毛替え .3(毛の選定) 【弦楽器工房ブログ】
皆様、こんにちは。
弦楽器技術スタッフの高瀬です。
本日は毛替えの『毛の選定』について書いていきます。
このブログでも度々書いていますが、皆様は『毛の選定』がどれほど重要かご存知でしょうか。
馬毛は束で仕入れており、1本1本の毛が全て使えるわけではありません。
人間の髪と同じで
■縮れ毛
■枝毛
■極端に細い毛
■極端に太い毛
■部分的に硬い毛
■短い毛
が所々混在しています。
これらの毛が混じった状態で毛替えをすると、弾き心地が悪くなり、毛替えの仕上がりも悪くなります。
1本でも上で書いたような毛が混じっていると仕上がりに影響してくるので、毛の選定を重要視している職人も少なくはないと思います。
では、毛の選定をせずに毛替えをして結果の良し悪しの検証を、、、
と考えていたのですが、やはりやるならとことんやろうと思い
毛替えの際に除外された毛だけで、毛替えをしてみました。
簡単に書きましたが、まず馬毛を準備するのに1週間以上かかりました。
おそらくこれが最初で最後の検証です。
(お客様の毛替えの際に、本来なら捨てるはずの毛達を丁寧に保管し、コツコツと貯めました)
こちらの毛束、ただ除外された毛を集めただけではなく、さらに良質な毛を除き、悪質な毛のみを厳選しております。
下の画像を見ていただければ(わかる人が見れば)お分かりいただけると思います。
違いがよく分からない方も、細い毛や縮れている毛が多いと感じていただければ問題ありません。
そして、毛替え後の写真がこちらです。
思ったよりも良い仕上がり、、、と思うかもしれませんが、こちらの弓を少しだけ緩めると
すぐにこうなります。
遊んでいる毛が1本や2本ではありません。
一般的な毛替えだと、毛を緩めた時に段々と毛が緩んでいきます。
今回の毛替えも下に垂れている毛は単に緩んでいるだけの毛に見えますが、よく見ると縮れていたりウェーブしており、そもそも長さが不均一です。
また、毛替えの途中でブチブチと切れる毛もありました。
(おそらく細い毛や枝毛でしょう)
弾き心地の感想ですが、こちらは予想を大きく超える結果となりました。
レスポンスがとんでもなく悪く、引っ掛かりもかなり弱いです。
そして雑音も所々混じります。
前回(4月16日の記事 毛替え後の松脂について)検証した、松脂を多めに塗った時と似た弾き心地です。
また、今回の検証で使用した弓は普段試奏の際に使用する備品弓(元々は良いお値段のする弓です)なので、どういう弾き心地か一番理解しています。
なので、弓のせいで弾き心地が悪いということは間違いなくありません。
今回はとても極端な実験でしたが、毛の選定の重要性が少しでも分かっていただければと思います。
そして今回使用した弓、しばらくの間は現状のままで保管する予定です。
もし興味のある方がいらっしゃいましたら、工房でお声掛けください。
試奏できます。
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弦楽器技術者の高瀬です。楽器の調子が悪い、音をもっと良くしたいと思いましたら、ぜひご来店ください。皆さまをお待ちしています!