弦楽器リペア紹介~継ぎネック編~

みなさんこんにちは!シマムラストリングス秋葉原で弦楽器の修理を担当している石川です。
めっきり寒くなってきましたね。演奏会シーズン到来で皆様も練習に熱が入っているのではないでしょうか。今回はバイオリンリペアの中で「継ぎネック」というリペアをご紹介したいと思います。

「継ぎネック」とは

バイオリンは長い間使用していくに伴って消耗していく部分があります。消耗した部分を調整したりパーツを交換したりしてコンディションを維持します。駒や魂柱などを交換された方もいらっしゃるかとは思いますが、バイオリンのネックもまた時間の経過とともに消耗していきます。短時間では変化しませんが何十~何百年も演奏され続けていると手で支える部分なので摩耗したり、弦の張力で歪んだりします。他の調整でコンディションが維持できなくなった場合は最終的にネックを交換します。バイオリンの頭である「スクロール」とペグが入る穴の部分の「ペグボックス」を残しそこへ新しいネックを差し込み、継ぎ足す為「継ぎネック」と言われています。

継ぎネックをする前のペグボックス

ネックの差し込み方には二通りのパターンがありペグボックス内側の壁を斜めに真っ直ぐ切り抜く「ドイツ式」とL字型に切り抜く「フランス式」があります。

「ドイツ式」で継ぎネックしたペグボックス


「フランス式」で継ぎネックしたペグボックス

画像のバイオリンは100年以上前の古いドイツ製の楽器で既に一度フランス式の継ぎネックの修理が行われていましたが、その継ぎ目が外れてきており強度が保てないため再度継ぎネックを行うというものでした。

昔行われた継ぎネックの画像、継ぎ目が外れてきています。


まずは古いネックを継ぎ目から外して差し込み口を整えます。ネックの差し込み口を整えた後に新しいネック材を差し込みます。上下左右をしっかりクランプで締めます。ほぞとほぞ穴で角材を接合する大工仕事に似ていますね。

ネック材を差し込んだ後はネックの形に整形します。強度を保ちつつも違和感がないように整形します。

ニスを塗って仕上げとなります。太さや長さ、形が演奏しやすくかつ長年の使用に耐えうるものに生まれ変わりました。適切に修理、演奏、管理されていれば百年くらいは同じネックで使用が可能となります。

1800年頃には、ネックの短かったバロックバイオリンをネックの長いモダンバイオリンに改造するため、そのほとんどが「継ぎネック」を施されました。「継ぎネック」により現代のバイオリンのような大きな音量を出すことが可能になったのです。

いかがでしたでしょうか?次回も様々なリペアを紹介していきますのでお楽しみに!

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この記事を書いたスタッフ

シマムラストリングス秋葉原石川

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