初めてのライブ同期バンド演奏 その1 ~クリックってなに?

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クリックとはDAWから出すテンポの情報のようなもので、一般的には1小節に4つのパルス(いわゆる4つ打ち)などの一定周期でビートを刻むガイド音のことです。音色はリムショットやカウベルが一般的のようですが、聞きやすければなんでもかまいません。中には機械的なクリック音が嫌いという方もいて、パーカッションなどの演奏データをクリック代わりにする場合もあるようです。そしてバンドメンバーはこの音をガイドとして演奏を行うわけですね。クリックの事を「ドンカマ」(※)というケースもあります。

Click-2

DAWからのクリック音を聞きながら演奏すればよほどのことがないかぎりズレませんよね。こうすることでバッキングトラックと「同期を取る」ことが可能になります。クリックを聞くにはヘッドフォンに限らず、演奏に邪魔にならないイヤホンが最近主流になってきているようです。

DAWからの信号はどうやって送ればいいの?

DAWのバッキングトラックは通常オーディオ・インターフェース経由でPAミキサーなどに接続して鳴らすことになります。PAとは「Public Address(パブリック・アドレス)」の略称で、各楽器をミキサーにまとめ、音量やエフェクトなどを整えてお客さんが聞く大音量サウンドシステムのスピーカーに出力するという一連の流れをPAと呼んでいます。

Click-3

ここで問題が!

生演奏とクリックを同じチャンネルにしてしまうと、フロントスピーカーからクリック音も出てしまうということです。お客さんに聞こえてしまったらマズいですよね。クリックはあくまでメンバーだけが聞くものです。したがってクリック音とバッキングトラックは別系統の出力が必要になります。

まずは2チャンネル(ステレオ)アウトのオーディオ・インターフェースを例にとってみましょう。出力が2系統(LR)しかないオーディオ・インターフェースだと、バッキングトラックとクリックをそれぞれLとRで分けて出力する設定をDAWで行い、PA側でフロントスピーカー(観客が聞くスピーカー)とプレーヤーのモニター用に振り分けて出力してもらう事になります。

Click-5

【参考例】

L(左)をクリック、R(右)をバッキングトラックに振り分けると、こうなります。

クリックを聞いて、ドラムとベース、ギターを入れた(演奏した)トラックはこちらです(イメージ)

さらに問題が!

しかしこの簡易的な設定の場合、バッキングトラックはモノラルでしかPAスピーカーから出せないのです。せっかくステレオ感を意識して作ったバッキングデータをモノラルで出してしまうのは、やはりもったいないですよね。

マルチアウトに対応したオーディオ・インターフェースの導入

バッキングトラックをステレオで出力したいという場合は、3つ以上の複数のアウトプットを持っている「マルチアウト」のオーディオ・インターフェースが必要になります。つまりフロントスピーカー側ではステレオ(LR)のバッキングトラック、クリックは別系統でプレーヤー側へ、といったセッティングになるわけですね。これでやっとバッキングトラック本来の定位感、音のバランスで同期演奏ができます。

Click-7

※アウト3から出したクリックをいったんミキサーに立ち上げて、ミキサー側からプレーヤーのモニター(ヘッドホン)に送るということもできます。

マルチアウトでパートごとに分けてみよう

さらに!マルチアウトのオーディオ・インターフェースの利点はまだあります!

ドラムレス、ベースレス、という同期バンドも中にはあると思いますが、その場合、ステレオのバッキングデータだけでなく、楽器パートごとに別系統で出力してPAに送ることで、全体のバランスをPA側でコントロールすることができます。仮にベースが打ち込みの場合、バッキングトラックとベースがLRのステレオで一緒に出てしまうと、ベースの音量だけを下げたいといったことがDAW側でしかできなくなってしまうのです。

そこで、楽器のパートごとにマルチアウトプットをしてあげることで、PAミキサーのほうで音のバランスをとる事ができます。これはマルチアウトのオーディオ・インターフェイスならではのメリットです。

Click-8

同期モノで必要な機材

・DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)

・マルチアウトのオーディオインターフェース

・ヘッドフォンまたはイヤホン(バンドメンバーがクリックを聞くためのもの)

これらが従来、「同期モノ」と呼ばれているスタイルで標準的に扱われている機材です。

Steinberg UR44


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SHURE SRH440


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SHURE SE215 black


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このようにしてDAWと同期させることで、バンドサウンドに厚みを出すことができますね。どのようなセッティングにせよ、モニター環境が非常に重要になってきます。モニタースピーカー、イヤーモニター(イヤホン)などの適切な設定が必要です。

最近ではCDやポータブル音楽プレイヤーのいわゆる「カラオケデータ」に合わせて演奏するスタイルも「同期モノ」と呼ばれているようです。アプローチのしかたは様々なんですね。

Youtube動画のこのスタイルも同期モノと呼ばれますね。バンドではなく一人での演奏ですが、Manuel Göttsching(マニュエル・ゲッチング)がDAWからのバッキングデータに合わせてパラメーターをコントロールしたり、即興でギターを弾いたりと同期演奏をしています。

Manuel Göttsching - E2-E4

いかがでしたでしょうか。「ライブでのバンドの表現を広げてみたい!」と思われている方がいましたら、非常に有効な手段かと思います。ぜひお試し下さい。


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※ドンカマについてはWikiを参照ください。

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