こんにちは!日に日に秋らしくなってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
今回は、あるお客様から「駒が倒れた時に立て方がわからなかった。どこかに書いてあったらいいのに・・・」というお話を伺ったので、駒の立て方をご紹介しようと思います。貴重なご意見をいただき、誠にありがとうございます!!
ただし、駒の立て直しにおいてはお客様の大切な楽器を守るため、必ず【重要なお知らせ】は理解した上で次の段階に進んでください。状態によっては無理に駒を立てると楽器が壊れてしまいますので、注意事項に該当した場合は、それ以上無理せず技術者にお任せくださいね。


状況設定: 駒が倒れた!

駒が最初から外れていた、という場合を除いて、とても動揺する瞬間ではないかと思います。
まずは気持ちを落ち着けて状況を確認していきましょう。


①テールピースの下に緩衝材(ハンカチ・段ボール等)をはさむ。

駒が倒れた瞬間、テールピースは表板に勢いよくぶつかっているはずです。まずはこれ以上傷がつかないように布などを挟みましょう。

【重要なお知らせ❶】
この時点で、駒や魂柱の位置調整等に繊細な調整を行っている方や、駒が倒れる前とほんの少しでも音が変わったら困る!とおっしゃる方は、魂柱が今の位置から動かないよう、これ以上衝撃を加えないようにして、いつも調整を行っているお店・楽器を購入されたお店等にお持ち込みください。私は大丈夫!とおっしゃる方は、テールピースの下や、駒周辺にヒビや割れがないことを確認して次に進んでください。


駒やテールピースの周辺は衝撃でキズ・ヒビが入りやすいです。ヒビ・割れに関しては修理が必要になります。


②魂柱が立っているか確かめる。

バイオリンの中には魂柱(下図参照) と呼ばれる木の棒が立っていて、これが表板の振動を裏板に伝える役割を果たしています。棒の上下は表板・裏板とぴったり合うように削られていて、純粋に上下からの圧力でそこに留まっているため、接着材は使われていません。駒が倒れると、この棒の位置がずれたり倒れたりするのは、よくあることなのです。
↖駒の下に立っている長い棒が魂柱

【重要なお知らせ❷】
この時点で、魂柱が倒れて中でカラカラ音を立てている状態であったり、そもそも魂柱が見つからない場合は、無理に圧力を加えると表板が変形してしまいますので、そのまま楽器店にお持ち込みください。


左右のf字孔と呼ばれる穴から確認してみてください。大体の楽器では、写真のように駒足の下付近(もっと言えば、駒足からテールピース側に少しずれたところ)に垂直に近い形で立っているはずです。ちなみに、左の画像が左のf字孔から見た時、右の画像が右のf字孔から見た時のものです。

また、かなり難しいですが、余裕があれば裏板と魂柱の接面(左の画像矢印部分)に隙間ができていないかどうかや、右の画像のようにして見た時に魂柱が画像のようにまっすぐになっているかも確認しておくと良いと思います。


③弦をほんの少しだけ緩める

ここまで来たら、ペグを 1/4 ~ 1/2 回転分くらい回して、弦を少し緩めてください。魂柱を留めている圧力は少しなくなってしまいますが、弦を強く張ったままでは駒を立て直すこともできないので、必要最低限 (駒を無理なく立て直せるくらい) の範囲で弦を緩めます。

【重要なお知らせ❸】
この時点で、魂柱が倒れてしまった場合、残念ながら魂柱を立て直さないと駒が立てられないので、そのまま楽器店にお持ち込みください。


④駒が倒れた衝撃で表板にヒビが入っていないかもう一度確かめる。

駒には常に弦4本分の力がかかっています。その重さを例えるなら赤ちゃんが乗っているくらいだと想像するとわかりやすいかもしれません。駒が倒れると、そのバランスが急に崩れ、駒が表板に勢いよく当たるため、表板には傷やヒビが入りやすいのです。

【重要なお知らせ❹】
古い木材・薄い木材は特に繊細ですので、しっかり見ていただく必要があります。ヒビ・割れ・ハガレがあった場合も弦を張るとその部分に負荷がかりすぎてしまい、ヒビ等が広がってしまうので楽器店へお持ち込みください。駒・魂柱の立て直し以前にその部分の修理が必要です。
また、駒が倒れた衝撃で横板部分に剥がれが起きているかもしれません。楽器をの周りをぐるっと見て、表板・裏板との間に隙間がないかご確認ください。


左の画像の黄色で囲んだ部分が割れ・ヒビ・キズの入りやすい箇所です。ニスにキズがついたくらいであれば、駒を立てていただいても問題ありません。右の画像の矢印部分が横板と表板・裏板との接合面です。楽器をぐるっと回す感じで隙間ができていないか確認してみてください。


⑤大体の位置に駒を立て、緩めに弦を張る

「倒れる前はこの辺に立っていたかな~?」と思われる位置に駒を立て、緩めに弦を張ってみましょう。駒が倒れないくらい張っていれば十分です。ただし、少し弦を張るたびに駒の角度を直して再度駒を倒してしまわないよう気をつけながら行ってください。(← 駒の向きが違うとうまく駒が立ちません。大体は細い弦(高音の弦)側の高さがより低くなっていますので、裏表をしっかり確認して立ててください)


駒の角度に関しては(画像がとても分かりづらくて申し訳ないのですが)、テールピース側が表板表面に対してほぼ90°になっており、駒足が表板とできるだけぴったり合っているということをご確認ください。もし駒の角度が90°にならなくても駒足がぴったり合っているならば、駒足がより滑りにくいように駒足を優先した角度にしてください。もしこの時、駒があまりに変形して曲がってきている状態の場合、少しの調弦で駒が傾きやすいので、駒の角度修正により注意を払って弦を張るようにしてください。


⑥駒の目安位置に駒を移動させる

ここまできたら、駒をもとあった正確な位置に戻してください。跡がくっきりついていればそこへ戻すのもよいと思いますが、わからなくなってしまった場合は、下記の基準を参考にしてみてください。ただ、こちらに載せているのはあくまでも基準ですので、調整の仕方によっては、これより若干意図的にずらしてある場合があります。

上の画像のように見たとき、左右のf字孔の内側にある切込みをつないだ線(黄色い線)が、駒足の真ん中に来るように駒を移動させます。赤い四角が大体の駒位置目安です。その後、左右のブレを修正します。中央のはぎ合わせの線(画像のタテ向きの赤線)を基準にしても大きく逸れはしないだろうと思うのですが、弦ができるだけ指板上の弾きやすい位置に来るように、余裕があれば以下の見方もお試しください。

左の画像のように、指板の手前と奥の中央が一直線にみえる位置に楽器を持ちます。顔と楽器の位置はそのまま、駒と指板の端の位置関係(右の画像の黄色い矢印部分)を見てください。左右対称になっているでしょうか?大きくずれていたら、弦が指板からずれているかもしれません。できるだけブレを直してみてください。


⑥駒の角度を直しながら少しずつ調弦をする

最後に調弦をして完成です。⑤にも書きましたが、駒が曲がってきている場合は曲がっていない場合と比べてより駒が倒れやすいです。駒の角度にしっかり注意を払って調弦を行ってください。


おわりに

いかがでしたか?
突然駒が倒れるとビックリしますよね。記事でご紹介した通り、駒が倒れると楽器に衝撃が加えられ、変化が起きてしまっていることが多いです。
お手持ちの楽器が大切なものであればあるほどその扱いには注意が必要ですので、ご自身で駒を立てられた後は出来るだけ早めに点検にお出しください。
それでは、次回のリペア便りもお楽しみに♪

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この記事を書いたスタッフ

グランフロント大阪店吉村

クレモナ国際バイオリン制作学校卒業後、島村楽器に入社し修理を担当。弦楽器を楽しむ皆様を技術面からサポートいたします!何でもお気軽にご相談ください!

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