買い取り楽器調整~ペグの加工~ 【弦楽器工房ブログ】

皆様、こんにちは。

弦楽器技術スタッフの高瀬です。


昨日で、ついに毎日カレー生活が終了しました。

冷蔵保管さえすれば10日は腐らずに保存可能なんですね。

…とは思いつつ、今しがた確認のため「カレー 賞味期限」と検索したところ以下の文面が。

『冷蔵保存した際のカレーの賞味期限は2~3日です』

どうやら私の胃がおかしかっただけのようなので、皆様は真似しないでください。




本日は

■ ニスコーティング

■ リタッチ

■ エンドピン交換

■ サドル調整

■ 魂柱交換

を行わせていただきました。

楽器をお預けいただき、ありがとうございます。



昨日に引き続き、買い取り楽器の修理について書いていきます。

本日はペグの加工です。


ペグの削り直し、弦穴開け直し

調整前が上の画像です。

長年の使用により、ペグが痩せて先端が突き出ています。

本来ならこのような症状ですと、ペグが短くなっているのでペグ交換が必要なのですが、、、

なんとこのペグ、痩せているにも関わらずペグの長さが基準値よりもまだ長いです。

痩せていて長いということは、購入時はもっと長かったということになります。

計算したところ、当初の寸法はペグボックスの外側からペグの装飾部までの距離が16mm以上あった可能性があります(通常は、職人にもよりますがヴァイオリンだと11mm~13mmの間が多いです)。

ヴァイオリンにしては、いささか長い寸法ですね。



こちらのペグを、まずは削ってテーパーの形状を整えます。

下の画像だと少し分かりにくいかもしれませんが、ペグの持ち手側ばかり削れて先端が削れていないのがお分かりいただけますでしょうか。

ペグを使用していると、まず弦の締め付けにより木が痩せて、今度はペグボックスとの接地面が痩せていきます。

そうすると先端のみが痩せ、持ち手の元部分はオリジナルの形状を保つので、今回のように加工すると持ち手の部分のみ削れていきます。


加工が完了しました。

これにより、出っ張りが更に伸びます。

出っ張りを放置するとチューニング時に邪魔になる、見栄えが悪い、音に影響する、と良いことが無いので、出っ張りを切り落とします。


最後に、弦の穴を開け直します。

この修理は比較的行う頻度が多いので、皆様もご自身のペグ穴を確認してみてください。

細かい寸法の説明は今回は省きますが、大体楽器の中心線に沿ってペグ穴が開いていれば問題ありません。

(正確には、ペグによって中心から左右に0.1mm単位でずらして穴を開けています)

これが、下の画像のように極端にペグボックス側(ペグの先端方向)に穴があると、弦を巻いてもペグが止まらなくなったり、理想の位置に弦が巻けなくなったりします。

次の画像が、ペグ加工後に弦穴を開け直した正常な状態です。

G線とE線のペグは若干ペグボックス側(ペグの持ち手方向)に設定しています。

これにより、弦を綺麗に真っ直ぐ張ることができます。





最初にペグの長さについて説明しましたが、長さが基準値ではないと絶対にいけない、という訳ではありません。

1900年より以前に作られた楽器に、製作段階から極端に短いペグが取り付けられている事がわかる資料も存在します。

職人の中には、あえて4本のペグの長さを変えて音響効果の向上を試みる方もいらっしゃいます。

当工房(島村楽器)では機能性、見た目の美しさを兼ねて基準の寸法が決まっていますが、今度時間のある時に

■ ペグの長さを4本全て基準より短くする

■ 上の実験の結果から、ペグ4本の長さをそれぞれ変えて音響に変化があるか確かめる

以上の実験をしてみたいと思います。

どんな結果になるか今から楽しみです。

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この記事を書いたスタッフ

岩田屋福岡店高瀬

弦楽器技術者の高瀬です。楽器の調子が悪い、音をもっと良くしたいと思いましたら、ぜひご来店ください。皆さまをお待ちしています!

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