バイオリン表板オープン修理 【弦楽器工房ブログ】
皆様、こんにちは。
弦楽器技術スタッフの高瀬です。
最近は我が家のフクロモモンガに攻撃される機会が激減していたので、また油断してしまいました。
一昨日の朝、ごはんを提供するためにケージに腕を入れた瞬間、狂ったように飛びつかれて指を10秒ほど噛まれました。
血は出ないのですが、手が生傷だらけになるので困ったものです。
今回はバイオリン表板オープン修理について簡単にご紹介します。
表板オープン修理
少し前のブログで裏板オープン修理について触れましたが、今回は表板のオープンについてです。
裏板よりは修理頻度が多いですが、それでも楽器に負担のかかる行為なので、よほど重傷でない限りお客様へオープン修理をご提案することはありません。
表板をオープンする大体の目的は大きな割れ修理で、稀にバスバー交換やブロック修理などを行うためにオープンする場合があります。
今回のバイオリンは割れ修理が目的となります。
修理前の状態
まずはこちらをご覧ください。
表板表面に白い線が見えると思いますが、実は割れの痕跡です。
(白い矢印で指している線です)
広範囲の割れで、しかも魂柱と呼ばれるパーツが内部で接触する部位です。
表面からだと分かりにくいのですが、実はこの割れは見た目通りの割れ方ではなく、上部は表板表面のみ割れており、中間地点は割れが貫通し、線の見えない下部は表板内側のみ割れています。
なのでややこしいですが、割れがハッキリと見える上部は接着だけで済ませて、中間地点と下部の割れには補強を施します。
この部位をただ単に接着しただけで済ますと再び魂柱と駒の圧で割れが開いてきますので、割れ防止のために「魂柱パッチ」と呼ばれる通常よりも広範囲な補強が必要となるのです。
表板オープン作業
修理のために、まずは表板をオープンします。
裏板同様、オープン作業はいかに楽器にダメージを与えないかが最重要なので慎重に作業を進めます。
とても素直な接着だったので、20分ほどでオープン作業が完了しました。
魂柱パッチ、他割れ修理
それでは内側から補強を行います。
魂柱パッチ(ポストパッチ)の手順についてはこちらを是非ご覧ください。
とても分かりやすい説明で修理内容を紹介してくれています。
先ほどのブログ内容とほぼ同じ修理を施し、魂柱パッチを行いました。
他にも小さな割れがあったので、貼るタイプの木製パッチを追加で製作しています。
表板クローズ作業
続いて、表板をクローズします。
オープン作業と比較するとかなり単純な作業ではあるのですが、オリジナルの接着面に合わせつつ、接着のための膠の量を計算する必要があるのでなかなか気が抜けない作業になります。
(膠の量が少なすぎると接着不良を起こし、多すぎると楽器内部に余分な膠が大量に残ります)
専用の接着道具が市販されているので、こちらを使用します。
カラフルな見た目です。
修理後の状態
割れ跡をリタッチで整え、完成となります。
傷口も多少目立ちにくくなったと思います。
(リタッチは表板クローズ前に行っています)
Before After
分かりやすいようにBefore Afterを載せておきます。
Before
After
完成後、実際に弦を張り、数日様子を見て問題なければ修理完了となります。
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弦楽器技術者の高瀬です。楽器の調子が悪い、音をもっと良くしたいと思いましたら、ぜひご来店ください。皆さまをお待ちしています!