ペグ~先端の飾り修理(ぽっち)~ 【弦楽器工房ブログ】
皆様、こんにちは。
弦楽器技術スタッフの高瀬です。
昨日の夜、久々に我が家のハリネズミがケージから脱走しました。
ケージ(水槽ケース)の高さは25cm近くあり、いつも蓋をしています。
更に蓋の上には重しの板を設置し、ケージ内に足場となるものもありません。
しかし、私が朝起きた時には蓋と重しが外され、取り込んだ洗濯物の中で熟睡するハリネズミの姿が。
どのように脱走しているのかとても気になります。
本日は
■ 指板削り
■ ニス補修
■ 弓 フロッグ修理
を行わせていただきました。
楽器をお預けいただき、ありがとうございます。
ヴァイオリンペグの「ぽっち」修理
突然ですが、皆様は『ペグに付いている、ぽっち』と言われた時に、どの部分の名称かお分かりいただけますでしょうか。
正解はこの画像のペグ先端に付いている、黒い突起状装飾のことです。
このブログを書くにあたり、恥ずかしながら
「そう言えばぽっちの正式名称を知らない…」
という事に気が付きまして、色々調べてみました。
…しかし、結局よく分かりませんでした。
ペグ先端の装飾(飾り)でも伝わりそうではありますが、業界内でも「ペグのぽっち」と言えばなんとなく伝わることが多いので、今回は「ぽっち」で説明させていただきます。
(ぽっち=小さな突起 という意味らしいです)
ぽっちが何故ペグの先端に付いているかと言いますと、上でも書きました通り「装飾」の為です。
(もちろん、ぽっちが付いていないペグもあります)
ぽっちはペグと一体型ではなく、ほとんどが後付けされています。
なので、ぽっちがペグから外れそうになったり、外れて行方不明になることも多々あります。
「ぽっちがペグから外れそうになっている」という状態は、かなりの確率で雑音を生み出しているので、楽器の上部から雑音が聞こえる場合はご自身でぽっちの状態を確かめてみてください!
今回お預かりしたお客様の楽器も、ぽっちが外れかけている状態でした。
一見正常に見えますが、ぽっちを指で軽く引っ張ると…
簡単に取り外し出来ます。
そして、このようにぽっちが綺麗に取り外しができる場合でしたら、再接着すれば問題ありません。
しかし、実はもう一本ぽっちが外れかけているペグがありました。
少し分かりにくいかと思いますが、ぽっちに亀裂が入っているのがお分かりいただけますでしょうか。
どこかにぶつけてしまったのでしょう、衝撃でぽっちに亀裂が入り、フィッティングが緩くなってしまったのだと思われます。
今回のように、ぽっちが破損した場合(ぽっちを紛失した場合も)は新しくぽっちの交換が必要になります。
ぽっち交換
一番手っ取り早いのは、既製品のぽっちを加工して取り付ける、という方法なのですが…
残念ながら当工房には、ぽっち単体の在庫はございません。
なので、今回は1からぽっちを作成して交換します。
(なかなか行うことがない修理ですので、ざっくりではありますが、手順をご紹介します)
1.ぽっちの材は黒檀なので、使用済みの黒檀ペグを切り出して成形します。
荒削りの段階までは、時間短縮のために下画像のミニルーターで加工します。
2.ある程度の形まで削り、ペグとのフィッティング部の形状も合わせました。
(フィッティング部が完璧に合っていないと雑音の原因になるので、入念に行います)
3.あとは球体部の形を整えるのみなので、切り落とします。
上の画像を見ていただくとお分かりいただけると思いますが、ぽっちはとても小さなパーツです。
このままだと加工はかなり困難なので、一度成形用の他のペグに軽く接着させます。
4.そして、この段階でオリジナルのぽっちと見比べながら、やすりやナイフで形状を合わせていきます。
大体の形状は仕上がってきました。
(下のペグは、ぽっち加工用のペグです)
最後にオリジナルのペグと本接着をさせ、仕上げを行うと完成となります。
全体的に丸みを持たせる為、ぽっちの下部も削りました。
また、オリジナルのぽっちと同じ艶が出るように、徹底的に磨き上げています。
どうでしょうか、違和感無く仕上がったのではないかと思います。
最後に
最初でもお伝えしましたが、ぽっちが外れかけていると雑音の原因になります。
あるいは、外れていなくてもペグとぽっちのフィッティングに隙間があることで雑音が出る場合もございます。
ぽっちが緩くなっていないか、外れて行方不明になる前にチェックしてみてください。
ぽっちを失くしてしまった場合はご相談ください。
作成致します。
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弦楽器技術者の高瀬です。楽器の調子が悪い、音をもっと良くしたいと思いましたら、ぜひご来店ください。皆さまをお待ちしています!