コンデンサーマイクとダイナミックマイクの違い~おすすめマイク【今さら聞けない用語シリーズ】

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コンデンサーマイクとダイナミックマイクの違い~おすすめマイク【今さら聞けない用語シリーズ】

記事中に掲載されている価格・税表記および仕様等は予告なく変更することがあります。

この記事のポイント

  • コンデンサマイクとは? 指向性とは?
  • コンデンサマイク⇒スタジオでいい音で録りたい(感度が高い)、振動や湿気に特に弱い。比較的高価。ファンタム(ファントム)電源必要
  • ダイナミックマイク⇒ライブで使いたい、丈夫で比較的湿度に強い

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こんにちはサカウエです。今さら聞けない用語シリーズ、今回は録音やライブでは欠かすことのできない「マイクロフォン」についてです(以降マイク)

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マイクって何を買ったらいいの?ダイナミックよりコンデンサーマイクの方が良いの?

マイクには色々な種類があり、用途もさまざま。「どれを選んだらよいかわからない」という方も多いと思いますが、目的に合った「マイク選び」そして「正しい使い方」はとても大切なことです。良い音で録音できなかった・・・くらいで済めばまだ次があるから良いのですが、最悪「あ~壊れちゃった~」(実はたまにある)といったことにならないよう、この機会にしっかりおさらいしておきましょう!!

そもそも「音って何?なぜケーブルを音が伝わるの?」という方は、後ほどこちらをお読みください~

【今さら聞けない用語シリーズ】音と周波数

もくじ

マイクのしくみ

ライブやレコーディングにおいて、ヴォーカルやギターアンプ、ドラムの音をPAから出したり、録音するためには「マイク(マイクロフォン)」が必要ですね。マイクの他にも、ミキサーやオーディオ・インターフェース、スピーカー、レコーダー・・等々さまざまな機材を使うことになりますが、ヴォーカルや生楽器の音を収集するための入り口にあたるのが、このマイクです。

ダイナミックマイクの仕組み

ライブハウス定番マイク SHURE SM58SHURE SM58

音は空気の振動ですが、この振動を電気の信号に変換するのが「マイク」の役目。ダイナミックマイクと呼ばれるタイプのマイクには、振動板(ダイアフラム)とコイルが搭載されており、空気の振動(音)で振動板が振動し、その結果電気信号が生じるという仕組みになっています(フレミングの法則(*)を応用したもの)

ダイナミックマイク構造

それとは逆に、今度は電気信号を音に変えてくれるのが「(ダイナミック)スピーカー」です。

スピーカー構造

●マイクの信号はあまりに小さいので実際は下図のようにアンプで信号を増幅させます

マイクとスピーカーの仕組み

このようにマイクとスピーカーは、「音>電気信号>音」という流れの中で、入り口と出口という、全く逆の役割を受け持っているわけです。しかし「空気の振動」を拾うか生み出すかという違いはありますが、仕組みとしては同じ原理を持っています(ダイナミック型と呼ばれるマイクとスピーカーの場合)(※1)

というわけで「音を電気信号に変えてくれる」のがこのマイク。

(※1)スピーカーのコーン紙にむかってしゃべるとコーン紙が振動し、電気信号が生まれ、スピーカーはマイクとしても動作します。この特性を利用し、マイクがスピーカーと兼用されている例としてはインターホンやトランシーバーがあります。

(参考*)フレミングの(右手)法則
簡単に言うと磁場中で電線が動くと「電線に電気が生じる」という法則。ダイナミックマイクやエレキギターのピックアップ、発電機はこの法則を応用したものです・・・ここではそんなものあったなあ・・・という程度の理解で問題ありません。

フレミングの(右手)法則とダイナミックマイクWikipedia  ギターのピックアップ

コンデンサマイクの仕組み

(※2)コンデンサーマイクは、コンデンサー(電気を貯めることのできる素子)の原理を利用したものです
空気振動で変化する電極間の静電容量変化を電気信号に変える・・・少々難しいですが・・要は「音の振動を電圧の変化に変換」するわけです。電極に電気を貯めなくてはいけないので電源が必要になるわけですね。下図はDCバイアスコンデンサー方式(※)と呼ばれるもの。
コンデンサーマイク 原理

TVの漫才でお馴染みSONYのC-38B(通称サンパチ)はコンデンサーマイク ¥185,638(税込)
C-38B

※この他にも半永久帯電素子を使用し乾電池程度の電源で作動可能なエレクトレットという方式があります。

マイクの種類

ということで主なマイクの種類には大きく分けて

  • ダイナミック型(ここではムービングコイル型というダイナミックマイクを指す)
  • コンデンサー型

があります(※)。それぞれ空気の振動を電気信号に変換する仕組みが異なっていますが使用する上での一番の違いは、

「コンデンサーマイクは電源が必要」

ということですね。

コンデンサーマイクとダイナミックマイクのおおまかな特徴としては

  • ダイナミックマイク:電源不必要、丈夫で比較的湿度に強い、感度が低い、⇒比較的安価
  • コンデンサーマイク:電源必要、振動や湿気に特に弱い、感度が高い、⇒比較的高価

といったところでしょうか。一般的には

コンデンサーのほうが「レンジの広い繊細な音を拾うことができて値段も割高」

という傾向はあると思います。
モチロンそれぞれ機種によって微妙に特性は異なりますので・・・10万円のダイナミックマイク、4千円のコンデンサーマイク等、混在しています・・・あくまでめやすと考えてください。

値段は数千円~百万以上とまさしく「ピンキリ」ですが、大部分のアマチュアにとって現実的な予算で考えると、1万~数万といったところでは無いかと思います。いずれにしても「何に使うか?」で選択肢は変わってくるわけですが・・・

※マイクには他にもリボン型クリスタル型(ピエゾなど)、カーボン型、などの方式があります。

ファンタム電源

コンデンサーマイクに必要なファンタム電源ですが「電源」といってもマイクに電源ケーブルが付いているわけではなく「ファンタム電源」と呼ばれる仕組みで電源をマイクに送ります。「ファンタム電源」というのはミキサーやオーディオ・インターフェースに備わっているもので、マイクにつなぐキャノン(XLR)・ケーブルを経由してマイクに電源を供給する仕組みです。(中にはステレオミニプラグで電源を送るタイプもあります)標準ケーブルだとファンタム電源は送ることができません。

キャノン(XLR)・ケーブル↓

コンデンサーマイクを接続するケーブル

電圧は12V、18V、24V、48Vなどがありますが、48Vが一般的です。

オーディオインターフェイス 48V

写真はSteinbergのオーディオ・インターフェースUR824。「+48V」と書かれているのがON、OFFスイッチです。なおファンタム(ファントム)は幽霊「(電気回路的に)見えない電源」という意味です。ダイレクトボックス(DI)にも供給します。

次はマイクを使う上での注意事項、必読です!

もくじ

マイクを扱う際の注意事項

理由はともかくとにかく、まずこれだけは覚えておきましょう!まずマイク全般。

  • ケーブルを抜き差しする際はミキサーなどのマイク・チャンネルはオフかボリュームゼロ
  • マイクは「吹いたり」「叩いたり」も厳禁!必ず「声でチェックする」・・チェック、ワンツー、ハーハーヘイヘイ・・・
  • マイクのグリル部分を手で覆わない⇒ハウリング(スピーカーがキーンというあれ)が起きたり音抜けが悪くなる
  • ダイナミックマイクにはファンタム電源を送らない(OKと書いてあるサイトもありますが、ダメ!ゼッタイ)
  • 湿気は避ける

次にファンタム電源を使用するコンデンサーマイクを使うときは、

  • コンデンサーマイクのケーブルを抜き差しする際は必ず「ファンタム電源をOFF」にしてから!その際ミキサーのマイク入力のゲイン、ボリュームはゼロ
  • ファンタム電源をOFFにしてもすぐにはマイクからケーブルを抜かない(電圧がコンデンサーに残っているので)20秒以上待てば確実
  • ファンタム電源をONにするときはミキサーのマイク入力のゲイン、ボリュームはゼロにする

コレを守らないと

  • 機材が壊れた!(マイク、ミキサー、スピーカー)
  • 感電した!

などの事故が起きる可能性があります。気をつけましょう。

ついでに基本事項、

  • ミキサーやアンプを使いスピーカーから音出ししている際は、スピーカーの電源は最初に切って、最後に入れる
  • とにかく何かしら抜き差し時は「ボリューム下げる」が鉄則です。

以上を守りましょう・・・・なんだか「スタジオご使用上のお願い」みたいになってまいりましたが、でもこれホント大事なことなのですよ~

指向性

マイクの違いで次に重要なのはこの指向性。要はどの方向の音を集音できるかという特性を表します。目的によってさまざまな指向性のマイクが発売されていますので、自分の目的にあった指向性のマイクを選ばなくてはなりませんね。(図:Wikipedia)図はマイクの集音部を中心としてどの方向の音が集音しやすいかを表しています。

単一指向性(カーディオイド)

正面に対して感度が良いタイプで、ボーカリストがライブで使う、ギターアンプを狙うなど一般的なマイクの指向性です。指向性のグラフが心臓(カーディオイド:ギリシャ語が語源)の形に似ているのでこの名がついています。コンデンサーマイクの中にはどの方向に指向性があるかわかりづらいものもあるので注意しましょう。

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指向性がさらに鋭いものはその程度によって「スーパー<ハイパー<ウルトラ<ショットガン」(各カーディオイド)と呼ぶ場合があります。TVのロケやバラエティー番組の客席前方で使われている「ショットガンマイク」は最も指向性がスルドイというわけですね。
ショットガン↓
指向性マイク directional microphone

単一指向性は正面の音はよく拾って後ろはあまり拾わないという指向性ですが、ワザとマイクの後ろに回ってセリフを録音すると、人物があたかも後ろに回ってしゃべっている雰囲気を出すことができます。ドラマなどで人が遠ざかっていく演出等でも使用されます。

無指向性(ノンディレクション/オムニダイレクション)

マイクの360度方向に指向性があります。ある部分を狙うのではなく会場全体などの音を収録する際に使用されるタイプです。スタジオでの部屋鳴り(アンビエント)、会議の録音、襟元に付けるピンマイク(ラベリアマイク)といった用途で使用されるケースが多いようです。

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双指向性(ツインディレクション)

マイクの表裏面にそれぞれ単一指向性があるタイプです。ラジオ番組などで向き合った二人の会話を1本のマイクで収録する際に使用されるケースが多いです。
双指向性マイク figure_eight

以上の特性を大体理解できれば、少なくとも間違って自分に不向きのマイクを買ってしまうということは無いと思います。

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指向性を可視化するiPadアプリ!「Arapolarmic」
https://www.youtube.com/embed/i5Ychdg7GB4

用途別マイク選び

さてダイナミックマイクとコンデンサーマイクの性質の違い、

  • ダイナミックマイク:電源不必要、丈夫で比較的湿度に強い、感度が低い、
  • コンデンサーマイク:電源必要、振動や湿気に特に弱い、感度が高い、

そして、指向性を考慮しながら「何に使うか?」でマイクを選ぶことになりますが、ライブなどで機材移動やセッティング、本番のアクション等を考慮すると、どうしても高価なコンデンサーマイクは使いづらい・・・どうしてもここはコレというところ以外はダイナミックが選ばれる傾向があるようです。

逆にスタジオ等で繊細なサウンドを録音したいということであればコンデンサーマイクは必須となるでしょう。

対象別の定番・オススメ機種を紹介します。ヴォーカルの場合は声質によって相性があると思いますので、実際には使って試してみたいところですね。

ライブで使う

ボーカル用マイクとしてはなにはなくともまずはコレ! SHUREのSM58(ゴッパーという呼称が有名)一家に一本 30年以上の超ロングセラー!

シュア SM58

他にもBeta58といったラインナップがありますが、周波数特性、カーディオイドとハイパー・カーディオイドといった違いがあります。

シュア Beta58A

指向性のあるマイクで比較的小さい音を拾う場合、低域(ロー)が強調される「近接効果」という現象が起こるのですが、この58は予めローカットが施されているモデルです。もしコレをボーカル以外の音源から遠ざけて(オフマイクで)使用する場合は、逆に低域のないサウンドになってしまうので注意が必要です。

ギター(アンプの出音を録る)やドラムなどで使用される定番といえば同じくSHURE SM57(通称ゴーナナ)。これまた58同様の超ロングセラー
SHURE SM57

ライブでもよく使用されるコンデンサーマイクには耐久性に優れたSHUREのBeta87があります。コレも良く目しますね
シュア BETA 87A

音抜けが良くハウリングに強いボーカル専用ダイナミックマイクロホンは

オーディオテクニカ AE6100

ジャズなどのサックスやトランペットのベルを狙う場合、クリップタイプのコンデンサーマイクも多くのミュージシャンに愛用されています。
SHURE Beta98H/C

次はレコーディングで使うコンデンサーマイクについて


もくじ

レコーディングで使う

レコーディングでは繊細なサウンド、広いレンジで録音できるコンデンサーマイクが多用されますが、ボーカルやギターで使用するお手頃価格のマイクといえばオーディオテクニカ AT4040

オーディオテクニカ AT4040

前述のダイナミックマイクSM57もドラムやギターによく使われています。

最後にどのレコーディングスタジオにも必ずあるというのが、老舗ノイマンのU87Aiというコンデンサーマイク。
NEUMANN U87Ai

NEUMANN (ノイマン) U87Ai

それなりに良いお値段(30万弱)しますが、将来プライベートスタジを作る際はぜひお忘れなきようお願い申し上げます。

なお生ドラムのレコーディングの場合は、キック、スネア、タム、オーバーヘッド(上部から録るサウンド)といったように複数のマイクを立てて録音するケースが多いです。たった1本のマイクで録れないこともないですが、良いサウンドを得るにはかなりのマイキングテクニックとスタジオの広さといった環境が関係してくるでしょう。

さて、こうした楽器のレコーディングにおけるマイク選びはレコーディングエンジニアのこだわりや特徴が如実に反映されるところでもあるので非常に奥が深い部分です。シュア・ジャパン・リミテッドのサイトで公開されている「マイクロホン検索システム」等も参考にしてみると良いかもしれませんね

あると便利。スクリーン(ポップガード)とリフレクションフィルター

いわゆる「吹かれ」という現象を緩和するための道具がこれ。風のゴゴゴという音や「パ行」を発音する際の音対策に使います・・よく見ますよね。

こんなのもあると良いですね。反響を抑える道具・・自宅での録音にも最適です

なお、せっかく良いマイクを買ってもそれを接続するミキサー、オーディオ・インターフェース、アンプ、スピーカー等が適切で無いと意味がありません・・・というわけで目的にあったマイク、そして他の機材も島村楽器店頭でお試しいただきじっくり選んで頂きたいとと思います。でわ。

2本のマイクでドラムをレコーディングする方法

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