アナログシンセ超入門~その2:EG(エンベロープジェネレーター、ADSR)編

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前回はアナログシンセの基本 VCO – VCF – VCA をご紹介しましたが、今回は音程、音色、音量などに時間的な変化を与えるEG(エンベロープジェネレーター:ADSR)についてご紹介します。

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EG(Envelope Generator、ADSR)

EG(エンベロープジェネレーター、ADSR)

時間的な量の変化をコントロールする大事なセクションがこのEG(写真はKorg MS-20 mini)

たとえば生楽器の場合で考えると、ピアノはハンマーで弦を叩く「ゴン」というアタックの後に弦の振動が徐々に減衰していき最後は音が消えます。このときキーを叩いた直後の音色/音量と、減衰していく際の音色/音量は異なります。つまり音色と音量のどちらも時間的に変化していくわけですね(厳密には音程も変化しています)。

このように本来生楽器というものは、音色も音量も(そして音程も)時間的に変化をしていくのが自然です。シンセサイザーではこうした時間的な変化を生み出すのがEG(エンベロープ・ジェネレーター:ADSR)というセクションです。MS-20 miniには2基のEGが搭載されていますが中には1基しかないシンセも存在します。

下記はMake NoiseのユーロラックADSR(EG)モジュール「Contour」、EGセクション部分がバラ売りされているものと考えてください。

EG(エンベロープジェネレーター、ADSR)

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EGの別称「ADSR」というのはそれぞれ下記をコントロールするパラメータの頭文字です。

EG(エンベロープジェネレーター、ADSR)

  • ATTACK TIME:鍵盤を弾いてから最大レベルに達するまでの時間
  • DECAY TIME:アタック後サスティンレベルまでに達するまでの時間
  • SUSTAIN LEVEL:鍵盤を押さえている時のレベル
  • RELEASE TIME:鍵盤を離してから0に達するまでの時間

SUSTAINだけが「レベル」でその他は「時間」であるという点に注目しましょう。なおこれ以外のパラメーターを持つ機種も多くあります。

さてここで非常に重要なのは「EGで何をコントロールするか?」ということです。主な目的は以下の3つ。「⇒」印はコントロール信号(CV)の流れ。

  • EGで音程を変える:EG ⇒ VCO
  • EGで音量を変える:EG ⇒ VCA
  • EGで音色を変える:EG ⇒ VCF

つまり音程、音色、音量のどれをEGでコントロールするかで効果が変わるわけですね。

EGで音量を変える:EG ⇒ VCA

EG(エンベロープジェネレーター、ADSR)

EGでVCAをコントロールすると、音量の時間的変化を生み出すことができます。たとえばマリンバとオルガンでは音の出方、消え方がまったく違いますね。

減衰音系

シンセのマリンバ音色は鍵盤を押さえていてもいずれ音が消えます。ピアノ、ギターも同様です。これらの楽器をここでは「減衰音系」と呼ぶことにしましょう。これは本来の楽器の発音の仕組みを考えると理解できるでしょう。弦を弾いたり、物を叩いたりして発音する楽器は、振動や共鳴が減衰していき最後は消えます。これをEGで表現する場合、基本サスティンレベルはゼロであるということです。消えていくまでの時間はディケイやリリースでコントロールすることができます。

減衰系のEGイメージ

EG(エンベロープジェネレーター、ADSR)

マリンバよりピアノの減衰時間は比較的長いので、ディケイタイムも長めに設定します。ベルのような音色は鍵盤を押さえたままディケイで減衰させるより、ポンポン鍵盤を叩いた瞬間に離鍵していく弾き方のほうが合っていると思いますので、その場合はリリースタイムを長めにして減衰させるほうが弾きやすいかもしれません。

持続音系

オルガンの場合、鍵盤を押さえている間は基本何時間であろうが音はなりっぱなしで、離すと消えます。バイオリンの場合はボウイングしている限り限り音量は持続されます(弓の返しが適切な場合)これらの音色を「持続音系」と呼ぶことにします。

持続音系のEGイメージ

EG(エンベロープジェネレーター、ADSR)

ではコレはどんな音色のイメージでしょうか?考えてみてください。

EG(エンベロープジェネレーター、ADSR)

アタックはゆっくり目、鍵盤を弾いている間は音が途切れない、鍵盤を離すとスパットではなく少しだけ余韻がある・・という音色ですね?フワッとしたシンセパッドのような音色がこんな感じのEGになります。

以上がEGでVCAをコントロールするイメージですが、音色によってADSRを微妙に調節してイメージに近い音の出方消え方を決めていくことができます。

EGで音色を変える:EG ⇒ VCF

EG(エンベロープジェネレーター、ADSR)

シンセベースのアタック音「ビョーン」などはフィルターにEGをかけて時間的な音色変化を生じさせています。下記ムービーはソフトシンセArturia Modular Vを使ってフィルターにEGをかけてみたものです。

以上、音量と音色の時間的変化をEGでコントロールしてきたわけですが、もし音量と音色それぞれに異なったエンベロープ変化を与えたい場合は、2種類のEGが必要になります。大抵のシンセには複数のEGが用意されているのはそのためで、下記のように使い分ける事ができるわけです。

EG(エンベロープジェネレーター、ADSR)

オルガンタイプの持続音系に「コツン」というアタックをつけたい場合などは、

VCAには

EG(エンベロープジェネレーター、ADSR)

VCFには

EG(エンベロープジェネレーター、ADSR)

といった組み合わせにすればよいわけですね。シンセブラスのような「ボワーン」という音色は、VCF側EGのアタックを少し上げてやるとそれらしい雰囲気が出ます。

なお一説によると、人間はそれが何の音かを認知する際、大部分がアタックの音で区別しているのだそうです。確かにシンセブラスもシンセストリングスも持続音の部分は似たような音ですね。試しにボリュームをゼロにしてシンセブラス(JUMPイントロ風)の音色を弾いてボリュームを徐々に大きくしていくとストリングスに聞こえます(お試しください)

【関連記事】【脱プリセット~初心者のためのシンセ音作り】基本その1 音の出だしとADSR

EGで音程を変える:EG ⇒ VCO

EG(エンベロープジェネレーター、ADSR)

時間的に音程が変わる音色というと真っ先に思いつくのは、宇宙空間をイメージした「ぴゅーん」といった効果音です(ホントは真空の宇宙空間では音は伝わりませんが・・)

音程にかけるEGを「ピッチEG」と呼ぶ場合もありますが、下記の曲はシンセのノコギリ波むき出しの音にオクターブ上がるピッチEGをかけた例

ピッチEGの極端な使い方である効果音以外でも、たとえば2つのオシレーターを使って片方だけ音程が微妙にしゃくりあげる感じのセッティングをすることで、人数感のあるブラスやパイプサウンドを出すこともできます。

キーフォロー

音量のキーフォロー

生の打弦楽器(ピアノ等)や撥弦楽器(はつげんがっき)などは、自然の摂理で低い振動のほうが減衰時間は長くなります。(振動する弦の長さが長いほうが長時間音が鳴ってますよね?)シンセでこの現象を再現するために「キーフォロー」という考え方があります。これは鍵盤の高い(または低い)方に行くに従ってカーブを付けて変化量を変えるという考え方です。

このカーブを音量に与えてあげると、高い音になるほど大きく(小さく)なるという効果を生みます。前述の減衰時間の振る舞いを再現するには、時間的変化(EG>VCA)にキーフォローを与えてやればよく、低いほどリリースが長く、高いほどリリーズが短くなるといった挙動を生み出すことができます。

音色のキーフォロー

キーフォローは音量に限らず、音程や音色にも設定することができます。音程が高くなるに従ってキンキンする成分を減らしたり(逆に増やしたり)して音色を調整すれば自然な音色に調整できるわけですね。

前回お話したフィルターのレゾナンスを一杯にして自己発振させた場合、カットオフにキーフォローを割り当てると鍵盤の音程に従って発振音の音程も変化します。この場合、VCOなしのフィルターだけで口笛のような音色を作り出すことができます(後述の冨田勲氏のシグニチャーサウンドにもなっています)。

音程のキーフォロー

ポータブルタイプのシンセで鍵盤を「ドレミファ・・」と弾くと正しい音程が鳴るのは、あらかじめ音程のキーフォローが音楽的に設定されているのからです。中にはキーフォローの設定次第で1オクターブ上が実音で3オクターブ上になるといった一風変わったセッティングも可能で、逆にどの鍵盤を弾いても同じ音程になるということもできてしまう機種もあります。

極端な例では音程のキーフォローを逆にして「鍵盤が右に行くにしたがって音程が下がる」という変態セッティングも可能です。Weather Reportの「Black Market」という曲では、ジョー・ザヴィヌル氏は実際にこのセッティングでメロを弾いています(おそらく指グセからの脱却が目的だったのではないでしょうか?)これ慣れるまで相当練習しないとできません。

音程逆転のメロはARP2600というシンセ

というわけで音程、音色、音量に対して時間的な変化をつけるEGでした。

ところでアナログシンセの場合は、基本ノコギリ波やパルス波などの電子音を使っているので、複雑な倍音構成をもつアコースティックピアノなどの生楽器の音色をシミュレーションすることは不可能とは言わないまでも至難の業といえます(※)。

しかしこうしたアナログシンセを使い、気の遠くなるような無数のダビングを繰り返し、唯一無二の作品を生み出したのが世界的に著名な冨田勲氏です。現代の最新シンセを総動員してもこのサウンドを再現することはできない、まさに究極のアナログサウンドですね。

0:11~のメロディーの口笛サウンドがフィルター発振によるものと思われます。

それではまた~

※2つの入力の和と差を生み出すリングモジュレーターというモジュールを使用すればベル風の音は再現可能です

【関連記事】アナログシンセ超入門~その3: LFO

参考資料:楽器分類別一覧

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