技術者に聞く!あなたの仕事道具、見せて下さい! vol.2
こんにちは!
管楽器リペアの奥出です。
このシリーズでは技術者が普段使っている仕事道具に注目し、
お気に入りだったり、思い入れのある仕事道具をご紹介します。
前回の記事はこちら↓↓↓
今回も2人の技術者から仕事道具を見せてもらってきました。
ではでは早速ご紹介していきます!
停止帯フェルトリムーバー
まずは堤谷さんに、好きな工具を聞いてきました。
紹介してくれるのは、停止帯フェルト(コルク)リムーバーと呼ばれる工具だそうです。
堤谷 「私が紹介するのは、こちらの工具です。
トロンボーンの内管内部に入っているフェルトやコルクを取り除くために使うものですね。」
トロンボーンのスライドの、
停止帯と呼ばれる部分に入っているクッションですね。
このフェルト・コルクが古くなってくると
スライドを戻した時にノイズが鳴るようになってしまうので、交換が必要です。
堤谷 「この工具は、真鍮(しんちゅう)製のパイプから整形して作っています。
停止帯に差し込み、先端の爪のような部分で
フェルトやコルクをひっかけて引っ張り出します。
この爪の角度が重要で、角度によっては
なかなか引っかからずに苦労することになります。
フェルトやコルクに当たる爪の部分は、引っ掛けやすいよう
上向きに飛び出した形にしているんですよ。」
真鍮というと、柔らかくて加工しやすい金属ですね。
堤谷 「そうですね。
長く使われている楽器だと、長年押しつぶされて
カチカチに硬くなったフェルトやコルクが入っていることがあるんですが、
そういったフェルト・コルクを取り出す時に、
工具が負けて折れたり、変形してしまうこともあるんです。
そうした時に、メンテナンスがしやすい材質かなと思います。」
他にも停止帯フェルトリムーバーがあったので、並べてみました。
並べてみると、形が少しずつ違うのが分かりますね。
よく見ると太いものと細いものがありますが......。
堤谷 「技術者それぞれが各々に合った使いやすい形に加工しているので、
そういったところで違いがでてきますね。
太さの違いは、楽器に合わせて使い分けるためにあります。
トロンボーンには太管と細菅という種類があって、
スライドの太さも違ってくるので、楽器にあったものを使用しています。」
技術者の使用する工具は
作業がしやすいように少しずつ手を加えているものが多いので、
工具を見比べてみると、とても面白いですね。
今回このブログのシリーズを書くにあたって
いろいろな技術者から工具についての話を聞いていますが、
それぞれにこだわりがあり、とても興味深いです。
ちなみに、この工具の好きなところはどんなところでしょうか?
堤谷 「工具というよりは、この工具で行う作業が好きなのかもしれません。
スライドの中に入っているフェルトやコルクが取り除けた時の
すっきりとした感覚がとても好きなんです。
ぎゅうぎゅうに詰められているので
古くなっていると途中で切れたりもげたりして残ってしまうこともあって。
全部取りきれたときのすっきりさはいいですね。」
凹み修正用木製ハンマー
浮田さんが紹介してくれるのは
楽器の凹みを修正する際に使う、木製のハンマーだそうです。
どのように使っていくものでしょうか?
浮田 「こちらは凹み修正用の木製ハンマーです。
芯金と呼ばれる金属製の工具を楽器の裏側から当てて、表側から叩きながら修正していきます。
叩く面(打面)が大きいものと小さいものがありますが、
これは凹みの大きさに合わせて使い分けしています。」
打面が小さい方のハンマーは、不思議な形をしていますね。
浮田 「実はこれ、もともとは同じ形のハンマーなんです。
特殊な工具を使って自分で加工しました。」
加工した時のこだわりなどはありますか?
浮田 「とにかくツルツルで、綺麗な打面になるように加工しました。
キズの入ったハンマーで楽器を叩くと、楽器にキズがうつってしまうため、
ハンマーにキズが入ってしまった場合はその都度整えています。」
金属でできている楽器ですが、
木のハンマーでもキズがついてしまうことがあるんですね。
浮田 「楽器は思っているよりも繊細なんです。
場合によっては、作業途中でも一旦手を止めてハンマーの打面を整えることもあるんですよ。」
今回見せてもらったのは木製ハンマーでしたが、
他の種類のハンマーもあるのでしょうか?
浮田 「金属製のハンマーもあって、木製ハンマーと同様に、
大きい打面と小さい打面を使い分けられるように加工しています。」
どのような違いがあるのでしょうか?
浮田 「ひとことで言うと金属製の方が威力が高いです。
ただ、基本的に打痕(叩いた跡)が残らない木製ハンマーとは違って
必ず打痕が残ってしまうため、なるべく木製ハンマーを使うようにしています。
金属ハンマーは、鋭い凹みなどを修正する際に、最後の方で使うことが多いですね。」
技術者はいろいろなハンマーを使い分けていますが、
今回は凹みを修正する時に使うハンマーを見せてもらいました。
いろいろなことを考えながら、その状況にあったハンマーを選択して使用しているんですね。
vol.3もお楽しみに!
今回は、停止帯フェルトリムーバーと凹み修正用木製ハンマーについて話を聞いてきました。
このシリーズはまだあと少し続きますので、次回もお楽しみにお待ちください!
浮田の過去のブログはこちら
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東京出身のホルン吹きです!吹奏楽のほか、弦楽合奏やアイリッシュ音楽など、いろいろな音楽に触れてきました。皆さまの楽器一本一本に丁寧に向き合っていきます。