「自分の声に合うマイク」ってどう探すの?自分の声に合うボーカルマイクを見つけるヒント

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「自分の声に合うマイク」ってどう探すの?自分の声に合うボーカルマイクを見つけるヒント

記事中に掲載されている価格・税表記および仕様等は予告なく変更することがあります。

楽器店で10年間接客をしていると、
「○○さん(大好きなアーティスト)が使っているから、このマイクが欲しいです」
というご相談をよくいただきます。

もちろん、見た目や憧れから入るのはとても素敵なことです。「この機材を使いたい」と思える気持ちは、歌や練習のモチベーションにもつながります。その意味では、マイク選びのきっかけとして決して悪いことではありません。

ただし、ボーカルマイク選びではひとつ大切な前提があります。
それは、好きなアーティストと同じマイクを使っても、自分の声まで同じになるわけではないということです。

声は、体そのものが楽器です。顔立ちや骨格、声帯の特徴、息の使い方、発声のクセによって、同じマイクでも聞こえ方は大きく変わります。つまり、マイクには「良い・悪い」だけでなく、自分の声との相性があります。

そのため、「憧れのアーティストが使っているから」という理由だけで選ぶと、思っていた音と違って戸惑うこともあります。もちろん、デザインや所有感を重視して選ぶのもひとつの正解です。ただ、購入前に“自分に合うマイク”という視点も大切だと知っておくと、失敗しにくくなります。

この記事では、マイク選び初心者の方に向けて、
自分に合う1本を見つけるために最初に知っておきたいポイントを分かりやすくご紹介します。

自分の声に合うマイクを選ぶには、まず「スタイル・用途・環境」を整理しよう

「自分の声に合うマイク」と言われても、最初はなかなかイメージしにくいですよね。
そこで、まず確認しておきたいのが次の3つです。

1. スタイル

まずは、どんな形で歌うのかを考えてみましょう。

  • バンドボーカル
  • ソロボーカル
  • 弾き語り
  • 配信や宅録中心

同じ“歌う”でも、編成やパフォーマンスの仕方によって、向いているマイクは変わります。

2. 用途

次に大切なのが、マイクを何に使いたいのかです。
大きく分けると、主な用途は次の2つです。

  • ライブ用
  • 録音用

ライブでは、ハウリングの起きにくさ、丈夫さ、扱いやすさが重要になります。
一方で録音では、繊細なニュアンスまでどれだけきれいに拾えるかがポイントになります。

3. 環境

最後に、どこで使うのかも重要です。

  • 屋外ステージ
  • ライブハウス
  • 自宅
  • 防音されたレコーディング環境
  • 周囲の生活音が入りやすい部屋

たとえば、自宅録音でも、エアコンやパソコンのファンノイズ、外の車の音が入りやすい環境では、選ぶべきマイクが変わってきます。
マイク選びは「何を録りたいか」だけでなく、「どこで使うか」までセットで考えることが大切です。

ダイナミックマイクとコンデンサーマイクの違いを知ろう

マイク選びでまず出てくるのが、
「ダイナミックマイク」と「コンデンサーマイク」の違いです。

細かな仕組みの説明はここでは省略しますが、初心者の方はまず大まかな特徴を押さえておけば大丈夫です。
詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

ダイナミックマイクの特徴

ダイナミックマイクは、扱いやすく、ライブでも使いやすいのが大きな魅力です。
周囲の音を比較的拾いにくく、ハウリングにも配慮しやすいため、初心者が最初の1本として選びやすいタイプです。

  • ライブで使いたい
  • リハーサルスタジオでも使いたい
  • 自宅でもなるべく扱いやすいものがほしい

特に、上記の方には、有力な選択肢になります。

コンデンサーマイクの特徴

コンデンサーマイクは、感度が高く、細かなニュアンスまで拾いやすいのが特徴です。
息づかいや声の繊細な表情まで表現しやすいため、録音用途では非常に人気があります。

ただし、そのぶん周囲の音も拾いやすいため、
ノイズの多い環境や音量の大きい現場では、扱いに注意が必要です。
環境によっては使いにくく感じることもあるでしょう。

逆に言えば、静かな環境で録音するなら、
自分の声の細かな魅力を引き出しやすいマイクでもあります。

初心者が迷ったら、まずは用途から考えるのがおすすめ

「ライブでも録音でも使いたい」
「まずは失敗しにくい1本がほしい」
という場合は、ダイナミックマイクから検討するのが現実的です。

一方で、

主に宅録をしたい
静かな環境がある
声のニュアンスをより細かく表現したい
という方は、コンデンサーマイクも十分候補になります。

大切なのは、
“どちらが上か”ではなく、“自分の使い方に合っているか”です。

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自分の「声の悩み(特徴)」を自己分析しよう

マイクの周波数特性グラフを見る前に、まず知っておきたいことがあります。それは、自分の声の特徴を把握することです。

初めて自分の歌声を録音して聴いたとき、「えっ、私ってこんな声なの!?」と驚いた経験はありませんか?

私自身、初めてカセットテープで自分の声を録音して聴いたときは、かなり驚きました。普段自分が聞いている声は、口や喉から空気を通して聞こえる音だけでなく、骨伝導の影響も含まれています。そのため、自分が思っている声と、他人に聞こえている声にはズレがあります。

録音した声は、そのズレを確認するための参考になります。もちろん、スマホのボイスメモはとても便利ですが、マイク性能や録音環境によって音の印象は変わるため、あくまで目安として考えましょう。それでも、自分の声を客観的に知る第一歩としては十分役立ちます。

まずは気負わず、スマホのボイスメモなどで自分の歌声や話し声を録音してみてください。もしバンドやユニットで活動しているなら、メンバーに印象を聞いてみるのもおすすめです。
また、ライブハウスやリハーサルスタジオのスタッフ、PA担当者など、日頃から多くの声を聞いている人の意見も参考になります。

大切なのは、
「自分の声はどう聞こえているのか」
「どこが魅力で、どこに悩みがあるのか」
を整理することです。

iPhoneならガレージバンドアプリでオケと歌で録音可能。

ただ、楽器店での接客や、PA・レコーディングの現場でボーカリストを見てきた経験から、初心者の方が感じやすい声の悩みは、大きく次の3つに分けられます。
※歌い方や発声方法によって変わる部分もありますが、ここでは声の基本的な傾向に絞って考えます。

【パターンA】声の抜けが悪く感じる

バンドの中で歌うと、
「声が前に出てこない」
「ちゃんと歌っているのに埋もれてしまう」
と感じるタイプです。

ただし、この悩みは声質だけが原因とは限りません。バンド全体の音量バランス、アレンジ、PAの調整、モニター環境などが関係している場合も多いです。つまり、声質の問題と、周囲の音作りの問題が重なっているケースもあるということです。

【パターンB】高音域でキンキンして聞こえる

高い音を歌ったときに、
「少し痛く聞こえる」
「耳に刺さる感じがする」
と言われたことがある方は、このタイプかもしれません。

特に、音量を上げたときや、明るい会場・反響の強い場所では、この傾向が目立ちやすくなります。声そのものの魅力とは別に、特定の帯域が強く出すぎている可能性があります。

【パターンC】声が細く感じる、迫力が足りない

声がきれいでも、
「線が細い」
「厚みが足りない」
「迫力が出にくい」
と感じるタイプです。

繊細さや透明感が魅力になる一方で、バンドの中では存在感が弱く感じられることがあります。特に中低域の量感が少ない声質の方に多い印象です。

いかがでしょうか。
自分の声の特徴や弱点をある程度整理しておくと、どんなマイクが合いそうかを考えるヒントになります。
マイク選びは、ただ人気モデルを選ぶだけではなく、自分の声の個性とどう付き合うかを考える作業でもあるのです。

周波数特性の読み方と、あなたが見るべきグラフの形

ここからは、マイク選びでよく目にする「周波数特性グラフ」の見方を解説します。

ただし、最初に大切なことをお伝えしておきます。マイクは、カタログスペックだけで選ぶものではありません。実際の聞こえ方は、声質、歌い方、マイクとの距離、使う環境、接続する機材によっても変わります。
つまり、スペックは「このマイクが絶対に正解です」と教えてくれるものではなく、そのマイクの傾向を知るためのヒントのようなものです。
「この帯域が少し持ち上がっているから、声の抜けが良さそう」
「高域が強すぎないから、ほどよい音になりそう」
というように、候補を絞るための楽しみ方として見ていきましょう。

カタログにある周波数特性グラフを見てみよう

マイクのカタログやメーカーサイトを見ると、多くのモデルに「周波数特性グラフ」が掲載されています。
初心者の方には少し難しく見えるかもしれませんが、基本はそれほど複雑ではありません。

周波数特性グラフでは、横軸が「周波数」を表しています。
左に行くほど低音、右に行くほど高音です。

縦軸は、その周波数帯がどれくらい出やすいかを示す目安です。
グラフが山になっている部分は、その帯域が比較的強調されやすく、谷になっている部分は控えめに出やすいと考えると分かりやすいです。

例として一番代表的なマイクである下記のSHURE「SM58」のグラフを見てみましょう。

「SM58」は、50~15,000 Hzまでの収音特性となっています。低域は、120 Hzから徐々に減衰、高域は、4kHz~6kHzをピークに、7kHz~10kHzで山谷が見られ、10kHz以上は大きく減少されていることがわかります。

人の声には、音の高さを決める「基音」と、その声らしさや質感を作る「倍音」が含まれています。
話し声や歌声の基音は、男性・女性、声域、歌い方によって変わりますが、ざっくりした目安としては、男性の声は80Hz~400Hz、女性の声は160Hz~900Hzです。この周波数に加えて倍音が重なり、高音域まで伸びることとなります。声の明るさ、抜け、歌詞の聞き取りやすさ、息感、サ行の刺さりなどは、倍音や子音の帯域が大きく関係しています。
たとえば、歌声の芯は1kHz〜4kHz、輪郭は3kHz〜6kHzが重要とされています。これを踏まえて、複数のマイクを比べてみましょう。

下記のグラフはさきほどの「SM58」と上位モデルに位置する「Beta58A」(青線)を重ねたもの。

見比べると、低域部分、そして、7kHz以上の高域部分に違いがあることがわかります。「Beta58A」グラフの点線部分は近接効果を表したものなので、ライブにおいての低域部分は青線ではなく、点線部分の2フィート(約5cm)を見るほうが自然です。
この2機種で「Beta58A」は、低域と高域が強く、〜16kHzまで伸びがあるので、より輪郭がはっきりするとともにクリアな音といえます。

このように、グラフを見ると、それぞれ機種の傾向がわかるようになります。ただし、これは「BETA 58Aのほうが必ず良い音になる」という単純な話しではありません。声が細い方には高域が目立ちすぎることもありますし、サ行が強い方には刺激的に感じる場合もあります。
大切なのは、グラフの形と自分の声の特徴が合っているかどうかです。

※周波数特性グラフはメーカーごとに計測の違いがあったり、収音位置が異なる場合があるので、あくまで参考値となります。

カタログにある「感度」も確認しよう

周波数特性とあわせて確認しておきたいのが、マイクの「感度」です。
感度は、英語では「Sensitivity」と表記されます。

感度とは、マイクに決められた音圧を加えたときに、どれくらいの電気信号を出力するかを示す数値です。
一般的には「dBV/Pa」や「mV/Pa」といった単位で表されます。

たとえば、SM58とBETA 58Aの感度は以下のようになります。

  • SM58:-54.5 dBV/Pa(1.85mV)
  • BETA 58A:-51.5 dBV/Pa(2.6mV)

この場合、BETA 58Aのほうが数値としては約3dB高く、同じ音量で歌ったときに、より大きな電気信号を出力しやすいということになります。

ただし、感度が高いマイクが必ず良いというわけではありません。

感度が高いマイクは、小さな声や細かなニュアンスを拾いやすい一方で、周囲の音や環境ノイズも目立ちやすくなる場合があります。
また、ライブではハウリングや音量バランスとの関係も考える必要があります。

周波数特性・感度・指向性は、マイク選びの大切なヒント

マイク選びでよく確認されるスペックには、主に次の3つがあります。

  • 周波数特性
  • 感度
  • 指向性

周波数特性は、音のキャラクターを知るヒント。
感度は、出力の大きさを知るヒント。
指向性は、どの方向の音を拾いやすいかを知るヒントです。

この3つを理解しておくと、マイク選びはかなり分かりやすくなります。

今回は解説は省いている指向性ですが、こちらは下記のページで紹介していますので、よければ参考にしてください。

ただし、これらのスペックだけでマイクの良し悪しが決まるわけではありません。
実際の聞こえ方は、口元との距離、マイクの角度、歌い方、声量、使用環境、接続する機材によっても変わります。

周波数特性や感度は、あくまでそのマイクの傾向を知るためのもの。
最終的には、できれば実際に声を出して試しながら、自分の声に合うかどうかを確認するのがおすすめです。

声の悩み別に見るべきグラフの形

ここからは、自分の声の悩みに合わせて、周波数特性グラフのどこを見ればよいかを整理していきます。
今回は、歌い手・話し手の方から相談されることが多く、マイク選びにもつなげやすい悩みを3つに絞りました。

もちろん、声の印象はマイクだけで決まるものではありません。発声、マイクワーク、PA調整、録音環境、ミックス処理なども大きく関係します。

それでも、周波数特性グラフの見方を知っておくと、「自分はどんな傾向のマイクを試せばよいか」が少し見えやすくなります。

【パターンA】声の抜けが悪く感じる

バンドの中で声が埋もれやすい、配信や録音で言葉がはっきり聞こえにくい。
そんな方は、2kHz〜6kHz付近を意識してみましょう。

この帯域は、声の輪郭や子音の聞き取りやすさに関係しやすい部分です。
周波数特性グラフを見るときは、2kHz〜6kHzあたりに適度な持ち上がりがあるモデルをチェックしてみてください。

ただし、持ち上がりが強すぎると、硬い声に聞こえたり、耳に痛く感じたりすることもあります。
また、空気感やツヤに関係する8kHz〜16kHzも明るくなるので、ここもこの方はポイントです。

【パターンB】高音域でキンキンする人

高い音を歌ったときにキンキンする。
サ行が刺さる。「し」「す」「ち」「つ」が耳につく。
息の音が強く出すぎる。

このタイプの方は、3kHz〜8kHz付近を慎重に見てみましょう。

この帯域は、声の明るさや存在感に関係する一方で、強く出すぎると耳に痛く感じやすい部分でもあります。
サ行などの歯擦音は3kHz〜6kHz付近に集まりやすいので、こちらと7kHz〜10kHz付近に大きなピークがありすぎないかを確認してみてください。また、8kHz〜も高く続いている周波数では、この傾向になりやすくなります。

また、サ行や息の強さは、マイクの角度や距離でも大きく変わります。少し角度をつけて試すのもおすすめです。

【パターンC】声が細い・迫力が足りない人

声がきれいだけど細く感じる。
録音すると線が細い。
バンドの中で存在感が弱く感じる。

このタイプの方は、150Hz〜400Hz前後の低中域をチェックしてみましょう。この帯域は、声の厚みや落ち着きに関係しやすい部分です。ここが少なすぎると、声が軽く感じたり、迫力が出にくく感じたりすることがあります。周波数特性グラフを見るときは、低中域が極端に削られすぎていないかを確認してみてください。

ただし、低中域が多すぎると、今度はこもりやモコモコ感につながることがあります。声が細い方の場合は、感度が低くなく
「低中域に少し支えがありつつ、2kHz〜4kHzの輪郭も失われていないマイク」
を候補にすると、バランスが取りやすくなります。

グラフは「答え」ではなく、試すマイクを絞るためのヒント

周波数特性グラフを見ると、マイクごとの音の傾向が少しずつ分かるようになります。

ただし、グラフだけで自分に合うマイクが決まるわけではありません。
同じようなグラフに見えても、実際に歌ったり話したりすると印象が違うことはよくあります。

大切なのは、
「自分の声にはどんな悩みがあるのか」
「その悩みに対して、どの帯域を見ればよいのか」
を知ったうえで、候補を絞っていくことです。

周波数特性、感度、指向性は、マイク選びの大切なヒントです。
でも最後は、実際に声を出してみて、自分の声が気持ちよく聞こえるかどうか。

その視点を忘れずに選ぶことが、あなたにとっての大切な1本に近づくいちばんの近道です。

声の抜けを良くないと感じている方におすすめなマイク

高音域でキンキンしてしまう人におすすめなマイク

声の細さを気にしている方におすすめなマイク

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