弓 フロッグ修理~内部の亀裂接着~ 【弦楽器工房ブログ】
皆様、こんにちは。
弦楽器技術スタッフの高瀬です。
昨日、ふとした時にハリネズミを見ると、なんと仰向けで睡眠していました。
大変可愛らしかったのでしばらく観察していたのですが、気配を感じ取ったのか突然目覚めまして。
しかし、ひっくり返った亀状態で起き上がろうにも起き上がれないらしく、救出しようと手を近付けたら怒って針を立てて丸まってしまいました。
なかなか理不尽な子です。
本日は
- 毛替え
- フロッグ修理
- 革巻き
を行わせていただきました。
楽器をお預けいただき、ありがとうございます。
今回は弓フロッグの修理事例について、ご紹介させて頂きます。
弓フロッグの亀裂修理
こちらは、お預かり中の弓フロッグです。
一見問題は無さそうですが…
毛替えを行うためにパーツを外したところ、思わぬ破損個所を発見致しました。
お分かりいただけますでしょうか。
フロッグ内部の中心線に沿って、大きな亀裂があります。
外部からはシルバープレートに守られているお陰で、亀裂を目視できない状態です。
内部の部分的な亀裂で、かつシルバープレートが補強の役割を担っているので簡単には悪化しないとは思うのですが、これから毛替えを行う身としては不安しかありません。
(楔材を押し込んだ瞬間にフロッグが真っ二つ…という最悪の事態は、絶対に避けなければなりません)
なので、簡易的ではありますが亀裂の接着を行います。
亀裂の接着
わざわざ接着用に型を取ったり、専用の冶具を作る程でもありませんので、今回は極めてシンプルな方法で接着を行います。
普段毛替え用に使用している「フロッグ台」があるのですが、奇跡的に今回のフロッグと『良い意味で』サイズが合っていません。
どういうことかと言いますと、通常はすっぽりとフロッグが収まるように設計されているのですが、このフロッグは上部のサイズが少し大きいので、無理に押し込まないとフロッグ台に固定されません。
つまりはこの状態を利用して、フロッグを多少強く押し込むことにより、フロッグ台のサイドの木材でフロッグの亀裂を圧着しようという算段です。
(強めに押し込む図)
接着中に常時指で加圧する訳にもいきませんので…
クランプを使用します。
仕上げ
接着後、余分な接着剤を除去して仕上げた後の状態がこちらになります。
隙間なく接着出来ましたので、満足のいく結果となりました。
この後実際に毛替えを行い楔材を詰めてみましたが、傷口が開くこともなく強度面も問題なさそうです。
記事中に表示価格・販売価格、在庫状況が掲載されている場合、その価格・在庫状況は記事更新時点のものとなります。
店頭での価格表記・税表記・在庫状況と異なる場合がございますので、ご注意下さい。
弦楽器技術者の高瀬です。楽器の調子が悪い、音をもっと良くしたいと思いましたら、ぜひご来店ください。皆さまをお待ちしています!