【録れコン2018】リプロダクションレポート コメント

  • ブックマーク
【録れコン2018】リプロダクションレポート コメント

記事中に掲載されている価格・税表記および仕様等は予告なく変更することがあります。

中澤 智氏 コメント


まずは、CrimsonAir さん、グランプリおめでとうございます!また、リプロダクションお疲れ様でした!
今年も審査会から参加させて頂き、多くの優秀作品を聞く事が出来ました。毎年の事ながら、録音機器の進歩の早さに遅れることなく、様々なツールを使いこなし、素晴らしい楽曲を完成させる、本当に関心させられます。その中でも「STEAM」は、楽曲、音質共に完成度が高く、グランプリとして納得出来る作品でした。
リプロダクションに向け、マルチトラックラックを頂き検証。鎌田氏のスタジオにて、2ミックスでは、わからない確認出来ないトラックをリプロダクションメンバーで検証し、打ち合わせを行いました。今回も、色々なアイデアがでました。「ストリングスを生にする」「Voを差し替える」「ギターを差し替える」等々。
結果今回は、CrimsonAir さんの確認もとり「ギターを差し替える」事に決定しました。ギタリストも楽曲に最適な「ケリーサイモン」さんにお願いする事が出来ました。決して、グランプリ作品の、ギターのプレー、フレーズ、音色が悪い訳ではなく、完成された作品に、プロによる新たなテイストを加えたいと言う事が、差し替え理由です。
メインミキサーは、私が担当する事になりました。「STEAM」は、完成された作品ですが、私なりに、良い所は更にブラッシュアップ、補正したい所箇所を検証、曲構成はどうか? 簡単にですが、リプロダクション前にプリ・リプロダクションを行いました。プリ・リプロダクションを行うに辺り、倍音が特に多い歪み系ギターが差し変わる事は決まっているので、事前の仕込みは余り詰めないようと決めていましたが、、、。

  • 音圧を落とさず、ダイナミックス感を出す。(立体感を出したい)
  • 各トラックをもう少し鮮明に。(分離を良くしたい)
  • Voの聞き取りにくい箇所を修正する。(別トラックがあれば差し替えも検討)
  • 全体的に少し平坦に感じた。(ギターを差し替える事により良いグルーブ出れば)
  • Soloセクションが短いのでは。倍にしてみてばどうなるか?(キーボードSoloからギターSoloへ。または、キーボードSoloを無くし、ギターSoloを長くするか、、、。)

結果、各トラックを検証すると、トータルのコンプが無ければ、見えなかった音も見える様になり、整理されたトラックという事がわかりました。
私自身目指すところは、オリジナルの「STEAM」を余り意識せず、リプロダクションとして完成された「STEAM」を目指そうと思っていました。勿論、CrimsonAir さんとのディスカッションで、お互い、納得のした作品を目指す事は必須ですが。
当日を迎えました。まずはギター録音から。
事前にケリーサイモンさんに、音源、譜面等をお渡ししてあったので、録音はスムーズに行われました。CrimsonAir さん、ケリーさん、私含めリプロダクションスタッフと、フレーズ、音色等のディスカッションを重ね、差し変わるトラック、足されたトラック。着々と新たな作品として生まれ変わって行きました。

ケリーサイモンさんのセットは、アンプ「 Marshall」と「Headrush pedalboard (Lineステレオ)」。ギター2本。Marshall には、SHURE SM57 + Audio-Technica ATM25 を使用しました。特に歪みギターは倍音が多く楽曲を大きく左右するので、全て別トラック(4ch)に別けて録音しました。録音時はMarshallとHeadrush pedalboardをフレーズごとに、ある程度の完成図を予想しながらブレンドしてモニターしていました。
現在、様々なシミュレータが有りますが、セッティングがいまいち、、、。このバックトラックには、、、。と現場では良くあります。ケリーサイモンさんのプレーもさることながら、Headrush pedalboard のセッティングは、楽曲を理解した素晴らしいトラックでした!
懸念していた、Soloセクションもサイズを変えず、キーボードSoloがギターSoloに変更になりましたが、全く違和感がなく流石のプレーでした。後は、事前から考えていた、追加トラック (ギミック用?不採用の可能性有り) の素材を頂き録音終了となりました。
ここから、Mixに入ります。プリ・リプロダクションはしてありましたが、録音時には、DAWの都合上(遅延補正)外していたプラグインを少しずつ復活させ、まずは、ドラムから。
ん~、予想はしていましたが、やはりベーシックのサイドバッキングが変わると、そのままでは適用出来ず、速攻修正を。
軽くVoも乗せてみましたが、ん~。私としては、ソリッドなギターサウンドを目指していたので、特にバッキングギターが重く、グルーブも変わり、余り音色を触りたく無かったので、ドラムの補正、ベースの補正をするに辺り、バッキングギターを早い段階で調整していきました。なるべく重心を下げつつも、中低域のたまりを無くす。あまりコンプ感は出したくなかったので緩めに。ギターは、4chバラに録音してあったので、パートごとバランスを調整しました。
次にピアノ、ストリングス。高域を補正。生感を出したかったので、ソリットにせず。インストを作りながら、時々ボーカルを確認。この段階で、トータルEQ、コンプをかけました。
現在、音圧競争?は、ある程度無くなって来ていると思っていますが、トータルのトリートメントも含め少しずつリミッターを強めていきました。あくまでもナチュラルに。

ボーカル処理に入ります。
仕込み時よりかなりプラグインを外しナチュラルに聞こえる様に。各セクショントラックを分け、微妙にEQ、コンプ感、リバーブ、ディレイ感を変えています。トラックを別けずに、オートメーションで処理する時もありますが、トラックに余裕があったので、直感的に補正したかった為です。
後は、FX系など出しバランスを調整。ここから、各トラックのボリューム書き込み。特にボーカル群は、私の中では、一番時間がかかるので、事前にある程度は書き込みを加えていましたが、再度修正。更に子音が聞き取りにくい箇所は、別テイクを子音のみ切り替え、ボリューム処理を行いました。
ギター、ストリング、ピアノもテーマフレーズ、美味しいフレーズを強調し、メリハリ、躍動感を。Soloギターも頭つき、低い音階フレーズは持ち上げ、ラストの白玉はボーカルと被るので少し下げめに等、かっこよく、スムーズな流れに。
最後に追加トラック(ギミック用?)に素材として録音しておいた、ギターをはめ込み、デスカッション時間に移しました。CrimsonAir さん、リプロダクションスタッフの意見を聞き、再調整。自分では、少し悩んでいた箇所など、解消されて行きました。

一番時間がかかったのは、新たに加わった冒頭のギター処理。楽曲の掴みのなので、スタート位置、ボリュームカーブ。何パターンか試しました。このては好みもあり正解もないので、何パターンか試し決定。
最後にCrimsonAir さんより、一部Voギミックの提案が有り、エフェクト処理。プラグインもCrimsonAir さんが、何時も使っている物を聞き、微調整。(恥ずかしながら、簡単な微調整方法を教わり汗、、、。)ミックス後半は、小さな音量で最終的にバランスをとることが多いのですが、聞こえない箇所、低域のトラックなど、上げすぎていないか? スピーカーや音量を変え、各所破綻していないか、全帯域のバランスを含めチェックしました。同時にトータルエフェクトも調整。無事Mix終了となりました。

最近では、ネットでの確認→修正→確認→修正、、、。修正返答の時間もはっきりせず、、、。と言う案件が多くあります。現在のインフラ事情、録音機器の進化の為対応可能ですが、制作費削減為、スタジオに関係者を集めての、録音、Mixが減って来ているのは事実です。
働き方改革も含め、移動時間も減らせ、待っている時間は他の作業が出来る。今の時代には、逆に利用しないとおかしいかもと思います。しかし、リプロダクションの良さは、関係各位が一同に集まり、録音からミックスまで、直接デスカッションが出来ます。今回は、整理されたトラックに、ギター差し替え、追加トラックを加えてのからのミックス。

CrimsonAir さん、ケリーサイモンさん、リプロダクションスタッフと共に面と向かって、デスカッションが出来る事は、本当に重要だと感じました。方向性など直ぐ相談出来、新たなアイデアによる、化学反応も生まれます。
各担当者が、スカイプの顔色でなく、本当の顔色も伺いながら、直接話しが出来る。逆に時短に繋がるのでは。また、制作過程での個々のコミュニケーション能力も上がるのでは。結果、ネットのやり取りより、時短に繋がる案件は多くあると思います。これからは、更に便利に使いやすい、ネットによるワークフローが当たり前の時代になるでしょう。今後のリプロダクション、録れコンの方向性にも、影響してくると思います。

話しは、それてしまいましたが、エンジニアして、皆さんのお陰で、新たな「STEAM」が完成出来た事を心より感謝してます。
CrimsonAir さん、鎌田氏、事務局の方々、ご意見あってこその、リプロダクションでした。本当にお疲れ様でした!
また来年も、皆さんの作品に出会える事を楽しみにしています!

⇒録れコンリプロダクション2018 へ戻る

  • ブックマーク