サイレントヴァイオリンの調整 【弦楽器工房ブログ】
皆様、こんにちは。
弦楽器技術スタッフの高瀬です。
最近『生食パン』というものを良く食べます。
名前の通りとろけるような口当たりでして、焼かなくても(むしろ焼かない方が)美味しくいただけます。
しかし、一度味わうと通常の食パンにはなかなか戻れなくなりますのでお気を付けください。
マークイズ福岡ももち1階のパン屋さんでも販売しており、大変美味しいのでおススメです。
本日は
- ウィング割れ修理
- ニス補修
- フィッティングパーツ交換
を行わせていただきました。
ご来店いただき、ありがとうございます。
今回はサイレントヴァイオリンの調整事例について、ご紹介させて頂きます。
サイレントヴァイオリン調整
本日調整する楽器は、『YAMAHA SV150』です。
お客様より買い取らせて頂きましたので、再販の為に問題のある箇所の修理調整を行います。
エレキヴァイオリン、サイレントヴァイオリンの修理調整は当工房でも普段から受け付けているので、お気軽にお持ちください。
(内部電気系統系の修理に関しては、勉強不足という事もあり修理をお受けできない場合がございます…)
全体的に特に大きな問題は無く、パーツ系の劣化や汚れを調整すれば良さそうです。
なので、調整内容は全4項目
- 駒加工
- 指板磨き
- 上ナット加工
- 全体クリーニング
これだけで事足りそうです。
駒加工
E線を何度も違う場所に乗せてしまっていたようで、弦溝が幅広く陥没しているように見えます。
この状態のままですとE線の位置が安定せず、弦も切れやすくなります。
アーチを修正しつつE線の弦溝に『駒革』を貼り付け、弦溝の陥没を防ぎましょう。
完成しました。
弦溝が黒く塗りつぶされて見えると思いますが、これは鉛筆の黒鉛によるものです。
2B以上の鉛筆を弦溝に塗ると、弦が切れにくくなるのでおススメです。
駒の接地面
ちなみに、駒を外すとこのようになっています。
アコースティックのヴァイオリンは響板のアーチに合わせて駒の足を削りますが、こちらは足元が平面になっています。
サイレントヴァイオリン現行品は「ピックアップ内蔵型」のYAMAHAオリジナルの駒に仕様変更していますが、このモデルだとアコースティックのヴァイオリンと同じ駒を使用しています。
なので、今回のような調整を行う際は加工が楽でありがたいです。
指板磨き
これはサイレントヴァイオリンに限らずアコースティックのヴァイオリンでも同じで、通常使用しているだけで指板に弦の跡が付いてしまいます。
放置し続けると指板がどんどん抉れてしまうので、注意しましょう。
(場合によっては指板をmm単位で削る、あるいは交換になります)
光で照らすと分かりやすいですが、弦の跡に合わせてくっきりと溝が出来ています。
こちらを磨き直すと…
このようになります。
上ナット加工
この調整が少々厄介でした。
通常ですと上ナットには「黒檀」と呼ばれる硬めの木材が使用されるのですが、こちらには樹脂のような素材が使用されています。
そして、長期使用により上ナットの溝が陥没しています。
このままですと、指板と接触したり弦が切れやすくなったりと良い事が無いので、応急的に調整を行います。
どうにかなりました。
黒檀材が使用されている場合は、上ナット交換(以前書いたブログです)を行うことが多いです。
クリーニング、仕上げ
こちらはBefore,Afterだけご紹介致します。
【Before】
【After】
画像だと分かりにくいですが、埃に加えて指紋や手汗の蓄積物が多く溜まっていました。
クリーニング方法もアコースティックのヴァイオリンと全く同じで、汚れが強い箇所に限り専用のクリーナーを使用します。
これらの加工で見た目も新品と大差なくなり、演奏面も不自由は無いので問題なく使用が可能です。
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弦楽器技術者の高瀬です。楽器の調子が悪い、音をもっと良くしたいと思いましたら、ぜひご来店ください。皆さまをお待ちしています!