original 1967 R. A. Moog modular NAMM2016会場にて
あの曲で使われているあの音!
こんにちわサカウエです。たとえばハード・ロックだったら歪んだオルガン、POPバラードだったら「FMエレピ」といった様に、「これが無いと始まらない」という使用頻度の高い定番音色というものがあります。
各メーカーのシンセには多くのプリセット音色が収録されていますが、特に「定番音色」の歴史は知っておきたいものですね。
音色名について
プリセット音色名のネーミングは各社特徴がありますが、主に以下の様なくくりでネーミングしてされているようです。
- 製品・メーカー名:例)Jupiter-8(JP) 、Oberheim(OB)、DX、Mini Moog、Arp2600など
- アルバム、曲名:例)「1984」「Cameleon」「Strawberry Fields Forever」「Separate Ways」など
- アーティスト名:例)TOMITA(冨田勲)、Chick(チック・コリア)など
例を挙げると、
あくまで個人的な推測ですが- JP Brs ⇒ おそらく Roland 「JUPITER-8」風のシンセブラスサウンド
- FM EP ⇒ おそらく YAMAHAのFM音源シンセ「DX-7」のエレピサウンド
- Jump Brs ⇒ おそらく OB Brs:ヴァン・ヘイレン「JUMP」のシンセブラス(Oberheim)
- Thriller Bs ⇒ おそらく マイケル・ジャクソン「スリラー」のMiniMoogベース
- Chick FM Lead ⇒ おそらく チック・コリアのFM音源リード
- 2600sine ⇒おそらく Arp 2600のサイン波リード(ポルタメント必須)
- TB Bass ⇒ おそらく Roland TB-303のアシッド系ベース
ただ昨今はモロそのままというネーミングは少なく、「Separate Days」「Don’t Jump」のように少々もじるパターンが多いようです。
今回このページではシンセ系音色をご紹介していきますが、とにかく多岐にわたるのですべてを記載することはできませんでした。「あれ忘れてるよー」というのがあったらこっそり教えていただければ幸いです。
シンセブラス系
■Oberheim OB-Xa 風ブラス:キーワード「Jump」「1984」「OB brass」
Jump / Van Halen (アルバム・タイトルが1984)
■YAMAHA CS-80風ブラス:キーワード「Chariots」「CS」
Vangelis – Chariots of Fire(炎のランナー)
ヴァンゲリスは映画「ブレードランナー」でもCS-80を使っているようですが、下記はヴァンゲリスによるCS-80のデモ。ポリフォニックアフタータッチならではの表現力ですね、まさに「ブレードランナー」の世界!あいかわらずリバーブ深いです。
ヴァンゲリスつながりで・・・絶句・・・足技がすごい?
■Roland Jupiter-8風シンセ:キーワード「Separate」「Ways」「JP」
wikipedia
Journey – Separate Ways (Worlds Apart)
■キーワード「1999」
Prince – 1999 (Oberheim OB-Xですかね?ドラムはLinnDrum?)
■ふわっとした感じのYAMAHA GX-1やCS-80系ブラス:キーワード「Africa」「TOTO」「GS」
Toto Africa
■「ホワン!」というアタックの効いた「Stab」系ブラス:キーワード「Stab」「final」
Europe – The Final Countdown
これイメージかぶりますね・・「朝まで生テレビ」のOPで有名です。
Geoff Bastow – Positive Force
シンセリード
■Mini Moog 風クラシックリード
Chick Corea best Mini Moog solo:キーワード「moog」「chick」
■Mini Moog のスクエア・リード音色(ディストーションをかけたりもします):キーワード「wired」「Jan Hammer」
Jeff Beck – Play With Me
■Mini Moog風パルス波系リード。ポルタメント(音と音を滑らかにつなげる機能)とモノモードが必須でしょう。
P.F.M. – Celebration
■Mini Moog風パルス波系リード(2オクターブ低いオシレーター重ね)
And You And I in HD by Yes(1:20位から)
■Oberheimシンセによるパイプ系リード(ライル・メイズのシグニチャーサウンド):キーワード「LM」「OB」「Square」
Pat Metheny & Lyle Mays – It’s for You
■SuperSaw系リード:キーワード「Super SAW」
Azymuth – Fly Over The Horizon(ARP2600でしょうか?)大昔のNHKのラジオ番組「クロスオーバーイレブン」のBGMでおなじみ
■トランス系のリード音色
ノコギリ波を重ねたトランスなどでよく使用される音色:キーワード「Dance Stab」
Criostasis vs. Clayfacer – Clubwalker (Original Mix) Hard Trance 2011
Taio Cruz – Troublemaker
■ピッチEQがかかったノコギリ波系リード:キーワード「SAW」
Usher – Yeah! ft. Lil Jon, Ludacris
■オシレーターシンク・リード:キーワード「Sync」「Unison」オシレーターSync機能独特の「ギュワーン」という過激な音が特徴です。
Van halen – Why can’t this be love
■サイン波リード:「sine」シンプルなサイン波ですが、モノモード、ポルタメントとディレイがキモでしょう。メロの合間を縫うオブリガート的なフレーズでよく使われているようです。
スピッツ / チェリー
■ギターシンセ:キーワード「GR」「Pat」「PM」
Pat Metheny GR 300 solo
Pat Metheny & Anna Maria Jopek-Are you going with me?
蛇足:NHKでまるで「刑事コロンボのテーマ」のように使われたヘンリー・マンシーニの「The N.B.C. Mystery Movie Theme」のポルタメント風のメロ音色は一体何なのか?長年論争が続いていましたね。
テルミン、オンドマルトノ等々諸説ありましたが、YAMAHAのコンボオルガン「YC-30」のリボンコントローラー説が有力のようです(演奏はClare Fischer)
YAMAHA YC-30(1969)

シンセベース
■MiniMoog風ベース:キーワード「MG」「mini」
Chaka Khan – A Night In Tunisia(35秒あたりから)
■Arp風シンセベース:キーワード「ARP」「Chameleon」
Herbie Hancock – Chameleon (ARP Odyssey)
■YAMAHA DX-7 風ベース:キーワード「DX」「FM」
a-ha – Take On Me
■TB-303のアシッドベース:キーワード「TB」「303」「Acid」
Phuture – Acid Tracks TB-303がフィーチャーされたアシッドハウスのさきがけとなった曲
The Prodigy – Smack My Bitch Up
■Wobble ベース:キーワード「Wobble」ダブステップ等で多用されます。
Distance – Night Vision(50秒あたりから)
シンセストリングス / シンセパッド
■Solina(ストリングルアンサンブルキーボード)系。高域で伸ばすフレーズとかによく使用されますね:キーワード「PWM」
THE BRAND NEW HEAVIES – Stay This Way
■パッド系シンセストリングス:キーワード「Soft」「Warm」
SWING OUT SISTER – Breakout
この曲でのブラスセクションは本物です。
■重厚感のあるシンセパッド:キーワード「Glassy」
Tears For Fears – Advice For The Young At Heart
■トランスでよく使われるノコギリ波重ね系パッド:キーワード「Saw Pad」「Trance」
Orjan Nilsen – Amsterdam
■メロトロンのストリングス:キーワード「Tron」「Mello」「tape strings」など
Starless / King Crimson
■メロトロンのストリングス+ブラス:キーワード「Tron」「Mello」「Watcher」
Genesis / Watcher of the Skies
Kraftwerk / Trans Europa Express ※実際はメロトロンではなく光学式のディスクを再生する「オーケストロン」らしいです。
その他
メロトロンのフルート:キーワード「Tron」
Beatles / Strawberry Fields Forever
■オケヒット:キーワード「HIT」
オケヒットで有名なのは、1979年発表のフェアライトCMI(Fairlight CMI)
by Wikipedia
Afrika Bambaataa – Planet Rock
Art of Noise – Close (To The Edit)
Yes – Owner Of A Lonely Heart(40秒辺り)
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キース・エマーソン(EL&P)の「アクアタルカス」ライブ版(1974年収録バージョン)では様々なアナログシンセの音色による圧巻プレイを聞くことができます。パッチングやりながら一体どうやったらこんな演奏ができるのでしょうか?想像つきません・・・一度ライブで見たかった・・・カールとグレッグはひたすらサポートプレイですね。
EL&P – Aquatarkus
イントロ(オルガン)後からsus4チューニング(オシレータ3つ重ね)⇒レゾナンスキツメのリード⇒爆裂音&フィードバック?⇒ノコギリ波のドローン(5度チューニング)マニュアルでフィルター変えてる?⇒ポルタメントのかかったスクエア波っぽいリードソロ⇒ポルタメント深めになり徐々にディレイビブラートがかかり・・⇒下降する分厚いリード、シンベ音色とユニゾン、徐々にインプロ⇒オルガンバッキング(完全4度)+ソロ・・・とにかくライブでこれだけのことをやっていたというのは本当に驚きです。※アナログのプリセットメモリー機器を使用していたという説あり。
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この記事を書いた人

デジランド・デジタル・アドバイザー 坂上 暢(サカウエ ミツル)
学生時代よりTV、ラジオ等のCM音楽制作に携り、音楽専門学校講師、キーボードマガジンやDTMマガジン等、音楽雑誌の連載記事の執筆、著作等を行う。
その後も企業Web音楽コンテンツ制作、音楽プロデュース、楽器メーカーのシンセ内蔵デモ曲(Roland JUNO-Di,JUNO-Gi,Sonic Cell,JUNO-STAGE 等々その他多数)、音色作成、デモンストレーション、セミナー等を手がける。
この記事で知ることができるのは?
のシンセ音色編です。
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