弓の巻き線~銀線巻き直し修理~ 【弦楽器工房ブログ】
皆様、こんにちは。
弦楽器技術スタッフの高瀬です。
先日、護国神社で開催されていた蚤の市へ遊びに行きました。
アンティーク系の雑貨や小物など自分好みの店が多く、何往復しても見飽きることのない内容でした。
その中でも、飛び切り興味深い雑貨がありましたので、迷うことなく購入して昨日より当工房で稼働してもらっています。

『好戦的なハリネズミの爪楊枝立て』です。
爪楊枝は修理でも良く使うので重宝するのですが、これのお陰で修理が更に捗ります。
※下の楽器は私物です
本日は
- 音調整
 - ニス補修
 - 銀線巻き直し、革巻き
 
を行わせていただきました。
ご来店いただき、ありがとうございます。
今回は弓巻き線の修理事例について、ご紹介させて頂きます。
弓銀線巻き修理
巻き線について
弓の持ち手部に巻かれている巻き線は、一体何のために巻かれているか皆様は考えたことがあるでしょうか。
用途は大きく分けると3つあり、
- 持ち手部の保護、グリップ性の向上の為
 - 装飾的意味合い
 - 重心のコントロール
 
これらの為に、巻き線が巻かれています。
なので、巻き線を交換する理由として『巻き線がほどけたから、劣化したから』という理由で修理に出していただくことが多いですが、『見た目を変えたい』『重心の位置を変えてコントロールしやすくしたい』という理由で銀線を巻き直すのも、気分が変えられて面白いと思います。
巻き線の種類も
- 銀線
 - 銀糸
 - 金線
 - クジラの髭
 - クジラの髭イミテーション
 - 絹糸
 
と多種多様なので、見た目も重心の変化も色々と楽しめます。

画像は上から『クジラの髭イミテーション、銀糸×絹糸、銀線』です。
銀線巻修理事例
今回のお客様はオリジナルの銀線が劣化してしまいましたので、新しく銀線を巻き直すことにしました。

重心や見た目を変える必要は無いので、オリジナルの銀線と同じ径(0.3mm)の銀線を使用します。
銀線巻手順
まずはオリジナルの銀線と革巻きを外し、綺麗にクリーニングした後に銀線巻を巻き始めます。
個人的には巻き始めが一番大変です。
(棹へのダメージを考え、巻き始めは接着剤等は使用せずに銀線だけで固定するので…)

ちなみに当工房では全て手作業で行っていますので、足もフルに活用して銀線巻を行っています。

汚い画像をお見せしてしまい申し訳ありませんが、足元でこのようにコントロールしながら巻きます。
何も考えずにただ巻いている…という訳ではなく、「銀線が捻じれていないか、隙間が出来ていないか、均一な力で巻けているか…」と、結構気を遣う作業だったりもします。
銀線と言えども径が細いので、力加減を間違えると簡単に切れてしまいます。
当たり前ですが、途中で切れたら全て最初からやり直しになります。
私は大体この辺りまで巻くと集中力が切れるので、ここで30秒ほど小休止を入れます。
(修業時代、集中力が切れた状態で銀線を巻き続けて、あと数回巻けば完成…という所で線が切れた思い出がいつもフラッシュバックします)
10分程巻き続け、十分な長さを確保出来たら最後に「はんだ付け」をして銀線巻は完了となります。

最後に革巻きも巻き直し、弓の重量を計って修理前と差異が無いかチェックし、問題が無ければ終了です。
棹本体に歪みがあったので銀線も歪んで見えるポイントがありますが、それ以外は問題なく行えました。

最後に
今回は詳しくご紹介できませんでしたが、絹糸と銀線を用いたカラフルな巻き線交換も可能です。
ご要望があればお好みの配色で巻くことも出来ますので、興味のある方は是非ご相談ください。
(巻き線の色に合わせて革巻きの色も変えると見栄えも良くなります!)
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弦楽器技術者の高瀬です。楽器の調子が悪い、音をもっと良くしたいと思いましたら、ぜひご来店ください。皆さまをお待ちしています!