シンセやステージキーボードを買うと、必ずと言っていいほど入っている「Organ」「Rock Organ」「Jazz Organ」「Gospel Organ」「Combo Organ」といったプリセット音色。
しかしいざ弾いてみると
- コードを押さえているだけで平坦になる
- バンドスコア通り弾いても迫力が出ない
- ロックオルガンのはずなのに存在感が薄い
- ジャズオルガンのプリセットを使っても、それらしく聴こえない
- ロータリー・スピーカーのスピードを変えるタイミングがわからない
- 左手で何を弾けばいいのかわからない
といった悩みに直面することも多いと思います。
今回は、DTMやバンドでシンセを使っている中級者向けに、オルガン音色の種類、音作り、エフェクト、ジャンル別奏法、実践フレーズの考え方までをまとめて解説します。
まず知っておきたい:オルガンは「ピアノの代用品」ではない
オルガン音色を弾くとき、多くの人が最初につまずくのは、ピアノと同じ感覚で弾いてしまうことです。オルガンっぽい演奏をするには、音色だけでなく「オルガンの構造」を知ることが大事です。
ピアノは、鍵盤を押した瞬間に音が立ち上がり、その後減衰していきます。そのため、強弱、タッチ、ペダル、アルペジオ、装飾音などで表情を作ります。
一方、オルガンは基本的に、鍵盤を押している間は音が持続します。
またドローバーオルガンや多くのコンボオルガンでは、特殊奏法を除き基本タッチによる音量差が少ないです(注)。またサスティンペダルを使った持続音の表現も基本できません。
したがって、オルガンの奏法は、以下の要素が重要になります。
- 音量コントロール:ボリュームペダルなどを使用
- 音色コントロール:ドローバー等(後述)をリアルタイムに動かすなど
- ロータリーやビブラート(後述)をどう動かすか
- グリッサンドや装飾音
- 滑らかに音をつなぐため(レガート)の運指(指替え)
このようにオルガンならではの奏法を駆使しないとオルガンらしい演奏には聴こえないことになります。
注)後述する多列接点鍵盤の仕組みに起因する音色変化も発生する。
オルガン音色の主な種類
まずは一口にオルガンと言っても多くの種類があるのでそれをおさらいしておきましょう。
オルガンの歴史は非常に古く、原型は紀元前3世紀にはにすでに発明されていたらしいです。そして中世の教会などでおなじみのパイプオルガンを経て、リードオルガンやポピュラー音楽でおなじみの電気 / 電子オルガンなど様々な種類があります。
シンセサイザーのプリセットに入っているオルガンはだいたい以下のようなものが主流だと思います。
- パイプオルガン:教会やコンサートホールでもでおなじみ、風をパイプに送り空気を振動させて音を出す
- リードオルガン:足のペダルやモーター等で「ふいご」を動かして空気を出し入れし「リード」と呼ばれる金属の薄い板を振動させて音を出す
- 電気オルガン(トーンホイール方式):Hammondに代表されるドローバータイプ
- 電子オルガン(トランジスタ方式等のコンボオルガン): Vox、Farfisa、YAMAHA、Roland、Korgなど
ポピュラー音楽で使われるのは、大部分がドローバータイプとコンボオルガンで、必然的にシンセのプリセットも同様です。その割合は6:4くらいかなと思います。なおコンボオルガンというのは、1960年代、ロックやポップスなどで流行した、キーボーディストがステージで手軽に持ち運ぶ事のできるオルガンの総称です。
パイプオルガンやリードオルガンも楽曲によっては使用されますが、バンド等ではほぼ上記の2種と考えてよいでしょう。
ドローバー・オルガン系

代表的なのは、Hammond B-3、C-3、A-100などに代表されるトーンホイールオルガン(回転する金属歯車で音程を生み出す仕組みを採用したオルガン)です。倍音を混ぜて音色を調整する装置(ドローバー/ハーモニックバー)を使って音色を作ります。※上記写真はArturiaのソフト音源「B-3 V」
トーンホイールオルガンは、ロック、ジャズ、ブルース、ゴスペル、ソウル、ファンクなど、幅広いジャンルで使われます。現代ではモデリング技術等でデジタル化された音源を搭載したモデルも多いです。
特徴は以下です。
- ドローバーによる倍音構成の変化
- ロータリースピーカーとの組み合わせ
- パーカッション機能によるアタック感
- 歪ませるとロック向きになる
- レガート、グリッサンド、トリルが映える
- 多列接点鍵盤
シンセのプリセット名では、以下のように表記されることが多いです。
- Jazz Organ
- Rock Organ
- Gospel Organ
- Drawbar Organ
- Tonewheel Organ
- B3 Organ
- Rotary Organ
- 888 Organ
- Full Organ
バンドで「オルガン」と言ったとき、まず想定されるのはこの系統ではないでしょうか。
ドローバーはハーモニックバーとも呼ばれる、音色を作るための「引き出し式のバー」のことで、基本は9本(足鍵盤は2本だったりします)。RolandやKorg、Nordなどのコンボオルガンキーボードや一部のシンセにもこのドローバーを装備している機種もあります。(下記はRoland V-Stage)

主な機能としては
- 各ドローバーは、異なる高さの倍音成分を担当します
- 引き出すほど、その成分の音量が大きくなります(1から8までの8段階)
- 複数のドローバーを組み合わせて、太い音・明るい音・柔らかい音などを作ります
これは原型となるパイプオルガンの構造を踏襲したものです。
中央ドを弾いた場合の各ドローバーの音程は下記のようになっています。なお「’」(フィート)というのはパイプオルガンのパイプの長さに由来しています。数字が大きいほど低い音、小さいほど高い音になります。

ドローバーを全部引き出した場合に理論上聞こえる音

なお各ドローバーのブレンド具合を9桁の数字で表現する場合もあります。たとえばジャズで多用される「16、51/3、8」のような左三本だけフルに引っ張り出したセッティングは「888000000」と記述します。※ジミー・スミス(ジャズオルガンの巨匠)セッティングと呼ぶ人もいます。

ボサノバのバッキングに使えそうなセッティング「805000000」

ではいくつかのドローバーセッティングを聴き比べてみましょう。
008000000:8’のみの非常にシンプルなサウンドです。
888000000:前述のジャズでよく使われる基本セッティング。
848400000 :ゴスペル等でよく使われるセッティングです。
888888888:全部引き出したフルドローバーと呼ばれるセッティング。
このようにドローバーは、オルガンの音色を細かく調整するためのミキサーのようなものですが、ドローバー方式のオルガンは「加算合成」のシンセの原型と言うこともできるのかもしれません。
ハモンドB-3などは、上下鍵盤にそれぞれ9本づつのドローバーが2セット、ペダルはドローバー2本。上下鍵盤のドローバーは白黒反転している鍵盤がスイッチになっているのでそれで切り替えることができます。
多列接点鍵盤とキークリック
なおハモンドB-3などの一つ一つの鍵盤には、9本のドローバーに対するスイッチが鍵盤に対し9〜11(機種によって異なる)ずつ櫛状に配置されています(多列接点鍵盤)。つまり鍵盤を押すと、1’から16’までの9本のドローバーがわずかな時間差で順次ONになるという仕組みです。なお機種によっては鍵盤を超ゆっくりと押していくと、各ドローバーが順次に発音することになり、特殊な奏法が可能になります。
スイッチONがずれることによって生じる「キークリック」は、独特のパコバチサウンドを生み出しますが、たとえばフルドローバー(888888888)の場合、鍵盤を押し込む深さや速さによってごく微妙にサウンドが変化するわけで、タッチによっても実際は音色が変化することになります。それがあの独特のサウンドを生み出しているわけです。
なお一部のデジタルオルガンでも、最新のセンシングテクノロジーによってこの多列接点鍵盤の振る舞いをシミュレーションすることが可能な機種が存在します。
パーカッション
オルガンのパーカッションは、鍵盤を押した瞬間だけ鳴るアタック音を加える機能です。前述のキークリックとは異なるものです。
特徴は:
- 音の出始めに「ポン」「コツッ」とした成分を足す
- すぐに減衰して消える
- 音に輪郭や歯切れの良さを出す
- ジャズ、ロック、ファンク系のオルガンでよく使われる
- シングルトリガー
各種設定は以下の通り
- Volume(パーカッション音量)
- Soft / Normal(Loud)
- Decay(減衰の速さ)
- Fast / Slow
- Harmonic (音程)
- 2nd(第2倍音) / 3rd(第3倍音)
ハモンドB-3などではパーカッションをONにすると、1’のドローバーの音は出なくなります。またアッパー(上鍵盤:後述)の鍵盤のみに効果がかかるようになっています(※)。※2つの上鍵盤セッティングのうち右のセットのみに効果がかかります。
たとえば「888000008」というセッティングでパーカッションをONにすると「888000000」の音が鳴るわけですが、演奏中にパーカッションをOFFにすると「888000008」のサウンドに切り替えることができます。演奏中にボタンを押すという最小限のアクションで音色を変える事ができるわけです。
V-Stageのパーカッションパラメータ

パーカッションセッティングは8種類の組み合わせが考えられますが、いくつか聞き比べてみましょう。以下は8フィートのみ「008000000」セッティングです。
パーカッション無し
Normal / Slow / 2nd
Normal / Slow / 3rd
Soft / Fast / 3rd
なおオルガンのパーカッションは基本シングルトリガーなので、レガートで弾いた音にはパーカッションは効きません。しかし一部のPCM系シンセのオルガンプリセット音色は、マルチトリガーで、その際はすべての音にパーカッション音が付加されるので、オルガンに馴染んでいる方は少々不自然な感じを持たれるかもしれません。なおキークリックは全鍵盤の打鍵時に生じます。
モノフォニックシンセを使った、シンセベースの特徴的なグリッサンドのプレイ(下記参照)においても、マルチトリガーだとすべての音にアタック音が加わり、全く雰囲気が変わってしまうのにすこし似ていますね。
レガートON(シングルトリガー)のベースライン〜後半のグリッサンドが特徴的。
これがマルチトリガー音色になると
と、全く使い物にならなくなってしまいます。オルガンに限らずシンセ音色の特徴を知ると知らないでは大きな差が出る一例だと思います。
ELP / TARKUS冒頭の「ERUPTION」では、左手の4度オスティナートフレーズにはパーカッションの音が聴こえますが、もしかしたらこれは2台のハモンドを弾いているのかもしれません。
コンボオルガン系
コンボオルガンは、1960年代のロック、ガレージ、サイケ、ビートポップなどでよく使われた、主にトランジスタ式の小型オルガンです。(文脈によってはハモンドもコンボオルガンの一種として語られる場合もあります)

代表的機種としては、Vox Continental、Farfisa Compactなどがあります。
Doorsのレイ・マンザレク(kb)はVox Continentalを愛用。左手でフェンダー・ローズ・ベースを弾いていました。
特徴は以下です。
- 明るくチープで鼻にかかった音
- トーンホイールと比較すると電子的なサウンド
- ビブラートやトレモロが強めにかかることが多い
プリセット名では、以下のように出てきます。
- Combo Organ
- Vox Organ
- Continental
- Farfisa
- 60s Organ
- Transistor Organ
- Garage Organ
- Surf Organ
国内でもコルグやACE TONE、ヤマハなどが多くのコンボオルガンを製造していた時期があります。ちなみに筆者は最初に買ったキーボードはYAMAHAのYC-20というコンボオルガンでした。

YC-20は7本のトーンレバーを組み合わせて音色を作るオルガンでしたが、コーラスやフェイザー、フランジャーなど、さまざまなエフェクトを試しても、なぜあのレコードで聴けるようなハモンドの音が出ないのか、当時は真剣に悩んでいました。仕組みが異なるので当たり前でしたが。
50年前のチック・コリアはYAMAHAのYC-45Dを愛用していましたね。スタジオ盤だとステレオディレイをかけたトリッキーなフレーズが聞けます。

コンボオルガンは、洗練されたジャズというより、荒っぽく、ポップで、少しレトロな存在感を出したいときなどに向いているのかもしれません。
Lucy In The Sky With Diamondのイントロはローリー(Lowrey)社の真空管式のホームオルガン「DSO-1」と言われています。
テリー・ライリーの「A Rainbow in Curved Air」(1969年)では、コンボオルガンの演奏を手弾きで録音し、バリスピード(録音テープの回転速度を変えて録音・再生する技術)を用いて音程や速度を変化させながら、ダビングを重ねています。シーケンサーによる演奏ではありません。
二段鍵盤とペダル
本来オルガンはアッパー(上鍵盤)、ローワー(下鍵盤)の二段鍵盤に加え、ペダルベースの3パートで演奏されるのが基本でした。オルガンとドラムのデュオ演奏もよく見かけますね。
なお足鍵盤のペダルを使わずに、下鍵盤=ローワーで左手が低音部を担当するスタイルもよく見かけます。
3パートを使用する場合:
🎹 鍵盤の役割
- 🎵 アッパー: 右手でメロディー
- 🎶 ローワー: 左手でコード、バッキング、リズム刻みなど
- 🦶 ペダル: 足でベース
という分担が多いですが、
左手ベースの場合:
🎹 鍵盤の役割
- 🎵 アッパー: 右手でメロディー
- 🎶 ローワー: 左手でベース、またはベース+コード
- 🦶 ペダル: 使わない、または補助的に使う
というスタイルになります。ペダルを短く踏んだ際に生じるノイズ音を、キックドラムのようにリズムとして使用するプレーヤーもいます。
また右手がローワーとアッパーを行き交ったりその逆も珍しくありません。下記はJack McDuffのソロ。左手はベースライン。右手でたまにローワー鍵盤でバッキングを入れています。
ベースペダル、ローワー、アッパーの演奏例(セッティングは、U:888030100、L: 888000000、P:800000000など)

大型の機種ではドローバーはそれぞれのパートごとに用意されています。写真はモデリング音源を搭載したハモンドオルガン「XK-7D」。
アッパー / ローワーともにドローバーが2セットずつ用意されていますね。

エフェクト
オルガン音色は、単体の音だけでなく、エフェクト込みで成り立っているとも言えます。
特に重要なのは以下です。
- ロータリースピーカー
- オーバードライブ/ディストーション
- コーラス/ビブラート
- リバーブ
ロータリースピーカー
トーンホイールオルガンに欠かせないのが、ロータリースピーカーです。
代表的にはLeslieスピーカーのような、内部のホーンやローターが回転するスピーカーの効果です。もともとはパイプオルガンのシミュレーションだったのですが、オルガンの演奏表現にはなくてはならない存在です。
こんなサウンドになります。
下記写真は、鈴木楽器製作所のヴィンテージの「122」の復刻版「122H」


仕組みは:
- スピーカーやホーンを実際に回転させる
- 音の向きが変わることで、音量・音程・響きが周期的に変化する
- その結果、「うねる」「回る」ような独特のサウンドになる
主な効果は:
- ドップラー効果による音程の揺れ
- 音量の揺れ
- ステレオ感・空間的な広がり
- 音に厚みや動きを加える
多くの機種では速度を切り替えられます。また速度の微調整がホーンごとに可能だったりします。
- Slow / Chorale:ゆっくりした揺れ。落ち着いた音
- Fast / Tremolo:速い揺れ。派手で迫力のある音
- Brake / Stop:回転停止、または減速停止
演奏中のSlow /Fastの切り替えポイントは非常に奥が深く、音量、ピッチ、定位が揺れることで、独特のうねりが生まれます。ここぞというところで切り替えるのが腕の見せ所です。コツとしては「切り替えの瞬間を演奏の一部にする」ことです。
例えば、サビの1拍前でグリッサンドとともにFastに入れる。
ソロのロングトーンでFastにする。
ブレイク後にSlowへ戻して、次の展開を作る。
などなどです。
848400350 のドローバーセッティングでロータリー効果を聴き比べてみましょう。
ロータリーOFF:非常に淋しい感じですね
ロータリーON SLOW:ゆっくりとしたうねりが生まれます
ロータリーON FAST
ロータリーON SLOWとFASTを演奏中に切り替え
SLOW /FASTを切り替えることでアーティキュレーションが豊かになったのがわかると思います。SLOWからFASTまたはその逆に切り替えた場合、音色は徐々に変化していきますが、それがオルガン独特のアーティキュレーションを生み出しているわけです。
実際の演奏では、ロータリーのSLOW/FASTの切り替えや、ドローバーの操作が頻繁に行われます。
これらは単なる補助的な操作ではなく、音色や表現を自在に変化させる、オルガン演奏における重要なテクニックの一つです。教会の聴衆の反応もツボを得て微笑ましいですね。
ロータリーのSlow / Fastの切り替えスイッチ(ハーフムーンスイッチ)は本体左側にあります。シンセでは、モジュレーションホイールやスイッチなどでSlow / Fastを切り替えられるプリセットも多く見られます。
下記はデジタルオルガン用のオプションスイッチ

オーバードライブ/ディストーション
ロックオルガンで重要なのが「歪み」です。
歪ませるには、「レスリースピーカーの真空管をドライブさせる」「ギターアンプに繋ぐ」「エフェクター(オーバードライブ)を使う」などの方法があります。
ただし、ギターのように深く歪ませすぎると、コードが潰れて何を弾いているかわからなくなります。ハードロックなどでは左手と右手でRoot-5thの5度音程(または5th-Rの4度)でギターのパワーコードのように演奏すると効果的です。

おすすめの考え方は、
- バッキング:軽いドライブ
- ソロ:中程度のドライブ
- ハードロック:中〜強めのドライブ
- ジャズ:ほぼクリーン、または軽いサチュレーション
- ゴスペル:クリーン〜軽いドライブ
です。
歪みは、ドローバー設定や音域とセットで考えましょう。
低音を多く含んだ888000000で強く歪ませると、かなり濁ります。
その場合は、左手の低音を減らす、またはEQでローを整理すると扱いやすくなります。
エディージョブソン(U.K.)はフォース・インターバル・ビルド(4度堆積)で歪ませていますね。

コーラス/ビブラート
トーンホイールオルガンには、独特のコーラス/ビブラートがあります。
シンセのプリセットでは、
- Chorus
- Vibrato
- Scanner Vibrato(電気機械式の伝統的なビブラート)
- C1/C2/C3
- V1/V2/V3
のように表記されることがあります。
ざっくり言うと、
- ビブラート:音程の揺れが中心
- コーラス:厚みと揺れが加わる
です。
C3のOFFとONの比較(OFF>ONの順に再生します)
ジャズやゴスペルでは、コーラスを薄くかけると雰囲気が出ます。
ロックでは、ロータリーと歪みのほうが目立つため、コーラスは控えめでも十分かと思います。
リバーブ
オルガンは持続音なので、リバーブを深くかけると音が飽和しやすくなります。
バンドでは、基本的にリバーブは控えめでOKです。
おすすめは、
- ロック:少なめ
- ジャズ:部屋鳴り程度
- ゴスペル:やや広め
- パイプオルガン:深め
- コンボオルガン:スプリングリバーブ風も合う
です。
ELPの「展覧会の絵」ではパイプオルガンを意識したリバーブになっていますね。

下記のリバーブタイムは約5秒(5000msec)ソロであればこれだけ長くても問題ないと思います。
リバーブは、ソロでは気持ちよく聴こえても、バンド全体で鳴らすと濁ることがあります。特に左手で低音を弾く場合、リバーブの低域が膨らみやすいので注意しましょう。
Deep Purpleの「BURN」(1974)における、ロック史に輝くジョン・ロードのオルガンソロ。最後の「グワーッシャーン」という音は、ハモンドC-3の本体を持ち上げて傾け、床に叩きつけることで、内蔵スプリング・リバーブに衝撃を与えて鳴らしたものと思われます。中学生の頃、初めて聞いたときは体中に電気が流れたような気がしました。
奏法
これまで解説してきたオルガンの構造や機能、エフェクトなどを集約し、ここからは、それらを活用した特徴的な奏法を紹介します。
グリッサンド
グリッサンド(グリス)は、指先や手のひらを鍵盤の上で素早く滑らせて、階段状に音階を連続して鳴らす演奏技法です。白鍵だけ、黒鍵だけ、あるいは両方を使うなど、色々なバリエーションがあります。
ピアノとオルガンでは少々奏法が異なります。ピアノは減衰音のため音の粒が比較的はっきりしていますが、ペダルを使うと響きの多い華やかな効果になります。オルガンの場合は持続音なので「持続する音の層が移動する」ような印象になりやすいです。
言葉ではなかなか伝わりにくいのでここでキース・エマーソンのグリスを見てみましょう。(映像と音が少々ズレていますけど)
ライブパフォーマンスをかなり意識したプレイですが、アッパー鍵盤でフレーズ(右手)、ローワー鍵盤でグリッサンドを弾いているのがわかります。
この「ビュワーン(?)」といった感じの音を出すには手のひらと鍵盤の接触面が広くなるようにすることと、ローワー鍵盤のドローバーセッティングは比較的シンプルにするのがポイントです。(008000000とか)。あまり倍音が多いと音の層が移動する感じが出にくいのでは無いかと思います。

ウォーターフォール鍵盤について
オルガンでおなじみのウォーターフォール鍵盤は、ハモンドオルガンなどで使われる、前端が角ばらずストンと落ちた形の鍵盤です。
名前の通り、鍵盤の手前側が「滝のように」滑らかに下へ落ちる形をしています。

ウォーターフォール鍵盤の特徴
- 鍵盤の手前に出っ張りが少ない
- 角が丸められていて、指や手のひらが引っかかりにくい
- グリッサンドがしやすい
- 手のひらや指を滑らせる奏法に向いている
コーリー・ヘンリーのプレイ。すごいグリッサンドですね。これぞゴスペルオルガン!手のひらの使い方に注目!!
装飾音
オルガンらしいフレーズの特徴の一つは、主音の前に短い音を入れる「装飾音」を多用して旋律にリズム感や華やかさを加えます。半音一つまたは2つ分を引っ掛けて弾くと良いでしょう。音価の長い音はほぼ装飾音符をつけると言っても良いかもしれません。ブルーノートもしかり。
下記は連続して持続音を重ねるフレーズ。右手は指換え(後述)して弾きます。または低音部はペダルでふんで、両手で弾いてもOK。4小節目は派手目のグリッサンドです。ロータリーは1小節目ロングトーンでFastに切り替え、最後のグリスの手前でSlowに切り替えるとドラマチックになるのではないかと思います。

ブルース風のフレーズ。1段目がアッパー、2、3段目はローワーですが2段目は右手で弾きます。ロングトーンは装飾音で引っ掛けるのが定番ですね。

持続音ならではのフレーズ
Jimmy Smithのオルガンならではの持続音を活用したフレーズ。ドローバーは「800008888」でしょうか?ロータリーはFast。ドとミを保持したまま親指でファ♯-ソの装飾フレーズを弾いていますね。
ゴーストノート
フレーズの合間にアクセント的に弾く奏法ですが、明確な音程や音量をはっきり聴かせる場合と、音程感のないリズムやグルーヴだけを感じさせる非常に弱い音、あるいは音になりかけのタッチで演奏される場合があります。ギターの空ピッキングのようなニュアンスに例えられるかもしれません。
右手のフレーズに左手でタイミングを見計らって入れる場合が多いですが、アッパーだけでなくローワーで演奏する場合もあります。
Lachy Doleyのオルガンソロ。左手はほぼゴーストノートのみですが、手のひらを広げ気味にしています。
0:38〜のフレーズ(A)

0:50〜のフレーズ(B)。前述の「持続音ならではのフレーズ」ラの音を持続させたまま和音を弾いてます。

どちらも左手は右手のフレーズの合間を縫っているのがわかりますね。
16分音符のパルスで表記すると下記のようなコンビネーションになっています。ドラムのパラディドルっぽいリズムですね。
- A:R-R- LRLL R-LR LLR- | LRL- RRLL R-R- LRLL
- B:R–LR L–R– LRLL RRL– | R–LR L–R– LRLL RRL–
オルガンではありませんが、Lachy DoleyはHohner のクラビネットD6にアームを取り付けた改造機を愛用しています。
イントロはまさにギターカッティングのようなゴーストノートのプレイですね。昔ジョージ・デュークが来日したときも同じようなものを使用していました(どこかの楽器屋さんが作って使ってもらったんじゃなかったかと記憶しています)。
同一音連打
オルガンの鍵盤はピアノと比較すると軽いし同一音の連打も弾きやすいと思います。弾き方はいくつかあります。※数字は親指(1)〜小指(5)
- 21
- 321
- 4321
運指の例:3小節目は応用フレーズ

ほかにもLachy Doleyもやってましたが両手で「2(R)2(L)2(R)2(L)」と弾いたり、ジミー・スミスはなんと右手人差し指「2222」で弾くこともありました。
レガート
連続する和音などは滑らかに音を繋げなくてはなりませんが、オルガンは基本サステインペダルがないので、運指を工夫してなんとか弾かなくてはなりません。
シンセの場合、オルガン音色でサスティンペダルも使えてしまうのですが、やはり本物っぽく弾くには極力サスティンペダルは使わないで演奏したいですね、、、と言いながらホールドしておいてドローバーとかロータリーもコントロールできるので、自分もサスティンをたまに使います。

3〜4小節目をレガートで弾くためには、ソの音は4の指を保持したまま5に、ミの音を2から3,レは2から3、ドは1から2へ「指替え」する必要があります。他にも良い運指があるかもしれませんが。色々と試してみてください。デモ音源ではグリッサンドやロータリーFAST切り替えなども使っています。
これも同様にレガートで演奏してみてください。

ボリュームペダル
オルガンはタッチで音量コントロールが基本できないので、ボリュームコントロールは、後述のドローバーコントロールやボリューム(エクスプレッション)ペダル等で行います。シンセサイザーでオルガン音色を演奏する場合も、エクスプレッションペダルを使用しましょう。パッド音色などでも必要になると思うので、1つくらいは持っていたほうが良いと思います。

ドローバーコントロール
演奏中にドローバーセッティングの切り替えだけでなく、リアルタイムにセッティングを変えていくテクニックです。
例えば前述のゴスペル動画などでも、最初は「848400000」のようなセッティングで、徐々に盛り上がっていくに連れ、上の方を足していくといった盛り上げ方をやっていましたね。
さらには下3本くらいをスピーディーに動かすことで、フィルターをかけたような効果を出すこともできます。
まとめ:オルガン音色は「設定3割、奏法7割」
まだまだオルガンの奏法には様々なテクニックがあり、今回全てを紹介することはできませんでした。
オルガン音色は、プリセットを選ぶだけでは完成しません。
ドローバーやロータリー、歪み、装飾音、グリッサンド、レガートなど、音色に合った奏法や操作を加えることで、初めてオルガンらしい存在感が生まれます。
まずは難しく考えず、ロータリーをSlow/Fastで切り替える、短い装飾音を入れる、左手でリズムを加えるといったところから試してみてください。たった一つの操作でも、演奏の印象は大きく変わります。
今回紹介した設定やフレーズを出発点に、自分の機材と楽曲に合う音を探してみましょう。シンセの中に眠っているオルガン音色を、ぜひ「弾いて動かす音」として楽しんでください。
ジャズピアニストが15分でオルガンをマスターできるのか?
再現トラック作成させていただきました。
Vox ContinentalやFarfisa、Hammond B-3などのヴィンテージオルガンのほか各種シンセサイザーやエレピ等のソフト音源の究極バンドル「Arturia V Collection Pro」
さらにオルガン演奏を極めたい方にオススメ!オルガンのスペシャリストでもある大高清美氏の名著

この記事を書いた人

デジランド・デジタル・アドバイザー 坂上 暢(サカウエ ミツル)
学生時代よりTV、ラジオ等のCM音楽制作に携り、音楽専門学校講師、キーボードマガジンやDTMマガジン等、音楽雑誌の連載記事の執筆、著作等を行う。
その後も企業Web音楽コンテンツ制作、音楽プロデュース、楽器メーカーのシンセ内蔵デモ曲(Roland JUNO-Di,JUNO-Gi,Sonic Cell,JUNO-STAGE 等々その他多数)、音色作成、デモンストレーション、セミナー等を手がける。






