ペグ交換 【弦楽器工房ブログ】

皆様、こんにちは。

弦楽器技術スタッフの高瀬です。



昨日、自宅でチョコバナナの調理を試みました。

屋台で見かけると毎回必ず購入するくらい好きな食べ物です。


しかし、バナナを棒で刺してチョコでコーティングするだけ…と、完全に油断しておりました。

まず棒が上手く刺せません。

下手に刺すとバナナの実が崩れ、ゆっくり刺すとバナナが棒から落ちてしまいます。

4本全て失敗したので、また次回チャレンジ致します。



トッピング用にたべっ子どうぶつも準備していましたので、とても残念です。







本日は

  • ペグ交換
  • 毛替え
  • ニス補修(コーティング)

を行わせていただきました。

楽器をお預けいただき、ありがとうございます。






ペグ交換について

前々回から、「弓のスライド交換」「上ナット交換」

…と続きまして、今回は「ペグ交換」です。

狙って「交換」シリーズを続けている訳では無いのですが、ここの所、ありがたいことに交換系の修理依頼が重なっています。

今回も今まで同様、ペグ交換の修理工程を簡単にご紹介していきます。




ペグ交換のタイミング


ペグ交換は修理頻度としては比較的多い部類には入りますが、交換のタイミングはお客様自身だとなかなか判断が難しいかと思います。


交換を行うタイミングは

  1. 長年の使用でペグが痩せ、ペグが短くなってしまった
  2. ペグが折れてしまった、割れてしまった
  3. フィッティングパーツの種類を変えたい
  4. ペグの形状を変えたい

この4つが多いのではないかと思います。





1.長年の使用でペグが痩せ、ペグが短くなってしまった

これが最も多いと思います。

今回修理するお客様の楽器も、まさにこれが原因です。

(ペグも半加工状態で付いていました…)

「ペグが痩せる」と書きましたが、厳密にはペグボックスのペグ穴も痩せてしまいます。

(ペグが入っている穴のことです)


ペグに使用される材は【黒檀、ローズウッド、柘植】がほとんどですが、これらの木は比較的硬い素材です。

ペグが入る場所の木材は「メープル材」で出来ており、この木も強度はあるのですが、ペグには負けてしまいます。




ペグ穴との摩擦、弦の締め付けによりペグ自体も痩せてしまい、ペグ穴もペグの圧力により変形してしまいます。

結果、ペグとペグ穴のフィット性が落ちてしまい、ペグがペグ穴に入り込む(短くなる)、調弦の際にペグが止まらない、という不都合が生じてしまいます。



4月24日のブログ「ペグの加工」の中でも少し紹介していますが、ペグの寸法によっては交換無しでも解決する場合がございます。





2.ペグが折れてしまった、割れてしまった

何度かこの症状の楽器を見たことがありますが、ほとんどが外的要因です。

楽器を落としてしまった、振り回している最中にぶつけてしまった…

という原因がほとんどです。

あとは、湿度が急激に上がりペグとペグ穴が膨張し、その状態で無理にペグを回してペグが折れた、という話も聞いたことがあります。

(稀ではありますが、急な湿度変化によりペグが勝手に割れる、という事もありえます)

ペグがいつもの力で回らない、と感じたら無理に回さず、湿度を確かめましょう。






3.フィッティングパーツの種類を変えたい

これはペグだけではなく、フィッティングパーツ(あご当て、テールピース、エンドピン、ペグ)の種類を変えたいという場合です。

多くの方が黒檀(パーツの外見が黒ければ、ほぼ間違いなく黒檀です)を使用していると思いますが、見た目を変えたい、音を変えたいという場合に交換を行います。

ちなみに、黒檀だと硬めでクリアな音、柘植だと柔らかく暖かい音が出やすい傾向があります。






4.ペグの形状を変えたい

こちらは意識しないと気が付かないかもしれませんが、実はペグの中にも種類があります。

それぞれ名称があるのですが、ややこしくなるので今回は省きます。

以前ご紹介した装飾付きのペグ(ペグのぽっち)、ハート形のペグ、持ち手が膨らんでいるペグ、持ち手が凹んでいるペグ…

と、様々なタイプがあります。

調弦の際、実際につまんでみると分かりますが、人によってフィットする形状が様々なので、ご自身のつまみやすいペグを探してみるのも面白いかと思います。





ペグ交換

では、ペグ交換の流れをざっくりとご紹介します。


1.ペグ穴の形状を整える

長年の使用により、ペグ穴の形が変形しています。

拡がりすぎない範囲で、ペグ穴を整えます。

(あまりにもオリジナルの穴が大きすぎる場合、「ブッシング」という修理が必要になります。こちらについてはまた今度ご紹介します。)





2.ペグを削り、フィッティングを行う

専用の道具を使い、鉛筆削りの要領で削っていきます。

この時、ペグの先端と元で削り具合を均一にしないとチューニングが狂いやすいペグになってしまいます。




3.ペグのフィッティング終了後、余分なペグを切り落とします。

この段階から、以前ご紹介した「ペグの加工」と同じ作業になりますので、細かい説明は省かせていただきます。





4.ペグ切断面を整え、弦穴を開けて完了となります。





最後に

ペグが極端に短い、ペグがどうしても止まらない、という方はご相談ください。

少しの削りや調整で改善する場合もあれば、今回のように交換が必要な場合もございます。


また、見た目や音の変化を楽しみたい、という方にもペグ交換はお勧めです。

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この記事を書いたスタッフ

岩田屋福岡店高瀬

弦楽器技術者の高瀬です。楽器の調子が悪い、音をもっと良くしたいと思いましたら、ぜひご来店ください。皆さまをお待ちしています!

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