【録れコン2017】リプロダクションレポート 中澤智氏 コメント

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中澤智氏コメント

まずは、odasisさんグランプリおめでとうございます!今年も審査会から参加させて頂き、多くの優秀作品を聞く事が出来ました。録音機材の進歩の早さには、プロでも追いつくのがやっとです、、、。(私だけ?)アマチュアの方は、様々なツールを使いこなし楽曲を完成させる。多くの音楽が手軽に、高いクオリティーで作れる時代は、素晴らしいと思います。

リプロダクションを迎えるにあたり、まずは、送ってもらったパラ素材をProToolsにインポート。

鎌田氏のスタジオで素材を前に、リプロダクションとしてどのような方向性で行くか、ミーティングを行いました。作品では、わからなかった事が確認でき、良い所を生かすため何をしたら良いか?結果、アコースティックギターとVoのグルーブを生かし、正確に打ち込まれているリズムやパーカッションを、生楽器でのダビングにより更にグルーブが出るのではと。他にも修正点は幾つかありましたが、鎌田氏のセンスと技術で修正頂き、当日を迎える事になりました。

リプロダクション当日。パーカションは、岡部氏。私自身も何が出るのだろうとワクワクしていました。予想以上な楽器、グルーブが飛び出して来ました。(Clickは、DATAにはあったのですが、岡部氏の要望により、カウントのみでodasisさんのグルーブに合わせて録音をしました。)岡部氏と鎌田氏で相談しながら着々と楽器がダビングされ、odasisさんの要望もあり楽曲がみるみる、楽しくなっていきました。

録音時、鎌田氏ならではの技術的、プロデューサー的、側面が幾つかありました。コンソールはSSL4000。マイクのヘッドアンプ(ゲイン)は、高めに設定して、ProToolsへの送りのフェーダーを下げて適正レベルで入力させます。ヘッドアンプでサチュレーションを起こし録音しています。(ケースバイケースですが)アナログコンソールは、更に倍音が足されパンチが出ます。このやり方は、ある程度耐久性のあるヘッドアンプでしか効果が無く、弱いヘッドアンプでは、只のクリップノイズになるので注意が必要です。マイク選定とマイキングは、サウンドに合うように、楽器によってマイクのポジションを変え、リズムパターンやピッチなど、岡部さんとコミュニケーションとり進めていました。odasisさんも参考になったのではないかと思います。他には、数本のマイクの位相チェック、また、楽器によっては1本のマイクで録音可能な時でも、あえて同じ位置に2本マイクを立てパンニングを広げ空間を作るという録音方法も行っていました。

全ては、完成予想図を元に効率的に行っていた事と思います。

無事録音が終了しミックスに。今回は、ProToosの内部ミックスでした。(SSLは、モニターコントローラーとして使用)時間の制限も有るので鎌田氏がある程度仕込んでいらしたのですが、新たに加わった楽器も含めどう料理されるか?私も作業行程をodasisさんに説明しながら楽しみにしていました。odasisさんもWaves(Plug-In)など、使っているのである程度は理解してくれたかと思います。

まずは、低音のリズム隊からの処理。ここがしっかりしないと、上物がうまく乗りません。

今回、メインの一つであるアコギの音がいまいち(すいません)だったのは、打ち合わせ段階では、分かっていましたが、鎌田氏の見事な処理で解消されてました。簡単に説明すると、元の音源が抜けが悪く、それに対し複製したトラックに倍音を加えミックスする方法です。※録音に決まりは無いのですが理想の音があれば、マイク選定、マイキングをしっかりするのが基本です。(演奏、楽器の出音がしっかりしていれば更にベストですが。)

鎌田氏は、センドでもLoの倍音、Hiの倍音も使用します。また、リバーブ、ディレイ、ピッチシフト(ステレオ左右ずらし)等もセンドで使用します。これは、まだ、DAWが出る前の時代から使われてた手法(コンソールやテープでミックスをする時代に使われていた手法)で、それをPlug-Inに置き換えて使用しています。

他には、一部の追っかけコーラスに位相反転処理が行われ、スピーカーの外側から聞こえる手法です。これも、簡単に言うとステレオにまとめたトラックの片方だけ逆相(180度反転)します。興味のある方は、リプロダクション後の音源を聞いて確認して下さい。しかし、やり過ぎ注意です。全てのトラックがその処理だと、ギミック的にもなりませんし、気持ち悪くなります(笑)。鎌田氏は、基本、コンソールとテープ時代行っていた処理が基本ですが、視聴して頂ければ分かると思いますが、空間に感動します。単純に、リバーブやM-S処理では、再現できないです。プロです。各トラックのEQ、Comp、空間系、レベルの調整が的確に素早く行われ、最後に、鎌田氏のギミックも加わりミックス完成となりました。

どんなに録音機材が新しくなっても、楽曲、演奏が伴っていないと、良い作品にならないと思います。新たな「Sweet Lullaby」。リプロダクションの素晴らしさを改めて感じました。しかし、オリジナルの楽曲がしっかりあってこその作品になったと思います。

皆様本当に、お疲れ様でした!また来年も皆さんの作品に出会えるのを楽しみにしています!

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