ベルリン発、世界が熱狂した「アコースティック・シンセシス」の衝撃
2024年、ベルリンで開催されたシンセの祭典『Superbooth』で世界中のシンセファンを驚愕させた、Korgの「phase8」。
「アコースティック・シンセシス」という、これまでの電子楽器の常識を覆す発音構造を持つこのマシンが、ついに国内でも発売されることになりました。
今回、コルグさんから実機をお借りすることができたので、この「物理的に震えるシンセ」が一体どんなものなのか、その深淵を徹底レポートします!

phase8の「造形美」をチェック

まずは外観からチェックしていきましょう。一目見ただけで機械フェチの心を掴む、たまらないルックスですね。1.71kgの筐体には程よい重厚感があり、作り込みの良さが伝わってきます。ノブやスイッチ類は整然と配置されており、直感的に操作できそうなシンプルさが好印象。何より目を引く8本の共鳴体(レゾネーター)とコイル、そしてそれらを支える筐体が六角穴ボルトで無骨に組み上げられている点も、こだわりを感じさせます。

リアパネルには、左からUSB-C、CV IN、MIDI IN / OUT(TRS-Aタイプ)、Sync OUT / IN、そしてヘッドホン端子を搭載。メインアウトはモノラル仕様となっています。
スペックの確認はこのくらいにして、まずは実際に音を聴いてみてください。実機に初めて触れてから10分後の様子です!
いかがでしたか?「なんだこれは!」と私自身、初めて触れたときは、どう使えばよいのか悩んでしまうほどの未知の体験でした。では、このphase8が一体どんな仕組みで鳴っているのか、その秘密を探るべく各種機能をご紹介していきます。
ユニークな発音構造〜アコースティック・シンセシスとは?
phase8には8つのレゾネーターが取り付けられていますが、その仕組みが実に独創的。物理的に叩いて鳴らすのではなく、コイルが発生させる「磁界」でレゾネーターを震わせ、その響きをピックアップで拾っています。スピーカーなどは内蔵されていないため、本体から出る音はとてもささやかなものです。
面白いのは、このレゾネーターを自分の指で弾いて鳴らすこともできる点!「ポキッと折れたらどうしよう……」と最初は緊張しますが、よほど無茶なことをしない限りは大丈夫(なはず)。まさに楽器と対話するように音を生み出すことができます。
こちらが側面から見た8本のコイル。機能美を感じさせるルックスですね。

レゾネーターを取り外してみると、その「寝床」ともいえる土台部分がピックアップになっています。ここでレゾネーターの微細な振動をダイレクトに捉えているんですね。

出荷時は「C3、D3、E3、F3、G3、A3、B3、C4」という名前の8枚のレゾネーターが本体にセットされているようで、それぞれが「ドレミファソラシド」=Cメジャー・スケールの音程を奏でます。

予備で「C#3、E♭3、F♯3,A♭3、B♭3」の5枚も付属しているのでマイナースケールなども演奏可能です。レゾネーターを交換する場合は付属の六角レンチで一つ一つ交換します。どこに何を挿すかは自由です。

E>E♭3、B3>B♭3に交換してみました(Cドリアン・スケール)

チューニングは、付属の六角レンチでレゾネーターの固定位置をスライドさせることで行います。原理はシンプルで、レゾネーターを「長め」にセットするほど音程が下がる仕組み。また、音の出方に合わせてコイル側の位置も微調整できるこだわりようです。

チューニングのさじ加減は非常にデリケート。レゾネーターのわずかな収まり具合で音程が変化するため、これを逆手に取れば「微分音」のような繊細な響きを再現することも可能です。
正直に申し上げますと、phase8をピアノのような「正確な平均律」に完璧に調律するのは至難の業。しかし、触り続けるうちに確信しました。これはリアルタイムで「正確な音程で美しいメロディーを奏でる」類の楽器ではなく、偶発的な響きを楽しむ楽器なのだと。・・・ということでここはチューニングはテキトー(いい意味で!)でオーケーとします(以上個人の見解です)。
なお、限定版のPresale Exclusive Packageには、3種類の限定パーカッシブ・レゾネーターが同梱されます。どんな未知のサウンドを聴かせてくれるのか期待が高まりますね。金属加工などの知識がある方なら、自作のレゾネーターで自分だけの音を追求する……なんていうDIY的な楽しみ方も広がっていきそうです。(※自作や改造は自己責任でお願いします!)

LIVEモード:まずはリアルタイムで鳴らしてみる
ここからは、phase8の具体的な機能について詳しく紐解いていきましょう。
演奏モードは大きく分けて「STEP」「LIVE」「SKIP」の3種類。まずは、最も直感的な「LIVEモード」からご紹介します。LIVEモードでは、本体にある8つのキー(下図の黄枠部分)がそれぞれのレゾネーターに対応。キーを叩くことでレゾネーターをダイレクトに鳴らすことができます。ピアノやキーボードで「ドレミファソラシド」を弾くのと全く同じ、非常にシンプルで楽器らしいアクションです。

たとえば左から4番目のキーを押すと4番目のレゾネーターが発音し、LEDが点灯します。8つのキーを同時に押せば全部のレゾネーターがなるというとてもシンプルなしくみ。

正直に言えば、このままでは「ゴツいカリンバ」のような音。どう使いこなすべきか途方に暮れてしまうかもしれません。ですが、ここからがphase8の本領発揮です。多彩なパラメーターを操ることで、この音がどう化けるのか。さっそく深掘りしていきましょう!
各キーの上にはそれぞれのVELOCITYとENVELOPEのノブが配置されています。

VELOCITY
VELOCITYノブは、どれだけ強くレゾネーターを振動させるかを制御しています。これは駆動回路のレベル制御とアナログ倍音生成をコントロールできるので、右に回していくと音量が大きくなり音も歪んだような感じになります。
ENVELOPE
ENVELOPEノブは、ADSR(音量の時間的変化)を物理振動そのもので制御します。ノブを一番左に振り切ると「コン!」という非常に短いディケイ音に。そこから徐々に右へ回していくことで、「ゴーン」という余韻から、地響きのような「ブオーン」という持続音まで、レゾネーターの振る舞いを自由自在に操ることができます。
AIRスライダー
本体左上に配置されたAIRスライダーは、ピックアップが拾う「生信号」の混入量を調整するユニークな機能です。スライダーを下げきると、トリガーされたレゾネーターの音だけがタイトに鳴りますが、上げていくにつれて他のレゾネーターの共振や、さらには「外部の音」までをも拾い始めます。

AIRスライダーをマックスまで上げると、共振と倍音成分が飽和状態に達します。キーを一回叩くだけで他のレゾネーターまでが一斉に共鳴し、さながら「銭湯で全員が金属のたらいを一心不乱に叩きまくっている」ような、カオスで凄まじい響き(もはや地獄絵図!)へと変貌します。
また、スライダーを中ほどまで上げると、筐体への接触音はもちろん、設置している机を叩く音などの「外部の振動」まで広範囲に集音します。筐体自体をパーカッションのように叩くライブパフォーマンスも面白そうですが、ピックアップが振動をダイレクトに拾うため、衝撃音には要注意。あまりに過激なアクションでPAエンジニアの方を怒らせないよう、節度を持って楽しみましょう。
SHIFT
AIRスライダーの隣にあるSHIFTノブは、エコーやディレイのような効果を生み出すパラメーターです。
特筆すべきは、これがDSP(デジタル信号処理)によるエフェクトではなく、物理的なトリガーを複数回発生させてレゾネーターを「時間差で再度振動させる」という仕組みである点。この物理的な「遅延トリガー」によって、サウンドに厚みや残響を付加できます。
なお、遅延時間はシーケンサーのTEMPOに同期しており、テンポを落とすとディレイタイムも連動して長くなります。ディケイ(減衰)を短く設定した音にSHIFTをかけると、ドラムの「フラム」のようなサウンドになります。
MOD TYPE / DEPTH / RATE

MOD TYPE / DEPTH / RATEの3つのノブを操ることで、3系統のアンプリチュード・モジュレーション(振幅変調)による過激なサウンドメイクが可能です。
これは「レゾネーターを駆動させるための電気信号」そのものに変調をかける仕組みで、DEPTHで深さを、RATEで周期をコントロールします。MOD TYPEは、トレモロ / AMピッチエンベロープ / AMポリフォニックモジュレーションを切り替え可能で、AMポリフォニックモジュレーションにするとリングモジュレーターのような複雑で金属的な倍音を生み出すことができます。(AMピッチエンベロープはAMビブラートに切り替え可能)
マニュアルには「QUANTIZEボタンを押しながらRATEノブを回すと、変調用サイン波がレゾネーターのピッチに沿ったステップ状の倍音になる」とのこと……。理屈は難解ですが、実際に触ってみると耳を疑うような未知のサウンドが飛び出し、まさにphase8における音作りの「キモ」と言えるセクションです。
身体的アクション:引っ掻く、叩く、そして「乗せる」
さてここまではリアルタイムにキーを叩いて音色を変えていたわけですが、前述の通りphase8は指などで引っ掻いたり叩いたりしても発音します。「そんなことをして壊れないの?」と不安になりますが、公式マニュアルにも「試してみよう」と推奨されているのでご安心を。直接金属に触れて音を出す感覚は、少しばかりの「背徳感」と共になんとも言えない心地よさがあります。
つまりphase8は、ピックアップで拾った音を後からDSPエフェクトで加工するのではなく、音の根源である「物理的な振動そのもの」を直接制御して音を形作るというコンセプトのマシンなのです。
これこそが「アコースティック・シンセシス」という名称の所以であり、他のどんなシンセサイザーとも一線を画す、phase8最大の特徴といえるでしょう。
シーケンサー:偶然を音楽に変える
LIVEモードでキーを叩いているだけでも時間を忘れてハマってしまいますが、次にphase8の真の姿ともいえるシーケンサーに触れてみましょう。ここでの体験こそ、本機のポテンシャルを最大限に引き出す「真骨頂」と言える出来栄えです。
phase8は、各レゾネーターごとに独立した8ステップのシーケンストラックを搭載。入力方法は「STEP入力」と「リアルタイム入力」の両方に対応しています。さらに、ボイスごとにステップ数を変えられる「ステップ・スキップ」を活用すれば、複雑に絡み合うポリリズム的な
フレーズを驚くほど簡単に生み出すことが可能です。
本体には8つのシーケンスパターンを保存可能ですが、各パターンはさらにAとB、2つのバリエーションを保持できます。演奏中にこれらをリアルタイムに切り替えることで、実質16種類のパターンを縦横無尽に操るような、ダイナミックなパフォーマンスが実現します。

シーケンスの呼び出しは非常にスムーズです。LOADボタンを押しながら8つのキーのいずれかを選択するだけで、メモリーされたパターンを即座にロードできます。あとはPLAYボタンを押せばシーケンスがスタート。もう一度押すとストップするという、極めてシンプルで迷いのない操作体系になっています。もちろんプレイ中にパターンを切り替えて途切れのないプレイが可能です。パターン切り替えは押した瞬間に切り替わりますが、絶対時間は保持されるので拍がズレることがなく、演奏の流れを止める心配はありません。
STEP入力
打ち込みを始める前に覚えておきたいのがリセット操作です。CLEARボタンを押しながらRECORDボタンを押すと、選択中のシーケンスの全パラメーターがリセットされ、各設定が現在のノブ位置へと戻ります。真っさらな状態から音作りをスタートできる、基本の操作です。
STEPモードに切り替えます。SELECTボタンを押しながら1のキーを押すと、C3レゾネーターの「STEP REC」状態になります。ここで1、3、5、7番目のキーを点灯させてシーケンスをスタートすれば、C3レゾネーターによる「4分打ち」がプレイされます。
他のレゾネーターも同様に、SELECTで選んでからステップを埋めていきます。いわゆる往年のリズムマシンでお馴染みの「TR-REC」スタイルで打ち込みが可能です。

ここでphase8のシーケンサーの仕組みを整理しておきましょう。
8つのキーはそれぞれ「8分音符」に対応しています。キーが8個並んでいるため、「8分音符 × 8 = 4分の4拍子 1小節分」が1パターンの単位となります。
実際に「ドドレミドドレミ」といったフレーズをSTEP入力だけで作ろうとすると、以下のような手順になります。
- 「ド」を選択:1, 2, 5, 6番目を点灯 ⇒
|ドド○○|ドド○○| - 「レ」を選択:3, 7番目を点灯 ⇒
|○○レ○|○○レ○| - 「ミ」を選択:4, 8番目を点灯 ⇒
|○○○ミ|○○○ミ|
このように、音色(レゾネーター)を切り替えながらステップを埋めていく作業は、メロディックなフレーズを作る際には少々煩雑に感じるかもしれません。これは「マルチトラックを一画面で管理する」のではなく、あくまで「インストを選んでから打ち込む」というハードウェア特有のワークフローゆえのものです。
複雑なフレーズをサクサク作りたい場合は、次に紹介する「リアルタイム入力」と併用するのが、最も効率的でphase8らしいやり方と言えるでしょう。
リアルタイム入力
LIVEモードでシーケンスをスタートさせ、RECボタンを押しながらキーを叩くことで、リアルタイム録音が可能です。STEP入力とは異なり、ステップの枠に縛られない自由なタイミングを記録できるのが大きな魅力。もちろん、後述するクオンタイズ(補正)も可能です。
またリアルタイム入力では、トリガー情報の他に、これから紹介するSKIP設定、ミュート状態、クオンタイズ状態、パラメーター値、パラメーターオートメーション(RECORD中のノブの操作)がすべて保存されます!
なおRECボタンのラッチ機能(1回押したらずっとREC状態)はありません。下図のように左手の小指を使ってRECボタンを押したままにすれば、2つのパラメーターのレコーディングもできなくもないですが、同時に複数のパラメーターを操作するよりも、一つずつパラメーターを順次微調整していく方が使い勝手が良い気もします。

RECボタンのラッチ機能をつけなかった理由を開発元のコルグベルリンに聞いてもらったところ、以下の理由からだそうです。
- 直感的・触覚的な体験: 録音という行為そのものを「遊び」として感じてもらうため。
- シンプルなUI: 画面や余計なLED表示を省き、操作を削ぎ落とすため。
- ミス防止: 意図せず録音状態が続き、パターンを壊してしまうのを防ぐため。
なるほど確かにそれは一理ありますね。納得。
また、本機にはお馴染みのクリック(メトロノーム)機能も搭載されていません。これも疑問に思ったのですが、同じくコルグベルリンからの回答は、
- ループ演奏を楽しみながら、良いフレーズが浮かんだタイミングでRECボタンやパッドを操作するという「触りながら音楽を作る」体験を重視した設計なので。
ということです。
「シーケンスの頭(1拍目)が分からなくなる」という場合は、まず最初にSTEP入力でガイドとなるパート(先程の「4分打ち」のような)を打ち込んでからリアルタイム入力に切り替えて入力していく方法が良いと思います。
リズムを補正したい場合は、QUANTIZEボタンを押しながら該当するレゾネーターのキーを選択。すると、記録されたトリガーが最も近い16分音符の位置にジャストで補正されます。
(下図のように、1番目と3番目のレゾネーターだけを個別にクオンタイズ状態にすることも可能です)

QUANTIZEボタンを押しながら該当のレゾネーターのキーを押してLEDを消灯すればクオンタイズがOFFになります。CLEARボタンを押しながらQUANTIZEボタンを押すと、全レゾネーターのクオンタイズが解除され自由なタイミングに戻すことができます。こうした非破壊方式の機能はライブパフォーマンスでも威力を発揮しそうですね。
なお1拍あたりの分解能(TPQN)は192だそうです。DAWと比較すると少ないように感じるかもしれませんが、1ステップ(8分音符)あたり96のレゾリューションで記憶できるということですから、ほぼほぼリアルタイムで入力したままのノリ(タイミング)を記憶できると考えてよいでしょう。
SKIPモード
SKIPモードでは、レゾネーターごとに独立してシーケンスのステップ数を変更することが可能です。
下図では、レゾネーター1のトラックを「7ステップ」に設定することで、このパートだけが8分の7拍子としてループします。

このように5拍子や7拍子といった変拍子を簡単に作れるだけでなく、真骨頂は「レゾネーターごとに異なるステップ数を割り当てる」ことにあります。
あるパートは8拍、別のパートは7拍、さらに別のパートは5拍、さらには途中のステップをSKIPしたりすることで、各パートの周期が複雑に絡み合い、二度と同じ表情を見せないようなポリリズム的で多層的なシーケンスを生み出すことができます。
かつてモジュラーシンセとアナログシーケンサーを駆使し、SKIPやリピートを自在に操って万華鏡のような音響空間を構築したTangerine Dream(タンジェリン・ドリーム)の有機的に変化し続けるシーケンスを思い出しました。
プラック機能
レゾネーターの右側に配置されたタッチパッド。これを押しながらレゾネーターを指で弾いたり、かき鳴らしたりすると、その物理的なトリガーをそのままシーケンスとして記憶させることができます。

ENVELOPEコントロールを50%以上に設定すると弾いた音が持続されドローンのような効果を生み出すことができます。再びレゾネーターに触れることでサスティーン音を止めることができますが、物理的なアクションが音の発生と消音に直結するこの感覚は、既存のシンセでは味わえない新体験だと思います。
各種パラメーターもシーケンスに記憶可能
このようにこのように、phase8のシーケンサーはSTEP入力による厳密な構築と、リアルタイム入力による直感的なプレイをシームレスに併用できます。リアルタイム入力では、トリガー情報の他に、ここまで紹介してきた、SKIP設定、ミュート状態、クオンタイズ状態、パラメーター値、パラメーターオートメーション(RECORD中のノブの操作)がすべて保存されます!
またライブなどで「複雑なパターンを造った後、プレイ中にAからBに瞬時にコピーし、BパターンのSTEP値を変更したりして変化をつけ、また瞬時にAに戻す」といったこともできるので、ほぼ無限のパターンバリエーションを使ったパフォーマンスも可能なのではないかと思います。
これこそが、開発元であるコルグベルリンが掲げる「ループ演奏を楽しみながら、良いフレーズが浮かんだ瞬間にRECボタンを操作する」という設計思想の核心。画面上の数値をいじるのではなく、音の変化を指先で感じながら形にしていく・・phase8は、私たちに「触りながら音楽を作る」という原初的な喜びを思い出させてくれる、まさに新次元の楽器といえるでしょう。
適当にシーケンスを組んでみました。
なお各種パラメーターは、後述するMIDI接続により、外部機器からのMIDI CC(コントロールチェンジ)情報でも制御可能です。phase8の内部ではMIDIデータそのものではなく、パラメーター値の変化として保存されているそうです。
いかがでしょう?phase8のシーケンサーは、単に「音を並べるためのツール」に留まりません。多彩なパラメーターと、私たちの身体的なアクションが複雑に絡み合うことで、偶発的かつ生命力に満ちたリズムを紡ぎ出す・・「生きた」シーケンス・マシンなのです。
外部機器との相互コントロール
phase8は外部機器と共鳴するためのインターフェースを網羅しています。本体背面にはUSB-Cをはじめ、MIDI IN / OUT(TRS-Aタイプ)、Sync IN / OUT、さらにはアナログシンセ愛好家には欠かせないCV IN端子までが整然と備わっています。

これらの端子を駆使することで、以下のような双方向のクリエイティブが可能になります。
- コントローラーとして: phase8のユニークな鍵盤やノブ、強力なシーケンサーを使用して、外部のMIDI音源を「鳴らす」ことができます。
- 音源モジュールとして: 外部のMIDIキーボードやDAW上のシーケンサーから、phase8の物理レゾネーターを自在に演奏・コントロール可能です。
さらに、外部のアナログCV信号やオーディオ信号をトリガーにして、本体の各種パラメーターをモジュレートすることも可能。単に同期して音を鳴らすだけでなく、「コントロール情報までもが有機的に相互作用する」。このオープンな設計こそが、現代の音楽制作シーンにおいてphase8が真に画期的である理由といえるでしょう。
つまりUSBやMIDI接続でphase8の鍵盤やノブ、シーケンサーを使用して外部MIDI音源を無らしたり、外部のMIDIキーボードやシーケンサーなどからphase8を演奏・コントロールすることもできます。また外部アナログCVやオーディオ信号で本体の各種コントロールも可能になっています。単に音を鳴らすだけでなく、各種コントロールまでも相互にやり取りができるというのが画期的なところだと思います。
なおCVで制御可能なものには下記があります。
- 全体の音量
- 各ボイスのエンベロープの一括制御
- 各ボイスのベロシティーの一括制御
- AIR、SHIFT、DEPTH、RATE、ENV1~8、VELOCITY1~8の変調
DAWとの同期:制作システムへの統合

phase8とPCをUSB接続し、DAWからMIDIクロックを送信すれば、DAWのスタート/ストップに完璧に同期したシーケンス演奏が可能です。また、DAW上のトラックや接続されたMIDIキーボードからphase8を楽器として鳴らすこともできます。逆にphase8からの信号をDAWに記録することもできます。
MIDIノートと8本のレゾネーターをどう紐付けるかという「ノートアサイン」の設定ですが、本機には2つのモードが用意されています。
スタティックモード
MIDI接続の場合のノートアサイン(割り当て)は2種類の設定が可能で、スタティックモードではMIDIノートがC2(36)から半音ずつごとにレゾネーターの左から順に割り振りされます。下記動画参照ください。
最初鍵盤弾きの自分に取っては、スタティックモードは少々分かりづらいと感じたのですが、頻繁にレゾネーターを交換したり、厳密な平均律にこだわらない演奏を楽しんだりする場合、このモードが便利です(理由は後述)。最初は「鍵盤のドレミと一致しない」ことに戸惑うかもしれませんが、「どのレゾネーターを付けても操作が変わらない」という、ハードウェアとしての使い勝手を優先した合理的な仕様と言えるでしょう。
周波数ベースモード
起動時に自動キャリブレーションを行い、取り付けられたレゾネーターの実際の音程(周波数)に合わせてMIDIノートを自動で割り振るモードです。
例えばレゾネーターを正しく「ドレミファソラシド」に調律していれば、MIDI鍵盤の「ドレミ…」で音楽的な演奏が可能になります。ただし、「調律の匙加減」によってはアサインが不安定になるケースもあるため、確実性を求めるならスタティックモードをおすすめします。
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未知の可能性を秘めたハイブリッド・ワークフロー
外部シーケンサーやモジュラーだけでなく、DAWのソフト音源やオーディオ素材と、phase8の有機的なシーケンスを同期させることで、ライブパフォーマンスや音楽制作の表現力は飛躍的に高まります。
しかし、正直な感想を言えば、単に「ドラムマシン」や「サブシーケンサー」として組み込むだけでは、この楽器の真のユニークさを活かしきれないかもしれません。DAWという「完璧なデジタル世界」に、phase8という「不完全で物理的な揺らぎ」をどう共存させるか・・そのアイデアの可能性はまだまだ未知数であり、私自身、さらに使い倒してその答えを探してみたいと感じています。DAWのアルペジエーターやランダム・ベロシティ)を使ってphase8を叩くなんてのも面白いかもしれませんね。
なおphase8はノート情報だけでなく、主要なパラメーターも外部からコントロール可能です。物理的な仕組みゆえにピッチベンドは非対応です。またUSBオーディオには非対応(USB端子はMIDI通信とファームウェア更新の用途)です。
phase8 MIDIインプリメンテーションチャートダウンロードは⇒こちら
あとがき
短時間の試奏ではありましたが、phase8が掲げる「身体的なアクションと最先端テクノロジーの融合」という、これまでにない革新的なアプローチを肌で感じることができました。
その直感的な操作性は、使う人の想像力次第で無限の可能性を秘めています。メーカーの想定さえも超えてしまうような、未知の音楽を創出する圧倒的なポテンシャル。そして何より、ユーザーの細かな「振る舞い」を洞察し、表現者の意図を具現化するために磨き上げられたUI(ユーザーインターフェース)のクオリティには、並々ならぬ設計思想の深さを実感しました。
モジュラーシンセやリズムマシンを組み合わせたマシンライブでの即興演奏はもちろん、DAWと連携させた緻密な音楽制作まで、その活用シーンはまさに無限大です。
デジタルでもアナログでもない、いわば「物理シンセ」とでも呼ぶべき新しい表現の形。ぜひ店頭で実際に触れていただき、phase8が放つ唯一無二の可能性を体感してください。皆様の想像力が、このレゾネーターをどう響かせるのか楽しみです!
発売日
- phase8 Presale Exclusive Package(3種類の限定パーカッシブ・レゾネーター同梱)
- 2026年3月27日(金)数量限定 ※予約受付は3月13日(金)18時〜
- phase8
- 2026年4月26日(日)一般販売開始 ※web予約受付は3月27日(金)18時〜
販売価格・ご購入はこちら
¥159,500(税込)
JANコード:4959112250543
- 価格は予告なく変更となる場合がございます。実際の販売価格はオンラインストアの表示価格および最寄りの店舗でご確認ください。
この記事を書いた人

デジランド・デジタル・アドバイザー 坂上 暢(サカウエ ミツル)
学生時代よりTV、ラジオ等のCM音楽制作に携り、音楽専門学校講師、キーボードマガジンやDTMマガジン等、音楽雑誌の連載記事の執筆、著作等を行う。
その後も企業Web音楽コンテンツ制作、音楽プロデュース、楽器メーカーのシンセ内蔵デモ曲(Roland JUNO-Di,JUNO-Gi,Sonic Cell,JUNO-STAGE 等々その他多数)、音色作成、デモンストレーション、セミナー等を手がける。






