていただきました!

コンパクトで手に取りやすい価格ながら、そのサイズ感からは想像できないほど完成度の高い一台で、本格的なウェーブテーブル・サウンドを存分に楽しめるモデルです。
その他のウェーブテーブル・シンセとは一線を画す、ざらつきや粗さを感じさせる独特のサウンドキャラクターに加え、4レイヤー構成と多彩なマルチモードにより、瞬発的・偶発的な音作りがしやすい点も大きな魅力です。
ハイエンドモデルのように複雑なルーティングや膨大なモジュレーション、深い階層に潜って細部まで追い込むような音作りはできませんが、あえて設定項目が整理されていることで、ベテランの方はもちろん、これからウェーブテーブル・シンセに挑戦してみたい方にも扱いやすい仕上がりだと感じます。テーブル上にも設置しやすいコンパクトなサイズ感に加え、USB-C駆動に対応している点もモバイル性が高く好印象。ライブ・制作の両面で活躍が期待できるモデルですね!
気になる方は、ぜひ島村楽器の展示店舗にて実機をチェックしてみてください!
特徴まとめ
- 4レイヤー構造(4パート・マルチティンバー) により、音色の重ねや分割、複雑なサウンド構築が可能
- 2基のウェーブテーブル・オシレーター(Waldorf初代 Microwave 1 のASICを再現)。独特の8bit質感とエイリアシングを特徴とするサウンド
- 150以上のファクトリー・プリセット と 最大250のユーザーメモリ を搭載。レイヤーの組み合わせで多彩な音作りが可能
- モジュレーション豊富:3エンベロープ、2LFO、8スロットのモジュレーションマトリクス。ポリフォニックアフタータッチ対応
- パフォーマンス機能:高度なアルペジエーター、最大32ステップのステップシーケンサー、コード/スケールモード
- 内蔵エフェクト(リバーブ、ディレイ、コーラス、フェイザー、フランジャー、ドライブ等)を2スロット使用可能
- USB-C電源&MIDI、DIN MIDI In/Out、ステレオ出力、ヘッドホン端子 等の豊富なI/O
- 軽量・コンパクト設計(約0.9kg/252×170×48mm)で、ライブやモバイル制作にも適したサイズ感
- 「Flavourノブ」 による有機的な揺らぎ/デジタル感の付加が可能
主な仕様
- 製品の仕様やデザイン、動作環境などは予告なく変更することがあります。
Oscillator(オシレーター)
- Waldorf Microwave ASIC チップをベースにしたオシレーター x2
- オリジナル ASIC のサンプリングレートに合わせて、内部で 250kHz のサンプリングレートで動作
- 各ボイス用の D/A コンバーター(DAC)をモデリング
- ASIC 技術をベースにした独自のデジタルノイズ・ジェネレーター
Wavetables(ウェーブテーブル)
- Microwave 1 のオリジナル・ウェーブテーブルを全て搭載。
オリジナル・コーディングに基づき、ビット単位で完全互換。 - アルゴリズミック・ウェーブテーブルとスピーチ・ウェーブテーブルを含む
- 8ビット量子化とエイリアシングを美しく再現
- オリジナル Microwave の全波形カタログを収録
Filter(フィルター)
- CEM アナログフィルターの忠実なモデリング
- ハードウェアのチューニングずれを再現する調整可能なカットオフ/レゾナンスのデキャリブレーション
- カットオフとレゾナンスのモジュレーション
- 追加の「ダーティ」タイプ:ノイズ、クラックル、クリック、ガイガー、バースト
Modulation(モジュレーション)
- エンベロープ x3
- テンポ同期とサンプル&ホールド機能を備えた LFO x2
- 8スロットのモジュレーション・マトリクス
- ポリフォニック・アフタータッチ対応
- MPE モジュレーション・ソース
Effects(エフェクト)
- エフェクト・スロット x2
- リバーブ、ディレイ、コーラス、フェイザー、フランジャー、ドライブ、EQ、コンプレッサー、トレモロ
Voices(ボイス)
- 8 ボイス・ポリフォニー
- 4 ティンバー・レイヤー
- スタック、ラウンドロビン、MIDI スプリットのレイヤー・モード
- モノ&レガートモード
パフォーマンス機能
- 高度なアルペジエーター
- 最大32ステップのステップ・シーケンサー
- コード&スケールモード
- MPE対応
- MIDI CC ラーン機能
パッチ
- 150 以上のファクトリーパッチ
- 250 パッチのメモリスロット
- パッチリストのカテゴリーフィルター
- MIDI Sysex 経由でのパッチのインポート/エクスポート
接続端子
- ステレオオーディオ出力(6.35 mmジャック、モノラルまたは TRS ステレオ接続機能搭載)
- ヘッドホン用ミニ TRS 出力
- DIN MIDI IN & OUT、ミニ TRS タイプ A (DIN MIDI ソケット用アダプター2個付属)
- 電源供給および USB MIDI 接続用 USB Type C
- USB 経由のファームウェア更新
発売日
2025年12月13日
販売価格・ご購入はこちら
- 価格は予告なく変更となる場合がございます。実際の販売価格はオンラインストアの表示価格および最寄りの店舗でご確認ください。
| 品名 | 販売価格 |
|---|---|
| 品名Waldorf Protein JANコード:4580646115857 | ¥61,900(税込) |

この記事を書いた人

名古屋パルコ店 シンセサイザー / DTM / DJ 担当 立浦(たてうら)
シンセサイザー、DTM、DJ等デジタル機材の事ならお任せください!逆に子育ての事、教えて下さい!







