倍音(ばいおん)とは?【今さら聞けない用語シリーズ】

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倍音列

さて倍音についてはなんとなく理解できたと思います。それでは今度は倍音の種類について考えてみましょう。

倍音には、基本となる周波数の何倍になっているか?つまり倍数によって「第○倍音」と呼ばれます。もし基音の倍だったら第2倍音、3倍だったら第3倍音・・という具合です。

周波数で表した場合、基本周波数が100Hzの場合は

  • 第2倍音=200Hz
  • 第3倍音=300Hz
  • 第4倍音=400Hz
  • 第5倍音=500Hz
  • 以下略

となるわけですね。なお偶数倍の倍音は「偶数倍音」、奇数倍は「奇数倍音」といってそれぞれの倍音の含まれかたによって音色に差が生まれます。

では次に音楽的な視点から倍音を見てみましょう。

基本となる音を「ド(C)」として考えた場合の、倍音列はどのようなものになるでしょうか?これが下図です。

倍音 音程 音高差 音名 平均律よりの差
第1倍音 ユニゾン 0 C3 ±0
第2倍音 1オクターヴ 12半音 C4 ±0
第3倍音 1オクターヴと完全5度 19.019550半音 G4 +1.955セント
第4倍音 2オクターヴ 24半音 C5 ±0
第5倍音 2オクターヴと長3度 27.863014半音 E5 -13.686セント
第6倍音 2オクターヴと完全5度 31.019550半音 G5 +1.955セント
第7倍音 2オクターヴと短7度 33.688259半音 B♭5 -31.174セント
第8倍音 3オクターヴ 36半音 C6 ±0
第9倍音 3オクターヴと長2度 38.039100半音 D6 +3.910セント
第10倍音 3オクターヴと長3度 39.863014半音 E6 -13.686セント
第11倍音 3オクターヴと増4度 41.513179半音 F♯6 -48.682セント
第12倍音 3オクターヴと完全5度 43.019550半音 G6 +1.955セント
第13倍音 3オクターヴと長6度 44.405277半音 A6 -59.472セント
第14倍音 3オクターヴと短7度 45.688259半音 B♭6 -31.174セント
第15倍音 3オクターヴと長7度 46.882687半音 B6 -11.731セント
第16倍音 4オクターヴ 48半音 C7 ±0

Baion001

以上Wikipediaより

音高差、平均律との差という項目で 2、4、8、16倍音(青文字)以外はすべて半端な数になっていますが、ここではあまり気にしないで結構です。平均律というのは1オクターブを12に均等に分けているので、割りきれない半端が生じてしまうのです。

ハモンドオルガンのドローバーはそれぞれが第○倍音という役目を果たしているということが理解できると思います。またラヴェル「ボレロ」のアレンジの場合、ホルン(基音)にたいして2つのピッコロはそれぞれが

  • ホルン(C3)=基音
  • ピッコロ1(G4)=第3倍音
  • ピッコロ2(E5)=第5倍音

という関係になっていたわけですね。スゴ。

シンセサイザーの登場

さて倍音構成をコントロールして音色を生み出すことのできる装置、それが「シンセサイザー」ですね。シンセサイザーには機種によってさまざまな合成方式があるのですが、先ほどのサイン波を加算して行く方式は「加算合成方式」といいます。ドローバーでは現実的ではありませんが、コンピューターを使って加算合成を行い音色を作りだす機種に フェアライトCMI というモデルがありました(近年復刻版が登場しました・・あいかわらずお高いです)。

フェアライトCMI

倍音(ばいおん)とは?Fairlightby Wikipedia

Fairlight 倍音(ばいおん)とは?by wikipedia

ただアコースティック楽器をシミュレーションできる合成方式にはやはり限界があり、現在は本物の音をサンプリングし、デジタルデータとしてメモリーに取り込んで演奏できるサンプラーや、PCM音源方式のシンセが主流となっています。このフェアライトCMIもサンプラーとして使われたサウンドのほうが有名ですね(代表音色は「ジャン!」というオケヒット)

The Art Of Noise

減算合成方式のシンセ

ここでは多くの(アナログ)シンセに採用されている「減算合成方式」という音作りを例に「倍音」について考えてみましょう。シンセの仕組みの詳細は別記事をご覧いただくとして、今回は非常に簡単に説明させていただきます。

シンセ(中でも原型となるアナログシンセ)は、音の元となるオシレーター(VCO=発振器)から出てくる「ピー」「ポー」「プー」という音を「フィルター(Filter)」と呼ばれるもので削って音色を変えるという仕組みです(いくらなんでも端折りすぎ?)またこれを「減算合成方式」と呼びます。音を削るから減算(引き算)というわけです。

MOOG「SUB PHATTY」のフィルターつまみ(一番大きいツマミを回して音色を変えます)

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フィルターには、高い周波数成分を削るもの、通すもの・・等々・・色々と種類があります。開発費の関係でこのシンセにはフィルターは1種類しか搭載できない・・という場合は、大抵LPF(ローパスフィルター)というフィルターが選ばれることになるでしょう。このフィルターは文字通り、低い成分(ロー)を通す(パス)フィルターで、逆に言えば「高い成分を削る」というフィルターになります。

こんな感じでグリグリとツマミを回すとシンセらしいエグい音が出るわけですね(生楽器の音はまず出せませんが・・・)

VCOには、ノコギリ波、矩形波、三角波・・といった基本波形が用意されていますが、それぞれの波形とスペクトルを見てみましょう。使用したソフトはsony creative softwareのSound Forgeです。

ノコギリ波(SAW WAVE)

波形

倍音(ばいおん)とは?

倍音(ばいおん)とは?

ノコギリ波には基本周波数の偶数倍音と奇数倍音の両方が含まれています。つまり全ての整数倍音を含んでいるザラつきのある音です。シンセの基本波形といってもよく、バイオリン系の音色を作成する際によく使用されます。

矩形波(SQUARE WAVE)

波形

倍音(ばいおん)とは?

倍音(ばいおん)とは?

矩形波には奇数倍音が含まれ、偶数倍音がありません。ノコギリ波に比べると「丸い」感じがします。クラリネット等の木管楽器的な音色といえるでしょう。

三角波(TRIANGLE WAVE)

倍音(ばいおん)とは?

倍音(ばいおん)とは?

矩形波と同様、奇数倍音が含まれます。倍音の含有量も少ないので「丸い」感じがします。エレピ系の音色が作れそうですね。

では3つの波形をそれぞれローパスフィルターで徐々に高域をカットしていきました。その連続したスペクトルの変化を見てみましょう。(ソフトシンセのMini Vを使用)

ローパスフィルターで高帯域を削っていくとどの波形も最後は正弦波に近い感じになるのがお分かりいただけると思います。シンセにはこの他にもフィルターで削る帯域付近を強調する「レゾナンス(ピーク)」というパラメーターを持っています。同時にこれらを時間的に変化させることでさまざまな音色のバリエーションを作ることができるのがシンセというわけです。

こうしたシンセの波形を効果的に使っているのがこの曲。

もろアナログシンセ系の音色ですが、手弾&ダビングにより、非常に有機的な「ビッグバンド・サウンド」を生み出しています。矩形波がサックスセクション、ノコギリ波でトランペット&トロンボーンセクション。今聞いても非常にセンスが良いですね~シンセプログラミングはMichael Boddicker、シンセ演奏はGreg Mathieson。クレジットは" PERFORMED BY LITTLE GREG MATHIESON & HIS TUXEDO OSCILLATORS " と洒落てます。

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というわけでシンセの基本となる「減算合成方式」ですが、残念なことにノコギリ波、矩形波といった波形を元にして作ることのできる音色には限界があり、リアルなアコースティック楽器はまず無理と言ってよいでしょう(例外あり)。リアル系音色は前述のとおり、PCM系や物理モデルといったシンセが主流となっています。

補足:奏法としての倍音コントロール

ハーモニクス、フラジオレット

金管楽器の場合、唇や舌の位置、息の吹き込み方等で音程を変えているのですが(リップスラーという奏法がありますね)、昔の管楽器は現在のようにバルブやスライドが無く、管の長さを自由に変えることができませんでした。したがって半音階だらけの高度な演奏は困難だったわけです。しかし16世紀あたりはバルブ無しでも倍音を自由にコントロールする名手が数多くいたのだとか・・(アサガオに手を入れることで音程コントロールもできます)

こうした管楽器の特性を応用して音域外の高い音などを出す特殊奏法がフラジオレット(オーバーブローとも)呼ばれます。木管楽器でも息の吹き込み方や音孔の押さえ方でオーバーブローを出すことができます。音楽の時間でリコーダーを吹いている途中、突然「ピー」と高い音が出てしまった経験は誰しもあると思いますが、あれもその一種かと・・

トランペットのハイノートばかりを集めた動画(血管切れそう・・・)エリック宮城さんも登場してきますね

ギタリストの方にはお馴染みのハーモニクスですが、弦楽器の場合、弦に軽く触れて弦を弾く(擦る)と、場所によって基音とある倍音が制御され、高次の倍音を生み出すことが出来ます。

これはジャコ・パストリアスのフレットレス・ベースによるハーモニクス(右手の親指で弦を触っていると思われます)

ホーミー

正確には倍音の集合体である「フォルマント」を生じさせるモンゴル地方の唱法。

これもスゴイ

「天使の声」

大昔4人編成のブラスセクションのハーモニーを耳コピしていた時のことですが、なぜか5番めの音が聴こえて不思議に思ったことがあります。あとで知ったことですがこれは「天使の声」とも呼ばれる現象で、ハーモニーが形成されることで新たに倍音が生じ、それが音程として認識される現象です。

ブルガリアンボイス・・倍音出まくり?音がぶつかりまくってますね・・鳥肌モノです

というわけでシンセの音作りにも必須の「倍音」についてでした。前述のとおり世の中には「非整数次倍音」というのもあって、金属的な音やノイズなどに含まれています。アナログ・シンセサイザーの時代には「リングモジュレーター」という回路を使って「鐘の音」などの音をだすことができました。1980年台に登場したYAMAHAのDX-7に代表されるFM合成方式のシンセのおかげで「非整数次倍音」はたやすく作り出せるようになったのですが、この話はまた別の記事でご紹介したいと思います。

それではお疲れ様でした~

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(今回紹介したラベルのボレロについても解説されています)

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