剥がれ修理 【弦楽器工房ブログ】

皆様、こんにちは。

弦楽器技術スタッフの高瀬です。


昨日、ありがたいことに大学時代の後輩がわざわざ東京から福岡まで遊びに来てくれました。

案内がてら美術館を目指して大濠公園周辺を散策しつつ、帰りにたまたま舞鶴公園を横切ったところ『超カレーグランプリ』という看板が目に。

どうやら全国のカレー屋さんを集めたイベントのようです。

夕飯前でしたが、カレーの良い香りに負けて少しだけ食べ歩きすることに。

ベンガル地方のカレーが大変美味でした。



最近カレーばかり食している気がします。







本日は

■ 毛替え4本

■ スクリュー調整

■ リタッチ

■ 剥がれ接着

を行わせていただきました。

ご来店いただき、ありがとうございます。

剥がれ修理


楽器を長く演奏されている方なら、1度くらい剥がれの修理を経験した事があるのではないでしょうか。

今回は、珍しく広範囲に渡って表板と横板が剥がれている楽器がありました(通常は部分的に剥がれている楽器が多いです)ので、ご紹介致します。




剥がれの場所は、表板のローワーバウツ(下の部分)がほぼ全てです。

写真だと少し分かりにくいですが、横板と表板の接着面にぱっくりと隙間があります。

今回のようにローワーバウツ側だと、普段は顎当てで締められている場所なので、意識しないと気が付きにくいです。


剥がれを放置すると、剥がれの悪化や響板の歪み・変形に繋がります。

更に雑音の原因にもなりますので、気が付いた段階で早急に修理を行うのがベストです。



膠について

剥がれの接着には膠を使用します。

うさぎ、鹿、牛、魚など様々な種類の膠があるので、楽器の状態や使用箇所により使い分ける必要があります。

種類により

・接着力の強弱

・硬化速度

・腐りやすさ

・濃度と硬さ

と、色々と違いがあります。

今回は剥がれ修理なので、程よい接着力があれば問題ありません。

(表板と裏板の接着面は修理のために今後開け直す可能性があるので、強固に接着するとかえって不都合が生じます)

なので、今回はベーシックな牛の膠を使用します。

膠の使用方法は、水分を加えて膨潤させ、低温で湯煎し、液状にしてから使用します。


剥がれ接着

膠の準備が整ったので、接着を行います。

専用のクランプを使い、下の写真のように固定します。

固定範囲から、今回の剥がれがかなりの広範囲であることがお分かりいただけますでしょうか。

(短期間でここまで剥がれた楽器は、今まで見たことがありません)

今の季節ですと、冷房が効いているのでだいたい2~3時間固定すれば膠が硬化します。

(丸1日放置するに越したことはありませんが、、、)

他の修理の合間に行っていたので、今回は6時間しっかり固定出来ました。

音に関しても、修理前は雑音が出ていましたが、修理後はすっかり無くなりました。



最後に

今回ご紹介した剥がれの修理は、比較的頻度の多い修理です。

膠は熱にも水分にも弱いので、湿度が多く高温な夏場(まさにこれからですね)は特に気を付けてください。

夏場の車内に楽器ケースごと放置すると、高確率で剥がれてしまいます。

プレイヤーの皆様からするとなかなか気が付きにくいとは思いますが、急に雑音がするようになったり違和感を感じましたら、ご相談ください。

剥がれの可能性がございます。

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この記事を書いたスタッフ

岩田屋福岡店高瀬

弦楽器技術者の高瀬です。楽器の調子が悪い、音をもっと良くしたいと思いましたら、ぜひご来店ください。皆さまをお待ちしています!

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