買い取り楽器調整~上ナットの加工~ 【弦楽器工房ブログ】
皆様、こんにちは。
弦楽器技術スタッフの高瀬です。
ここ最近、節約も兼ねて毎日カレー生活を行っています。
本日で9日目に突入します。
ルーと具材が半分に減ったら継ぎ足しを何度か行っているのですが、カレーを食べきるのが先か、
胃が負けるのが先か、そろそろスリルを感じます。
本日は
■ 毛替え
■ 指板調整
■ 上ナット加工
■ ペグ加工
を行わせていただきました。
楽器をお預けいただき、ありがとうございます。
今回は買い取り楽器の修理をご紹介していきます。
(数回に分けて書いていきます)
楽器は日本製(2000年)のヴァイオリンです。
(5月中旬に当店で展示予定です)
楽器本体に大きな割れや打痕、剥がれなどは無く、健康な状態です。
表面のニス剥がれやニス爛れ、以前リタッチされた箇所が少々荒いので、ニス補修と、可能な範囲でリタッチのやり直しを行います。
あとはパーツ系(駒、ペグ、ナット、指板)に手直しが必要なので、交換や加工を行います。
修理箇所は
■ 上ナット高さ、溝調整
■ ペグ削り加工
■ ネック加工(少し削ります)
■ ニス補修、リタッチ
■ 駒交換
以上を予定しています。
他にも修理必要個所が出てくると思うので、修理を行いながら適宜追加修理を行います。
本日は上ナット加工を行いましたので、以下より上ナット加工についてです。
他の修理は後日ご紹介致します。
上ナット高さ調整、弦溝加工
上ナットは安価な楽器でない限り、ほとんどの楽器に黒檀が使われています。
(バロック仕様の楽器に多いですが、象牙も稀に使用されます)
黒檀は大変強度のある硬い木ではあるのですが、使用期間が長いと(調弦や弦交換の際に)弦により溝が削れ、弦溝が段々と拡がっていきます。
下の画像、E線とA線の溝が指板に接触しているのがお分かりいただけますでしょうか。
弦溝が深くなりすぎた場合に問題となる症状は
『弦が指板と接触し、指板が削れていく』
『弦高が低くなり、弦が押さえにくくなる』
『雑音がでる』
『弦が切れやすくなる』
大体この4つです。
特に『雑音がでる』に関してはご相談いただくことが多いので、雑音が発生した場合はまず最初に上ナットを疑ってみてください。
下の画像を見ていただくと、溝が歪に拡がっているのが分かると思います。
このような状態だと、雑音が出やすいので注意が必要です。
上ナットの溝を修正する場合、上ナットの高さを底上げする方法と、上ナットを新しく交換する方法の2つがあります。
今回は上ナットの高さや黒檀材の強度を考慮し、高さを底上げする方法を取ります。
(オリジナルの上ナットは、比較的良質の黒檀を使用しており、溝の拡がり以外はダメージが少ないため。)
まず、上ナットを取り外します。
高価な楽器ほど、上ナットが取れやすいように工夫して接着してある楽器が多いです。
安価な楽器や、職人の修理方法によっては接着剤を大量に使用して上ナットを固定してあることもあります。
その場合、まず無事に外すことは不可能なので、上ナットを交換するしか方法がありません。
今回は(若干強固に接着されてましたが)問題なく取り外せました。
高さ上げの際には、上ナットと同じく黒檀材を使用します。
底上げしたい寸法の厚みの黒檀を用意し、接着します。
弦溝も加工したかったので、通常よりも厚く設定しています。
下の画像だと少し分かりにくいかもしれませんが、木を足した箇所は質感が違って見えると思います。
接着後は適度な寸法に加工し、弦溝を均等な間隔で作り直します。
プレイヤーの手の大きさによって溝の間隔を変えた方が良いのですが、、、
今回は誰の手に渡るかわからないものなので、一般的な寸法で作っています。
また、上ナットの高さもここで調整します。
(G線からE線にかけて徐々に低くします)
仕上げを行い、一旦は完成となります。
音に影響してくる箇所なので、この後念入りに微調整を行います。
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弦楽器技術者の高瀬です。楽器の調子が悪い、音をもっと良くしたいと思いましたら、ぜひご来店ください。皆さまをお待ちしています!