ウエザーリポート / ブラックマーケット ARP2600 シンセサイザー温故知新 #003

記事中に掲載されている価格および仕様等は記事更新時点のものとなります。

© Shimamura Music. All Rights Reserved. 掲載されているコンテンツの商用目的での使用・転載を禁じます。

Arp2600bluemarvin

Wikipedia

こんにちはサカウエです。シンセの名演をたずね新しきを知る「シンセサイザー温故知新」第3回目はARP(アープ)シンセサイザーです。

今回のお題:Weather Report / Black Market

8:30

8:30

posted with amazlet at 18.02.20
Weather Report

Sbme Special Mkts. (2008-02-01)

売り上げランキング: 109,169

シンセ:ARP 2600

前回、前々回のMoogのお次はARP。

ARPは1969年にアラン・ロバート・パールマンが立ち上げたメーカー。Moogとともに2大シンセメーカーとして一時期隆盛を誇りました。詳細はWikipediaをご覧ください。

スピルバーグ監督の映画「未知との遭遇」でも大型のシンセが登場するシーンがありますが、あれはARP2500という機種。2500はあまりに巨大でしたが、今回のお題の2600は、それよりはコンパクトなモジュラーと内部結線のハイブリッドな方式のシンセです。スティーヴィー・ワンダー、ジャン・ミッシェル・ジャール等々、多くのミュージシャンに愛用されました。

冒頭の写真は「The Blue Marvin」と呼ばれる1971年モデルですが、他にも「The Gray Meanie」と呼ばれるグレーカラーモデル、オレンジ/ブラックカラーの2601モデルなど製造時期によって多くのバージョンが存在します。

2600はVCO、VCF、VCA、EG等のシンセ回路が内部で結線されていますが、各セクションごとにモジュラー結線が可能で、さらに自由度の高い音作りができます。スーツケース仕様となっており内蔵スピーカーやリバーブなども搭載されています。

キーボーディスト深町純氏はこのARP2600を購入し、一刻も早く使いたいという一心で、使い方もよくわからないままステージで演奏されたそうです。その際、音を止めるときはいちいち電源切っていたとのこと・・・と何かで読んだ記憶があります。

今回はそのARP2600ならではの音色・・というかプログラムをネタにして見たいと思います。それではこれを御覧ください。

Weather Report / Black Market

ジョー・ザヴィヌル(kb)氏の超絶マルチキーボード・プレイが堪能できる曲ですね。なおARP2600は2台セッティングされているようです。

2:40~から、右手左手大忙しのプレイを見ることができますが、複数のキーボードを縦横無尽に弾きまくっております。手前のシンセ(Oberheim 8voice?)で弾いているブラス風音色は一つの鍵盤で和音(Sus4系?)が鳴る音色プログラミングがされているようですね。(追記:「Scarlet woman」では6オシレーター重ねの和音サウンドを使用しているとのこと)

しかし今回のお題はこの箇所ではなくテーマ部分。0:20~のメロ(ARP2600)に注目してください。

・・鍵盤を演奏する方はすぐ「なんだこれ?」と気づかれたかと思いますが・・そうです「鍵盤の音程が逆」になってますね。先ほどネタは「音色というか・・・プログラム」と書いたのはコレのことなんです。

普通の鍵盤で「ドレミファソラシド」と弾く場合、鍵盤の左側から右側に指を移動させます。すなわち低域⇒高域、つまり右側に行くに従って音域は高くなるわけです。しかしザヴィヌル翁の演奏はこれとは逆!・・はいそれを踏まえてもう一度ご覧ください。

いかがでしたか?不思議な感覚ですね。

ちなみにこのメロディーの音階は「Bb,C,D,F,G」という5つの音で出来てる「ペンタトニック」というスケール。

penta

これは民謡とか演歌とか、世界中の多くの音楽で使われる音階ですが、Black Marketのメロディーは独特ですよね?普通は思いつかないような前後関係の音列だと思います・・・さてこれに関する考察は後回しにして、とにかくこれを再現してみましょう。

使用するシンセはArturiaのそのままズバリ「ARP2600V」ARP2600を完璧にエミュレーションしたソフトシンセです。

ARP2600V

この音色のヒミツは鍵盤の高低が「逆(リバース)」に設定されているという点。これはシンセであればどれでも再現可能という話ではありません。mini MOOGのような内部結線タイプではほぼ無理。一部のパッチングタイプのシンセだからできる荒業です。(音程のキーフォローを逆転設定できる機種であれば、一部のデジタルシンセでも再現可能です)

ARP

キーボードのCVアウトを、ボルテージプロセッサーというセクションで逆相にし、それをオシレーターの音程に当てています。これで鍵盤の高い方に行くに従って音程が「低く」なるわけですね。C音を起点として音階が逆転しますので、

CはC、DはBb、EはAb、FはG、GはF、AはEb、BはDb という音が鳴ることになります(ああ、ややこしい)

Black Marketのメロディーを通常と逆転版で弾いてみました(非常にもどかしいですスミマセン)

音程逆転バージョンですが、最初は全く弾けなかったのですが、なんとか30分位練習して弾けるようになりました。しかし今度はノーマルな鍵盤で弾けなくなってしまいました(泣)

参考:逆転した音列を通常チューニングで鳴らすと。。

何故こんなことを?

ところでみなさん不思議に思いませんか?なんでザヴィヌル氏はわざわざこんな面倒なことをしたのか?

これはわたくしの勝手な想像ですが、これはいつもの指癖で平凡なフレージングになるのを回避するためだったのではないでしょうか。ぜひ一度お試しいただきたいのですが、高低が逆転した鍵盤でイメージ通りのメロディーを弾くのは至難の業です。

試しに鍵盤の背後に回って「レーファレドーシbソ」って弾いてみてください。非常にもどかしく切ない気持ちになったと思います。でも、これは逆に考えると、これまで自分の引き出しにはなかった「運指=メロディー」を生み出すことができるとも言えるのかもしれません。

Black Marketのメロディーが個性的なのはこの高低逆転音色のお陰ではないかと思います(全然違ってたらスミマセン)あと、これ左手で弾くともっと難しいですよ(動画では後半サックスソロ後の半音転調からノーマルチューニングに戻してますね)

サヴィヌル氏は惜しくも2007年に他界してしまいましたが、氏の創りだす素晴らしい音楽からは意外とも思われる非常に明るい性格とエネルギッシュなライフスタイル(氏はボクサーでもあった)もあって、非常に多くの人に愛されていたと思います(日本のファッション誌のモデルも務めていましたね)。下記のインタビューからもそれが伺い知ることができます。

91年ころ来日した際のインタビュー・・・非常に奥の深い発言ですね。

おまけ

Roland Fantom G7のコードメモリー機能を使うと、ザヴィヌル翁の様なトリッキーなプレイが可能です(オシレーター重ねとはニュアンスは異なりますが)

動画では「ド」を弾くと「ソ、シb、ド、ミb、ファ」が鳴るようにセッティングしています。

温故知新第一回目で紹介したキース・エマーソンも、昔のライブではオシレーターの4度重ねサウンドで、sus4フレーズ弾いたりしていますね。

単音で弾いてもsus4ボイシングサウンドになる音色です。

ARP ODYSSEi

ARP ODYSSEi

開発元:KORG INC.

¥3,600

posted with アプリーチ


この商品をオンラインストアで購入するこの商品を展示している店舗

「温故知新」タグの関連記事

↑ページトップ