ヴァイオリンのサドル付け直し修理 【弦楽器工房ブログ】
皆様、こんにちは。
弦楽器技術スタッフの高瀬です。
最近、我が家のフクロモモンガがとても好戦的です。
ケージの掃除をしては怒られ、水をあげては怒られ、触れば怒られ…
特に水やりの際は必ず噛んでくるので、フクロモモンガが噛むのが先か無傷で給水に成功するかのバトルを毎朝繰り返しています。
現在4-0で連敗中です。
今回はサドルの付け直し修理について、簡単にご紹介致します。
サドル付け直し修理
おそらく大多数の方が「サドルってどこのパーツ…?」と疑問に思っているのではないかと思います。
ネット上で紹介されている「ヴァイオリンのパーツ名称」をいくつか調べてみましたが、高確率でスルーされている何とも可哀想なパーツです。
普段はテールピースやあご当てで隠れていますが、もちろん弦楽器にとって大事なパーツなので定期メンテナンスも必要です。
「下ナット」と呼ばれることもありますね。
これです。
違うタイプのあご当てだったら完全に見えませんね。
修理前
それでは、修理事例をご紹介致します。
今回は展示ヴァイオリンのサドルが要修理な状態でして、サドルが浮いています。
なかなかチェックする機会が無いと思いますが、結構起こりやすい症状なのでご自身の楽器も見てあげてください。
発生原因は
- 接着が甘かった
- サドルの形状が不適切
- (膠を使用していた場合)熱で膠が緩んだ
- 経年劣化
などなど、色々と考えられます。
大体の場合はテールコードの力で完全に外れることはありませんが、長期間放置すると表板にピンポイントで負荷がかかるので、決して見過ごして良い状態とは言えません。
このような場合はまず一度サドルを外し、再び接着を行う必要があります。
サドル取り外し
という訳なので、サドルを外しましょう。
もう既に外れかけていますので、簡単に外れるはず…
指でチョンと触れただけで外れました。
サドル洗浄
続いて、再接着の為にサドルの洗浄を行います。
サドルに付着している接着剤の処理は、鉋やスクレーパーで落とせば簡単ではありますが…
サドルの寸法(特に奥行き)を変えないためにも、溶剤で接着剤を落とします。
※楽器本体のサドル接着部も、丁寧に接着剤の残骸処理を行います
綺麗になりました。
特に平面も崩れていなかったので、このまま使用します。
これはどの楽器にも言えますが、サドルの幅が楽器本体に対してフィットし過ぎていると将来的に表板が割れるリスクがあります(サドルの黒檀材、表板が湿度で膨張する為)。
なので、ついでにサドル両端を少しだけ削ってあります。
サドル接着
再接着を行います。
今回は響板用クランプがフィットしましたので、接着用に使用しています。
サドルの形状や寸法によっては今回のクランプは使用できませんので、場合によっては冶具を使用したりします。
サドル整形、磨き直し
いつもは再接着後にサドルを磨いて終了なのですが、今回は少しだけサドルの形状を整えます。
また展示中に外れたら厄介なので、このままでも問題は無いのですが念のため外れにくい角度に調整します。
調整後、サドルを磨き直すと…
こうなります。
分かりにくいですが、僅かにサドルの形状を変化させています。
弦を張り直しても問題ないことが確認出来ましたので、無事終了となります。
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弦楽器技術者の高瀬です。楽器の調子が悪い、音をもっと良くしたいと思いましたら、ぜひご来店ください。皆さまをお待ちしています!