皆様、こんにちは。

弦楽器技術スタッフの高瀬です。




先月のブログ内で室内用ハンモックについて書きましたが、相変わらず睡眠が捗っています。


私は山育ちということもあり、昔からヒグラシの鳴き声が大好きです。

先日、ハンモックに揺られながら「ヒグラシの鳴き声を流したら更に睡眠が捗るのでは…」

と考えつきまして、試しにBluetoothスピーカーを遠くに設置し、風を感じるために少し窓を開けてヒグラシの鳴き声を再生してみました。


とんでもなく睡眠が捗ります。




本日は

  • 指板接着
  • 表板割れ修理
  • ニス補修

を行わせていただきました。

ご来店いただき、ありがとうございます。


1日で出来る音の変え方 ~テールピース編~


1日で出来る5つの音調整方法

1.

  • 弦の長さ調整
  • 弦交換(種類を変える)

2.魂柱

  • 魂柱の位置調整
  • 魂柱太さ削り
  • 魂柱交換

3.

  • 駒削り加工
  • 駒交換

4.テールピース

  • テールコード長さ調整
  • テールコード交換
  • テールピース交換

5.あご当て

  • あご当て削り
  • あご当て交換

久々になりますが、「1日で出来る音の変え方」の続きです。

今回は4.『テールピース』による音の変化について、ご説明させていただきます。


テールピースについて

テールピースとは、弦楽器の表面下部に付いている弦を引っ掛けるパーツの名称です。

ヴァイオリンだと、この部分です。



テールピースで音を変える方法として今回は3つ、


  • テールコードの長さ調整
  • テールコード交換
  • テールピース交換

それぞれの音の変化の違いをご紹介していきます。


テールコード長さ調整

音を変える方法だと「交換」系が主流ですが、魂柱の長さ調整と同じく、テールコードの長さを変えるだけでも音の変化を楽しめます。

ちなみにテールコードとはテールピースと楽器を固定(結ぶ?)役割を担っているパーツです。

楽器下部を見ていただくと、ひも状のパーツが見えると思います。

それがテールコードです。



上の画像はテールピースを裏返した状態です。

テールコードがどのように付いているかお分かりいただけると思います。

(写真のテールコードはナイロン製です)


まずテールコードの長さを変化させると音にどのような影響があるかと言いますと…

  • 短くする : 音に張りが出る⇔きつい音になる
  • 長くする : 響きが良くなる⇔ぼやけた音になる

当たり前ではありますが、大体このような傾向になります。


しかし、全ての楽器に対してこのように単純な調整を行うかと言うと、そういう訳でもありません。

実は上ナットから駒のてっぺん、駒のてっぺんからテールピースまでの理想の弦長距離が存在しており、その理想の寸法に近付けるかあえて遠ざけるか、で音の調整を行う場合がほとんどです。

単純に長さを短くする場合は、下写真のようにテールコードが伸びた(あるいは結び目が緩んだ)時だけです。


理想の弦長

必ずこの寸法でないといけない、ということはありませんが、現在ではほとんどの楽器がこの寸法を基準に設定されています。

  • 上ナット~駒のてっぺんまでの弦の距離 : 330mm前後
  • 駒のてっぺん~テールピースまでの弦の距離 : 55mm前後

大体この寸法が多いです。

上で紹介した数値が大事というより、「比率」が大事なので


上ナット~駒のてっぺんまでの弦の距離 : 駒のてっぺん~テールピースまでの弦の距離

=6 : 1


このようになっていれば問題ありません。

この比率や数値から大きくズレていた場合、テールコードの長さ調整を行うと音が良くなる傾向があります。


テールコード交換

テールコードは歴史と共に使用素材も変化しており、一昔前はガットを素材としていました。

現在はナイロンが主流となっています。

(弦と同じ変化ですね)

ガットは羊の腸を原料としているので、取り付け方法やメンテナンスが困難です。

テールガットはガット弦に比べると耐久度はあるのでそこまで消耗はありませんが、環境に左右されやすく、取り付けと状態維持の困難さか厄介です。


なので、現在のテールコードの種類は『ナイロン、アラミド繊維、チタン』この3種の素材が主流となっています。

3種それぞれ音の響きや音質への変化、耐久度、取り付け易さの違いがあるので、簡単にご紹介していきます。


ナイロン

弦楽器の弦にも使用されている素材です。

低下価格ながら品質も良いので、現在使用されているテールコードのほとんどがナイロン素材で出来ています。

当工房では

『Wittner社 ドイツ製』

このテールコードを使用しています。


おそらくほとんどのお客様の楽器に「ナイロン素材」のテールコードが付いていると思いますので、音への変化はあえて触れません。

(現在アラミド繊維のテールコードを使用している方がナイロンへ変えた場合、もしかしたら音の響きが悪くなった、と感じるかもしれません)

耐久度も問題なく、切れるという事はまずありませんが、長期使用するとどうしても伸びてしまいます。

取り付けの行い易さは一番簡単です。

ネジを外し、テールピースに通してまたネジを締めるだけです。



アラミド繊維

アラミド繊維も実はナイロンと同じポリアミドから出来ていますが、化学構造が異なり、ナイロンよりも強度があるとされています。

その中でも、1965年に「アメリカのデュポン社」が開発した、強度に特徴のあるパラ系アラミド繊維『Kevlar®(ケブラー)』は特に有名です。


当工房ではアラミド繊維を使用したテールコードは2種類あります。


『Bogaro&Clemente イタリア製』

こちらは先ほどご紹介した「ケブラー」を使用しています。

ナイロン素材に比べると響きが増し、柔らかさも出る印象です。

耐久度は間違いありません。

伸びにくく、長期使用も問題ありません。

取り付け方法はやや困難です。

「漁師結び、フィッシャーマンノット」と呼ばれる結び方が推奨されています。



『Bois d'Harmonie フランス製』

こちらは、おそらくケブラーではないアラミド繊維を使用しています。

(ケブラーという表記はありませんでしたので…)

こちらもナイロン素材に比べると響きが増します。

Bogaro&Clementeのテールコードが柔らかさを出す印象だとすると、Bois d'Harmonieはハッキリとした音になる印象です。

耐久度は間違いありませんが、長期使用すると伸びやすいかもしれません。

取り付け方法はやや困難です。

こちらも「漁師結び、フィッシャーマンノット」と呼ばれる結び方が推奨されています。



チタン

チタンの特徴として挙げられる項目は

「強度がある、熱に強い、錆びにくい、軽い、アレルギーが出ない」

と、良い事尽くしです。

なにより「軽い、アレルギーが出ない」

という特徴はヴァイオリンとヴィオラには大変ありがたいです。

楽器の重さを軽減させ、アレルギーに困ることも無くなります。


この万能金属と、先ほど紹介しました「ケブラー」を合わせたテールコードが存在します。

『Stradpet 中国製』

チタン(金属)を使用しているということもあり、音はクリアな印象になります。

また、レスポンスも良くなる印象があります。

ケブラーとチタンのミックスなので耐久度もあり、伸びることはほとんどありません。

取り付けはナイロン素材と全く同じなので、とても簡単です。


(申し訳ありませんが写真はありません。見た目はナイロン製テールコードを少し細し、色はシルバー調をイメージしていただければと思います。)


テールピース交換

音の変化はテールコード以上に味わえますが…

場合によっては木材の種類を変えられないので、形状や厚みが異なるものを選んで(または削って)響きの変化だけ楽しむことが出来ます。

というのも、テールピースだけ他のフィッティングパーツと違う木材を使用するとかなり違和感があります。

テールピースに限らずあご当て、ペグ、エンドピンもですが、ほとんどの方は全てのパーツを同じ木材で統一していると思います。

あご当て、ペグ、エンドピンは黒檀(黒色)で、テールピースだけ柘植(明るいブラウン系の色)…

少し浮いてしまいますね。

(あくまでも好みの問題ですので、わざと種類を変えるというのも問題はありません!色々試せば良い色の組み合わせも見つかるかもしれませんね)

なので、基本的には


  • フィッティングパーツを全て交換
  • 木材の種類は変えずに、テールピースの形状を変える、削る

このどちらかになると思います。


形状も、丸みを帯びたものから角ばった形状、装飾付きのもの…

色々ありますので、「見た目を変える」という意味合いでもお試しいただけるのではないでしょうか。



写真でも分かる通り、テールピースの長さ、弦穴の距離、弦穴の角度、全て異なります。

テールピースの厚みや長さはお好みに応じて削れますが、弦穴の間隔は変えられません。

弦穴の間隔が狭いか広いか、によっても音の変化がありますので、楽器をお持ちいただければお客様の楽器に合ったテールピースをご提案させていただきます。


テールピースの厚みや長さ(要するに質量)では音の響きを、弦穴の間隔では音の硬さを変えられる傾向があります。

より良い音を目指す場合は、有名メーカーの高級パーツへの変更もお勧めします。

同じ木材でも、そもそものグレードが桁違いなので音の変化は間違いなく良い物になります。


最後に

普段テールピースを気にする方は中々いないかもしれませんが、気が付かない内に破損していた、割れていた、ということは頻繁にあります。

破損が原因で雑音が発生している、割れのせいで音が(悪い方に)変化している可能性もあるので、チェックしてみてください。


今回の調整ももちろん当工房で1日でお返し可能な内容なので(ご予約いただいた場合)、年季の入ったテールピースを使用中の方、年単位でテールコードを変えていない方はぜひご相談ください。

記事中に表示価格・販売価格、在庫状況が掲載されている場合、その価格・在庫状況は記事更新時点のものとなります。
店頭での価格表記・税表記・在庫状況と異なる場合がございますので、ご注意下さい。

この記事を書いたスタッフ

マークイズ福岡ももち店高瀬

弦楽器技術者の高瀬です。楽器の調子が悪い、音をもっと良くしたいと思いましたら、ぜひご来店ください。皆さまをお待ちしています!

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