皆さまこんにちは。

Martinギターのボディバインディング剥がれ修理の後編です。

まだ前編を読んでない方はこちらからどうぞ。

Martinギターのボディバインディング剥がれ修理 前編

後編では、実際の修理の流れをご紹介していきます。


修理において何を優先するかは個人の考え方にもよりますが、

・再発のリスク回避

・仕上がりの美しさ

・コスト(修理代

色々なポイントを踏まえて、ベストな方法を考えます。(絶対的なセオリーは無いので、技術者によって見解が違ってくる事もあります。)


普段私は、以下の3通りから、楽器の状態や仕上がりのご希望に応じてご提案しています。

①巻き直し

②そのまま圧着

③継ぎ目または目立ちにくいところで切断して接着、隙間を埋める

①巻き直し

言葉の通り、新しい素材に巻き直す(交換する)方法です。

メリットは再発のリスクを抑えつつ、修正痕が残らない仕上がりになる点。

デメリットは費用が高額になる事と、オリジナルの状態に大きく手を入れる事になる点でしょうか。

作業の流れは、浅草橋の山口が大宮店勤務時代に書いたこちらのブログをどうぞ。

バインディングまき直し

接着自体はそうでもないのですが、ボディに塗装が施された状態から、段差がないようにはみ出した部分を削っていくのはかなり神経を使います。。。山口のブログでは塗装無しで仕上げておりますが、塗装作業も同時に行う事により、経年で焼けた色合いを再現する事も可能です。

どうしても手間に応じてリペア代が高くなりますので、バインディングが広範囲に剥がれて一部で欠損しているケースか、お客様がどうしてもと強く望まれる場合を除いて、個人的にはご提案する機会が少ない方法かなとは思います。

また、象牙調素材などは、現時点でボディ一周巻ける長さの素材が入手できない為、作業しようにも出来ないケースもございます。


②そのまま圧着

バインディングを温めて柔らかく伸ばしながら、接着剤を流してそのまま接着固定する方法です。

前編でお話ししたように、「あっちを押すとこっちが浮いて」という状態が顕著な場合は、段差が残らない様に当て木をはたがねで固定したり、ゴムバンドを巻いたり、状況により工夫します。

コストを抑えつつ、比較的綺麗な仕上がりになりますが、多少なりとも力を掛けた状態での接着になりますので、再発のリスクが高くなります。

お客様から「どのくらいの期間で再度剥がれそうですか?」と質問される事もありますが、こればかりは正直何とも言えません。すみません。。。

そこそこ力を掛けて作業する必要がある場合では、過去に数ヶ月で再度剥がれてしまった事例もありますし、そもそも素材がかなり大きく縮んでしまっている場合は、この方法では直せない事もあります。

私は、かなり軽症の場合か、再発のリスクをご理解頂いた上で、オリジナル性と仕上がりの美しさを優先されたいお客様にはこの方法をご提案しています。


③継ぎ目または目立ちにくいところで切断して接着、隙間を埋める

修正痕は残りますが、コストを抑えつつ、再発のリスクを低くする修理方法です。

個人的には、この方法をご提案するケースが一番多いですね。



ボディバック面であればヒール裏の継ぎ目

ボディトップであれば指板横


といったようにまず、継ぎ目や目立ちにくいところまで一旦あえて剥がします。

※トップ面は指板下に埋没している部分を上手く引き出すか、難しい場合は切断します。(上手く引き出せれば埋め痕を残さず修理が可能なのですが、過去の経験上、残念ながら上手く引き出せないケースの方が多いです)


こんな感じです。

トップ面の両ウエスト部が剥がれている場合は、広範囲に剥がして、一番目立ちにくい1弦側指板サイドで1か所のみ切断する事もあります。

(なるべく修正痕が目立たないようにしたい時)

こうすると力を掛けずに密着させることが可能になりますので、この状態で接着していきます。

すると、素材が縮んだ分だけ、数ミリ隙間が生じます。

この部分を近い素材で埋めます。

後ははみ出している部分を削って完了です。

バック面はこんな感じになります。

この方法の注意点として、接着されているところを剥がしていく際、最大限努力してもやむを得ず塗装がチップする事があります。元々使用感の強い楽器であればさほど目立たないのですが、新品に近い楽器であったり、お客様が望まれる場合は、状況により塗装の補修も同時にご提案させて頂きます。

(艶消し塗装の楽器は概ね問題ないのですが、グロス塗装の楽器など、塗膜が厚めの個体の場合は一緒にお勧めするケースが多いです。)

最後に

いかがだったでしょうか?

人によって「なるべく再発のリスクを低くしたい」「絶対に修正痕(埋め跡)は残したくない」など色々な思いがあると思います。

楽器の状態とお客様のご要望を踏まえて、ベストなご提案をさせて頂きますので、バイディングが剥がれてしまった際は島村楽器にぜひともご相談ください。


お近くの島村楽器はこちらから、

リペアブース併設店と専門店はこちらをご参照ください。


記事中に表示価格・販売価格、在庫状況が掲載されている場合、その価格・在庫状況は記事更新時点のものとなります。
店頭での価格表記・税表記・在庫状況と異なる場合がございますので、ご注意下さい。

この記事を書いたスタッフ

浅草橋ギター&リペア店本田

石川県金沢市出身 2013年中途入社。生粋のA型で、「大人なリペアマン」がモットーのギターリペア工房の真面目担当。

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