Martinギターのボディバインディング剥がれ修理 前編

皆さまこんにちは。

今回はMartinギターのボディバインディング剥がれについてです。

「いつか書こう!」と思って2年くらい時が流れてしまったのですが、ようやく書き上げました(笑)

どんな不具合なのか?

画像のようにボディのくびれ部分から、バインディングが剥がれてしまう症状です。

Martinギターをお持ちの方はウエスト部分を指でなぞってみて下さい。ぱっと見は大丈夫でも、段差があってプカプカ動く場合は、剥がれてきています。

最初は大体この辺りから、剥がれてきますね。

もし剥がれてしまっても・・・そんなに悲観しないでください。

島村楽器はMartinの代理店ではないですが、それでも工房に週に1、2本は必ずご依頼頂く症状ですので、決して珍しいリペアではありません。(当然剥がれない個体の方が多いのでしょうが、剥がれた=ハズレ個体という事でもなく、ある程度避けられない症状ではあります。)


単純に接着不良で剥がれてしまった訳ではなく

こっちを押すとあっちが浮いて

あっちを押すとこっちが浮いて

という状態からわかるように、素材自体が縮んでしまった事が原因のため、ほとんどの場合で、ウエスト部分から剥がれてきます。


また、品番や製造年などに特定の傾向がある訳でも無く

D28など、白系の単色素材


ヴィンテージ系モデルに使われる象牙調


サテン塗装に多い、黒系の単色


べっ甲系

色んなモデルで起こります。(これらすべて剥がれている画像です)


セルロイドのピックガードが縮んでしまうように、素材の特性上「縮む」事自体は避けられないのだと思います。恐らく気温など保管環境に起因しているのだとは思いますが、具体的にどういう条件下で縮みやすいのか?というメカニズムまでは正直分かりません。

心苦しいのですが、こうすれば縮みにくいですよという明確なご案内もできないのが、現状です。

修理にあたって

先ほど申し上げた通り、素材の縮みが原因の為、全く別の素材に交換してしまわない限り、根治させる事はできません。

長い目で見て、ずっと付き合っていくしかない症状とも言えます。

また、Martinはラッカー塗装の為、塗装面に影響を与えるような溶剤系の接着剤は基本的にリペアでは使えないという制約もあります。

(ただ、仮にこの世に絶対に剥がれない強力な接着剤があったとしても、素材が縮む事自体は止められないので、最終的に接着面ではなく木部が耐えられなくなって割れてしまうと言った、より不幸な事態が起こり得ます。)


と、ここまでの前置きだけでだいぶ長くなってしまったので、実際の修理の流れは後編でご説明します。

こちらも是非ご覧ください。

Martinギターのボディバインディング剥がれ修理 後編




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この記事を書いたスタッフ

浅草橋ギター&リペア店本田

石川県金沢市出身 2013年中途入社。生粋のA型で、「大人なリペアマン」がモットーのギターリペア工房の真面目担当。

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