バンド用キーボードは何鍵が正解?61鍵・73/76鍵・88鍵の選び方

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バンド用キーボードは何鍵が正解?61鍵・73/76鍵・88鍵の選び方

記事中に掲載されている価格・税表記および仕様等は予告なく変更することがあります。

バンド用キーボードを選ぶときは、音色や機能、鍵盤数とタッチ、ライブでの使いやすさ、そして価格が気になります。
そのなかでも、演奏のしやすさを大きく左右するのが「鍵盤数」です。

「61鍵で足りるのか」「ピアノ経験があるから88鍵が必要か」と迷う方も多いでしょう。
実際には、弾く曲だけでなく、移動手段や将来の機材構成も選ぶ基準になります。

店頭で初めてのバンド用キーボードをご相談いただくと、最初から61鍵を目的にされている方は多くいらっしゃいます。
理由を伺うと、「SNSで見た」「知り合いに勧められた」という声もよく聞きます。

もちろん、61鍵はバンドで使いやすいサイズです。
ただし、61鍵がすべての人にとって最適とは限りません。

結論からお伝えすると、重量を最優先しない方は、61鍵だけでなく73鍵・76鍵も試してから決めるのがおすすめです。
73/76鍵は音域に余裕があり、最初の1台でピアノ、エレピ、オルガン、シンセを幅広く使いたい方にとって、有力な選択肢になります。

この記事では、バンド用キーボードの選び方を鍵盤数の視点から掘り下げ、演奏・持ち運び・将来の機材構成という3つの観点から解説します。

バンド用キーボード全般の選び方は、以下の記事で紹介していますのでご覧ください。
バンド用キーボードの選び方はこちら

結論:1台で幅広く弾きたいなら73〜76鍵が有力

バンドで使う最初の1台として、ピアノやエレピも弾きたい方には、73鍵または76鍵が有力です。

61鍵でも、リードシンセ、オルガン、パッド、効果音などは十分に演奏できます。ギター中心のバンドで、鍵盤は補助的な役割という場合にも扱いやすいサイズです。一方で、ピアノを両手で伴奏したい場合は、61鍵だと音域が足りなくなることがあります。
左手で低音を弾き、右手でコードやメロディを弾く。こうした基本的なピアノ伴奏でも、低音か高音のどちらかを省く場面が出てきます。

また、スプリットも同様です。左手にシンセベース、右手にピアノやシンセを割り当てると、61鍵では左右の鍵盤数が限られます。73/76鍵なら、両手でのピアノ演奏やスプリットに余裕を持たせやすくなります。

88鍵ほどの幅は必要ないが、61鍵では少し心配。その間を埋めるのが73/76鍵です。また、73/76鍵には、シンセタッチだけでなく、ハンマーアクションを採用したモデルもあります。「絶対ピアノタッチがよい!」という方にも選択肢が広がります。

ただし、73/76鍵にも弱点はあります。61鍵より本体が大きくなりやすく、同シリーズでは価格が上がります。

ただ、誤解されがちなのですが、「73/76鍵なら必ず61鍵より重い」わけではありません。鍵盤機構、本体の素材、スピーカーや操作子の数によって重量は変わります。鍵盤数だけで決めず、実際の寸法と重量を比べることが大切です。

鍵盤数演奏スタイル・編成の目安バンド内で担いやすい役割
49鍵以下上段用シンセ、EDM、打ち込み中心の編成リード、効果音、シンセベース、サブ鍵盤
61鍵ギターロック、アニソン、EDM、ポップスリード、オルガン、パッド、シンセ系バッキング
73/76鍵J-POP、シティポップ、ファンク、フュージョンピアノ・エレピ伴奏、クラビ、スプリット、リードとバッキングの両立
88鍵バラード、ピアノ主体のバンド、鍵盤デュオピアノソロ、広い音域の伴奏、低音から高音まで使う演奏

※表はあくまで目安です。同じジャンルでも、担当するパートやアレンジによって必要な鍵盤数は変わります。

歴代シンセ人気モデルの鍵盤数

以下は、1970年代から1990年代までの代表的なシンセサイザーを、鍵盤数と最大同時発音数で並べたものです。この機種は?というものもあるかも知れませんが、ご了承を。

鍵盤数代表モデル最大同時発音数
197044Minimoog Model D1音(モノ)
197237ARP Odyssey(Mk I)2音(デュオ)
197437Yamaha SY-11音(モノ)
197837Korg MS-201音(モノ)
197861Sequential Circuits Prophet-55音
198161Korg Polysix6音
198161Roland Jupiter-88音
198232Roland SH-1011音(モノ)
198232Yamaha CS011音(モノ)
198349Korg Poly-8008音(4音)
198361Yamaha DX716音
198437 / 49Casio CZ-101 / CZ-10008音(4音)
198461Roland JUNO-1066音
198461Ensoniq Mirage8音
198537 / 61Yamaha DX100 / DX278音
198761Roland D-5032音(16音)
198861Korg M116音
198961Yamaha SY7732音
198961Roland W-3016音
199061Yamaha EOS B50024音
199061Korg Wavestation32音
199161 / 76 / 88Korg 01/Wシリーズ(01/W、pro、proX)32音
199161Roland JD-80024音
199561 / 76 / 88Korg Trinityシリーズ(TRINITY、Pro、ProX)32音
199549Clavia Nord Lead4音(12音)
199661 / 76Roland XPシリーズ(XP-50、XP-60、XP-80)64音
199649Roland JP-80008音
199961 / 76 / 88Korg TRITONシリーズ(TRITON、Pro、ProX)62音

表を見ると、70年代には37鍵や44鍵のコンパクトなモデルがあり、モノフォニック・シンセサイザーも多く見られます。
一方で、70年代後半から80年代前半には、「Prophet-5」「Polysix」「Jupiter-8」のように、和音演奏にも対応する61鍵モデルも登場しています。

1980年代後半には、「DX7」、「D-50」、「M1」など、61鍵のデジタルシンセサイザーが代表的な存在になります。さらに90年代以降は、同じシリーズで61鍵・76鍵・88鍵を用意するモデルも増えました。

61鍵、73/76鍵、88鍵がスタンダードになった理由

現在のステージキーボードでは、61鍵、73/76鍵、88鍵が代表的なサイズです。なぜこの鍵盤数が定番になっているか、まず一番わかりやすいのが88鍵です。これは現代のアコースティックピアノで標準的な鍵盤数です。
元々アコースティックピアノも88鍵が最初ではなく、49鍵が古くからあり、その時代の演奏家の要望や技術の進化によって今の88鍵盤になりました。そのため、ピアノ曲を本来の音域で演奏したい方にとって、88鍵が基準になります。

余談ですが、88鍵がアコースティックピアノの最大数ではありません。現在は、108鍵を備えたピアノも製作されています。鍵盤数が増えれば、より低い音域・高い音域を使えることで、作曲や演奏の表現に新しい選択肢が生まれます。88鍵が標準でありながら、88鍵を超えるピアノも生まれていることは、鍵盤数が表現の可能性とも関係しているひとつの例といえますね。

次に61鍵です。61鍵が定番になった背景には、オルガンの存在も関係しているのかもしれません。
ハモンドオルガンは、1930年代から1段あたり61鍵を採用してきました。パイプオルガンを含むオルガンの手鍵盤数は楽器によって異なりますが、61鍵はオルガン演奏において馴染みのある鍵盤数です。

こうしたオルガンの歴史が後のシンセサイザーにどこまで影響したかを断定することはできません。ただ、61鍵は5オクターブあり、リード、オルガン、パッド、シンセベースなどを弾くには実用的な広さがあり、多くの演奏家に必要な鍵盤数と選ばれています。

73鍵・76鍵は、61鍵と88鍵の中間にあるサイズです。
ステージエレピの代表であるRhodes Pianoには73鍵モデルがあり、73鍵というサイズは多くの演奏者に親しまれてきました。

76鍵を採用した楽器には、Yamaha「CP-30」やSequential Circuits「Prophet T8」などがあります。
持ち運びも考えながら、両手での演奏やソロ表現にも対応したい。その必要性が、73/76鍵という選択肢につながっています。

持ち運べるサイズの目安

バンド用キーボードでは、演奏性と持ち運びやすさが切り離せません。鍵盤数が多ければ、使える音域は広がります。
一方で、一般的には本体の幅も大きくなります。重さは、筐体の素材や鍵盤機構、ディスプレイ、ノブ、フェーダーなどの操作部の構成によって変わります。鍵盤数だけで判断することはできません。
ただし、鍵盤タッチの違いを知っておくと、重さや弾き心地の傾向を考える助けになります。

  • アンウェイテッド鍵盤
    ライトウェイト鍵盤と呼ばれることもある、軽いタッチの鍵盤です。シンセサイザーに多く、軽い力でも弾きやすい反面、跳ね返りを強く感じることもあります。一般に、本体も軽量なモデルが多い傾向があります。
  • セミウェイテッド鍵盤
    アンウェイテッド鍵盤よりも、少し抵抗感を持たせた鍵盤です。モデルによっては、おもりや鍵盤機構によって適度な重さを加えています。ピアノタッチほどではないものの、軽いシンセタッチよりも弾き応えがほしい方に向きます。
  • ウェイテッド鍵盤
    フルウェイテッド鍵盤と呼ばれることもあります。ハンマーアクション機構を採用し、アコースティックピアノに近い弾き心地を目指した、いわゆるピアノタッチの鍵盤です。鍵盤機構が複雑になるため、本体も比較的重くなりやすい傾向があります。

車移動なら88鍵も選びやすい

車で移動するなら、88鍵も現実的な選択肢になります。

確認したいのは、本体だけの長さではありません。ケースに入れた状態で車に積めるかまで考える必要があります。
88鍵は、本体の重量だけでなく、ケースを含めた長さが問題になることがあります。
後部座席を倒す必要があるのか。斜めにしなければ積めないのか。購入前に確認しておきましょう。

車移動が中心なら、下段に88鍵、上段に61鍵や49鍵のシンセサイザーを置く2段構成にも発展させやすくなります。

持ち運びだけでなく、セッティングの時間も考慮すべきかと思います。複数のバンドやアーティストが出演するイベントでは転換時の時間も気を使う必要があります。

ライブハウスでは、スタッフが手伝ってくれることもありますが、必ずサポートを受けられるとは限りませんし、自主企画、地域イベント、リハーサルスタジオなどでは、メンバーや知人と協力して運ぶ場面もあります。
ひとりで扱える範囲かどうかは、購入前に考えておきたいポイントです。

電車移動なら10kg前後をひとつの目安にする

電車移動が中心なら、本体重量は10kg前後までを目安に考えるとよいでしょう。ただし、無理なく運べる重さは、体格や以下の条件によっても変わります。

  • 最寄り駅までの距離
  • 住まいや駅、使用場所に階段が多いか
  • エレベーターを使えるか
  • ケースを含めた総重量は何kgか

こうした条件が変われば、運びやすさも変わります。

88鍵を電車で運ぶこと自体は可能です。
筆者自身も、短期的なイベントやゲリラライブのような用途で、88鍵を電車で運んだことがあります。
ただ、毎回の移動となると正直、キツイ・・・と感じました。

ケースに入れた88鍵は長く、人混みで方向を変えるだけでも気を使います。さらに、雨の日はどうするのか。
ケースを濡らさず、傘やレインウェアも扱いながら移動できるのか。こうした点まで考える必要があります。

以前、88鍵を電車で運びたいというお客様に、店頭で移動の感覚を試していただいたことがあります。
本体を少し持ち上げるだけなら問題がなくても、ケースに入れた状態では印象が変わります。

最終的には、駅構内の移動経路などを調べ、丈夫なキャリーカートを用意する形になりました。
準備をすれば88鍵を電車で運ぶことはできます。

ただし、エレベーターのない住環境、階段の多い駅、ひとりでの搬入が多い活動では、本体とケースを合わせて20kgを超える機材は大きな負担になります。
また、88鍵に加えて上段用のシンセサイザー、スタンド、ペダル、ケースまで電車で運ぶとなると、継続的な運用はかなり難しくなります。

練習はスタジオを借りる方法もあります。
しかし、本番と同じ仕込みを毎回再現できるとは限りません。ライブ当日の搬入・設置・転換まで含めて考えると、無理のない構成を選ぶことが大切です。

88鍵を軽く運びたい場合の選択肢

セミウェイテッド鍵盤も候補

88鍵は必要だが、重いのは避けたい。
その場合は、セミウェイテッド鍵盤のモデルも候補になります。

セミウェイテッド鍵盤は、軽いシンセタッチよりも適度な抵抗感があり、ハンマーアクション鍵盤より軽量なモデルの鍵盤です。

Studiologic「Numa Compact SE」は、88鍵を搭載しながら本体重量は7.1kgです。
幅は1270mmありますが、88鍵モデルとしては持ち運びを考えやすい重さです。

ピアノらしい重い鍵盤タッチを最優先するより、88鍵の音域と可搬性を両立したい方に向いています。

ピアノタッチを求めるなら73/76鍵も試したい

「ピアノタッチの鍵盤がほしい。でも、88鍵を毎回運ぶのは難しい」
このような方は、73鍵・76鍵のハンマーアクション鍵盤を試してみてください。

なお、記事執筆時点では、61鍵でステージ向けのハンマーアクション鍵盤を採用した現行モデルはありません。
接客では、ハンマーアクション鍵盤を求める方ほど、ピアノ経験を背景に、タッチによる細かな表現を重視する傾向があります。
そうした方が両手伴奏や広い音域を使うなら、61鍵で音域を制限するよりも、73鍵・76鍵以上で表現の幅を確保するほうが、鍵盤タッチにこだわる目的に合いやすいでしょう。

Studiologic「Numa X Piano 73」は、73鍵のハンマーアクション鍵盤を採用しています。
本体重量は11.7kg、幅は1052mmです。

ピアノ、エレピ、オルガン、ストリングス、シンセサイザーなど、バンドで使いやすい音色を搭載しています。
4つのゾーンを使ったレイヤーやスプリットにも対応しているため、1台で音色を使い分けたい方にも検討しやすいモデルです。

「2段積み」の未来から逆算

プロのキーボーディストは、2台以上のシンセサイザーを使って演奏することも多いです。「あの囲まれた感じがかっこいい……」という方も多いのではないでしょうか。
上下を鍵盤に囲まれたセットは、見た目にも迫力があります。ただ、2段鍵盤は見た目のためだけに使われるものではありません。

2段鍵盤は、異なる音色へすばやく移るためのセット

大きな理由は、異なる音色へすばやく移るためです。

下段をピアノ、上段をオルガンにする。
下段をエレピ、上段をシンセリードにする。

このように分けておけば、曲中に複雑な操作をせず、弾く鍵盤を変えるだけで音色を切り替えられます。スプリットでも、ひとつの鍵盤で異なる音色を使うことは可能です。ただし、鍵盤を上下に分ければ、左右それぞれに使える音域を確保しやすくなります。

2段鍵盤の楽器を思い浮かべると、考え方がわかりやすいでしょう。
たとえばエレクトーンでは、上鍵盤と下鍵盤に異なる音色や役割を割り当てます。オルガンも、上下の手鍵盤を使う代表的な楽器です。ドローバーを備えたオルガンでは、ドローバーと呼ばれるレバーを組み合わせ、倍音を重ねて音色を作ります。こうした仕組みは、後のシンセサイザーにも通じる、加算合成的な考え方です。

また、複数台を使う理由は、音色だけではありません。

  • ピアノは、この鍵盤の弾き心地が好き
  • シンセベースは、アナログ系の音がほしい
  • フィルターをノブで操作して、演奏中に音を変えたい

こうした理由から、役割に応じて機種を使い分ける方もいます。

将来の2段鍵盤を考えた最初の1台の選び方

将来、2段鍵盤にする可能性があるなら、最初の1台を選ぶ段階で考えておくと選びやすくなります。

  • 上段用のシンセを中心に考えるなら、61鍵を選ぶ
  • 下段でピアノやエレピを弾きたいなら、73/76鍵または88鍵を選ぶ
  • 電車移動が多いなら、下段は73/76鍵までにすると運用しやすいことがある
  • 車移動が中心なら、88鍵+上段シンセの構成も組みやすい

最初から2台そろえる必要はありません。
まずは、自分がいま最も多く弾く役割を担える1台を選ぶことが先です。

2台目におすすめなシンセサイザーは、以下の記事をご覧ください。

各鍵盤数のメリット・デメリット

ここまでの内容を、鍵盤数ごとに整理します。
優劣ではなく、自分の演奏と移動に合うかどうかで考えてください。

61鍵盤:可搬性と上段運用を重視する方に向く

61鍵は、バンド用キーボードとして扱いやすいサイズです。比較的コンパクトなモデルが多く、狭いステージや自宅にも置きやすい傾向があります。
シンセリード、オルガン、パッド、効果音など、片手中心の演奏では扱いやすい鍵盤数です。
将来的に2段鍵盤にするなら、上段にも置きやすいサイズです。

ただし、ピアノの両手伴奏やスプリットを行う場合は、音域の少なさが出ることがあります。また、バラードなどのソロ演奏では、広い音域を使った演奏に加え、タッチによる表現力も大切です。
ただし61鍵では、ウェイテッド鍵盤仕様のモデルを選べないことが多く、広い音域とピアノらしい弾き心地の両方を重視したい場合には、物足りなさを感じることがあります。

良いところ

  • 持ち運びやすいモデルを選びやすい
  • 狭いステージや部屋でも設置しやすい
  • 2段鍵盤の上段として使いやすい
  • リード、オルガン、パッドを中心に弾く場合に対応しやすい

気を付けたいところ

  • 両手でのピアノ伴奏では、低音または高音が足りなくなる場合がある
  • スプリット時は、左右に割り当てられる鍵盤数が少なくなる
  • 1台でピアノ、ベース、シンセを完結したい場合は、アレンジの工夫が必要になることがある

73/76鍵盤:最初の1台で役割を広げたい方に向く

73鍵・76鍵は、ピアノ演奏とシンセ演奏の間にあるサイズです。ピアノやエレピを両手で弾く。左手にベース、右手にピアノやシンセを割り当てる。
オクターブボタンを使って、曲の最後に低音や高音で締める。
こうした演奏をしたい方にとって、73/76鍵は使いやすい鍵盤数です。

もちろん、88鍵ほどの音域はありません。
ただ、バンドアレンジのなかで複数の音色に対応しやすい鍵盤数だと思います。また、73鍵・76鍵からは、ピアノタッチのモデルも選択肢に入ってきます。多少の重さを覚悟できるなら、その選択もできます。1台で完結したい方にとって、強い味方になる鍵盤数と言えます。

良いところ

  • 両手でのピアノ・エレピ演奏に対応しやすい
  • スプリットでも、左右に音域を残しやすい
  • シンセタッチとピアノタッチの両方から選べる
  • 1台で複数の役割を担いやすい
  • 将来的に2段鍵盤にする場合、下段として使いやすい

気を付けたいところ

  • 61鍵と比べると、本体の幅や重さは増える
  • 同じシリーズでは、61鍵より価格が上がる
  • クラシック曲やピアノソロを中心に弾く場合は、88鍵が必要になることもある

88鍵盤:ピアノを主役にしたい方に向く

88鍵は、現代のアコースティックピアノと同じ鍵盤数です。ピアノ経験者にとっては、音域や鍵盤配置に違和感が少ないサイズでしょう。低音から高音まで、オクターブ移動をせずに使えます。広い音域を使うピアノ伴奏や、ソロ演奏にも対応しやすくなります。

また、ハンマーアクション鍵盤の選択肢が多いことも特徴です。弱い音から強い音まで、弾き方によって音の表情を作りたい方に向いています。

ただし、88鍵は運搬の計画が必要です。
本体だけでなく、ケース、ペダル、スタンドまで含めると、荷物が大きくなります。

良いところ

  • ピアノ曲を標準的な音域で演奏できる
  • 低音から高音まで広く使える
  • ハンマーアクション鍵盤の選択肢が多い
  • ピアノやエレピを中心に演奏したい方に向く

気を付けたいところ

  • ハンマーアクション鍵盤のモデルは重くなりやすい
  • 本体だけでなく、ケース込みの大きさと重量を確認する必要がある
  • 電車移動や階段の多い環境では、継続的な運搬が負担になりやすい
  • 2段鍵盤の上段には不向き

楽器店でチェックしたい5つのポイント

楽器店では、音色や見た目だけで決めず、実際の活動を想像して試してみてください。ここでは、鍵盤数を選ぶときに確認したいポイントを紹介します。

長さ確認

鍵盤数が違えば、本体の幅も変わります。ただし、同じ鍵盤数でも、本体の長さは機種ごとに異なります。鍵盤の左右にホイール、ボタン、ノブ、フェーダーなどが並びます。
そのため、鍵盤数だけで本体の幅を判断することはできません。

  • 自宅に置けるか
  • 車に積めるか
  • ケースに入れた状態で駅の改札やエレベーターを通れるか

こうした場面を想像しながら、寸法を確認してください。
また、左手で弾きながら右手でノブを操作できるか。
右手で弾きながら、左手でピッチベンドを使いやすいか。操作子の配置も演奏性に関わります。

重さ確認

持ち運びを考えるなら、重量は必ず確認してください。
ただし、店頭で本体の両端を持ち、少し持ち上げるだけでは判断しきれません。
実際には、ケースに入れ、ペダルやケーブルも持ち、駅や会場まで移動することになります。

スタッフに相談して、持ち上げたときの感覚を確かめてみましょう。
可能なら、ケースを含めた総重量も確認してください。

  • この機種に合うケースはどれですか
  • ケースに入れたら、合計で何kgになりますか
  • キャリーカートを使うなら、どのような方法がありますか

ここまで確認しておくと、購入後の移動を想像しやすくなります。

スタンドを会場で借りられるのか、自分で持ち込むのかも重要です。
ペダル、スタンド、譜面台、ケーブル類も重なると、それなりの荷物になります。

いろいろな曲を弾いてみる

「この曲には何鍵必要か」と鍵盤数を確かめるのは、なかなか難しいものです。演奏する曲が決まっていれば確認しやすいですが、この先どの曲を演奏するかまでは決まっていない方も多いでしょう。

そのため、88鍵以外のモデルを試奏する際は、いつも弾いている曲、これから弾く曲、弾く可能性のあるジャンルの曲などを、いろいろ試してみてください。ここでわかるのは、単に鍵盤数が足りるかどうかだけではありません。鍵盤数が少ないときに、自分の演奏がどのような感覚になるのかも、雰囲気としてつかめると思います。

  • ピアノを両手で弾く
  • 左手にベース、右手にシンセを割り当てる
  • オクターブユニゾンでリードを弾く

こうした演奏を試すと、鍵盤数が自分に足りるかどうかが見えてきます。

61鍵で足りない部分があっても、アレンジで対応できることはあります。
ただ、その工夫を楽しめるのか、それとも毎回の負担に感じるのかは、実際に弾いてみないとわかりません。

鍵盤タッチを確認する

同じ鍵盤数でも、鍵盤タッチは大きく異なります。

普段弾いている曲を、弱く弾いたときと強く弾いたときの両方で試してください。
また、複数の調で演奏してみると、黒鍵・白鍵を使うときの感覚も確かめやすくなります。
ピアノ音色だけでなく、オルガンやシンセの音色でも弾くと、自分に合う鍵盤が見えやすくなります。

音を出さずに鍵盤を押してみるのもおすすめです。
鍵盤の重さ、戻り方、押し始めの感触に集中できます。

欲しい機種が店頭にない場合は、同じ鍵盤機構を採用した別モデルを試す方法もあります。
ただし、同じ鍵盤機構かどうかはスタッフに確認してください。

スプリットとオクターブ操作をしてみる

バンドでは、複数の音色を使う場面があります。そこで確認したいのが、スプリットとオクターブ操作です。
まずは、左手にベース、右手にピアノやエレピを割り当ててみましょう。
次に、それぞれのパートに必要な鍵盤数が残るかを確認します。

61鍵では、スプリットした時点で左右の鍵盤数が限られます。
73/76鍵なら、左右に少し余裕を持たせやすくなります。
また、音色ごとにオクターブを変えられるかも確認してください。

  • 低音側のベースだけを1オクターブ下げる
  • 右手側のシンセだけを1オクターブ上げる
  • 設定をすばやく切り替えられる

こうした設定がすぐにできるかどうかは、本番での使いやすさに関わります。

まとめ:鍵盤数は「担当パート」と「運び方」で選ぼう

バンド用キーボードの鍵盤数は、「このジャンルだから」「みんなが使っているから」だけで決めるものではありません。同じ曲でも、自分が何を担当するかで必要な音域は変わります。

  • ピアノを両手で弾くのか
  • シンセリードやパッドなど、片手中心の演奏でもよいのか
  • さまざまな音色を扱いやすくするために、スプリットが必要か
  • 将来的に2段鍵盤にするのか

まずは、自分の役割を考えてください。そのうえで、持ち運び方も確認します。
電車でひとりで運ぶのか。車移動なのか。階段や雨の日も含めて無理なく扱えるのか。

鍵盤数は、「担当パート」と「運び方」の両方から選ぶことが大切です。

  • 可搬性や上段運用を優先するなら61鍵
  • 最初の1台でピアノ、エレピ、シンセまで幅広く弾きたいなら73/76鍵
  • ピアノ演奏を中心にし、運搬方法も確保できるなら88鍵

迷ったときは、61鍵と73/76鍵で同じフレーズを弾き比べてみてください。
両手伴奏やスプリットを試せば、自分に必要な音域が見えてくるはずです。

軽量なモデルを比較してみよう

鍵盤数ごとに、軽量な代表機種を見てみましょう。
以下の表は、すべての製品を網羅したものではありません。また、軽さを優先しているため、ライブ向けの操作性や音色、端子の充実度までを基準にしたものでもありません。

  • 質量・幅は各メーカーの公表値です。付属品を含むかどうかなどの条件は機種によって異なります。仕様は変わるため、購入前には必ず最新の公式情報を確認してください。
88鍵:軽量な代表機種(質量順)
ブランド型名鍵盤タッチ鍵盤数重さ(kg)横幅サイズ(mm)
RolandGO:PIANO88 (GO-88PX)アンウェイテッド88鍵5.81280
StudiologicNuma Compact SEセミウェイテッド88鍵7.11270
StudiologicNuma Compact X SEセミウェイテッド88鍵7.11270
CASIOCDP-S160BKウェイテッド88鍵10.51322
CASIOCDP-S300ウェイテッド88鍵10.91322
73鍵~76鍵:軽量な代表機種(質量順)
ブランド型名鍵盤タッチ鍵盤数重さ(kg)横幅サイズ(mm)
RolandJUNO-D7アンウェイテッド76鍵6.81217
RolandFANTOM-07アンウェイテッド76鍵71218
YAMAHAMODX M7セミウェイテッド76鍵7.61089
Nord KeyboardsNord Electro 7 73セミウェイテッド73鍵9.51066
Nord KeyboardsNord Stage 4 Compactセミウェイテッド73鍵10.41066
61鍵:軽量な代表機種(質量順)
ブランド型名鍵盤タッチ鍵盤数重さ(kg)横幅サイズ(mm)
KORGKROSS2-61アンウェイテッド61鍵3.8935
KORGKROSS2-61-SCアンウェイテッド61鍵3.8935
KORGi3アンウェイテッド61鍵41037
RolandGO:KEYS 3アンウェイテッド61鍵4.5950
YAMAHAMX61アンウェイテッド61鍵4.8984

鍵盤数別:ステージで使いやすいおすすめ機種

最後に鍵盤数ごとにステージ向けにおすすめ機種をご紹介。

88鍵盤のおすすめ機種:

88鍵は、車で運ぶなら選択肢が広がります。
ただし、電車移動で持ち出す機会もあるなら、重量とサイズを無視することはできません。

ここでは、車での運搬を基本としながらも、電車移動も想定して、88鍵のウェイテッド鍵盤モデルのなかではできるだけ軽量な機種に絞って検討します。88鍵としては決して軽いとは言えませんが、そのなかで少しでも運びやすいモデルを選ぶイメージです。

ステージシンセのなかで、できるだけ軽さを優先するなら、KORG「KROSS2-88」が候補に挙がります。質量は12.3kgと軽量ですが、幅は1,448mmあります。もう少し横幅を抑えたいなら、YAMAHA「CK88」とRoland「RD-88 EX」があります。どちらもサイズや価格帯が近く、選ぶ決め手は音色や操作性になるでしょう。
音色数やスプリット設定の細かさでは「RD-88 EX」、ライブ中のリアルタイム操作のしやすさでは「CK88」に魅力を感じます。どちらも甲乙つけがたいですね。

そのうえで、個人的には今回は「CK88」を選びます。私はヤマハのピアノを持っていたこともあり、タッチ感とピアノ音色が、ほんの少しだけ好みだったからです。あくまでその程度の個人的な好みなので、選ぶなら実際に両機種を弾いてみるのが一番です。

73/76鍵盤のおすすめ機種:

73鍵・76鍵では、長く使え、持ち運びにも対応しやすいモデルを選びたいところです。上位モデルは魅力的ですが、そのぶん予算も必要になります。そのため、中位グレードモデルを選びたいところですが、20万を超えてきます。

なので、予算を抑えつつ、ステージで使いやすい機能を求めるなら、Roland「JUNO-D7」は有力な候補です。JUNO-D7は、ピアノ、エレピ、オルガン、シンセなどの音色にすばやくアクセスしやすく、最初の1台としても扱いやすいモデルです。USB-Cによるモバイルバッテリー駆動にも対応しているため、将来上位機種を購入した場合でも、サブ機として活用しやすいでしょう。

予算に余裕があるなら、Roland「FANTOM-07」やYAMAHA「MODX M7」も検討してみてください。より深い音作りや、演奏環境に合わせた細かな設定をしたい方に向いています。

61鍵盤のおすすめ機種:

73鍵・76鍵も持ち運びはできますが、61鍵を選ぶなら、少しでも軽く、扱いやすいことを最優先にしたい方だと思います。

その条件に合いやすいのが、KORG「KROSS2-61」です。
質量は3.8kgと非常に軽く、電車移動でも扱いやすいモデルです。それでいて、ピアノ、エレピ、オルガン、シンセなど、ライブで使いたい音色をひととおり備えています。とにかく軽いモデルがほしい方や、将来的に2段鍵盤の上段として使いたい方にとって、まず検討したい1台です。

一方で、持ち運びやすさは大切にしつつ、音色の充実度や音作り、鍵盤タッチにもこだわりたい方もいると思います。そうした場合は、7kg以内をひとつの目安にするとよいでしょう。
7kg以内であれば、比較的持ち運びやすさを保ちながら、中位グレードのモデルも選択肢に入ってきます。Roland「FANTOM-06」も6kgと軽量で、有力な候補です。

そのなかで一番に挙げたいのは、YAMAHA「MODX M6」です。
MODX M6は、豊富な音色と柔軟な音作りが魅力の中位グレードモデルです。質量は6.6kgで、61鍵としては持ち運びやすい重さに収まっています。FANTOM-06も魅力的ですが、MODX M6にはセミウェイテッド鍵盤が採用されています。ピアノやエレピもある程度しっかり弾きたい方にとっては、この鍵盤タッチが大きなポイントになるでしょう。

とにかく軽さを優先するならKROSS2-61。
軽さを保ちながら、ピアノやエレピ、シンセまで幅広く扱いたいならMODX M6。61鍵のなかでも、どこに優先順位を置くかで、おすすめの1台は変わります。

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