DJを始めようとしている方から、「DJコントローラーを探している」というお問い合わせをよくいただきます。しかし、詳しくお話をうかがってみると、必ずしもDJコントローラーが最適とは言えないケースも少なくありません。
ネット上で「初心者DJおすすめ機材」として紹介されている製品の多くがDJコントローラーであり、SNSや知人から「これ使ってるよ!」勧められるのも、ほとんどがコントローラーです。
特に「オールインワンDJシステム」と「パソコン必須型(DJコントローラー)」は、初心者にとっては名前も似ていて違いが分かりづらい存在です。どちらもオンラインショップや楽器店で「DJ機材」として並んでいますが、使い勝手や実用性には大きく異なります。
この記事では、それぞれの特徴やメリット・デメリットを比較し、「自分にはどちらが合っているのか?」を分かりやすく解説します!
「DJコントローラー」ってどんなもの?
まず、多くの方がイメージする「DJコントローラー」について整理しておきましょう。
DJコントローラーは、パソコンやDJソフトとセットで使う操作用デバイスです。一般的には「DJコントローラー」や「PCDJコントローラー」と呼ばれます。
イメージしやすいようにゲームで例えると、DJコントローラーは「ゲーム機やゲーミングPC本体+ゲームソフト+専用のコントローラー」のような関係です。
本体だけでは動作せず、パソコンとDJソフトの両方が必須です。コントローラー単体では音は鳴らず、パソコンとケーブルで接続して初めて使うことができます。コントローラー自体は「ソフトウェアをコントロール」するためのもので、実際の音の再生やDJミックス・楽曲管理はパソコン側で行います。
代表的なブランドは、AlphaTheta(Pioneer DJ)、Reloop、Numarkなど。対応する主なDJソフトは、Serato DJやrekordboxがメインです。
上位機種になるほど、本体に曲情報などディスプレイが搭載され、本体だけで操作できる機能も増えます。つまり、価格が上がるほどPC画面を離れてプレイしやすくなります。

「オールインワンDJシステム」ってなに?
一方で、「オールインワンDJシステム」と呼ばれる機種は、パソコンや外部機器をほとんど必要とせず、これ1台でDJプレイが完結する機材です。ミキサー・デッキ・エフェクトなど、従来は複数の機器が必要だったパーツが1つにまとめられているため、セッティングも非常にシンプル。
楽曲をUSBメモリやSDカードに入れるときのみパソコンで入れる必要がありますが、あとはその音楽ファイルが入ったメモリを本体に読み込ませるだけでOKです。なかにはネットワーク接続に対応し、サブスク音楽配信サービスと連携してDJできるものも登場しているので、それであれば、スマホさえあれば完結できるパソコンをまったく使用しないモデルもあります。
一般的には「DJシステム」や「スタンドアロンDJ機器」とも呼ばれます。本体だけで音の再生・DJミックス・楽曲管理が可能で、多くの機種で波形や曲情報も本体ディスプレイに表示されます。
オールインワンDJシステムの代表的なブランドは、AlphaTheta(Pioneer DJ)、Numarkなどです。

メリットとデメリット
以下ではDJコントローラーとオールインワンDJシステムの一般的なメリット、デメリットの一部をご紹介します。製品の性能によっても変わるので一概にはいえませんがそういった傾向があるという程度でご理解いただけたらと思います。
DJコントローラーのメリット
- 既にパソコンを持っていれば、低価格でDJを始められる
- iPadなどタブレット対応モデルもある
- 機種や価格帯のバリエーションが豊富
- ライブラリ(楽曲)の管理が容易でPCの柔軟性を活かせる
- 高価格帯は機能が豊富で応用が利く
DJコントローラーのデメリット
- パソコンとDJソフトが必須
- パソコンの設定や基本的な知識がある程度必要
- トラブル(認識しない等)が起こりやすい
- パソコンやソフトの定期的なアップデートが必要(OSやスペック不足で使えなくなる可能性あり)
- 外での使用時はパソコンとコントローラーの両方を持ち運ぶ必要がある

オールインワンDJシステムのメリット
- パソコンがほぼ不要で1台でDJが可能
- 多くの機種はPCと接続してDJコントローラーとしても使える
- トラブルが少なく、現場でも安定して使える
- パソコン画面を見続けなくて良い(集中できる)
- クラブ標準のDJセット(DJプレイヤー&DJミキサー)に近いレイアウトで練習できる
オールインワンDJシステムのデメリット
- 一般的に高価格帯(10万円以上〜)
- 大幅な機能進化や性能向上の際は本体ごと買い換えが必要
- 楽曲管理や細かな編集はPCに比べ簡易的

2つの違いを一目でチェック!比較早見表
DJコントローラーとオールインワンDJシステムの違いを簡単にまとめた比較表です。
DJコントローラー | オールインワンDJシステム | |
---|---|---|
パソコン | 必要 | プレイ時は不要 |
DJソフトウェア | 必要 | プレイ時は不要 |
セッティング | パソコンとソフト設定が必須 | 本体のみ |
現場(クラブ/舞台)再現性 | クラブ機材と違う機種も多い | 近い機材が多い |
可搬性 | PCも持参必要 | 本体のみ |
曲の管理 | 柔軟に対応 | 不得意 |
トラブル頻度 | やや高め | 低め |
価格帯 | 1万台~ | 約10万~ |
どんな人にどっちがオススメ?
コントローラー派
- パソコンをすでにお持ちで予算を抑えて始めてみたい
- パソコン操作に慣れている・得意
- パソコンの定期的な買い替えやメンテナンスができる
- 楽曲編集やプレイリスト管理はパソコンで柔軟にやりたい
- DAWとの組み合わせや自由度の高いDJスタイルを目指す
オールインワンDJシステム派
- パソコン作業が苦手、いちいちパソコンを開きたくない
- なるべくシンプルでトラブルが少ない環境を求める
- 本体1台で完結するスタイルが理想
- クラブなど現場基準で練習したい
- プロが現場で使う機材に早く慣れたい
まとめ
DJコントローラーはパソコン必須で、機能の多くはDJソフトウェアに依存しています。高価格帯の機種ほど、本体で直接操作可能な機能が増えたり、ディスプレイが搭載されたりします。言い換えれば、パソコン画面を見なくてもDJできるモデルほど高価になります。
▼ 低価格のDJコントローラー

▼ 高価格のDJコントローラー

一方、オールインワンDJシステムはパソコン不要で本体だけでDJプレイが可能です。その分、面倒なパソコンの設定やトラブルから解放され、より直感的かつスムーズにDJに集中できるのが大きな特色です。また、オールインワンDJシステムの価格差は主に操作性やパフォーマンス性の高さに表れます。
たとえば本体の操作パネルやディスプレイ、エフェクト、波形表示などの使い勝手が向上し、プロの現場に近い感覚で操作できるモデルほど価格が高くなります。一方で、拡張性に関しては、パソコン+DJソフトウェアの方が豊富な場合も多い点には注意が必要です。
▼ 低価格のDJシステム

▼ 高価格のDJシステム

「DJ機材=コントローラー」と思っていた方も、オールインワンDJシステムの特徴を知ることで、自分に最適な選択肢を検討できるようになります。
DJコントローラーは優れた入門機ですが、オールインワンDJシステムの特徴を知ったうえで選ぶことで、より満足できるDJライフをスタートできるはずです。
なお、ここで紹介した内容が全てのDJに当てはまるわけではありません。自分が目指すスタイルや用途によって最適解は異なります。ぜひ実際に店頭で機材に触れて最終的な判断をしてください。
