【マイスター工房通信】f-wing割れ修理について
みなさま、こんにちは。弦楽器修理担当の鍵主です。
8月に入り夏真っ盛りの暑さとなっています。熱中症などお身体にはくれぐれもお気を付けください。
楽器も気温や湿度の影響を受けます。特に柔らかいニスの楽器はケースの布地がニスくっついてしまったりする場合もありますので、楽器を直射日光が当たったりするような暑いところに置きっぱなしにしないようにご注意ください。
f-wing割れ修理について
今回はf-wingの割れの修理についてお話しします。
そもそもf-wingとはどこを指すかと言いますと、f字孔の下の大きな丸の付近のことを指します。写真の赤丸で囲った付近となります。
古い楽器などまれにここに割れが入ってしまっていることがあります。割れが入っていても雑音の原因になることもなく汚れが溜まったりして目立たなくなり見過ごされている場合もあります。
他の箇所の割れと異なり割れが更に広がっていくことはありませんが、もちろんしっかりと直した方が良いです。
特殊クランプ
今回のリペアの主役が写真の特殊な形のクランプです。通常、表板の割れをしっかりと直そうとするとこちらでご紹介したように表板を外して割れ接着をした後に、内側に補強のパッチ等をつけてもとに戻すという大掛かりなことになってしまいます。この特殊クランプを使うことで、表板を外さずに割れをしっかりときれいに接着することが出来ます。
f-wing割れ修理
それでは、実際にリペアを開始します。
今回は左側のf字孔のところが割れていました。赤丸で囲ったところが割れているところです。
こちらは割れに溜まっていた汚れを掃除した後の写真です。まずはクランプを使ってニカワで割れを接着します。
接着中の写真です。特殊クランプのお陰でしっかりと接着が出来ました。
ニスの補修に入る前に内側に補強のパッチを接着します。f字孔に入れられるように専用のクランプを使ってパッチを接着します。
普通、補強のパッチは表板を外さないと接着出来ませんが、f字孔付近だからこそ出来るリペア方法です。
パッチを接着したら、ニスの補修の邪魔にならないように周辺もクリーニングをします。
最後に割れのところを目立たない様にニスで補修してリペア完了です。
今回紹介したように普段は滅多に使わないですが、そのリペア専用の道具があります。今回はそれらを使うことで時間を短縮し素早くリペアをすることが出来ました。面白い道具がありましたらまた紹介していきたいと思います。
楽器点検について
表板に割れが入ってしまっても、気づかずに使用しているケースがたまにあります。はっきりと分かる場所ならご自身で見つけられますが、パーツの下に隠れていたり、古い割れですと判別が難しくなる場合もあります。また、割れたままにしていると割れが広がったり音にも影響が出てきます。
楽器は湿度や気温によって影響を受けるので、特に問題を感じなくても湿度の高い梅雨や乾燥する冬など季節の変わり目等に点検することをお勧めします。点検自体は無料で行っておりますので、いつでもお気軽にご相談ください!
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ちょっとした調整でかなり弾きやすくなることもあります。今まで一度も点検に出したことが無い方もお気軽にご相談ください!