プリセット音色を“それっぽく”弾くコツ | #1 ピアノ系音色

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プリセット音色を“それっぽく”弾くコツ | #1 ピアノ系音色

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シンセのプリセット音色を弾いてみたとき、「デモ動画ではあんなに良く聴こえたのに」と感じたことはありませんか。YouTubeなどのデモ演奏では、プレーヤーがピアノ、ベース、ストリングス、ブラスなど、それぞれの楽器らしく聴こえる弾き方を自然に使い分けていますよね。

本特集では、そんな“らしく聴かせる”ためのコツを、楽器別にわかりやすくご紹介したいと思います。音域、フレーズ、強弱、音の切り方を少し意識するだけで、かなり印象は変わってくるのではないでしょうか。というわけで第一回目は一番身近なピアノ系音色についてです。

譜面どおり弾けばそれらしくなる?

私事で恐縮ですが、私は長いこと楽器メーカーさんのデモなどをやらせていただいておりましたが、シンセのプリセット音色デモで一番苦労したのが実はピアノ系音色でした。

私はもともとクラシックピアノを習ったわけでもない、ただのシンセ好き打ち込み人間だったのですが、当時特にPCM系シンセのプリセットは1番が大体アコースティックピアノでしたので、必然的にデモの一発目はピアノ・・新製品発表会のデモなどではいつも緊張してた記憶があります。電子ピアノのデモならまだしも、シンセのデモでクラシックピアノ曲を弾くわけにもいかず、センスの良いインパクトのあるフレーズを弾くべく相当研究しました(私がちゃんと弾けていたかどうかはまた別の話)。

皆さんも市販のバンドスコアのキーボードパートを楽譜どおり弾いても「なんだか物足りない」「ちょっと雰囲気が違う」と感じたことはありませんか?

バンドスコアのキーボード譜は、実際の演奏を完全に再現したものというより、曲の流れやコード進行をわかりやすくまとめた“目安”になっていることが多いからです。コードネームしか書いていなかったり、実際に演奏されている左手の音などは採譜されていないものも少なくありませんでした。

それで私がやったことは、片っ端からピアノのかっこいい演奏を「耳コピ」することでした。昔はYouTubeもないのでひたすらCDを買いまくってフレーズ探しをしていたものです。キーボード専門誌の「完コピ」フレーズ集特集なども参考にしたりしましたが、ほとんどは耳コピでした。後日自分がその雑誌の記事を書くことになるとは思っておりませんでしたが。

正確で完全な譜面が入手できない場合などは、フレーズの構造やポイントを把握していないとそれっぽい演奏はできません。それにせっかくならオリジナルのそれっぽい演奏ができたほうが嬉しくないですか?

ということで、それではピアノフレーズの特徴やポイントについて紹介していきたいと思います。最初にシンセのピアノ系音色プリセットについて整理してみることにします。

ピアノ系音色にはどんな種類がある?

シンセの中でも、もっとも出番が多い音色のひとつがピアノ系プリセットです。アコースティック・ピアノ、エレクトリック・ピアノ、FM系エレピ、レイヤー・ピアノなど種類は豊富ですが、それぞれに似合う弾き方やフレーズがあります。

シンセのプリセットには多数のピアノ音色が入っていますが、大別すると以下のようになります。それぞれの説明とアイコニックな音色名の例を非常にざっくりですがまとめてみます。

  • アコースティックピアノ(アコピ)系
    • スタインウェイ、ベーゼンドルファーといった有名ピアノのサウンドですね。アップライトピアノも別途あったりします。
      • 「Studio Piano」「German Grand」「Rock Piano」「Upright」など「Italian Grand」はおそらくFAZIOLI風ということです
  • エレクトリック・ピアノ(エレピ)系
    • Rhodes(ローズ)やWurlitzer(ウーリッツアー)といったビンテージ有名エレピ
      • 「Rhodes」「EP」「Dyno」「EP Mix」「Wurli」
  • 250px-Rhodes_Mk_II_73_croppedwikipedia
  • FM、JD系
    • YAMAHA のDX-7(FM音源)やRolandのJD-800(PCM音源)などのデジタル系のエレピサウンド
      • 「FM EP」「JD Piano」など

YAMAHA_DX7-500x169

  • エレクトリックグランド系
    • YAMAHAのCP-80(ハンマーアクション方式でピックアップで音を拾う往年の名機)
      • 「CP」「Electric Grand」など

CP-500x409

  • レイヤー系
    • アコピとエレピ、アコピとFMエレピやパッド系シンセ音色などを重ねたリッチなサウンドです。昔はアコピとエレピをそれぞれ1回ずつ弾いてダビングしていましたが、MIDIの誕生で2つの音色をレイヤー(重ねる)して同時に鳴らすことができました。現在は1台のシンセの内部で複数音色をレイヤー可能です。
      • 「MIDI Grand」「Piano + Strings」など
  • クラビネット系
    • ピアノではありませんが、クラヴィコード(弦を金属で叩くチェンバロに似ている楽器)のような構造を持ち、電気ピックアップで音を拾うタイプのキーボード。スティーヴィー・ワンダー等でおなじみ、ホーナーのD6が有名。シンセのプリセットの定番でもあります。
    • 「Clav」「Phaser Clav」「D6」など
Clavinet_d6

このように、一口に「ピアノ系」と言っても非常に多くの種類があるのですが、「ピアノだから同じ弾き方でOK」ではなく、楽器や音色のキャラクターに合わせることが大切です。

それぞれの特徴を捉えた演奏をするには、それらを使用している有名曲を聞いてそのエッセンスを研究することが非常に大事だと思います。実際に聞いてみないと理解するのは難しいです。例えばローズ風のエレピだったら・・

フェイザーのかかったエレピが特徴ですが、これをアコピで弾くと、おかしくはないのですが全く雰囲気は変わってしまいますね。ちなみにこのコード進行(D♭△7-C7 | Fm7-E♭m7-A♭7)は、Just The Two of Us進行とも呼ぶ方もいますが、非常に多くの曲でも使用されています。※「町中華で飲ろうぜ」のテーマ曲(スカパラの「君と僕」)など。

コードワークを覚えよう

理想はコード譜だけ見て、ジャンルに合わせてそれらしく演奏できることだと思います。

ここで扱うピアノ系の演奏は、クラシックのピアノ曲のように、両手で細かく音を動かしながら一人で楽曲全体を成立させるスタイルとは少し異なります。

どの音色にも共通して大切になるのが「コードバッキング(コードワーク)」の弾き方です。

YouTubeなどのデモ演奏を聴いていると、プレーヤーは派手なフレーズを弾いていなくても、コードの押さえ方やリズム、音の切り方だけで、その音色をとても魅力的に聴かせています。実は、ピアノ系プリセット音色を“それらしく”鳴らすためには、まず基本のバッキングを整えることが大きなポイントになるのではないでしょうか。

今回はコードとはなにか?については別記事で説明していますので本記事では詳しくは触れませんが、興味のある方は下記記事をお読みください。

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奏法バリエーション

ソロの場合は、ベースとコードというアンサンブルを成立させるうえで必要不可欠な要素を一人で演奏するというのが基本となります。

ではシンプルなコード進行においてどのようにバリエーションを展開していくかを考えてみましょう。音色はアコピでもエレピでもレイヤー系でも構いません。

ここではベース音がずっとC音を弾いていて上部の和音が変化する、イントロ等で使われそうな進行にしてみました。こうした同じ音をルート保持する手法をベダル・ポイントと呼びます。なおバックはシンプルな8ビートをイメージしています。

最初は基本中の基本から、中級者以上の方はここは読み飛ばしていただいても結構です。

※以下サウンドはRoland V-Stage 76を使用しています。

譜例1は右手で和音、左手でベース音を弾いています。基本中の基本ですね。コードごとに2分音符という「白玉」的な演奏です。コードはそれぞれ基本形なので音の跳躍が生じてしまい、ちょっと不自然ですね。※以降(onC)は調略します

転回してみましょう

コードの転回形を使用してトップノートがミ-ファ-ソ-ファと滑らかになるようにします。ピアノ系音色の音域は、和音を基本中央ド(C)近辺に配置しておくとバンド全体で安定した響きを与えます。(ギターのボイシングとの兼ね合いで例外はあります)

ギターソロのバックでキーボードが和音を担当する場合などは、こうした配慮が必要になるわけですね。

左手のベース音をオクターブに配置して変化をつけますが、依然演奏はシンプルです。ベースラインに変化をつけてみます。

ベース音が2拍4拍目の8分音符ウラに加わることで、8分音符のリズムが加わりリズミック感が出てきました。

急に難易度が上がりましたが、左手がオクターブ、右手が八分音符のリズミックなバッキングになりました。演奏するコツとしては常に8分音符のパルスを感じて八分音符単位で左右の手のタイミングを確認していくと良いでしょう。○=八分音符、☓=八分休符

はじめはゆっくりのテンポで徐々に早くしていくとよいでしょう。左手は1小節目の4拍目のウラと2小節目の頭のところが難所かもしれません。

これを一つのリズムパターンとして、徐々にボキャブラリーを増やしていくことで、即興で様々なパターンを演奏できるようになると思います。英会話の英単語と一緒ですね。

流石にこのシンプルなコード進行だと、音色デモではつまらないので、様々なコード進行をつけてやるとかっこよくなるかもしれません。

Em7(9)-A7(♭13) | Dm7(9)- G7(♭13) | などを試して見てください。

アルペジオ

次のバリエーションとして、サステインペダルを使用したアルペジオパターンも考えてみましょう。

サステインペダルは音切れの無いようにかつコードチェンジで濁りの無いように配慮しなくてはなりません。

コードが変わった瞬間に「離して踏む」という動作が最初はぎこちなくなるかもしれません。かかとを床につけて足の付け根で操作して、「打鍵の反動で足が上がりまた踏む」といった感覚で練習すると良いかもしれないです。

コードの変わる8分音符前に先取りするアンティシペイションを行うことでフレージングに変化をつけています。

ソロでは問題ないのですが、バンドで演奏する場合はベースとギターがいるので、それぞれの音とぶつからないように配慮しなくてはなりません。
例えばベースがドドドドと弾いているところにキーボードが低いドを弾く分には音が重なって音量が大きくはなるものの、破綻は起きません(トータルサウンド的には変化は生じます)。ただしド以外の音が入ったラインをどちらかが弾いた場合、異なる低音が重なることで全体が濁ってしまうことがあります。

また曲調によっては低音はベーシストに任せ、キーボードは右手(左手)だけというケースもありえます。一方の空いた手で他のパートを弾く場合もあるでしょう。

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アコピとエレピの奏法の違い

アコピは音の輪郭や強弱がはっきり出やすく、エレピはコードの響きや余韻、グルーヴ感を活かすと“らしく”聴こえます。

基本は同じなのですが、エレピはアコピよりも音が厚い傾向があるので、低域ではあまり音を重ねないほうが良いかもしれません(曲のアクセントとして例外あり)。またオープンなボイシングもエレピならではです。

某有名曲のイントロのピアノでは、4つ打ち(コードを四分音符で弾くスタイル)のアコピらしい低域を多用した重厚なハーモニーを聴くことができます。冒頭のCからGに行こところ、さり気なく引っ掛けてGのルート音を弾いていますが、これがあると無いでは大きな違いで、しかも意外とあれ難しいんですよね。

なお4つ打ちの場合のコツですが、左手のオクターブで弾くルート音を右手の四分音符の八分ウラに入れてやると、リズム感が生まれて伴奏らしくなります。エレピの場合は、上記のようにコードをオクターブで挟んで弾いたり(ドミソド)、低い音域のベースノートはあまり使われません。

他にもアコピらしい音域を広く使ったフレーズ(Lyle Mays風)。パッド音を重ねても美しいかもしれません。

4度や5度インターバルを使った高域での美しいボイシング。アコピならではですね。リバーブ深めがオススメ。

キース・エマーソン風のピアノの高速ペンタ駆け下りフレーズ(拍頭の音は左手で弾くのがポイント)派手さはありますが、難易度はそれほど高くないかと思います。

エレピの場合、特に低域は太い音なので、左手で音を重ねすぎるのは注意が必要ですが、最近はエレピでも中域でクラスター気味に音を重ねて独自のハーモニー感を出しているミュージシャンも多いように感じます。下記のような密集したヴォイシングで、Em11の後半の5度音程のフィルもエレピらしいですね。YouTubeで「NeoSoul」「Voicing」「Chord」などで検索すると色々発見できると思います。

私の場合、譜例のEm11は下記のように弾いています。右手の親指で3音押さえるのがポイント(写真はRoland V-Stage76)。

add9

コードを元にフレーズを演奏する場合、後述のテンションノートの知識も必要ですが、まずはよく使われるadd9を紹介します。

add9というのはその名の通り「9を加える」ということですが、9というのは9度(9th)ということで、Cadd9であれば、ドから数えて9番目になる「D音(レ)」を足すということになります。メジャーコードだけでなくマイナーコードにもよく使われます。

9thはオクターブ下げて演奏されることも多いです。下図でベース音(ド)は省略しています。

ポイントは7thやメジャー7thといった音を加えることなく、単に9thだけを足すということです。もしC△7(ドミソシ)に9thが足された場合は、C△7(9)またはC△9というコードになります。(C7も同様、C7(9), C9等)

下記のようなバッキングなどでも、フィルなどで9thを引っ掛けてコードを演奏するのは定番フレーズですね。こうした装飾音的に9thを使う場合はいちいちadd9表示はしない場合が多いかもしれません。

下記動画のピアノの弾き語りで、下記のようなレ(9)ミ(3)ド(R)ソ(5)というフレーズが何度出てくるか数えてみてください。

下記動画では、イントロにadd9が使われています。当て振りなので、エレピ(Wurlitzer)でアコースティックピアノの音がなっております(笑)藤井風さんもカバーしていましたね。

add9の他にも6thの音も使われることがあります。すなわちキーがCでドミソのコードに「レ」や「ラ」の音を足してもOKということです。ただし9thや6thが加わることでサウンドの印象は変わってきますので、むやみに入れればよいというものではありませんのでご注意を。なお前述の有名曲のイントロではFのコードのところで6thや△7thが使われています。

蛇足ですが、私は自分しか見ない譜面にはCadd9と書くのが面倒なので「C2」と書いたりもします。

テンションノート

本記事では詳しくは触れませんが、和音(コード)の基本となる構成音(ルート、3rd、5th、7th)以外に、三度ずつ音を積み上げて追加される「緊張感(テンション)」を与える音をテンション・ノートといいます。コードの機能によって、入れても良いものと好ましくないものがありますが、主に以下の音がテンションとして使用されます。

  • 9th、♭9th、♯9th
  • 11th、♯11th
  • 13th、♭13th

メジャースケール上にある9th / 11th / 13th はナチュラルテンション、♭9th、♯9th、♯11th、♭13thはオルタードテンションと呼ばれます。キーがCでトニックのC△7に入れるテンションは 9th(D)、♯11th(F♯)、13th(A)だったり、ドミナントのG7では9th、♭9th、♯9th、♯11th、13th、♭13thが使えたりと、ある程度決まりがあるのですがそれはまた別の機会に書きたいと思います。

下図はC7(キーがFの場合のⅤ)で使われるテンションとボイシングの一例です。ごくごく一般的な音域で音を配置したものですが、5thは省略される場合も多いです。バンドで演奏する場合はベースがいますから、ルート音も省略され左手で残りの和音を弾いて右手でソロを取るというのもよくあります。

なお♭5と♯11、♯5と♭13などは異名同音ですが、機能が異なるので区別されます。

コードネームの表記ルールは世界共通ではないので、様々な表記が行われたりします。一例を挙げると、

  • (C-E-G-B)C△7、Cmaj7、CM7 :本記事内でも△とMが混合しておりますすみません。
  • (C-E♭-G-B♭)Cm7、C-7、Cmin7
  • (C-E-G-B♭-D)C9、C7(9)
  • (C-E♭-G♭-B♭)Cm7(b5)、C∅ 7、C∅、C-7(♭5)
  • (C-F-G-B♭-D)C9sus4、C7sus4(9)、Gm7(onC)
  • (C-E♭-G♭-A)Cdim、Co、Cdim7:Cdimは3和音(C-E♭-G♭)の場合と4和音(C-E♭-G♭-A)が混同される場合がある。

他にもC11とかC13という表記の場合、C11は「C-E-G-B♭-D-F」か「C-E-G-B♭-F」なのか、C13は「C-E-G-B♭-D-F-A」それとも「C-E-G-B♭-D-A」になるのかは恣意的なので、私は他人に見てもらう譜面の場合は、C7(9,11)、C7(9,13)、C7(9,11,13)のように、どのテンションノートを入れて欲しいかをなるべく記すことにしています・・・と言いながら、DAWの譜面表記ではDm7(9,11)と書くべきところ、「Dm11」とか書いちゃってます・・申し訳ございません。

カスケード

正式な名称ではないかもしれませんが、高音から低音へ、あるいはその逆に、速い音階やアルペジオが連鎖的に降りてくるような奏法をここではカスケードと呼ぶことにします。

例えば下記のようなフレーズ。フェイザーやコーラス、トレモロなどがかかったエレピなどが効果的ですね。

バーンと和音を弾いてから高域で「ピロロン」というのは定番ですが、単純な3和音のアルペジオよりは、テンションを含んだ音のほうが場合によっては効果的かもしれません。

下記はフェイザー(後述)のかかったローズが心地よいですね。演奏は名手リチャード・ティー

下記はアルペジオではありませんが、高域で4度重ねのオープンなテンションノートを弾いた例です。最初にC△7(9,13)を弾いた後に、両手でオープンな「△7th – 3rd – 13th – 9th – 5th」という完全4度の累積和音を弾いています。透明感のあるサウンドですが、密集和音にしてギターのハーモニクスと重ねると初期のパット・メセニー・グループのサウンドっぽくなりますね。ピアノソロのエンディングなどでも効果的だと思います。

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エフェクター活用

主にエレピですが、フェイザーやディレイ、コーラスといったエフェクターを接続することで数々の名フレーズが生み出されてきました。したがってシンセのプリセットのバリエーションも非常に多いです。

フェイザー

たとえば10CCの名曲「I’m Not in Love」では重厚なマルチトラックヴォイスに加えローズ・ピアノによるバッキングが非常に効果的に使用されています。ちなみにキックはMiniMoog。

ローズを弾いているのはエリック・スチュワート(Gt,Vo)ですが、左手でオクターブのベース、右手でコードという非常にシンプルな奏法です。しかしながらフェイザー(フェイズシフター)とステレオに広げたディレイによって非常にリッチなサウンドを生み出しています。

※フレーズは若干アレンジしてあります。

この世界観を出すのはアコピでは難しいですね。なお原曲ではなんとアコピにもフェイザーとディレイをかけて高域のフレーズを演奏する箇所があります。

これもフェイザー。コードワークは、Gm6(onD)-G(onD)-D。制作当初はボツになりかけた曲だそうです。

トレモロ

ローズ・ピアノでおなじみのトレモロエフェクトは、周期的に音量(微妙に音色も)が変化するエフェクトです。もともとはローズのステレオスピーカーをトランジスタ回路で左右に切り替える(スイッチングする)ことでトレモロを生み出していました。ギターアンプにもトレモロが備わっている機種もありますね。

A.C.ジョビンのアルバムではローズのステレオスピーカーのそれぞれにマイクを立ててステレオ+ディレイ効果を生み出している曲があります(ヘッドホン推奨)

ローズの名手チック・コリア。手動でボリュームつまみを回してトレモロ効果を生んでいる箇所もあるようです。

コーラス

遅延音を重ねて揺らぎや広がりを生み出すもので、ギターエフェクターなどでもお馴染みです。エレピでも定番のエフェクターですが、ローズのコードバッキングなどで効果的なサウンドを生み出します。下記の曲のボトムはローズだけでほぼ完成されていると言ってもよいでしょう。SteelyDanはローズのバッキングが重要な曲も多いですね(Gaucho, Deacon Bluesなど)。

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パラディドルの応用

パラディドル(Paradiddle)は、ドラムやパーカッションにおける基礎練習(ルーディメンツ)の一つです。左右交互に叩く「シングルストローク」と、同じ手で2回連続して叩く「ダブルストローク」を組み合わせたフレーズです。一例として以下のようなものがあります(シングル)。

RLRR LRLL
RRLR LLRL
RLLR LRRL
RLRL LRLR




Rが右手、Lが左手ですが、パラディドルにはこの他にも無数の種類があります。またスネアドラムだけでなくドラムセットに応用すると、スネアとハイハット、タムなどを交差することによって様々なフレージングが可能になります。下記はSteve Gaddのスネアとハイハットのパラディドルによるプレイ。

再生スピードを半分くらいにするとわかりやすいかもしれません。(黄色はゴーストノート)

またパラディドルはキーボードにも応用が可能で、リズミックなフレージングを作り出すこともできます。

たとえば、LRLL RLLR LLRL RRLR だと

これだとイマイチかっこよさにかけるので、右手の和音と、左手の音程を変えてみましょう。C7または Gm7(onC)をイメージしたフレージングにしてみます。

クラビネットやエレクトリックグランド音色にも合いそうなパターンになりました。1小節の繰り返しだと単調すぎてつまらないので2小節〜4小節くらいのパターンにしたほうが良いですね。上記では16分音符のパルスになっていますが、実際は適度に休符を入れてやったほうが音楽的に聞こえるかもしれません。

イントロのピアノバッキングに注目。

クラビネット的なフレーズ

ファンキーなバッキングでよく使われるのがクラビネットですね。スティーヴィー・ワンダーの「迷信」などが有名ですが、これも右手と左手のコンビネーションが大切です。ゴーストノートと呼ばれる微妙な音の使い方が重要で、これがあるとないとでは全くニュアンスの異なる演奏になってしまいます。

下記はジョー・サンプルによるクラビフレーズを元にアレンジしたものです。左手のミの高い方はゲートタイムを短くして弾くと雰囲気が出ます。コードはE7ですが7th(D)と13th(C♯)の音がファンキーさを醸し出しております。「LRRL-R○RL-RLRR〜」というパラディドル風ですね。フェイザーかけるとご機嫌です。

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一発モノ

前述のクラビフレーズの例も同様でしたが、セッションなどで同じコード、例えばC7がずーっと続く曲の場合、キーボードはどう弾いたら良いでしょう?ジャンルにもよりますが、コードトーンの「ド・ミ・ソ・シ♭」しか使えないとしたら、バリエーションも限られた非常に味気ない演奏になってしまいますね。

コードトーンの他に経過和音的にいろいろな和音を使って演奏されることがあります。一時的にCとFを交互に弾くこともありますが、ジャズやブルース、AOR、ファンク系の音楽などでは、以下のようなトライアード(3和音)使われることも多いです。

たとえば一拍目のAmのミラドは、C7のミ(3rd)、ラ(13th)、ド(Root)から構成されている和音ですね。2小節目のE♭-Dm-Cはブルーノート的なアプローチによる経過的な和音と考えてよいでしょう。それぞれのコードはC7のコードトーンやノンコードトーンからから構成されるものとがありますが、比較的音価の短いフレーズで演奏される場合はいちいちDm(onC)などと表記はされないのが慣例となっているようです。例えば以下のようなフレージングで演奏される場合などがそれです。

左手はRootと7thなどを中心にコードワークの隙間を埋めるように演奏しています。下図の赤矢印のところを半音で引っ掛けて弾くと更に良い感じになると思います。

リズムを足してみましょう。ちょっとだけSteely Danっぽくなったかもしれませんが、音数が多すぎましたね。

一発モノでもこうした演奏ができるようになると演奏の幅が広がるのではないかと思います。

下記の例ではイントロ(8小節)はC7、メロが入ってからもC7(3小節)、 4小節目からA7(♭13)、Dm9 – E7(♯9) – E♭△7と続きます。カールトン先生(g)はC7において前述のAm – Gmのコードを使っていますね。

上記は比較的わかりやすい例でしたが、C7を様々な解釈で別途コード進行を想定したり(Gm7-C7, Abm7-Db7, C♯m7-F♯7などなど)、逆にあえて音数を少なくして、ルートと7thしか使わないといったプレイも行われたりします。

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アッパーストラクチャートライアド

前述のカスケードで例に上げたD7ではBメジャーコードのアルペジオを弾いています。

つまりD7のコードの上にBメジャートライアドが乗っかっているコード(B△/D7)となっているわけですが、これをアッパーストラクチャートライアド(UST)といいます(△は三和音の意)。ちなみにBメジャートライアド(B,D♯,F♯)はD7からみるとそれぞれ(B=13th, D♯=♭9th, F♯=3rd)で構成されていることがわかります。

USTは、セブンスコードでもよく使われますが、下記に一例を上げます(ここでは分子が長三和音)。

上記の4つのUSTコードはそれぞれ、C7(♭9,13)、C7(♯9,♭13)、C7(♭9,♯11)、C7(9,♯11,13)と書くこともできますが、どちらの表記が良いのかはシチュエーション次第といってよいでしょう。両手でないと演奏は難しいです。

ボイシングですが、(配置される音域にもよりますが)ダンゴ状態に重ねるのはあまり好ましくない場合もあるので、上記のようにRoot-7th-3rdのように配置するとスッキリするかもしれません。左手の指が届かない方はアルペジオでもOKです。

USTコードは分母がマイナー7thやメジャー7thコードの場合もあり、例えばCm7に9thと11thを加えた場合、B♭/Cm7とも考えられます。C△7(9,♯11,13)はD/C△7とも表記することができます。

おぼえ方のコツですが、私の場合は、7thコードの場合は、ルートの短三度下のトライアド(13th, ♭9th, 3rd)、長三度下のトライアド(13th, R, ♯9th)、1音上のトライアド(9th, ♯11th, 13th)、マイナーの場合は1音下のトライアド(7th, 9th, 11th)・・といった感じで覚えていました。

下記は「イチロクニーゴー」のコード進行においてUSTを使った例です。C△9はG/C△7、Dm11はC/Dm7と表記する方もいるかも知れませんが、譜面を見る人の理解度に合わせるのが良いと思います。

※C△7(9)、Dm7(9,11)と書くべきでした。

ジャズピアノなどでよく聴くことのできる、ドミナント7thを「ピロピロピロ〜」とアルペジオで伸ばすイントロ等にもUSTは頻繁に使われています。
下記はマッコイ・タイナー(pf)によるE♭△7-B♭7の繰り返しのイントロ部分ですが、B♭7では G/B♭7 = B♭7(♭9, 13) が使われています(実際は♯11thのミも入っています)。駆け上がりのアルペジオはおそらく左手と右手のコンビネーションではないかと思います。

黄枠を左手で弾くとスムースかもしれません。右手がGメジャートライアドのアルペジオですね。もちろんペダルを踏んでください。

似たようなフレーズで、USTではないですが、コンビネーション・オブ・ディミニッシュ・スケール(通称:コンディミ)を使った、左右の手が交差するフレーズ。A♭-B♭-C♭は左手、D-E-Fは右手で弾きます。B♭のコンディミは(B♭-B-C♯-D-E-F-G-A♭:半音>全音>半音>全音・・・のインターバル)見た目的にも弾いてる感がアピールできるかもしれません。

7thコードで、USTを連続させるフレーズもよく使われます。トライアドが連続するので滑らかなハーモニーの流れが生まれますね。

二小節目の F♯/A7 – F/A7 – E♭/A7 は、A7(♭9,13) – A7(♯9,♭13) – A7(♭9, ♯11)とほぼ同じと考えてよいでしょう。

なおUSTはソロでも活用できます。例えば左手で7thコードを弾いて(7th-3rd-13thの定番ボイシング)、右手でUSTのアルペジオを弾くといったフレーズもよく使われます。(左手はC7のコード構成音の B♭=7th,E=3rd,G=13th を弾いています)。

バンドでは例えばギターとピアノで異なるコードを弾いて、全体のハーモニーはUST的な構造になっているといった凝ったアプローチもあります。Pat MethenyとLyle Maysが演ってましたね。

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まとめ

今回はピアノ系音色を「それらしく」聴かせるための基本を紹介しました。

ポイントまとめ

  • 適切な音域でコードを鳴らす
  • コードワークでそれらしいフレーズが弾けるようにする
  • 基本は左手ベース、右手コード(バンドでベースがいればベース音は省略可)
  • 装飾音(add9など)やテンションの活用
  • 適切なエフェクト設定

これらをクリアするにはとにかく様々な演奏を聞いて、その奏法を研究するのがオススメです。

アコピ、エレピ、FMエレピ、レイヤー系、クラビネットなど、ピアノ系音色にはそれぞれ似合う弾き方があります。音色を選ぶだけでなく、音域、コードの押さえ方、リズム、音の切り方を意識することで、印象は大きく変わります。

特に重要なのはコードワークです。転回形を使って音の流れをなめらかにしたり、適切な音域を選んだりするだけでも、ぐっと実用的な演奏になります。また、特にエレピではフェイザー、トレモロ、コーラス、ディレイといったエフェクトも大切です。奏法とエフェクトが合わさることで、名曲で聴けるような独特の空気感が生まれます。

まずは好きな曲のイントロやバッキングをよく聴き、数小節だけでも真似してみてはいかがでしょうか。YouTubeでも世界中の名手のプリセット音色デモが見れますのでそれも非常に参考になると思います。プリセット音色は、音色に合った弾き方をしてこそ魅力が引き出されます。ぜひ今回のポイントを参考に、いつものピアノ音色をもう一度弾いてみてください。

この記事で使用しているシンセサイザー

Roland V-Stage

V-STAGE76

販売価格¥440,000(税込)
JANコード4957054519728

V-STAGE88

販売価格¥495,000(税込)
JANコード4957054519735

GREG PHILLINGANESエレピヒットメドレー

皆さんツボを抑えたプレイですね。

この記事を書いた人

デジランド・デジタル・アドバイザー 坂上 暢(サカウエ ミツル)

学生時代よりTV、ラジオ等のCM音楽制作に携り、音楽専門学校講師、キーボードマガジンやDTMマガジン等、音楽雑誌の連載記事の執筆、著作等を行う。

その後も企業Web音楽コンテンツ制作、音楽プロデュース、楽器メーカーのシンセ内蔵デモ曲(Roland JUNO-Di,JUNO-Gi,Sonic Cell,JUNO-STAGE 等々その他多数)、音色作成、デモンストレーション、セミナー等を手がける。

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