【録れコン2018】リプロダクションレポート コメント

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鎌田 岳彦氏 コメント

「CrimsonAir」さんグランプリ受賞おめでとうございます。”アニメの主題歌”を想定しての楽曲。イントロから1stコーラスまでの曲の長さまで全て計算された作品で、緻密なアレンジ・楽曲の構成・完成度など審査員の評価が高い作品でした。グランプリ受賞決定を受けて、リプロダクションの打ち合わせ5月6月と数回重ね、作品を改めて聞き直し細かな分析と印象そして、リプロダクションを想定した作業の確認、具体的な作業内容を意見交換。

  • パート(特にサビパート)による、バックトラックの楽器・フレーズが、よく聞こえ無い。
  • 歌の歌詞・コーラスのフレーズが聞き取れない。
  • 楽器の数が多いパートのアレンジの確認・バランス調整。
  • エンディングがあっさりしているのでは…

各トラックの状況は、我々が心配していた以上のクオリティーで、まずは一安心。おそらく、トータルを含めたリミッター・コンプの使い方が、ちょっとハードかな。特にアレンジで楽器の数が多くなる”サビ:パートは、音場が潰れまくっていたのが原因。音量のコントロールとトータルのエフェクターの使い方で、かなり改善される状況を皆で確認。そこから、例年通りリプロダクションのアイディアをディスカッション。

  • リズムトラックの打ち込みの補強(一部差し替え)またはリズム(Dr/Bass)の入れ替え
  • ストリングストラックの音色の変更(差し替え)または生弦に差し替え
  • イントロ・エンディングのリアレンジ、構成の変更。
  • 唄・コーラスの入れ替え(録音)
  • ギタートラックをリニューアル・間奏のソロの差し替え(ギターかな)

と、アイディアだけはいろいろとでましたが、作業時間・予算の範囲で何ができるか・誰にお願いするのか等、なかなか決まらず。CrimsonAirさん達からも、ストリングスのアレンジや音色・コーラスパートのクオリティーなどの相談・リクエストもありましたが、それぞれ楽曲のアレンジ構成上、かなりサブ的な要素なので、ミックスでの調整でフォローする事に。結果、ギターを”ケリーサイモン氏”にソロパートの入れ替えを主に、相談する方向で、リプロダクションの基本コンセプトが決定。

例年リプロダクションは私がエンジニアを担当していましたが、中澤氏は普段から近いジャンルを多くやっている事もあり、今回は中澤氏にお願いして私はフォローする側(例年の逆の立ち位置)に。当日までの作業の配分を確認して打ち合わせは終了。

7月20日リプロダクション当日。

今回は、サウンドシティーの Annex T2 スタジオでの作業。午前中にスタジオに入り、簡単な確認と進行の打ち合わせをした後リプロダクションの始まりです。

中澤氏が事前にやってきたプリミックスを聞いて確認・準備している中、タイミング良くケリーサイモン氏がスタジオに。我々からのお願いは、最低限ソロとリフ等現在あるトラックに重ねるつもりでしたが、ケリーサイモン氏は全曲のバッキングを準備してくれていて、バッキングトラックの差し替えからの録音に。楽曲の進行・アレンジを理解する上で、この作業は大事(サイモン氏弁)ほぼ”暗譜”状態での演奏に。バッキングを左右 2人分録った後、幾つかのリフや間奏のバッキングを録って、かなりアグレッシブなバックトラックが完成。間奏のソロパート録音後、エンディングのギターと、イントロのフリーソロのパートを録音。
これらは、オリジナルには入っていないトラックで、現場でのヘッドアレンジで新たに足したトラック。録音前は楽曲の構成、特に間奏長さの物足りなさを感じていましたが、ギターを録ってみると構成を変える事なく聞き応え十分だったので、基本的にオリジナルの構成・進行のままで行く事に決まり、無事ギターの録音が終了しました。

さて、ミックスの作業に!ここから例年の中澤氏のように、ミックスの説明をする予定でしたが、予想以上ミックス時のモニター音量が大きいので、会話が聞こえない(苦笑)最低限の説明になってしまいました。

プリミックスもしてあったので、順調にミックスが進行。楽器別の音量など細かなバランスや、ソロやエンディングのギターの音量など幾つかの修正と、イントロ前に、フリーで弾いていただいたギターソロのタイミング。最後に間奏前の歌のギミックをして、無事終了!お疲れさまでした。

楽曲の世界観をよりワイルドにしたギターのダビングは、想定以上の結果になったでしょうか。
レコーディング作業は、打ち合わせ・録音・ミックスと、各シーンでの”やり取り”次第で、楽曲の世界観・作品の奥行きが大きく広がる場です。そんなプロの現場の一コマを切り取った現場でしたが、CrimsonAirのお二人、どう感じてもらえたかな?

実は今回、仕事でスタジオのミキサーの席以外にいる事が、ほとんど無い事に気がつき、今ひとつ居心地が悪い。おそらく中澤氏も私が後ろにいるのは、さぞかしやり辛かったであろう(苦笑)。当日の東京は気温は32℃越えの晴天!北海道から来た2人には記憶に残る夏の日になった事でしょう。

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