【録れコン2018】リプロダクションレポート

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【録れコン2018】リプロダクションレポート

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2018年7月20日(金)録れコン2018グランプリ受賞作品「STEAM」(CrimsonAir)のリプロダクションが、東京港区芝公園にあるレコーディングスタジオ「Sound City」Annex T2 Studioにて行われました。
近年のグランプリ受賞作品としては珍しい、アップテンポの楽曲「STEAM」が、プロの手によってどのように変化していくのか、画像・動画を交えてお届けいたします。

パーソナル

アーティスト:CrimsonAir

  • 玲桜(作詞,作曲,ヴォーカル)
  • Rikuro.A(作曲,編曲,ヴォーカル以外のすべての楽器)

エンジニア:鎌田岳彦 / 中澤智
ギタリスト:ケリーサイモン

1.準備編

01.打ち合わせ

グランプリ特典である『リプロダクション』を実施するにあたり、何をすれば「STEAM」がより良くなるかをエンジニアの鎌田氏・中澤氏、録れコン事務局が本人の要望を踏まえ、事前に打ち合わせます。
総合的に検討した結果、すでに作品として完成されているので、今回のリプロダクションは、ソロでフィーチャーされているキーボードをギターに差し替えることが面白いのではという案が浮上し、楽曲の雰囲気にピッタリのギタープレイヤーを検討しました。
そこで、当社でも縁の深い”超絶ギタリスト”ケリーサイモン氏にギターソロをお願いし、楽曲をさらにブラッシュアップするという方向性が固まりました。

※リプロダクションの方向性決定までのプロセスは、レポートの終わりにCrimsonAir氏エンジニア鎌田岳彦氏エンジニア中澤智氏のコメントがありますので、そちらをご参照ください。

すごい展開になった今年のリプロダクション。いったいどのようになるのでしょうか?

02.リプロダクション当日

7月24日(日)10:00、「Sound City」Annex T2 Studioに到着!!目の前には東京タワー!熱いです!

東京タワーのすぐ前のビルの地下2階に構える「Sound City」Annex T2 Studio。
Sound City Annex T2 Studio
ヴォーカルダビングなど、幅広い録音作業に対応! コンソールにSSL4000Gを常設。占有ラウンジを有し、落ちついて録音に取り組むことの出来る環境です。数々の有名な楽曲がこのスタジオでレコーディング、ミックスされてきました。細部まで妥協なくチューニングされたモニター環境により、作品をしっかりと確認することが出来ます!!

コントロール・ルーム
スタジオ
ウェイティングルーム

こんな贅沢なスタジオで行われるリプロダクション。トッププロが使用するレコーディングスタジオでプロのプレイヤー、エンジニアによって「STEAM」が変貌していく様子をぜひ一緒にお楽しみください!

03.本日の説明~オリジナルトラックの確認

11:00 CrimsonAirのお二人、エンジニアの鎌田氏、中澤氏がそろい、録れコン事務局より本日の流れを説明します。

その後、オリジナル音源をスタジオのモニター環境で確認。
まずはオリジナルの音源を確認しましょう!

04.ケリーサイモン氏到着

そこにケリーサイモン氏が到着!
準備が一通り済んだら、ケリーサイモン氏も加わり、打ち合わせをしていきます。

Kelly SIMONZ(ケリー・サイモン) 1970年7月1日大阪生まれ。
14歳でギターを始め、17歳でラウドネスのオープニング・アクトに抜擢。高校卒業後にハリウッドの音楽学校MIに入学。在学中よりバンドやセッション・ワーク活動を積極的に展開する。
帰国後、1998年に自主制作アルバム『Sign Of The Times』をリリースし一年間で約1万枚のセールスを記録。翌年ソロ名義の『Silent Scream』、2002年にはKelly SIMONZ’s BLIND FAITH名義の2ndアルバム『The Rule Of Right』を世界リリース、グレン・ヒューズとジョー・リン・ターナーのオープニング・アクトとしてヨーロッパ・ツアーを敢行。
2003年よりESP/MIジャパンの特別講師に就任、2009年『超絶ギタリスト養成ギプス』を発刊。
2014年に『BLIND FAITH』を発売。NAMMショウやMusic CHINAなど数々の楽器フェアでもメーカーのデモンストレーターを勤め、ギタークリニックも好評。2015年に「AT THE GATES OF A NEW WORLD」、2017年に「OVERTURE OF DESTRUCTION」をリリース。
ケリーサイモン公式HP https://www.kellysimonz.com/

 

2,レコーディング編①

05.機材紹介 その1

ギター

  • Charvel Custom Shop製「SAN DIMAS 2H」

  • ESP カスタムST


アンプ

  • Marshall 「1987JTM50(50w)」1973年製

  • Marshall 「1960B」

エフェクト

  • Headrush Pedalboard

ギターキャビネットにマイクをセッティングします。
エンジニア中澤氏はスピーカーのエッジに向けてセッティング。サウンドの広がりを録音するため、マイクは2本セッティング。
ギターアンプ マイキング

楽器録音用マイクとして定番のSHURE 「SM57」、バスドラムの録音によく使われる Audio-Technica 「ATM25」を採用。2つの周波数特性の異なるマイクを使って録音することによってより広いレンジでの収音が可能。

写真 (奥)SHURE SM57、(手前)Audio-Technica ATM25

05.機材紹介 その2

今回の録音セッティングです。
マイクに入った信号はコントロールルーム内のNEVE 「1073(vintage)」に入力。
※ Universal Audio 「UAD Unison NEVE 1073 PREAMP&EQ」 や WAVES 「SCHEPS73」、などのプラグインでもシミュレートされている NEVE 1073 の実機です。
(Vintage品のため現在入手は困難となります)

その信号はPro Tools HDX システムに入力。

カードは MAGMA 「ExpressBox」を経由しサンダーボルトで接続。
マシンはApple「Mac Pro」。(Protoolsのバージョンは12.7)

3,レコーディング編②

06.ギターレコーディング開始

まずはウォーミングアップで楽曲に合わせてプレイ。
ギターレコーディング

ケリーサイモン氏との事前の打ち合わせではレコーディングの時間は2.5~3時間、内容はギターソロの差し替え、その他、アイディアがあればお試しいただきたいとお伝えしておりました。
そこでいきなりバッキングを弾きだしたケリーサイモン氏。
少ない時間の中でもケリーサイモン氏はバッキングを含めた全ギターパートをしっかり準備していただいていました。
限られた条件の中で、最大のパフォーマンスを発揮する、まさに超絶ギタリスト!
楽曲を制作したCrimzonAirのお二人もその”超絶”なプレイに感動していました。

そして、いよいよ本番です!
BPM190を16分音符でたたみかける非常に速いテンポの曲ですがバッキング、ソロともにほぼ1発で決めていただきました。まさに”超絶”です。
実際のレコーディングの様子です。

今回のギターバッキングは、左右でタイプの違う2人のギタリストが弾いているというイメージでレコーディング。まったく同じプレイを録るのではなく、細かいニュアンスの違いでサウンドに広がりが出ました。
また、2番のBメロでのワウペダルを使ったアプローチはケリーサイモン氏のアイディア。楽曲にアグレッシブなノリが加わります。
オリジナルの楽曲がもつ世界観はそのままに全編にわたってケリーサイモン氏のギターが炸裂した、ナイステイクをいただきました。

録音という作業を繰り返していくと、自分の楽器演奏の技術のレベルを客観的に感じることができます。
レコーディング中、「今日の自分の実力は、昨日までの実力。今日がんばっても無理。今できる限りのことやる」とケリーサイモン氏。
自身のプレイを見直し続け、研鑽をつんできたケリーサイモン氏の言葉から、”超絶”プレーの源は日々のたゆまぬ楽器練習だということがひしひしと伝わりました。

4,MIX〜アドバイス編

 

07.MIX開始

ここからは毎年好評をいただいている録れコン・リプロダクション名物!「プロのミックスをプロのエンジニアが解説するコーナー!」です。
昨年までは鎌田氏がリプロダクションのミックスを行っておりましたが、今回はサウンドの傾向から、バンドのミックスをメインに行っている中澤氏がミキシング・エンジニアを担当。

中澤 智。1970年生まれ。長野県出身。
1991年に株式会社サウンド・シティに入社。以降CM、劇伴、バンド等、レコーディングエンジニアとして、メジャー・インディーズを問わず数々の作品に参加。2001年 フリーランスとして独立。2011年に株式会社サウンド・シティに再入社。
現在、株式会社サウンド・シティ オーディオ技術部部長。レコーディングエンジニアとしての仕事をこなしながら、レコーディングスタジオの運営、管理など忙しい日々を送っている。

08.レクチャー

鎌田氏は中澤氏が何を考えてどのようにミックスを構築していくのか、作業されている実際の画面を前にアマチュアの方にもわかりやすく解説してくれます。

写真 手前よりCrimsonAir 玲桜、Rikuro.A、鎌田岳彦氏

鎌田 岳彦 プロフィール

鎌田 岳彦。北海道出身。
10代の頃は音楽の勉強に明け暮れ、音楽大学卒というエンジニアとしては珍しい経歴を持つ。
音楽的な視点から全体のサウンドを思考できる、独特なワークスタイルを持つエンジニア。作家やバンドメンバー、ミュージシャンとのコミュニケーションを大切に考え、アイデアを出し合い一緒に作り上げるスタイルで、楽器やヴォーカルのピッチ、リズムのチェックやディレクションなど、スタジオワークにおいて多くのミュージシャン、アーティストの信頼を得ている。
また、ビンテージを含む、マイクロフォン・エフェクターのアナログ録音機材にも造詣が深く、大胆な選択でより本格的・個性的なサウンドを生み出している。
関わった作品は、アーティストのアルバム、映画やTVドラマ等、非常に多岐にわたる。音楽雑誌(サウンド&レコーディングマガジン)等で、録音機器の使い方等のレクチャーや新しい機材のレビュー等も20数年執筆継続中。

リプロダクションは限られた時間の中で2ミックスまで仕上げるためスピードが要求されます。
ヴォーカルトラックのオートメーションなど時間のかかる作業はもちろん、あらかじめ作業効率をアップさせるために様々な工夫をしています。

作業に取り掛かる前にあらかじめ、Bus(楽器をまとめたり、リバーブなどのプラグインをかけたりするためのトラック)を作成します。
ProToolsではAUX入力トラックを作成し、ドラム、ギター、ストリングスなどの楽器をまずまとめ、さらにそれら全体をインストルメントとしてまとめています。その後、複数トラックに対して、ボリュームコントロール、エフェクトのインサートなどを行います。
VCAマスタートラックは、複数トラックのボリュームを一括で調整するために設定しています。
※ミックスしている際に各トラックのボリュームを上げていくとトータルのボリュームが上がってしまい、各トラックのボリュームすべて下げなくてはいけないといったことを避けるためです。(アナログコンソールのVCA(Voltage Controlled Amplifier)と同じ役割として使っています。)

右のあずき色のトラックがインスト、ヴォーカルなどまとめたトラック。左の深青のトラックがVCAトラック。
ドラム、ギター、ヴォーカル、ストリングスなどは緑のトラックにまとまっています。

チャンネルストリップに WAVES SSL4000 を使用。実機を使い慣れているので使用しているとのことです。
基本的にはほぼすべてのチャンネルにWAVES SSL4000をさし、ある程度の音作りをし、「ガッツ」の欲しいトラックには音が太くなる感じがする NEVE をさします。
「本当はNEVE育ちなのですべてNEVEで行きたいところなんですが、最近入れたばかりのプラグインなのでマシンパワーの兼ね合いなどを含め試しているところです。(中澤氏談)」とのこと。

こちらはBrainworx 「bx_console N」。中澤氏お気に入りのNeve VXSコンソールをモデリングした、チャンネル・ストリップ。

ボーカルトラックに関しては、あらかじめAメロ、Bメロ、Cメロでトラックを分けていました。これは各セクションに対して、ミックス時にトラックのボリュームや、インサートエフェクトなどをAメロもしくはBメロのみにかけるなど直感的な作業ができるように配慮したとのことでした。

ベース、ドラムと低音成分から音作りしていきます。その後、ギター、ピアノ、ストリングスなどを上物をのせていきます。
コンプレッサーはあまりかけずに、基本的にはボリュームで調整。

コンプレッサーについて「トータルのコンプやリミッティングは、全体の音量を飛躍的に大きくする事ができますが、使い方を間違えると、バランスや奥行き感・立体感が無くなる、平坦なサウンドになり、歪み過ぎて”うるさい”音色になってしまいます。世界的に音圧を上げすぎない規格(ラウドネス規格)もあるので、現在は深くかけすぎない方向になってきています。」と鎌田氏。

今回の録れコンの応募作品でも、音圧を稼ぐためにコンプレッサーやリミッターをかけすぎている音源というものが全体的に多く聴かれました。
前に出てこないサウンドをコンプレッサーやリミッターで聴こえるようにするのではなく、倍音などを含めた、ピッチ調整などができているという前提でボリュームを上げて調整する。現在は、より原音を生かしたサウンドが主流とのことです。

Rikuro.A氏も「今回のMixについて私が感じた感想としては”なんでも潰せばいいってもんじゃない”という点で、Mixは原音を活かしたバランスで構築されてました。
シンバル類とストリングスの音量バランスを交代させるような感じに調整しただけで、随分と高音域がスッキリし、その結果として他のパートもより明瞭に聴こえるようになったのは目からウロコでした。」と得るものがあったようです。(詳細はコメントにて)

話を戻しまして、インスト部分のミックスがすすんでいく中、はじめは気にならなかった細かい部分が浮き彫りになってきました。
まず、ギターユニゾンのフレーズのタイミングを修正し、その部分のボリュームをアップ。

サビのストリングスのボリュームを調整。2 サビの最後のヴォーカル”傷つけてしまう”の部分がもたっているのが気になる、というところで、修正。

この後、イントロのギターの入り方をいろいろ議論しながら決定!
ほぼミックスが完成しました。

リプロダクションはアーティスト、エンジニアが同じスタジオでリアルタイムでコミュニケーションをとりながら進めていけることが醍醐味。気になる部分があったら、その場で修正して、どっちが良いかを聴いてみる。結果として、修正する前のほうが良かったので戻しましたが、そうしたトライ&エラーを重ねることによって自分たちの音楽のベストなサウンドが決まっていきます。

09.確認〜修正

中澤氏によるMIXが完了。楽曲全体の確認をします。その後、各々が気になる点を確認し、修正していきます。

最後まで妥協せずに完璧なサウンドを追求します。

10.最終確認

ANNEX T2スタジオのメインスピーカーはYAMAHA 「NS10M Studio」。生産は完了していますが、現在でも定番モニターとして数々のスタジオで活躍している名機です。

アンプは AMCRON 「PSA-2」

VICTOR のミニコンポ 「EX-AK1」。

最後まで確認したところ、”傷つけてしまう”が大きくて気になるということでラジオボイスのような感じにしたら・・・というアイディアが。試してみます。

いい感じに仕上がったのでこれは採用!
その他気になる点を各人出し切り、最終チェック。

最後の最後まで集中して聴きます。

11.お疲れ様でした

時間は21時に。あっという間に1日が終わってしまいました。皆さん本当にお疲れ様でした!!

今回のメンバーショットです。

写真 手前左よりケリーサイモン氏、CrimsonAir

外はすっかり真っ暗に。東京タワーのイルミネーションがきれいでした。

5,リプロダクション完了~コメント

グランプリ楽曲『STEAM』はどのように変わったのでしょうか?聴いてみましょう!
リプロ後

「STEAM」のリプロダクションバージョンは「STEAM type Edge」として各配信サイトにて配信中!!
ケリーサイモン氏の超絶プレイで生まれ変わった「STEAM type Edge」CrimsonAir Feat. KellySIMONZ をぜひチェックしてみてください!!

▼STEAM type Edge のフルバーションはこちら

12.リプロダクションを終えて

CrimsonAir

Rikuro.A(あずまやりくろう)氏(写真右) コメント 》
CrimsonAir 玲桜(レオ)氏(写真左) コメント 》

中澤 智氏

中澤 智氏 コメント 》

鎌田 岳彦氏

鎌田 岳彦氏 コメント 》

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