あご当てとテールピースの接触~コルク交換~ 【弦楽器工房ブログ】
皆様、こんにちは。
弦楽器技術スタッフの高瀬です。
以前のブログで「松から始まる苗字のお客様が4人もいて混乱します…」という内容を書きましたが、先日遂に7人目に突入致しました。
通常はお客様の苗字のみをタグに書いて楽器へ付けて管理するのですが、下の名前も書かないと大変なことになってしまいます。
自分が知っている限りの松から始まる苗字ですと、「松本さん」姓のお客様にご来店いただけるとコンプリート出来そうです。
本日は
- 毛替え
- あご当てコルク交換
- テールピース交換
を行わせていただきました。
楽器をお預けいただき、ありがとうございます。
あご当てとテールピースの接触~コルク交換~
(3回連続であご当て関連の内容になってしまいました…)
本日は「あご当てのコルク交換」について紹介させていただきます。
昨日のブログ「あご当てを外した跡の補修」に関係する内容になります。
あご当てとテールピースが接触すると
下の画像は今回お預かりしたお客様の楽器ですが、なんとテールピースとあご当てが接触しています。
接触具合にもよりますが、あご当てとテールピースが接触すると、演奏時に雑音が発生してしまうので注意が必要です。
中途半端に接触しているとノイズのような雑音が発生し、今回のように完全に密着しているとノイズ交じりの響きの阻害された音になってしまいます。
せっかく良いあご当て、楽器を使用していても、これでは本来の性能が出し切れないのでもったいないです。
接触の原因
では、なぜあご当てがテールピースと接触してしまうかというと、原因は主に3つ考えられます。
- セットアップミス(楽器組み立て時)
- あご当ての位置をずらした
- あご当てコルクが潰れた
1つ目は論外なので、購入時に接触している状態でしたらお店の方に伝えてください。
2つ目は「あご当て交換」「あご当ての位置調整」を行った時になりやすいです。
ほんの数ミリあご当てを左右にずらせば解決する場合がほとんどです。
3つ目が一番多い事例ではないでしょうか。
今回のお客様も、まさにあご当てのコルクが原因です。
長年使用しているとあご当てのコルクが潰れ、あご当ての高さが低くなってテールピースと接触してしまいます。
今まで見てきたほとんどのお客様が、これが原因です。
接触の改善策
楽器の状態、接触具合にもよりますが、大抵はあご当てのコルクを取り換えれば直ってしまいます。
コルクでも解決しない場合は
- あご当て、テールピースを削る
- サドルを削る
- あご当て、テールピースどちらかを新しいものに交換する
などの方法もあります。
パーツを削ったり交換する行為は少なからず音に影響が出てくるので、今の音を変えたくない場合は「あご当てコルクとサドルの高さ調整」での修理をお勧め致します。
(それでも改善しない場合は、あご当てのタイプを変えるか削るしかないです)
修理事例
それでは今回行った修理を簡単にご紹介いたします。
最初にも載せましたが、修理前はこのようにあご当てとテールピースが接触しています。
状況を確認したところ、買った当初から接触していた訳ではなく「コルクのへたり」が原因でしたので、コルクの交換を行います。
写真を見ていただければ分かりますが、長年の使用によりコルクの厚みが1mm以下になっています。
もはやコルクが見えるか見えないか…という状況です。
あご当ての跡補修
こちらは昨日のブログと全く同じ工程ですので、ビフォーアフターの写真だけ載せておきます。
案の定コルクが楽器表面にこびりついているので、クリーニングを行います。
綺麗になりました。
コルク交換
続いて、あご当てのコルク交換です。
オリジナルのコルクが潰れて1mm以下になっていたので、今回は2mm厚のコルクシートを使用します。
コルクの接着面を整えて、新しくコルクを接着すると…
このようになります。
コルクの外周は少し丸みを持たせて仕上げています。
コルクのフィッティング
ここが一番大事な修理箇所かもしれません。
以前のブログ「あご当ての締め方」の中でも書きましたが、あご当てのコルクがフィットしていないと
- あご当てがずり落ちてくる
- しっかり固定しても、構えた時にあご当てが動く
- 楽器(ニス)を傷つける
といった問題が発生するので、念入りにフィッティングを行う必要があります。
外周に丸みを持たせているので影で浮いているように見えますが、問題なくフィッティングは完了しています。
(内側はしっかり密着しているのでご安心ください)
接触の改善
コルク交換により、問題のあご当てとテールピースの接触も改善されました。
あとは微調整を行い、完成となります。
最後に
今回ご紹介した修理は比較的気軽に行える修理です。
(費用も高額ではなく、作業時間も重傷でなければ30分~60分程で完了します)
10年近くあご当て関係の修理をしていない、という方は念のためご自身の楽器を確認してみてください。
あご当てとテールピースが接触していなくても、コルクが潰れて楽器に負担をかけているかもしれません。
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弦楽器技術者の高瀬です。楽器の調子が悪い、音をもっと良くしたいと思いましたら、ぜひご来店ください。皆さまをお待ちしています!