みなさん、こんにちは。
以前、ご紹介した図解でわかる!~ネック反り編~、覚えていらっしゃいますでしょうか?
ネック反り編ではトラスロッドによる反りの修正をご紹介しました!
そして、今回ご紹介するのは【トラスロッドでは改善できないネック反り】、【ネック反り原因ではないビビり・音詰まり】の解決策・・・

「すり合わせ」と「リフレット」、その違いと特徴を図面を通して解説していきます!

どちらについても修理に至る理由・原因は様々ですが、その殆どは「調整作業では改善できない症状」であるが為の施工となっています。

みなさんは「すり合わせ」「リフレット」と聞いて、どんな内容をイメージしますか?
「すり合わせ」はフレットを削る、「リフレット」はフレットを打ち替える、というように大雑把に想像はしても、「作業の目的」をイメージされる方は少ないと思います。
今回の解説では、各作業の目的と特徴、メリット、デメリット含め紹介していきます。

まずはネックのコンディションを確認しましょう!

「すり合わせ」も「リフレット」も共通してフレットに手を加える作業ですが、その「フレット」が配置されているのはネックです。
まずはネックの状態をきちんと把握して、本当にフレットに手を加える必要があるのか、を判断しましょう。
ネック反りについての詳細は「図解でわかる!~ネック反り編~」にて紹介していますので、ご参考ください!
「ネック自体は正しい状態なのに、音詰まりやビビりが出てしまう」、「トラスロッドによるネック調整ができない、トラスロッドが仕込まれていない」、「特定のポイントを押弦すると酷くビビる」など、そんな場合には「すり合わせ・リフレット」が有効かもしれません。

「ネックに原因がある場合」

ギターやベース、ウクレレについて、それらの殆どは木材を利用し製造されています。
木材という天然素材が使用されているので、仮に工場製造の量産品であっても、経年や使用環境下におけるネックの反り方、動き方は多種多様、個体差があります。

理想は以下の図のように指板面とフレット頂点の位置が平行且つストレートの出ている状態ですが

弦の張力や木材の癖、寒暖差による伸縮等々、様々な原因でネックは動きます。
下の図は極端な例ですが、こんな風にネックが波打ってしまうことも屡々

ネックにネジレやウネリ、波打が生じて演奏に支障が出る場合、修理の選択肢は大きく分けて3通り

①弦高を上げてみる

②「すり合わせ」を行い、フレット頂点上の高さを均す

③「リフレット」を行い指板面から凹凸を整える


  • ①弦高を上げてみる

既に弦高が高く、押弦するのも一苦労な場合には向きません。
しかし、弦高が低い故にネック反りの影響をダイレクトに受けている場合には、ブリッジサドルでの弦高上げが最も簡易的で有効な手段です。応急措置で弾ける状態に、という事であれば、まずは弦高を上げてみましょう。
また、低めの弦高かつ、細目の弦を好まれて使われている場合には弦のテンション不足でビビりやすくなっている事もあるので、注意が必要です。


POINT 
押弦時には異常が無いのに、解放音ではビビり・音詰まりが出る場合、ナットに原因がある可能性があります。
詳しくはこちらの記事をご覧下さい。


  • ②「すり合わせ」を行い、フレット頂点上の高さを均す

比較的軽度なネック反りで、フレットの残量に余裕がある場合にとれる選択肢です。

フレット頂点を削り、全体の頂点位置が均一に揃うよう整える事で、フレット頂点上のネジレ、波打を表面的に解消・軽減させ、音に影響が出ないよう仕上げます。
ただし、削る余地が無いほど消耗しているフレットや、高さが均一になるよう整えると特定箇所で極端にフレットが低くなりすぎる場合には、この施工自体お勧めしないことがあります。


  • ③「リフレット」を行い指板面から凹凸を整える

特殊な例を除いて、リフレットを行う場合には「指板調整」と呼ばれる行程を行います。

指板調整とは、フレットを抜いた状態の指板面について、アール(指板上のカーブ)を維持しつつ、弦の通りに沿い真っ直ぐに削り直す作業を指しています。
この行程を踏み、新たなフレットを打つことで指板表面からストレートが出た状態になります。
ただし、ネックコンディションが酷く悪い場合やリフレットを過去に繰り返している個体、指板が極端に薄い仕様の場合には、敢えて指板調整でストレートを出し切らず、付随してすり合わせを行い整合性を図る事もあります。



「フレットに問題がある場合」

ネックの反り自体に異常は無いものの、経年や磨耗でフレットの高さムラが出ていたり浮きが生じている場合や、フレットが磨耗して頂点が平坦になった場合、傷が出来た事でビビりやチリつきが出ている場合など、フレットそのものが原因となり演奏に支障が出る際にも弦高を上げ対処することはもちろん、フレットに手を加える「すり合わせ」と「リフレット」が有効です。
しかし、その作業に至る理由・目的が異なります。


  • 「すり合わせ」を行う場合 
    まず、ビビり・音詰まりの原因がどのフレットにあるのかをチェックします。特定のポイントでビビりが出るのであれば、その周辺のフレットに浮きや高さムラが生じていないか確認し、浮きなどが生じている場合はフレットが動かないよう固定し直します。
    全てのフレットがしっかり指板の溝に収まっていることが確認できたら、すり合わせを開始しますが、フレットを削る量は状況により様々です。

全てのフレット高さを揃えようとする場合、既存フレットの最も低い位置に合わせフレットを削ることになります。あまりフレットが減っていない個体であれば全体を均しても良いのですが、よく使うフレットのみ酷く消耗している場合、凹凸を取りきってしまうと今まで問題なかった箇所に影響を及ぼすこともあるため、敢えて凹みを残すこともあります。


  • 「リフレット」を行う場合 
    フレット原因のビビり・音詰まりでリフレットのご案内を行う場合の殆どは、「すり合わせでは解消しきれない症状」である事が殆どです。
    フレット全体が消耗していて削る余地がない場合や、何らかの影響でフレット自体が変形し浮いている場合など、すり合わせを行うと症状が悪化してしまう事もあります。

フレット自体は消耗品ですので、フレットを打ち替えることで新品のような高さと使用感を取り戻すことができます。
また、消耗ペースを遅らせる為や、音質変化を狙って異なる材質のフレットに交換することもあります。
時として外的要因でフレットに深い傷が入っている際には該当フレットのみ打ち替えることもあります。ただし、この場合には新たなフレットを既存フレットの高さに合わせ削ることになるので、リフレットの恩恵(指板調整による効果など)は受けられません。


「すり合わせ」「リフレット」を検討する際に気を付けたいこと

  • 「すり合わせ」 
    この作業では基本的にフレットの最も低い箇所に合わせて全体を削り、均す施工です。
    リフレットと比較して安価且つ短期間での施工が可能です。調製では改善できない押弦時のビビり・音詰まりの場合にまず挙がる修理選択肢のひとつです。
    フレットが収まっている指板面に波打やネジレが出ている場合、フレット頂点上での波打やネジレを軽減させることは出来ても、根本からの解決には至りません。
    既存のフレットが磨耗し、高さに余裕がない場合はリフレットでないと症状が改善しない事があります。また、すり合わせを行えたとしてもフレット頭を丸めることが出来ず、弦との接点が「点」ではなく「面」になる事で押弦時に金属質なチリつきとなって聴こえることがあります。

  • 「リフレット」 
    この作業ではフレットを新しいものに打ち替える内容となります。すり合わせでは改善できない症状でも、指板面に生じた波打やネジレの修正から始めるので、フレット周りの根本的な部分から改善を図ることができます。使用感も新品に近い状態に戻ります。
    施工の特性上、基本的には既存の消耗したフレットよりも背の高い新しいフレットに変わるので、併せてナット交換が必要になる場合が殆どです。これはナットの弦溝よりもフレットの背が高くなり、解放状態で演奏した際に弦がフレットに当りビビりや音詰まりに繋がるためです。
    また、メイプル指板など指板面に塗装コーティングが施されている場合には指板調整で塗膜が無くなってしまうので、加えて塗装の必要が出てきます。

以上が「すり合わせ」と「リフレット」の特徴的な違いとなります。
どちらの修理を行うのかお悩みの方はよろしければご参考ください。
修理の細かい内容はお預かりする楽器のコンディションにより異なります。わからないことがあれば、まずはお気軽にご相談を!


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この記事を書いたスタッフ

ギターリペア工房中野

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