【弦楽器工房ブログ】毛替え後の松脂について

弦楽器技術スタッフの高瀬です。

昨日はお休みでしたので、買い物に出かけました。

そこで見かけたお蕎麦屋さんに「関東だしに変更可能」の文字が。

関東の味に恋しくなっていたので、迷わず入店して注文したのですが、、、

やはり少し甘めな九州の味付けに感じました。

以前の職場、シマムラストリングス秋葉原の裏にあるお蕎麦屋さんが懐かしいです。


最近、『ヴァイオリンの毛替え後に雑音がする』というお問い合わせをいただくことがございます。

今までは雑音が鳴ることは無かったのに毛替え後に雑音が出始めた、という場合、原因は大抵の場合

■馬毛と松脂の相性が悪い(楽器との相性もあります)

■松脂の塗りすぎ

以上のどちらかになります。

(毛の選定不足、毛のテンションの張り具合で雑音が発生することもありますが、当工房では入念に行っているのでご安心ください)



馬毛と松脂の相性が悪い場合で最も多い組み合わせは、【太くてしっかりした馬毛に対して荒い粒子の松脂を塗る】です。

この組み合わせが絶対にいけないという訳ではなく、むしろチェロやコントラバスには推奨される組み合わせです。

チェロやコントラバスには引っ掛かりの強さと音の鳴りを与えてくれますが、ヴァイオリンやヴィオラ、分数チェロのように箱の小さい楽器に対しては引っ掛かりが強すぎてしまい、雑音の原因になる可能性があります(稀に相性の良いヴァイオリンもあったりするので、絶対とは言えません)。

当工房ですと、イタリア産馬毛とダーク系松脂の組み合わせがそうです。

イタリア産は引っ掛かりが強く、粒子の荒い松脂を塗るとかなりの引っ掛かりと音量が出るので、チェロとコントラバスにはお勧めです。

ヴァイオリン、ヴィオラでイタリア産を張る場合は、個人的にはBernardelやArchet / Soprano がお勧めです。

続いて、松脂を塗りすぎの場合。

こちらは自身で試したことがなかったので、実験を行ってみました。

試す内容は、毛替え後の馬毛に

■適量の松脂を塗る

■かなり多めに塗る

■(塗りすぎた場合の対処として)松脂を拭き取り、変化をみる

以上の3工程です。


まず最初にいつも通り適量を塗り、演奏してみました。

適度な引っ掛かりで音の鳴りも良く、違和感はありません。

塗る量の目安は、弓を下の画像のように見た時、馬毛の表面がうっすらと白く変色する位です。

画像だと下半分が塗り終わり、上半分は不十分です。

だいたい10cm位の間隔で下から塗り、色が変わったら上へ上へと塗れば問題ありません。

私は6~8往復位塗ったら上へいきます(強めに塗った場合)。

下の画像は試奏後(5~10分)のヴァイオリン表面です。

弦には白く松脂が付着していますが、ニス表面にはほとんど松脂が付いていません。

この状態が適量です。


次は、通常よりかなり多めに塗ってみます。

下の画像でもわかる通り、馬毛の表面に松脂の粉が目で見える位付着しています。

試奏したところ、まず音の鳴りがかなり汚くなります。

(よく言えば音量が増した気もしますが、、、)

そして意外にも、引っ掛かりは悪くなりました。所々食いつきはあるのに、結局滑る感じです。

肝心の雑音ですが、D線とG線で現れました。シャリシャリと鳴るような音がうっすらと聞こえます。

タイスの瞑想曲を弾こうと思いましたが、出だしの音が汚すぎて断念しました。

試奏後(5分程度)でこの位松脂が堆積します。


60分の演奏後ならまだしも、5分~10分でこのような状態になったら確実に塗りすぎです。


もしこのように塗りすぎてしまった場合、ティッシュペーパーで軽く馬毛の表面を拭いてください。

注意点は

■ティッシュペーパーで一度拭いた部分は使用しない

■摩擦で松脂が溶けるかもしれないので、ゴシゴシ拭かない

この2つだけ気を付けてください。

ティッシュで拭いた後に毛が暴れることがありますが、静電気なので気にせず保管してください。

また、楽器本体に松脂が堆積した状態で楽器を保管すると、翌日松脂が固まってしまうので、必ず演奏後当日中に拭き取ってください。

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この記事を書いたスタッフ

岩田屋福岡店高瀬

弦楽器技術者の高瀬です。楽器の調子が悪い、音をもっと良くしたいと思いましたら、ぜひご来店ください。皆さまをお待ちしています!

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