リペアマン遠藤の仙台リペアブログ~その76~フレットレス指板エポキシコーティングの巻!

みなさまこんにちは!

リペアマン遠藤です!

7月に入ってから一転して梅雨に戻ったかのような雨続き、毎日ジメジメが止まらないですね。

そしてなぜか無性に辛いものが食べたくなる、そんな今日この頃です。


本題に入りましょう。

まずはこちらをご覧下さい。

指板面がピカピカですね。美しい…

こちらは今回のブログタイトルでもありますように、フレットレスベースの指板にエポキシコーティングを施した状態です。


エポキシコーティングとは何ぞや?という方もいますので、

まず最初にフレットレスコーティングの解説から始めましょう。


指板をフレットレスに加工した後の処理がいくつかあるのですが、おおまかに3パターンあります。


1.無塗装

2.ウレタンorラッカー塗装

3.エポキシコーティング


1.無塗装はフレットレス加工後そのままの木部が剥き出しの状態です。

フレットレスの製品として出回っている楽器では恐らくこの状態が最も多いです。

指板面の木部を何も保護していないので、弾いていくうちに弦で指板が削れていきます。


2.ウレタンorラッカー塗装も多くの工場や工房でよく行われている手法です。

ボディやネックの塗装の延長線上と考えるとイメージしやすいと思います。

指板上が塗装されるので木部の保護が出来ます。


3.エポキシコーティングは基本的に工房で行われるような手法です。

ここで使われるのがエポキシ樹脂という物質です。人によっては2液性エポキシレジンと言うと分かりやすいかもしれません。

エポキシ樹脂には主剤と硬化剤があり、それが混ざると化学反応を起こして数日かけて硬化していき、完全硬化すると指板上に非常に硬質な被膜を形成する事が出来ます。

耐久性としては3パターンの中でもかなり優れています。


世界的に有名なベーシストのジャコ・パストリアスの愛機である、フレットレスのFenderジャズベースにエポキシコーティングが施されていた事でも有名です。

しかし、とにかく手間がかかり予期せぬ変異や硬化不良が起きやすく難しいので、工場等での大量生産には向かないようです。

それが原因なのか、Fenderから製品として出ているジャコ・パストリアスのシグネチャーモデルの指板面は基本的にウレタン塗装です。(Fender Customshopではエポキシのようです!)


音の傾向としては無塗装であればコントラバス系の甘いマイルドな音質、

コーティングしてあればフレッテッド系のアタック感のある明るい音質といった感じです。


耐久性としては無塗装は弾いてると指板が削れやすく、コーティングしてあれば削れにくいです。

しかしコーティングしてある場合でも弾いていくうちに弦痕や傷はどうしても付きます。

他にはオイル塗装なんかもありますが、音質・耐久性としては無塗装と似たような感じになります。

ここまでざっくりとしたフレットレスコーティングのお話でした。



それでは作業に入ります。

まずは指板面をしっかり下地処理します。

続いてマスキングテープで堰を作っていきエポキシ樹脂を注ぐ準備です。

2液性なので混合比が非常に大事です。撹拌ムラがあっても硬化不良を起こすのでシビアです。

注ぐ前に水平器で改めて水平をチェック。

水平状態がキープ出来ないと液体が傾いたまま固まるのでここも大事です。

注がれました。エポキシダムの完成です。

硬化する前に発生した気泡は潰していきます。

数日置いてエポキシ樹脂が完全硬化してから成型作業に入ります。

この時点では硬化面が完全に真っ平なので、指板面のRに合うように成型していきます。

そしてこの時点でストレートもしっかり出していきます。


この作業をしているとリペアブース前を通る店舗スタッフから「ここだけ雪が降ってますね!」とか言われます。

個人的にはこの様子は片栗粉大量生産だなぁとか思ったり…とにかく白い粉がめちゃくちゃ出ます。


エポキシ樹脂は成型する兼ね合いでかなり厚く盛っているので、相当な量を削ります。しかも硬い!

ここでの作業はかなり手間がかかります。

まずは荒い番手のペーパーで成型が終わりました。

ここからは鏡面仕上げを目指していくので、どんどん番手を上げて研磨していき最終的にバフ掛けします。

ペーパーで#150から始めて#1500まで番手を上げながら研磨していくわけですが、ここもかなり手間がかかります。

というわけでなんとかペーパー研磨が終わりました。

そろそろバフ掛けいってみましょうか。

はい、ピカピカです!

鏡面仕上げです。まるで水面のようですね。

今までの苦労が報われる瞬間です。

この後はナットを新規作製して組み込み調整で完成です!

今回施したエポキシコーティングを施したベースはなんと、Ibanezの6弦フレットレスベースでした。強い…!


いかがでしたでしょうか?

仙台ロフト店ではフレットレス加工をする際、今回のようなエポキシコーティングも可能です。とにかく美しく仕上がります!


ぜひお気軽にご相談ください。

以上、リペアマン遠藤でした!

またお会いしましょう~

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この記事を書いたスタッフ

仙台ロフト店遠藤

宮城県出身。長野県でギター製造に携わった後2017年から島村楽器仙台イービーンズ店の店頭リペアマンとなり、現在の仙台ロフト店に至ります。仙台のリペアは遠藤にお任せ下さい!

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