皆様、こんにちは。
弦楽器技術スタッフの高瀬です。
最近、ありがたいことに当工房をリピートして下さるお客様が増えています。
何度かご来店いただいているお客様とは世間話をさせて頂くことがあるのですが、話の中で年齢を聞かれることが多々あります。
その時に実年齢をお応えすると「え、30代じゃないんですか!?」と高確率で疑われてしまいます。
老けて見えるかもしれませんが、まだギリギリ20代です。
本日は、弓のパーツ交換とクリーニングの修理事例についてです。
弓のパーツ交換、クリーニング
先日、私が見てきた中で「歴代最高にクリーニングし甲斐のある弓」をお客様よりお預かりしましたので、今回はこちらの弓のクリーニングとパーツ交換ビフォーアフターをご紹介致します。
弓の状態~Before~
フロッグ部
こちらがフロッグ部の状態です。
フェルル(フロッグの先端に付いている銀色のパーツ)が最も汚れていますね。
本来は銀(ステンレス製もあります)で出来ているのですが、正体不明の堆積物により真っ黒になっています。
ここが一番クリーニングし甲斐がありそうですね。
銀線、革巻き
この弓に使用されている巻き線は『銀糸』と呼ばれる巻き線です。
よく見かける『銀線』の場合は、銀磨き等で磨けば輝きを取り戻すのですが…
銀糸を磨くと、下手すると表面の糸が解れて余計に汚くなってしまうので、基本的には交換をお勧めしています。
今回はお客様のご要望で純銀製の巻き線へ交換予定です。
また、一度銀線を外すと革巻きも外す必要があるため、革巻きも併せて交換します。
スティック
スティック部も、松脂が堆積しては固まり…を何度も繰り返した痕跡があります。
クリーナーだけでは落としきれませんので、ニスを痛めない範囲で少量のアルコールを用いてクリーニングを行います。
チップ
こちらは先端が欠けています。
画像だと分かりませんが、満遍なく剥がれてパカパカしています。
放置すると耐久性に問題がありますので、こちらも新しく交換します。
弓の状態~After~
それでは、順にクリーニング後、パーツ交換後の状態をご覧ください。
詳しい修理過程は以前ブログにまとめた記事もありますので、そちらも是非ご覧ください。
フロッグ部
輝きを取り戻しました。
研磨剤入りのコンパウンドは使用せず、表面の汚れをヘラで落とし、液体のシルバークリーナーに浸して洗浄しています。
銀線、革巻き
細かい工程は過去のブログ銀線巻について、革巻きについてこちらを是非ご覧ください。
巻き線は純銀製の銀線、革はトカゲ革を使用しています。
スティック
表面の堆積した松脂が無くなり、見た目も新品に近付いたのではないでしょうか。
少量のアルコールや潤滑剤、ニスを使用してクリーニング、仕上げを行っています。
チップ
チップの交換工程について、以前ブログに書いていたつもりだったのですが…
どうやら記憶違いで、交換工程については書いたことがありませんでした。
また今後、交換する機会がありましたらご紹介させて頂きます。
最後に
今回のようにクリーニングし甲斐のある弓は中々お持ちではないと思いますが、皆様がお持ちのしばらく使っていない弓や、調整に出していないセカンドボウの状態はどうでしょうか。
クリーニング、毛替えを行うだけでも見た目がリフレッシュされて弾き心地も変わりますので、是非ご相談ください。
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