弓グリップ保護チューブの取り付け【弦楽器工房ブログ】

皆様、こんにちは。
弦楽器技術スタッフの高瀬です。

福岡へ来てから毛替え会出張の機会が多くなったのですが、その度に工具を発送して荷物をまとめて…
と、準備に手間がかかっていました。
日々何か良い手は無いかと考えていまして、この度遂に『毛替え会専用持ち運びケース』を自作することに致しました。

ベースはヴァイオリンケースです。
画像1枚目の道具を全て収納可能で、2枚目は収納後です。
アルコールランプ以外の毛替え必需品を全て収納してあります。

仕事が捗りそうです。



本日は

  • 毛替え
  • 表板割れ修理
  • 駒交換

を行わせていただきました。
ご来店いただき、ありがとうございます。


今回はグリップの保護材を新しく入荷しましたので、ご紹介致します。


弓 グリップ保護チューブの取り付け

チェロを弾く方に多いと思いますが、弓の持ち手部にゴムや革(既に巻いてある革巻きとは別のもの)を巻いて演奏する方がいらっしゃると思います。
使用用途は人により異なりますが、

  • 『グリップ性を向上させるため』
  • 『棹、フロッグ、革巻きを保護するため』

大体どちらかの理由が多いです。
(今回ご紹介させて頂く素材はグリップ性も良いですが、どちらかと言えば『保護』の役割が大きいです)

このように、革や棹が親指の爪によって抉れてしまう…
というプレイヤーに向いてるのではないでしょうか。


使用される素材は主に

  • シリコンチューブ
  • 熱収縮チューブ
  • 革(特に鹿革が多いです)
  • 鉛筆グリップ

これらのどれかを使用されている方が多い印象です。


熱収縮チューブ

今回、当工房で入荷した素材が『熱収縮チューブ』になります。

平べったいですが、チューブです。
シリコンチューブやその他ゴム製品、革類と色々悩みましたが、弓への影響が少なく取り付けの利便性が高いので『熱収縮チューブ』を選びました。
名前の通り、熱を与えると縮むチューブです。


取り付け事例

チューブを弓に通す

では、早速取り付けてみましょう。
取り付け方法はシンプルで、「チューブを弓に通して熱を加える」だけです。

この状態から熱を加えるのですが…
熱加減を間違えると弓表面のニスが爛れたり、革が変形してしまうので注意が必要です。
ご自身で行うと弓に問題が発生する可能性があるため、技術者にお任せいただければ間違いありません。


熱を加えると…

仕上がりました。
グリップ性向上と保護のために、フロッグ部にもチューブを通してあります。


フロッグの移動も問題ありません

今後毛替えを行いやすいように収縮加減も調整もしてあります。
しっかり熱を加えてしまうとフロッグの移動が不便になってしまうので、少し緩めに収縮させ、フロッグが自由に動くようにしてあります。


最後に

シリコン素材やその他ゴム製品だとグリップ性は高いのですが(厚さも増し、柔らかいので持ちやすくなります)、弓を緩める際スムーズに緩まない、毛替えの時に除去する必要がある…
など、デメリットも生じます。
ある程度のグリップ性があり、弓の保護もしたいという方には今回ご紹介した熱収縮チューブがお勧めです。
取り付け時に熱を加え過ぎなければ、弓を痛めることもなく保護することが出来ます。

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この記事を書いたスタッフ

岩田屋福岡店高瀬

弦楽器技術者の高瀬です。楽器の調子が悪い、音をもっと良くしたいと思いましたら、ぜひご来店ください。皆さまをお待ちしています!

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