株式会社ソニックウェアが唯一無二のサウンドを目指して開発中のガジェットシンセ「ELZ_1(エルザワン)」を発表しています。※本記事の写真等は全て開発途中のものです。実際の製品と異なる場合がありますがご了承ください。
2018年12月3日追記:開発者インタビューを追記いたしました。インタビューはこちら
下記写真は2018年10月現在の仕様
「ELZ_1」は唯一無二のサウンドを出力するシンセを目指し、FM音源、8BIT波形メモリ音源、グラニュラーシンセなどのシンセエンジンを、SONICWAREなりの切り口でゼロから開発されました。フィルター、エフェクト、アルペジエーターも搭載し、FM SYNTH、エディットやモーフィングが可能な 8BIT WAVE MEMORY SYNTH、キャプチャ―した音から波形成分を探索・加工する DNA EXPLORER、グラニュラーシンセのSiGrinderなど・・・多彩なサウンドエンジンを搭載した電池駆動&スピーカー内蔵のシンセサイザーとなっています。
The NAMM Show 2018にて
The NAMM Show 2018会場にて株式会社ソニックウェアのファウンダー/代表取締役CEO 博士(工学) 遠藤 祐(Yu Endo)氏によるELZ_1の紹介。
またPC / Macと接続することでMIDI音源としても使用可能。バンドやホビーにも使えるモバイルガジェットシンセサイザーが「ELZ_1」です。
仕様(2018年10月時点)
- シンセエンジン:
- LOW-BIT OSC(サイン波、矩形波、三角波、ノコギリ波)
- STANDARD OSC(サイン波、矩形波、三角波、ノコギリ波)
- CUSTOM OSC(サイン波、矩形波、三角波、ノコギリ波を2つまで組み合わせて波形を生成)
- 8BIT WAVE MEMORY SYNTH(波形エディット機能、モーフィング機能、FMモード)
- DNA EXPLORER (オーディオから波形DNA抽出・生成)
- SiGRINDER(グラニュラーシンセエンジン)
- FM SYNTH(4オペレータ、31アルゴリズム、フィードバック、デチューン)
- MASKED NOISE(ノイズ系シンセエンジン)
- SAND FLUTE(ノイズ系シンセエンジン)
- エンベロープ:
- ADSR
- ADSR(カーブ付き)
- ADS - RA - R
- ADS - RA - R(カーブ付き)
- フィルター:
- LPF-6
- LPF-12
- HPF-6
- HPF-12
- BPF
- Peaking EQ
- LO EQ
- HI EQ
- NOTCH
- エフェクト:
- OverDrive, Distortion, FUZZ
- Chorus, Vibrato, Phaser, Flanger, Tremolo, Auto Pan, Ring Modulator, Auto Wah
- Stereo Delay, Tape Echo, Reverse Deley
- Room, Hall, Plate, Custom Reverb
- アルペジエータ:
- Up, Down, UpDown, DownUp, Up&Down, Down&Up, Random, Play Order
- 出力:
- ステレオラインアウト(L/R 標準フォンジャック)
- ヘッドホンアウト(ステレオミニジャック)
- スピーカー
- 入力:
- AUX IN(ステレオミニジャック)
- 電源:
- DC5V(センタープラス、外形5.5mm、内径2.1mmジャック)
- 単三電池x4本
- USB機能:
- ファームウェアアップデート
- USB MIDIデバイス / ホスト機能
- 外形:横:399mm、縦:133mm、高さ:50mm
- 重量:約1297g
SONICWARE社のシンセ第二弾登場!!
【関連記事】SONICWARE LIVEN 8bit warps | 8ビット波形メモリシンセ
発売日
2019年3月30日(土)
販売価格
(税抜)¥45,000 (税込 ¥49,500)⇒(2020年6月 価格改定)(税抜)¥39,990 (税込 ¥43,989)
JANコード:4573477390012
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開発者インタビュー
こんにちはサカウエです。いよいよ発売となるガジェットシンセ「ELZ_1」ですが、先日東京池袋にあるSONICWARE社のオフィスにお邪魔して、ELZ_1の開発者であり同社のCEOでもある 遠藤 祐 氏、そしてプロダクトデザイナーの辻村 哲也氏にお話を伺ってきました。誕生から発売に至るまでの数々の秘話が満載のインタビューをお送りします。(以下敬称略)
デザイナーの辻村氏(左)、SONICWARE CEOの遠藤 祐氏(右)
SONICWARE設立までの経緯をお伺いできますか?
遠藤:ゲーム好きで小学生の頃から趣味でプログラミングをやっていて、将来はゲームプログラマーになりたいなと思っていたんです。オフィスの近所にある実家が音楽スタジオを経営していたこともあり、高校生のときはBOØWYやブルーハーツのコピーバンドでギターを弾いたりもしました。大学では応用システム工学を専攻していたのですが、その時音楽と技術が両立する仕事ってなんだろうと考えて、電子楽器だったらそれができるんじゃないかと思ったんです。
そこで卒業後は楽器メーカに就職して、レコーディング機器,ギターやベース用マルチエフェクターのシステム開発に携わっていました。2004年に音響機器開発や音楽スタジオ運営を主業務とするソニックウェアを設立しました。その後、国内外の楽器メーカーのレコーディング機器、音楽アプリケーション、ビデオカメラ、マルチエフェクター,リズムマシンやMTRなどの開発/検査に携わり今日に至っています。
ELZ_1を作ろうと思ったきっかけはなんですか?
遠藤:これまでを振り返ってみると、楽器メーカーをつくろうと起業したものの自社製品と呼べるものが過去に1製品しかなく、しかもそれもとても成功したといえる製品ではありませんでした。そして結果的に自分たちのミッションである「今までにない楽器の発明と進化に挑戦し続けることで、新しい楽曲や音楽文化の誕生に寄与すること」から遠いところにいました。2016年にGODJで有名なJDSoundの宮崎晃一郎社長のインタビューを読んで、モノづくりの魂に火がつきました。再度、全社を挙げてソニックウェアのオリジナリティー溢れる楽器作りに挑戦することにしたのです。
遠藤:実はアナログシンセの洗礼は受けてなくてバリバリのデジタル世代なんですよ(笑)PCMベースのシンセを否定するわけではないのですが、PCM音源のシンセ以後、本質的な意味で、楽器の進化が止まっているようにも感じています。最近のアナログシンセ回帰ブームもワクワクするし素敵ですが、デジタルシンセにはまだまだ未知の可能性があると思っているんです。今までにない音を奏でる楽器、僕は「ポストシンセサイザー」と呼んでいるんですが、それが楽器の進化を推し進めると考えています。
とはいえ、言うのは簡単ですがポストシンセサイザーを作り出すことはそんなに容易ではありません。ただ、とにかくシンセでもリズムマシンでもいいからひたすら楽器を作り続ける過程で、ポストシンセサイザーのアイデアが生まれるだろうと思っています。とにかく創り続けることが重要なんです。
マイコンがまだチープだった80年代初頭のシンセやファミコンなどのゲーム機は、その処理速度やメモリ容量やコスト的にPCM音源を手ごろな価格で提供するのは厳しいものがあったと思います。だからこそ、どのようにしたら演算でピアノの音が出せるか?といった創意工夫があった気がします。デジタルならではの演算、数式、アルゴリズムで新しい音を作り出すというアプローチはまだまだ追求の余地があるのではないか?こうして生まれたのがELZ_1で「シンセを再発明」というキャッチコピーにはそんな思いが込められているんです。
ELZ_1 の製品コンセプトを教えてください
遠藤:最初にユーザー体験としてどんなものが望ましいか?と考えた時に「持ち運べて、どこでも音づくりや演奏ができて、その様子をSNSでシェアできる、とにかくワクワクする楽器」というコンセプトがありました。なのでELZ_1は小型で電池駆動、スピーカーが付いているのですが、何よりもELZ_1が搭載するユニークなサウンドエンジンや音づくりのワクワク感をどのようにデザインで適切に表現すればいいのか?というのが大きな課題でした。
そこで、プロダクトデザイナーさんが多数掲載されているデザイン年鑑を買ってきて食い入るように見ました。年鑑には、ELZ_1のデザインをお願いした辻村さんのプロダクトデザインも掲載されていて、それがとても美しかった。製品の内包する機能や魅力をデザインで適切に表現されている方だと直感できた。で、「これだっ!ELZ_1は辻村さんにお願いしたい!」っとなり、すぐに辻村さんにメールしました(笑)
辻村:私は大手家電メーカーで製品デザインを担当したのち独立し、現在は各種製品のデザインをしています。2017年初頭に遠藤さんから突然ELZ_1のプロダクトデザインの制作依頼をうけたんです。それまで楽器のデザインはやったことがなく、しかもシンセは未知の世界。そこで音楽制作をしている友人のスタジオに押しかけてシンセやレコーディング機器の説明をしてもらったりしました。「エンベロープ?なにそれ?」という調子でしたけど(笑)
お話を伺った時点で、ELZ_1の仕様は大体決まっていましたが、色々とお話を伺っているうちに改めてSONICWAREというブランドの方向性について固める必要があると感じました。最終的にただモノを作るメーカーではなく、ユーザーと一緒に開発をしていく一体感やワクワク感が反映された製品を提供するメーカーを目指そう!ということになったんです。
遠藤:実はSONICWAREのロゴマークもELZ_1のリリースに合わせて辻村さんにお願いしてデザインしていただいたんです。
社名ロゴの各種アイデア案
ところで、ELZ_1のネーミングの由来をおしえてください
遠藤:実は、当社の製品の開発コードは今は全部「船の名前」からとっています。当初は「S-001」みたいな記号だったんですが「自分の子供(製品)を作るのにそれだと愛着がわかない!」と言う意見もあって(笑)・・星座や星の名前という案もあったんですが、結局は船の名前に落ち着きました。ちなみに「ELZ_1」は「クイーンエリザベス号(有名なクルーズ客船)」にちなんでいます。開発中ずっと「エリザベス」と呼んでいたせいか、それがすっかり気に入っちゃって最終的に製品名も「ELZ_1」になりました。
SNSを意識したルックス
辻村:プロダクトデザインは最初からTwitterやInstagram等のSNSとの相性にもこだわりました。最終的にボディーカラーは黒が選択されましたが、黒鍵が本体と同じ黒だと、SNSの小さい写真だと埋もれてしまって目立たない。そこで黒鍵の色は、本体と明度差があるグレーを採用し、小さい画像を見ても識別ができるインパクトのあるカラーを採用しました。スピーカーは小型ですが、音量も低音もちゃんと出るようなクオリティーのパーツを採用しています。
あと、ELZ_1の「ELZ」と「1」の間はスペースでもハイフンでもなくアンダーバー「 _ 」を使っています。実はこれはハッシュタグ(#ELZ_1)に使えるからなんですね。
遠藤:おそらくELZ_1が最も露出するメディアは、ユーザーの発信するSNSやウェブだと思うんです。可搬性の点からもビジネスバッグで持ち運びできるように横幅サイズを399mmにしています。
辻村:デザイン案は10種類くらい作ったんじゃないでしょうか。ボディ素材は最終的にアルミの板材を曲げて整形する板金加工、サイドのパーツはアルミ押出材という手法を取りました。
プロダクトデザイン原案の一部
遠藤:今はまだヒミツですが、将来的にはこの側板をカスタマイズしてある機能をつけ加えられるようにする予定なんですよ・・・
ELZ_1 搭載のサウンドエンジンについて教えてください
遠藤:FM SYNTH、8BIT WAVE MEMORY SYNTH、STANDARD OSC、LOW-BIT OSC、CUSTOM OSC、DNA EXPLORER、SiGRINDER、SAND FLUTE、MASKED NOISE などのサウンドエンジンを搭載しています。DNA EXPLORERは48kHzでサンプリングしたオーディオ信号から波形抽出・生成するエンジン。SiGRINDERはいわゆるグラニュラーシンセエンジンで、波形の任意の箇所で切り取ったり再構築でき、オクターブレイヤーしたりビットクラッシャー効果を付加することができます。発音数は6ポリ、内部処理は32bit float(浮動小数点数)で行っています。8BIT WAVE MEMORY SYNTHは自分がもともとゲーム好きということもあって搭載しています(笑)
他にも ELZ_1には「GACHA機能」という面白い機能があるんですが、これはFM音源のアルゴリズムだけでなくオペレーターの各種パラメーターをランダムにその名の通り「ガチャガチャ」変更する事ができます。音作りに行き詰まったときにはぜひ使ってほしい機能です(笑)
USB MIDIも搭載していますが
遠藤:発売時のVer.1では、受信するMIDIメッセージはプログラムチェンジとノートオン/オフくらいですが、Ver2では各種コントロールチェンジやMIDIクロック等にも対応させようと思っています。
内部のメモリ(8MB)はUSBでパソコンと接続するとストレージとして認識するので、ファームウエアのアップデートや音色のバックアップに対応しています。またフォーラムを設置しているので、ユーザーのリクエストも随時バージョンアップに反映できるように検討しています。
気が早いかもしれませんが、次の製品のアイデアはもうあるのですか?
遠藤:次はハードウエアのリズムマシンかサンプラーを作ろうと思っています。大手の楽器メーカーさんには作れない(作ろうとも思わない?笑)SONICWAREならではのオリジナリティーがあふれる製品にしたいと思っていますのでご期待下さい。
本日はありがとうございました。