DTM用モニタースピーカーの選び方&おすすめ4選

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DTM用モニタースピーカーの選び方&おすすめ4選

記事中に掲載されている価格・税表記および仕様等は予告なく変更することがあります。

パソコンやソフトウェア、オーディオインターフェースなどの必須機材を揃えて音楽制作を始めたての方、または、もっと作曲を便利に、あるいはクオリティをさらに高めたい方に検討してほしいのが「スタジオモニタースピーカー」です。

前回の「モニターヘッドホンとスピーカー、どっちから揃える?」記事でも触れましたが、スピーカーで実際の再生状況を“見える化”することで、低音が体を包む感覚や、左右の楽器が空気に溶け込む距離感といった「空間」をより自然に感じ取れるようになります。また、長時間でも集中力が持続しやすいのもスピーカーの特徴です。

この記事では、DTM・音楽制作用途に特化し、スピーカーの基本から種類、環境に合った選び方までをご紹介します。

モニタースピーカーの基礎知識

単に「スピーカー」といっても種類はさまざま。この章では、選ぶ際に押さえておきたい基本を整理していきます。

リスニングスピーカーとは?

一般的に「スピーカー」といえば、コンポなどのオーディオ用スピーカーを指すことが多いです。
厳密に定義された用語ではありませんが、他のスピーカーと区別するために「リスニング用スピーカー」と呼ばれることがあります。

オーディオ用スピーカー(例:EMBERTON III

用途としては音楽鑑賞がメインで、より音楽を心地よく楽しめるように設計されているのが特徴です。
低音を強調したり高音を華やかにしたりと、いわゆる“音が色付け”されている製品も少なくありません。

一方、モニタースピーカーはPA用途と制作用途で方向性が変わりますが、音楽制作用途のものは「スタジオモニタースピーカー」と呼ばれます(PA用途は本記事では割愛します)。
スタジオモニタースピーカーは、音や音楽をできるだけそのまま聴くことを基本としているため、飾り気の少ないサウンドといえます。
そのため、録音された音を美化しすぎず、音源の粗やバランスの崩れを“誤魔化さずに”確認できるので、音楽制作に向いているのです。

音楽制作はスタジオモニターから整えるのがおすすめ

もし低音や高音が強調されたスピーカーでミキシングを行うと、実際にはフラットな音源であっても「低音と高音が強すぎる」と錯覚しやすくなります。
その結果、ミックスでそれらの帯域を削りすぎてしまい、いざ標準的なスピーカーで聴いたときに低音も高音も物足りない音源になってしまうことがあります。
そうしたミスを減らすためにも、音楽制作ではフラット傾向のスタジオモニターを用意しておくと安心です。

なぜDTMでは「アクティブスピーカー」が主流なのか?

スピーカーには、アンプがキャビネット内部に組み込まれた「アクティブスピーカー(パワードスピーカー)」と、外部のパワーアンプが必要な「パッシブスピーカー(ノンパワードスピーカー)」があります。

DTMでは、接続の手軽さからアクティブ型が選ばれることが多いです。
メーカー側で、そのスピーカーに最適化されたアンプが組み込まれているため、アンプとスピーカーのマッチングを考える必要がなく、接続もシンプル。比較的スムーズに“狙った音”を出しやすいのが理由です。

一方パッシブ型は、別途アンプを用意する必要がありますが、その分スピーカー本体は軽く作れる傾向があります。
天吊り設置や、サラウンド/イマーシブなど複数台のシステムを組みたい場合に選ばれることもあります。

スタジオ・モニタースピーカーの種類

選ぶ際によく目にする用語を整理しておきましょう。

ドライバー・ユニットの役割

音を直接生み出す(振動して空気を動かす)パーツを「ドライバー」と呼びます。

ツイーター

高音(トレブル)を担当するドライバーです。高音を出すには1秒間に数万回という高速振動が必要なため、ツイーターは小さく軽く作られています。素材としてはシルク、アルミ、チタン、ベリリウムなどが用いられます。

ウーファー

低音(ベース)を担当するドライバーです。低音は波長が長く、大量の空気を動かす必要があるため、ウーファーは大きく重い設計になりやすいです。
また、大きな振動板を動かすため、一般的にツイーターより大きな電気エネルギー(パワー)が必要になります。素材としてはケブラー、紙、ポリプロピレンなどが用いられます。

スコーカー(ミッドレンジ)

3Way構成などで中音域(ミッド)を担当するドライバーです。中音域はボーカルやギター、ピアノなど楽曲の“情報量”が多い帯域のため、音の輪郭や定位の分かりやすさに直結しやすいのが特徴です。
2Way設計では、この中音域の一部をウーファーが担当することが多いのですが、3Wayでは中音域専用のスコーカーを設けることで、ウーファーは低域に専念でき、より安定した中域再生を狙いやすくなります。素材としては紙、ポリプロピレン、アルミ、各種コンポジット(ケブラー系などなどが用いられることがあります。

ユニット構成

1Way(フルレンジ)設計

1つのドライバーのみで、低音から高音まで幅広い音域の再生を狙う設計です。
帯域を分割するクロスオーバーがない(または最小限)ため、位相のつながりが自然になりやすい一方、再生帯域や音量には限界が出る場合もあります。

2Way設計

帯域を2つに分割し、高音域を「ツイーター」、中低音域を「ウーファー」という2つのドライバーが担当する、最も一般的な設計です。1Wayよりも再生帯域や音量面で有利になりやすいです。

3Way設計

帯域を3つに分割し、低音を「ウーファー」、高音を「ツイーター」、中音域を「ミッドレンジドライバー」が担当する設計です。
2Wayでは1つのユニットが担当しがちな中音域を専用ユニットで受け持つことで、中域の明瞭度・歪みの少なさを狙いやすくなります。

エンクロージャー(筐体)

スピーカーの外箱(エンクロージャー)は単なる容器ではなく、楽器のボディのように音をコントロールする役割を持ちます。特にユニット背面から出る音をどう扱うかで、音のキャラクターが大きく変わります。

バスレフ型

穴(ポート)を利用して低域を効率よく増強し、サイズ以上の豊かな低音を得やすい方式です。

密閉型

ポートがなく、低音の量は控えめになりやすい一方、音の立ち上がりと消え際(スタート/ストップ)が正確になりやすい方式です。

アンプの駆動方式

アクティブ・スタジオモニターでは、各スピーカーユニットをいくつのアンプで駆動するかによって構成が変わります。
専用アンプを独立して割り当てられるほど、帯域分割(クロスオーバー)後の制御がしやすくなり、歪みや余裕度の面で有利になることがあります。

シングルアンプ

1つのアンプで左右両方のスピーカーを駆動する、最もシンプルな構成です。片側のスピーカーにアンプが内蔵され、もう片側へ電力が供給されるタイプもあります。

バイアンプ

1本のスピーカー内に2つのアンプを搭載し、たとえば2Wayならツイーターとウーファーにそれぞれ専用アンプを割り当てて駆動します。スタジオモニターでは一般的な構成です。

トライアンプ

1本のスピーカー内に3つのアンプを搭載し、3Wayならウーファー/ミッドレンジ/ツイーターをそれぞれ専用アンプで駆動します。高い精度が求められる現場で採用されることがあります。

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失敗しないための「サイズ(インチ)」選び

モニタースピーカーにはさまざまな大きさのモデルがあります。選ぶうえで大切なのは「部屋の広さ」と「スピーカー(=モニター)との距離」です。
そのため、「値段が高いから良い」「大は小を兼ねる」という選び方は、環境によっては失敗につながることもあります。

サイズ(インチ)で何が変わる?

多くのモニタースピーカーは、ウーファーの直径(インチ)でサイズを表します。
サイズが大きくなるほど物理的に低い音(低域)を再生しやすくなりますが、そのぶん大きなウーファーを正確に動かすアンプの余裕と、低音を受け止められる部屋の広さ・音響環境が必要になります。

そのため、自宅でのDTM用途ではニアフィールドモニターが選ばれるケースが多いです。目安として、下記にそれぞれのサイズ感をまとめます。

ニアフィールドモニター
コンパクトなサイズで、一般的に4〜8インチのウーファーを搭載したモデルが中心。自宅環境でよく使われます。プロスタジオでも、小型スピーカーのリファレンスとして置かれていることがあります。
ニアフィールドは、スピーカーと耳の距離が約0.8m〜1.5m程度になることを想定した設計が多く、部屋の壁や天井からの反射(ルームアコースティック)の影響を比較的抑えやすいのが特徴です。これにより、部屋の影響に邪魔されにくく、音源のディテールを把握しやすくなります。

ミッドフィールドモニター
ニアフィールドより大きく、8〜10インチのウーファーを備えたモデルが多いクラスで、2Wayから3Way構成がよく見られます。
ミッドフィールドは、スピーカーと耳の距離が約1.5m〜3.0m程度を目安として設計されることが多く、スイートスポットが広めのため複数人でのモニターにも向いています。ニアフィールドより広い周波数帯域(より低い低音域)やダイナミックレンジを確保しやすく、余裕のある鳴り方になりやすいです。

ラージフィールドモニター
10〜18インチ以上の大型ウーファーを備えたモデルが多く、3Way〜4Way以上の構成も珍しくありません。
ラージフィールドは、スピーカーと耳の距離が約3.0m以上を想定することが多く、プロスタジオのメインモニターとして採用されるケースがよくあります。距離が離れる分、部屋の音響特性の影響を強く受けやすいため、音響設計・調整が整った環境でこそ実力を発揮しやすいでしょう。

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自動ルーム補正搭載の21世紀のスタンダード

パワードモニターの多くには、環境に合わせて音を調整するための内蔵EQ(イコライザー)、ユーザープリセット、あるいはDSP(デジタル信号処理)機能が搭載されています。これらは、スピーカーが置かれる「部屋」の音響的な影響を補正し、正確なモニタリング環境を構築するために使用されます。

部屋のクセを補正

どんなに優れたモニタースピーカーであっても、適切な音響処理(吸音など)が施されていない部屋で使用すると、壁などからの反射が発生します。また、特有の音響特性が加わることで、特定の周波数が強調されたり打ち消されたりして、正確なモニタリングが難しくなることがあります。

さらに、スピーカーを壁に近づけて設置すると低音が増えやすい(いわゆる境界効果)など、設置場所による影響も出ます。壁から何cm離すべきかは製品によって異なりますが、住宅環境によっては壁近くにしか置けないケースもあるでしょう。

そのようなときに、可能な限りリニア(平坦)で正確な周波数特性をリスニングポジションに届けるために、モニター側にEQや補正機能が搭載されています。たとえば壁や部屋の隅に近い設置で低音が不自然に増えた場合に、EQで低域を抑えるといった調整が可能です。

自動キャリブレーション機能

近年、音響補正をするソフトウェアやハードウェアが定番化しつつあります。モニタースピーカーもその流れがあり、DSPを内蔵した製品が登場しています。

ご自宅で音楽制作をする場合、防音や吸音などをしっかり整備することはなかなか難しいのが現状かと思います。また、設置できる環境でも、位相ズレや定在波の影響などを詰めていくには、経験や計測が必要で手間がかかりがちです。

そんなときに活躍するのが、自動キャリブレーション機能を備えたモニタースピーカーです。多くは専用の測定マイクを使って部屋の影響を測定し、より正しくモニタリングできるように補正できます。

DTM用モニタースピーカーおすすめ4選

国内の住環境では、制作スペースが5〜8畳程度になるケースも多いため、もしその環境の場合は前述の通り、ニアフィールドモニターの導入がおすすめです。そこで今回は、ニアフィールドモニターに絞って特におすすめな機種をご紹介します。

定番機種はこちらで紹介していますので、こちらもご確認ください。

ADAM Audio D3V

ADAM Audioはドイツ・ベルリンで設立されたスピーカー専門メーカーで、もともとはプロ向けの製品として知られています。そんなADAMから、比較的手に取りやすい価格帯で登場したのが「D3V」です。

ADAMを象徴するリボンツイーターのARTテクノロジーの音質を狙い、D-ART AMTツイーターを開発。明瞭性の高い高域再生を実現しています。また、ツインパッシブラジエーターを搭載し、3.5インチながら量感のある低域も期待できます。

さらに背面にUSB-C端子を装備し、アナログ接続以外にパソコンやスマートフォンと直接つなげることも可能です。前面には入力切り換え、ミュート、左右チャンネル反転機能をコントロールできるボタンを装備。加えてDSP音響補正機能も内蔵しています。

ひとことでいうとD3Vは、小型サイズながら低域の再生力もあり、ペアで手頃。フラットで明瞭性のあるサウンドを狙える、コストパフォーマンスに優れたスピーカーといえます。

ADAM Audio Aシリーズ

ADAM Audioは、Tシリーズ、Aシリーズ、Sシリーズ(※D3Vは別系統)とラインが分かれており、一般的に後者ほど上位モデルの位置付けです。そのためAシリーズはミドルクラスにあたります。

Aシリーズのポイントは、ADAMサウンドを象徴するX-ARTテクノロジーのツイーターが採用されていること。プリーツ状の振動板をアコーディオンのように収縮・膨張させて空気を出し入れする方式で、広い指向性やトランジェントの良さを狙えるのが特徴です。

また、音響補正ソフトウェア「Sonarworks」と共同開発された点も注目ポイント。手動で周波数特性を調整できるほか、Sonarworks「SoundID Reference」(ステレオ/マルチチャンネル)と測定マイクを別途用意することで、自動補正も可能になります。補正プロファイルを本体に保存すれば、常にキャリブレーションされた状態でモニタリングできます。

Aシリーズは複数モデルがあり、ニアフィールド想定のモデルではリスニング距離の目安が短め(例:約60cm〜)のものもあります。部屋の広さや制作ジャンル、イマーシブ運用の有無などで選ぶと良いでしょう。

とくにおすすめなのが、大きさが程よい4インチの「A4V」です。

Neumann KH シリーズ

レコーディングマイクで名の知れるNeumann(ノイマン)ですが、スピーカー(モニター)も展開しています。ラインナップとしては2Wayが複数、3Wayも用意されています。

たとえば2Wayでは「KH 80 DSP」「KH 120 II」「KH 150」などがあり、いずれもニアフィールド用途として選ばれるモデルです。リスニング距離の目安は機種により異なり、KH 80 DSPは約0.8〜1.7m、KH 120 IIは1.0〜2.0m程度となりますので多くの方に選ばれています。

共通する特徴としては、歪みが少なくクリアな傾向に加え、独自技術(MMDなど)による指向性コントロールで定位が把握しやすい点が挙げられます。また部屋環境に対応するため、手動の音響調整のほか、半自動/自動の補正機能を備えるモデルが用意されています。

半自動は専用のiPadアプリで部屋の大きさや配置状況を入力して設定する方法、自動は測定用マイク「MA 1」などを用意して計測・補正する方法です。より正確に詰めたい場合は、自動補正が心強いでしょう。

4インチの「KH 80 DSP」

4インチの「KH 80 DSP」ホワイトモデル

5.25インチの「KH 120 II」

5.25インチの「KH 120 II」ホワイトモデル

GENELEC SAMシリーズ

GENELECはオーディオプロフェッショナル向けのモニタリングツールを開発するスピーカーブランドです。音楽制作向けだけでなくオーディオファン向けの製品もあり、ラインナップが豊富です。

人気シリーズとしては80シリーズ(8000シリーズ)が有名ですが、今回おすすめしたいのは83シリーズ(8300シリーズ)です。83シリーズは、80シリーズの考え方をベースに、SAM(Smart Active Monitor)システムを搭載した系統と捉えると分かりやすいでしょう(音響特性・機能はモデルにより異なります)。

GLM(Genelec Loudspeaker Manager)ソフトウェアを使用することで、自動による音響補正が可能です。使用にはアダプターと専用マイクがセットになったGLM Kit(製品名:8300-601-JP)などが必要になります。最初に揃える場合は、スピーカー2本がセットになったパッケージ(GLM Studioなど)を検討してもよいでしょう。

83シリーズには、一般的なセパレート2Wayの8300シリーズと、同軸スピーカーThe Onesシリーズがあり、それぞれサイズ違いのモデルがラインナップしています。

8330 GLM Studio カラーブラック

8330 GLM Studio カラー:グレー

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