チェロの駒足削り 【弦楽器工房ブログ】

皆様、こんにちは。
弦楽器技術スタッフの高瀬です。

先日、大変ありがたいことに両親から靴をプレゼントしていただきました。
私の足のサイズは一般男性と比較すると結構小さめで、いつも靴探しには苦戦するので今回も簡単には見つからないだろうな…
と思っていたのですが、予想外の売り場にジャストサイズの靴が売っていました。
まさかのレディースコーナーです。
サイズがピッタリで見た目も良いので嬉しかったのですが、喜んで良いのか複雑な心境です。

本日は、チェロの駒足加工についてご紹介致します。

チェロの駒足加工

駒については以前のブログでもご紹介していますので、是非こちらもご覧ください。

駒による音の変化


駒足の状態

先日、チェロを買い取らせて頂きました。
価格の割りに音の鳴りは良く、楽器本体にも大きな傷や剥がれも無く健康な状態です。
しかし、元々が低価格帯の楽器ではあるのでパーツ系に難有りな箇所がチラホラございまして…

駒の足部分に大きな隙間があります。
かなり堂々とした隙間で、かつ駒が変形した痕跡も見受けられないので、おそらく販売当初から隙間があったのだと思います。
音が良いだけに残念ですが、低予算で生産された楽器なので致し方無いですね。
しかし、当店での再販時には放置できない症状ではありますので、再販前に駒足の加工を行わせていただきます。


専用の道具

加工するにあたり、専用の道具を使用します。
ヴァイオリンやヴィオラには必要ないのですが、チェロは寸法が大きい分楽器に対する「弦のテンション」も大きいです。
ヴァイオリンと同じように弦を張っていない状態で駒足を加工しても、弦を張ると駒足が大きく外側に広がってしまいます。
…なので、加工前に専用の道具で予め足幅を広げる必要があります。

広げる寸法は楽器と駒により異なりますが、これさえあれば正確に駒足の加工を行うことが可能です。


お手製バージョンもあります

しかし、先ほど紹介した金属製の道具だと駒に傷を付けてしまったり、サイズが合わないという問題が発生することもあるので…
私はこちらのお手製道具を使用しています。

駒足に接触する箇所が木で出来ているため、駒へのダメージも最小限に収まります。
使用方法は、画像のように道具を駒足の内側に挟み、アジャスターを回して任意の寸法まで足を広げさせて使用します。


駒足のフィッティング

駒足を予め広げた後はフィッティングを行うのみなので、鑿で駒足を削っては隙間が無いか確認、削っては確認…
これをひたすら繰り返します。
仕上げ前の大まかな削り作業では、削るポイントを視覚化するために表板(駒足が当たる所)に色を塗る場合があります。
職人によってはチョークだったりクレヨンだったりしますが、私はこちらを使用しています。

恩師が使用していたので私も試してみたのですが、適度に粘り気があり色も残らないので大変重宝しております。
(チョークもクレヨンも、基本的には表板が傷付いたり色が残ったりすることは無いのでご安心ください!後処理を疎かにする人がいれば話は別ですが…)


加工後の駒足

駒足のフィッティング完了後、弦を張った状態です。

隙間も無くなり、音も加工前より響きが格段に良くなりました。
通常、駒足を削ると少なからず弦高(指板から弦までの高さ)が落ちてしまうのですが…
こちらの楽器は適正寸法より弦高が僅かに高かったので、駒足を削ったことにより結果として弦高の高さも適正値に収まりました。


隙間を放置すると…

もし駒足の隙間を放置し続けてしまった場合、音が変化したり響きが悪くなり、最悪の場合駒の変形や表板変形の原因にも繋がってしまいます。
今回のように生産段階から見受けられる隙間は削ってしまえば問題ありませんが、駒の反りや表板陥没による駒足の隙間は楽器の為にも気が付き次第修理調整に出していただくことをお勧めします。

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この記事を書いたスタッフ

岩田屋福岡店高瀬

弦楽器技術者の高瀬です。楽器の調子が悪い、音をもっと良くしたいと思いましたら、ぜひご来店ください。皆さまをお待ちしています!

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